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1
2015/05/27 16:20:15 (Qit53ipJ)
十日前の出来事です。
 僕は三十三歳の地方公務員で、一年前に中学校の教師
をしている三つ年上の妻と結婚して、婿養子として妻の
実家に入りました。
 妻の父親は五年ほど前に他界していて、妻の母親との
三人暮らしです。
 妻の母親は亜紀子という名で、年齢は六十三歳です。
 彼女も長く教職の場に身を置いていて、最後には小学
校の教頭職で定年退職していました。
 三人には登山という共通の趣味がありました。
 妻と知り合ったのも僕が勤める市役所が企画した登山
行事がきっかけでした。
 義母の亜紀子も亡夫が登山愛好者だったこともあって
山歩きは好きだいうことでした。
 僕も含めて三人とも、高く険しい山を踏破するという
ような本格的な登山ではなく、二千メートル級までの山
を歩き登るという程度のものでしたが、結婚してからも
三人での登山行は何度か経験していました。
 そして先々週の土曜日も、以前にも行ったことのある
千五百メートル級の山への、三人での登山計画をしてい
たのですが、前日になって妻のほうが急に学校の教頭の
代理での研修旅行が入ってしまったということで、義母
の亜紀子との二人きりの登山行となったのでした。
 先に白状しておきますが、僕は義母の亜紀子に対して
は前からずっと誰にもいえない不浄な思いを抱いていま
した。
 義母の亜紀子は身長は百五十センチそこそこで体重も
四十数キロ程度の、小柄で華奢な体型をしています。
 髪をおかっぱ風のショートカットにしていて、目鼻立
ちの整った小ぶりの顔や色白の肌のせいもあって、外見
的には実年齢よりはかなり若く見えました。
 田舎で暮らしている色黒ででっぷりとした体型の僕の
母親とは、比較しようもないくらいの上品さがあり、妻
にはいえないことでしたが、亜紀子に対しては義母とい
うよりも一人の女性として心密かに胸をときめかせてい
た毎日でした。
 妻のいない、義母との二人きりの登山に、僕は事前に
不埒な姦計を持っていたというのでは毛頭なかったので
すが、不遜にも何となく浮ついた気分でいたのは確かで
した。
 義母の亜紀子は娘婿の僕のそんな不埒な思いなど当然
知る由もなく、僕自身もその思いで彼女に強く迫ろうな
どとは、その時は思ってもいませんでした。
 そして登山当日の朝は抜けるような青空が広がる好天
でした。
 電車の駅を降りバスで一時間ほど山に入ったところの
登山口で、その山を目指す何組かのパーティと一緒に頂
上に向けて歩き登ったのです。
 十月中旬の秋たけなわの頃で、歩き登りながら目にす
る山々には紅葉が色鮮やかでした。
 赤い帽子と薄いピンクのヤッケ姿の義母の亜紀子も年
齢を感じさせないような軽い足取りで、僕のすぐ前を黙
々と歩いていました。
 時折吹く風で前を歩く亜紀子のものなのか、ほのかな
化粧の匂いが僕の鼻腔を気持ちよく刺激していました。
 その山は登山ルートが二つに対して、頂上からの下山
ルートが四つに分かれているのが特長でした。
 以前に妻も入れての三人で来た時は初めてということ
もあって、登った道をそのまま下山していたのですが、
今回の計画ではその山を横断する下山ルートを選択して
いたので、頂上からは来た時とは違う道を二人で下りる
ことにしていました。
 その道は一度、前に僕が一人の時に踏破していたので、
先頭に立って歩きました。
 同じルートを下る二、三組のパーティもいましたが、
少し気にかかっていたのは、頂上に着いた頃から雲行き
が怪しくなり出していたことでした。
 山の天気が変わりやすいというのは当然承知はしてい
ましたが、速い速度で青空が消え黒く低い雲が漂い始め
ていたのです。
 そして下山ルートの中腹手前あたりでいきなり大粒の
雨が、帽子とヤッケに音を立てて当たってきました。
 山での雨の経験は僕も義母の亜紀子も何度も経験はし
ているので慌てた素振りはなかったのですが、急勾配の
大きな曲がり道に来たところで亜紀子がぬかるんだ土に
足を取られ倒れこんでしまったのでした。
 「大丈夫ですか?お義母さん」
 駆け寄って腕を取り抱き起こそうとした時、義母の雨
に濡れそぼった色白の顔が苦痛に歪んでいました。
 右足を痛めたようで義母は立ち上がれずにいました。
 「ご、ごめんなさい。そこの岩で滑っちゃって」
 かたちのいい眉をしかめながら義母は僕に申し訳なさ
そうな顔で小首を小さく俯けていました。
 「捻挫かも知れませんね。大丈夫、僕がおぶっていき
ますからちょっと待ってくださいね」
 僕は急いで背負っていた自分のリュックを肩から外し
て、それを前から掛けるようにして、亜紀子を背中に背
負って道を下ったのです。
 義母が小柄な体型だったのが幸いでしたが、降り続く
雨は勢いをさらに増し、午後の二時過ぎというのにあた
りはもう夕刻のような暗さになってきていました。
 ふと僕はあることを思い出し、背中の義母にいいまし
た。
 「お義母さん、この先の横道を入ったところに番小屋
があります。そこで雨を少し止ましたいと思いますが…。
お義母さんの足の様子も少し心配ですし」
 雨で二人ともすっかりずぶ濡れになっていて、亜紀子
は力弱く頷くだけでした。
 下山ルートから外れた鬱蒼とした木々の下の細い道を
しばらく行ったところに、トタン屋根の小さな小屋が見
えてきました。
 横引きの古びた木の戸を開けると、土間が半分で板間
が半分の畳三畳ほどのスペースの小屋でした。
 義母をゆっくりと板間に下ろしてから、僕は故意的に
彼女から離れるように土間の隅に腰を下ろしました。
 お互いにリュックから出したタオルで衣服に染みた雨
を拭き取っていましたが、トタン屋根を叩く雨音が激し
いだけで他人の気配もなく、そして狭くて薄暗いスペー
スが二人を自然に寡黙にしていました。
 「お義母さん、足のほうは大丈夫ですか?」
 気まずいような沈黙を打ち消すように僕は義母に問い
かけました。
 「まだ痛みはあるけど大丈夫よ。それよりごめんなさ
いね、迷惑かけちゃって」
 「僕は若いから平気ですよ。もう少し雨を止ましてか
ら下山しましょう。なに、ここからはもうほんの一時間
ほどで登山口です。それより足診ましょう、骨折してた
ら何か添え木しないと」
 そういって僕はつかつかと亜紀子のそばに近づきまし
た。
 登山靴と靴下を脱いだ義母の右足を見ると、踝と踵の
あたりがやはり薄赤く腫れ上がっていました。
 「どのあたりですか?」
 と僕が尋ねると義母は手袋をした人差し指で踝のあた
りを指しました。
 「失礼しますよ。痛かったらいってください」
 僕はそういって手袋を脱いだ手で義母の踝のあたりを
ゆっくりと擦りました。
 艶やかな義母の皮膚の感触に僕は内心を大きくときめ
かせていました。
 初めて触れた義母の肌でした。
 「うーん、骨が折れてるのではなさそうですね。腫れ
てるから捻挫は間違いないと思いますけど」
 僕は不必要なくらいに何度も義母の肌を擦りながら、
優しく労わるような声をかけました。
 それからまた義母から離れて、僕は携帯電話でこの地
方の天気予報を調べました。
 低気圧の動きが予想外に早くなり運ばれてきた大きな
雨雲が、この地方付近で停滞するという、あまり喜ばし
くない情報が出ていました。
 「うーん、天気予報少しヤバイですね。雨と風が夜ま
で強くなるといってます。今のうちに強行突破するかど
うかですね。でも、この先の川の水が増水してると道ま
で溢れ出ているかも知れないし」
 僕は義母に携帯をかざして天気情報を正直に告げまし
た。
 「ここならまだ高い場所ですから川の水も大丈夫です
し、木に囲まれてるから風も防げます。風がまた強く吹
いて雲を運んでいってくれるかも知れません。もう少し
待ちましょう」
 山での主導権はやはり男の僕にありました。
 不安げな表情で小さく頷きながら、義母は力なく細い
両肩を項垂れさせていました。
 「由美にはもう少ししたら僕から連絡します。取り敢
えず身体を休めましょう。風邪引かないようにしてくだ
さいね」
 さすがにその時はまだ、まさかここで義母と一夜を共
にするということは、僕自身も予想はしていませんでし
た。
 大袈裟に遭難ということでもないし、登山口までは後
一時間もかからないところでの避難待機だと僕は思って
いました。
 しかし、雨の止む気配はそのままずっとありませんで
した。
 それどころかトタン屋根を叩く雨音はさらに激しさを
増していて、木々を揺らす風の音まで強く聞こえ出して
きていました。
 義母の不安と心配を思うと居ても立ってもいられない
気持ちでしたが、妻のようにそばで抱いてやるわけにも
いかず、少し途方に暮れながら僕は時間をやり過ごすし
かありませんでした…。
 
       続く

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32
投稿者:コウジ
2015/06/11 16:23:30    (/kTw5J/T)
「病院まで行ってもらおうと思ってタクシー待たせ
てるの。お夕飯は何か出前でも頼んで」
 五時過ぎに出張先から帰宅した妻の由美でしたが、
母親の着替えとかを用意するのに慌てふためいた様
子だったので、ほとんど僕との会話はないまま忙し
なげに彼女はまた出かけたのでした。
 母親のほうとは電話で何度かやりとりしていたよ
うで、由美はそれほど不安げな表情でもありません
でした。
 僕はまた一人になり、彼女が帰宅する前に居間の
壁にかけてあったブレザーの胸ポケットに隠した義
母の衝撃の写真を取り出し、ソファに座り込んで一
枚ずつ丁寧に見直したのでした。
 義母が床に立ったまま白いブラウス肩から脱ぎ下
ろす写真がありました。
 スカートはすでに脱がされていて白くて細い太腿
が露わなままで、窄めた股間の薄水色のショーツの
小さな布地が儚げに見えました。
 少し俯き加減で伏目がちな顔でしたが、真正面の
やや下からのアングルで、ショーツと同系色のブラ
ジャーが鮮明に見え、頼りなげなくらいに細く括れ
た腰から腹回りの艶やかな肌が、まるでハレーショ
ンを起こしているかのように白々と写し出されてい
ました。
 仁王立ちした男の剥き出しの股間の前にかしづい
て、男のものを口の中深くに含み入れている写真を
改めて凝視して見ると、うっとりとした表情で閉じ
られた切れ長の目は、清廉な元聖職者のものとは到
底思えないくらいの艶かしさでした。
 赤い縄で義母は後ろ手にされ、少女のように小ぶ
りな乳房を挟み込むように捲かれてベッドの上に仰
向けにされている。
 カメラのレンズはそれを義母の真上から見下ろす
ように向けられているのがわかります。
 義母のかたちのいい赤い唇が半開きのようになっ
ていて、何かを訴えるかのように潤ませた目をカメ
ラレンズに向けています。
 ベッドに仰向けにされ両足を大きく割られて男に
つらぬかれ、自らその男の首に両腕を捲きつけてい
る義母の顔の恍惚の表情が鮮明に写されているのも
ありました。
 このことはしかし冷静に考えると、複数の男が義
母といたということになります。
 写真の背景をよく見ると、どこかのホテルの一室
のようだというのがわかります。
 そしてこの写真は少なくとも、この最近に撮られ
たものではないということも何となくわかりました。
 おそらく複数年は経過しているものとすると、義
母がまだ聖職者として現役の頃のものだということ
になります。
 義母が小学校の教頭職を最後に定年退職したのは
六十歳と聞いてます。
 その頃かあるいはそれ以前の頃の、義母の淫ら極
まりない驚愕の行状と、僕は昂まる気持ちの中で推
理を働かせていました。
 写真の中から相手の男が誰なのかが判明できるもの
はなく推測できませんでした。
 僕は夕食の出前を頼むのも忘れ、何度も何度も繰
り返し義母の淫らで謎めいた写真を見ることに没頭
していました。
 妻と結婚してこの家の中に入り、元聖職者で慎ま
しやかな素振りや、年齢よりはるかに若く見え美し
く上品な顔立ちの義母との三人の生活の中で、ほん
の少し、ほんの少しだけ彼女への淡い邪淫の思いを
叶わぬことと思いつつ抱いていただけの自分を、昨
日と今日で激動的に、何かがどす黒く包み込もうと
しているのを感じさせられていました。
 妻の由美が病院から帰宅したのは十時過ぎでした。
 何も知らない由美は、母親と医師から聞いた怪我
の状況を屈託なさげに僕に詳しく説明するのでした。
 母親は娘への説明の中で、昨夜は山小屋でもう一
組のパーティと一緒だったと切ない嘘をついていま
したが、僕も義母の思いを察して、そうだったんだ
よと気軽く応えておきました。
 そしてその夜、僕は激しく妻の由美の身体を激し
く求めたのでした。
 由美の両足を大きくおし広げ、激しく突き立てる
僕に彼女は喘ぎながら、
 「どうしたの?今夜は…ああっ」
 と問い返されるくらいに、義母とはまた違う弾力
のある肌肉を責め立てたのでした。
 そして眠りにつく少し前に、僕は明日の夕方に義
母を訪ねようと密かに邪淫な思いに胸を小さく躍ら
せていたのでした…。

        続く
33
投稿者:kkk
2015/06/12 05:18:41    (RwZWJFq6)
義母さんのギャップがたまらないですね~、病院では長いさせてくれないのかな?
34
投稿者:コウジ
2015/06/13 17:32:06    (PJZqRWIf)
二日間の有休休暇は僕にとっては、大袈裟にいえ
ばまさに平凡極まりなかった人生生活や気持ちを、
大きく軌道修正させようとしているかのような出来
事の連続でした。
 妻の由美との結婚、そして義母の亜紀子を含めて
の三人生活。
 やがて妻は子供を生み、義母は孫の世話を楽しみ、
僕はつつがなく公務員生活を続ける。
 心密かに義母の艶やかで、実際の年齢よりは遥か
に若く見えるの美貌を、空想と夢想の中で抱き締め
るだけの一生におそらくなるのだろうと、つい二、
三日前までは僕は漠然と思っていたのでした。
 それが義母と過ごした風雨の中の山小屋での、め
くるめくような一夜の秘め事と、帰宅してからの卑
猥に湧き上がった悪戯心で図らずも発見してしまっ
た、まるで知る由もなかった彼女の衝撃の過去を写
し残した驚愕の写真。
 あくる日、仕事に出て普通にそつなく業務をこな
しながら、僕は心密かな決断をしていたのでした。
 まるで予期していなかったこの一両日の衝撃と驚
愕の出来事を、僕はこれからの自分の理性をかなぐ
り捨てた欲望のためのプロローグ(序章)としていく
と決意していました。
 自分でも思ってもいなかった悪魔の心が、僕の脳
裏の奥深くで芽吹いていたのです。 
 勤務を終えると僕はそそくさと帰路につき、義母
のいる病院を目指していました。
 妻の由美は今日もPTAの総会があるとかで、帰宅
は遅くなるということでした。
 病院に着いたのは六時前でした。
 外来の奥が入院病棟になっていて、義母のいる個
室は二階の中央あたりでした。
 軽くドアをノックして入ると、すぐに驚きの表情
の義母と目が合いました。
 義母はベッドで上たいを起こして座っていました
が、僕に気づくと慌てたように薄水色のパジャマの
ボタンに両手をかけていました。
 無理もないことでしたが、まるで怖い獣にでも遭
遇したかのような慄いた眼差しで僕を見るのでした。
 「足の具合はどうですか?」
 僕はつとめて明るい声音でいいながら、義母のベ
ッドに近づきました。
 「ええ…」
 切れ長の目を僕から逸らし窓のほうを向きながら、
義母は短く応えるだけでした。
 「由美は今日はPTAの総会があるとかで遅くなる
からといってました。昨夜、話されたでしょ?あ、
それからこれ、駅前のケーキ屋で買ってきました」
 手にしたケーキの箱を翳しながら、僕は屈託のな
い顔のまま、義母のベッドの横の椅子に腰を下ろし
ました。
 義母の好きなショートケーキの詰合わせの箱を横
の棚に置き、
 「お義母さん…」
 と改まったような口調でいって義母に目を向ける
と、彼女はまた慌てたような素振りでそそくさと布
団の中に身を横たえていました。
 あからさまに僕を拒絶するかのように背中を向け
て、義母は肩を窄めていました。
 義母が動いたせいか、まだ記憶にまざまざと残っ
ている、あの夜の時のシュラフから洩れ出た化粧品
のような匂いが、またしても僕の鼻腔を強く刺激し
てきました。
 気持ちよりも先に僕の手が勝手に動いていました。
 背中を向けている義母の肩をわし掴み、手前に強
く引き寄せたのでした。
 「あっ…」
 と義母が短く狼狽の声を出しましたが、小柄な体
型はいとも容易く僕のほうに向けられることになり
ました。
 間髪を置くことなく、義母の肩を掴んでいた手を、
僕はそのまま滑らせるように彼女の胸に当てていま
した。
 慌てふためいた義母の小さな手が僕の手を払い除
けようとしますが、力では叶うはずはありませんで
した。
 義母の胸をしっかりと掴み取った僕の掌は、乳房
の小さな隆起を確実に捉え込んでいて、指に力を込
め動かすと、彼女の顔が妖しくも切なげな歪みの表
情を見せるのでした。
 義母の女としての弱点が乳房にあるということを
僕は忘れてはいませんでした。
 尚も手に力を込めて僕の手を払い除けようとして
いた義母ですが、もう悪魔の心に変貌していた僕に
叶うはずがありませんでした。
 やがて義母の手から力が抜けるのがわかりました。
 もう片方の僕の手が、義母のパジャマの前ボタン
のほとんどを外し取っていました。
 シルクのような感触の白のキャミソールの布地が
露呈され、濃い灰色めいたブラジャーまで露わにな
っていました。
 「だ、だめっ…こ、こんなところで」
 顔を左右に激しく揺らせて、義母は潜めたような
弱々しげな声で僕に訴えてくるのでした。
 「だったらおとなしくしてください、お義母さん。
僕は誰かきてももうかまわないです。お義母さんの
匂いが僕を狂わせている」
 「ね、こ、この前のことは…わ、私も忘れること
にします。こんなこと…こんなこといけないわ」
 「初めて会った時から、僕はお義母さんを意識し
てました。いつかこうなれたらと」
 「だ、だめっ…か、仮りにも私は…ああっ…あ、
あなたの母親になるのよ。…ゆ、由美がいるのに」
 「僕は由美も愛してます。そしてお義母さんも
愛したいのです」
 「そ、そんなっ…ああっ」
 言葉を交わしながら小競り合いするように小さく
揉み合っているうちに、義母のパジャマの前ボタン
は全部外し取られ、白のキャミソールがブラジャー
と一緒に上にたくし上げられ、儚げに小さく盛り上
がった丘のような乳房と、すべすべとした腹部の肌
が露わになっていました。
 義母の細い首周りが薄赤く上気してきていて、額
に滲み出た汗で前髪の小さな束がへばりついたよう
になっていました。
 乳房を這う僕の手の力の強弱加減で、義母が頤を
のけ反らすように、細く尖った顎を上に向けて突き
上げてきています。
 僕の興奮度合いもかなり増幅していましたが、義
母も明らかに女としての官能の喜悦のようなものに
襲われ、妖しげな反応を隠し切れなくなってきてい
るようでした。
 僕は椅子から腰を浮かせて、義母の顔に顔を近づ
けていきました。
 紅いルージュを引いた義母のかたちのいい唇が間
近に見え、彼女が吐く息の熱が僕の鼻先に心地よい
匂いと一緒に微風を送り込んできます。
 そしてどちらからともなく唇と唇は重なったので
す。
 「ううっ…むむぅ」
 小さく喘いだ義母の歯がすぐに割れ、山小屋の夜
の時と同じ官能的な温みを持った舌先が、僕の舌を
探し求めてきたのでした。
 俯いた姿勢の僕の首筋に義母の両腕がゆっくりと
捲きついてきていました。
 まるで愛し合う恋人同士のように、僕と義母は激
しく唇を重ね合い、強く抱擁し合ったのでした。
 口の中に湧き出た唾液を僕は舌の上に載せて、義
母の喉に流し込むと、彼女は躊躇うことなくごくり
と喉を大きく鳴らして飲み入れるのでした。
 ひとしきりの抱擁が終わり、僕は義母の顔から顔
を離すと、
 「亜紀子…そう呼んでいいかい?」
 と彼女の濡れ潤んだような目を凝視してそう語り
かけました。
 「………」
 義母はまるで恋の告白を受けた少女のように、濡
れ潤んだ瞳を気恥ずかしげに戸惑わせるだけでした。
 「二人きりでいる時は、そう呼びたい」
 そういって僕は義母の頬に軽く唇を押しつけまし
た。
 本当に僕は義母を義母としてではなく、一人の女
性として愛したいと思っていました。
 三十三歳と六十三歳というそれこそ親子ほどの年
齢差は、その時の僕の頭の中には少しもありません
でした。
 義母ではなく亜紀子という一人の女に僕は熱情を
持ったのです。
 むしのいい話ですが、しかし妻の由美を裏切ろう
という思いは僕にはありません。
 妻への愛も不変です。
 その上で義母である亜紀子も愛したいという身勝
手極まりない思考でしたが、そのことを深く掘り下
げて理性を喚起するという思いは、その時の僕には
全くなかったのです。
 上半身の肌を露わにしたまま、粋を荒くして薄赤
く上気した身体を小刻みに震わせている義母の唇に、
もう一度静かに唇を重ねていき、素早く片手を彼女
のズボンの下に差し込んだのでした。
 僕の手はするりと滑り落ちるように、義母の下腹
部の漆黒の茂みを捉えていました。
 「ああっ‥…だ、だめっ」
 慌てたように義母は両足を窄めたのですが、それ
より早く僕の手の先は、彼女の漆黒の中の裂け目の
中に辿り着いていました。
 熱くぬめりとした潤みを僕の指の先端が確実に捉
えていました。
 その指を少し動かすだけで、義母は背中を持ち上
げるくらいに激しく喘ぎ反応しました。
 指の第二関節あたりまでが義母の熱い潤みの中に
潜り込んだ時、
 「ああっ…」
 と僕も少し驚くくらいの大きな喘ぎの声を洩らし
たのです。
 義母の下腹部の潤みの熱い液は留まることなく溢
れ出てきていました。
 両腕で僕の身体にしがみついてきています。
 その耳元に、
 「亜紀子、そう呼んでいいね?」
 ともう一度囁くようにいいました。
 「ええ…そ、そう呼んで…ああっ、こ、浩二さん
っ」
 「亜紀子、亜紀子をもっと、もっと淫らに愛した
い…」
 「ああっ…あ、愛してっ…」 
 「亜紀子を奴隷にしたい」
 「ああっ…し、して」
 再び僕と義母は唇を激しく貪り逢うにして吸い合
ったのでした。
 間もなくして、絶頂の淵に深く落ち込んだ義母は
そのまま僕から手を離して、ベッドにどさりと倒れ
込むようにして意識を喪失させたのでした…。

          続く  


35
投稿者:kkk
2015/06/14 05:43:42    (0BbO03Lr)
義母さんも意識していたんですね~、でも行けない事だという事で拒んでいたと・・。
もうこれからは、何時でも、何処でも、言うとおりになってくれそうな・・・。
この後がどうなったのか気になりますね、病室ですから看護婦も巡回に来るだろうし・・。
36
投稿者:(無名)
2015/06/15 06:19:24    (e9y./osJ)
続きが待ち遠しいです。
お願いします。
37
投稿者:コウジ
2015/06/15 16:15:27    (fOIQwzwU)
ネクタイを弛め額と首筋に滲み出た汗を拭いなが
ら、僕も椅子にどっかりと座り込んでしばらくは呆
然としていました。
 ふと見ると、横向きでぐったりと意識を失くして
いる義母の上半身は、パジャマの前ボタンが外れ、
白いシルクのキャミソールとブラジャーが首のあた
りまでたくし上げられていて、小ぶりの乳房が可愛
げに垂れたまま露出していました。
 そんな義母の身体から今も鼻腔をついてきている
妖しい女の匂いに浸りながら、彼女の上半身の身な
りを整えてやり、ベッドに仰向けに寝かせたのです
が、不意に思いついた卑猥な発想で、上布団を少し
めくり彼女のパジャマのズボンと一緒にショーツま
で脱がし下ろしたのでした。
 そのことに気づいて驚き慌てふためく義母の理知
的な顔がどうなるのか見てみたいという、まさに卑
猥な思いつきでした。
 上布団を義母の身体から全部剥ぎ取って、剥き出
しになった彼女の下半身を覗き見ると、片足の足首
のあたりに捲かれた白い包帯と、細くかたちよく伸
びた真っ白な両足と、その付け根のあたりで小さく
盛り上がった漆黒の茂みが妖しく淫靡なコントラス
トとなって、悪魔の心になった僕の欲情をさらに刺
激するのでした。
 義母のショーツの小さな布地は、先程来の僕との
熱い戯れの激しさの痕跡を残すかのように、その中
央部分に際立った湿りを滴らせていました。
 それを僕は小さく折り畳んで、手にしていたハン
カチに包み入れ背広のポケットに忍ばせたのです。
 「うっ…ううん」
 ほどなくして義母の意識が小さな声と一緒に戻り
ました。
 細く見開いた目に僕の顔が見えたのか、義母は気
恥ずかしげに、まだ仄かに薄赤い顔を慌てたように
真横に背けました。
 そして僕に背けた背中が小刻みに揺れ動きました。
 我が身の下半身の異常事態に気づいたようでした。
 義母の布団越しに背中にそっと手をかけてやると、
彼女は逃げるように身を前にずらしました。
 その時、ドアをノックする音が唐突に聞こえてき
ました。
 薄いピンクの制服姿の看護師が優しげで明るい挨
拶の声を出しながら入ってきました。
 「先生、どうですか?足のほう痛みませんか?」
 二十代半ばくらいのぽっちゃりとした快活そうな
看護師が、僕には明るく目礼しながら、義母の様子
を伺ってきたのです。
 「あ、ありがとう。…だっ、大丈夫です」
 義母は狼狽の表情を露わにして身体を向き直して
近づいてくる看護師に応えました。
 「すみません。義母がお世話かけます」
 僕も椅子から立ち上がり、看護師に頭を下げまし
た。
 「あっ、昨日お見えになってたお嬢さんの旦那さ
んですか? は、はじめまして。あ、あの、私、先
生の教え子なんです。そ、それですみません。先
生だなんて」
 若い看護師も少し狼狽えたような口調で僕に応え
たのですが、本当に狼狽を激しくしているのはベッ
ドの上の義母のはずでした。
 「足のほう、包帯は大丈夫ですか?」
 看護師は純粋に気遣いの声をかけながら、義母の
足の具合を診るためか、ベッドの上布団にてをかけ
ようとしてきたので、僕も少なからず慌てた気持ち
になっていました。
 「ほんと、本当に大丈夫だから」
 おそらく僕の何倍も慌てふためき、狼狽を激しく
していたはずの義母は、無意識に片手で上布団を押
さえるような仕草を見せて、看護師の動きを止めに
かかったのでした。
 「そうですか…。じゃ、もう少ししたら熱だけ計
ってくださいね」
 その若い看護師は少しだけ訝しげな表情を見せな
がら、お大事に、との言葉を残して退室していった
のでした。
 義母はそのまままた身を翻すようにして、僕に背
中を向けました。
 あわやという事態だったのは確かでした。
 あのまま看護師に布団を捲られていたら、しかも
相手は義母の教え子なのです。
 僕は頭の中でその状況を淫らに想像しました。
 自分の教え子の女の子の前で、下半身丸裸の痴態
を見られる義母の顔を思い浮かべると、思わず僕の
背筋まで汗ばむ思いでした。
 これからもっと、この理性的で理知的な元聖職者
の義母を辱め、女の本能を剥き出しにして、昨夜、
彼女の箪笥の奥から探し当てたあの淫靡な写真の再
現を、必ず自分の目の前でしてやろうという冷酷非
道な悪魔の心に僕は浸りきっていました。
 それから十数分後のことでした。
 僕はベッドのすぐ横にズボンとトランクスを足元
に脱ぎ下ろして立っていました。
 そして剥き出しになった僕の股間に義母の顔が密
着していました。
 義母の口が僕の固く屹立しきったものを咥えてい
ました。
 ショートカットの義母の小さな頭が前後に小さく
動いています。
 看護師が立ち去った後、僕は義母の上布団を一気
に引き剥がしました。
 「あっ…」
 と小さな声を上げて身を竦める義母に、
 「お義母さん…いや、亜紀子。このままで僕は帰
れない。今ももう溜まりきっている。このまま上に
乗って襲いたいくらいだ。でも我慢する。その口で
僕に奉仕しておくれ」
 そういって僕はそそくさとズボンのベルトを外し
たのでした。
 「お、お願い…帰って」
 身を固く竦めたまま黙っていた義母の口から哀願
の声が小さく聞こえました。
 「あの教え子の看護師さん、可愛い顔してたね。
亜紀子は随分尊敬されているようだ。帰りにもう一
度よくお願いしてこようかな?」
 情欲の悪魔の心に陥った僕のふと思いついた卑猥
な機転の言葉でした。
 身を竦めたまま長く躊躇い続けていた義母の細い
手が、ゆっくりと僕の剥き出しになった股間に動い
てきました。
 まるで可愛い毛虫のような動きで、義母の身体が
おずおずと前に近づいてきました。
 頭を少し起こし加減にした義母の手の指と唇が、
同時に僕のものに触れました。
 一昨日の風雨の中の山小屋の時を僕は思い起こし
ていました。
 夜明けの日差しが差し込む小屋で、羞恥と戸惑い
の表情を一杯にして僕のものを咥え入れた義母の顔
を彷彿としていました。
 口の中に男のものを淫らに咥え入れるという行為
は、おそらく義母は初めてなのだろうと、あの時の
僕は思い込んでいました。
 しかし違っていたのです。
 少なくとも義母の夫ではない男のものを、彼女は
過去にしかも恍惚の表情まで見せて体験していたの
でした。
 それが昨夜のあの写真でした。
 今のところは、義母のその過去の経緯や状況は定
かにはわかってはいませんが、小学校の教頭職まで
長く聖職の場に身を置いて、清廉で生真面目一途と
思い込んでいた僕は心の中で、何か罪のない裏切り
にあったような思いで唖然茫然とするしかありませ
んでした。
 前屈みの姿勢で目を閉じて唇を大きく開いて、固
い屹立を咥え入れ、頭を前後に動かし続けている義
母の顔の前は、僕の股間の漆黒の茂みだけです。
 目を閉じたままの義母のその丹念さに、僕は奇妙
な違和感のようなものふとを抱きました。
 僕の興奮を早く昂めて、二人でいることから解放
されたいという思いに駆られているのだろうという
のは何気に理解できました。
 しかし山小屋で情欲に駆られた僕に強いられての
行為の時の、羞恥心一杯のつたなさとは少し違って
いるような気が少ししたのです。
 激しく欲情を漲らせそそり立っている僕のものを、
義母は今まるで娼婦のような艶かしい表情を露わに
して丹念な愛撫を繰り返しているのでした。
 僕が気づいていなかったどこかで、義母の身体と
心のどこかに、女としての官能の情欲に火が点いた
のだと思いました。
 僕のものへの口と舌での愛撫にも、予期していな
かった行為がありました。
 舌先で僕の屹立したものを根元から先端に向けて
妖しく舐め這わすようにしてきたり、先端に唇を当
て窄めるように吸いついてきたりしたのです。
 小さな驚きはさらにあり、義母の片手が僕の睾丸
を優しげに繰り返し撫で擦ってきていました。
 妻の由美にもされたことのない義母の淫靡過ぎる
愛撫の前に、やがて僕は急激に昂まりを早め、堪え
る間もなく彼女の口内に滾るような迸りを放出させ
たのでした。
 義母は激しい呻き声を幾度となく上げ続けながら、
僕からの夥しい放出液を、自らの喉の奥深くに音を
立てて飲み込んだのでした。
 僕から離れた義母の唇の端から、一筋の白い残り
液が伝いこぼれ落ちようとしていました。
 僕は義母に顔を近づけ、その部分に唇をつけ拭い
取るように舌を這わせていました。
 「お義母…いや、亜紀子。素敵だったよ」
 そういい残して身支度を直して、僕からまた背を
向けて布団を深く被っている義母の室からゆっくり
とした足取りで出ました。
 病院を出る時の廊下で、義母の教え子という看護
師と会ったので軽く会釈すると、彼女が明るく快活
な口調で、義母の退院が三日後ということを話して
くれました。
 外に出ると夜の冷たい空気と風が、僕のまだ火照
りの多少残る頬を心地よく撫で擦ってきました…。

        続く
38
2015/06/15 21:19:24    (mPi5Nwkk)
ワンダフル!!!
ボッキの連続です!
早く続きをお願いします。

妻の久里と読みながら萌えです。

39
投稿者:コウジ
2015/06/16 16:58:26    (0fev/9G7)
その夜、事前に遅くなりそうといっていた妻の由
美が帰宅したのは十一時過ぎでした。
 生徒の苛め問題で今学校が紛糾しているとかで、
疲労の色を濃くしての帰宅でした。
 しかしそんな妻には申し訳ないことでしたが、僕
は病院から持って帰った義母のまだ湿りの残ってい
た下着と、例の写真十数枚を居間のテーブルに置き
並べ、彼女が帰宅するまでの間、不埒で卑猥な妄想
の世界に浸りきっていたのでした。
 病院で義母の口の中に思うさま放出して絶頂を極
めて、まだ一、二時間も経過していないのに、僕の
下半身は興奮の兆しを顕著にしていたのでした。
 こんな状況に自分自身が陥るのは、これまでには
一度も経験のないことでした。
 由美と結婚して義母の亜紀子と同居するようにな
ってから、おそらくずっと叶うことはないと思って
いた清楚で清廉な義母への淡い思慕が、まるで大き
な津波のようにこの数日間で、図らずも現実化され
ているのは自分自身でも驚き以外の何ものでもあり
ませんでした。
 そして平凡で可もなく不可もない、ありきたりの
ごく普通の人間だと思っていた自分の心の中に、こ
れだけの悪魔的な嗜虐性が潜んでいるとはついぞ想
起していないことでした。
 居間のソファにどっかりと腰を下ろしながら、僕
は淫靡で邪淫な偏執狂のような思いで、義母のどこ
でいつ誰に撮られたのかまだ不明のままの淫らな写
真を食いつくように見ながら、片手にまだ湿りがし
っかりと残っている薄水色のシルクのショーツを握
り締めていました。
 白いシーツの上であられもない開脚状態で男を迎
え入れ、深い愉悦に浸りきっているかのような恍惚
の表情の義母の顔を僕は飽くことなく凝視しました。
 つんと尖った鼻先から上品に細く通った鼻筋、濃
い眉の下の切れ長の目の中で、濡れて光る黒真珠の
ような瞳。
 そして白過ぎる艶肌が、それほど濃く引いたわけ
でもない紅いルージュをさらに紅く際立たせて見せ
ています。
 いつの間にか僕の手はズボンのベルトを外し、忙
しなげにトランクスの中に潜り込んでいました。
 これまでの自分のどこにこんなにも旺盛な性欲が
潜んでいたのかと、心の中で驚きを大きくしていた
のですが、手は休むことなく動き僕の股間ですでに
固く屹立していたものを強く握り締めていたのでし
た。
 それこそ何年ぶりかの自慰行為でした。
 テーブルの上のティッシュボックスを引き寄せ、
義母から奪い取ったシルクのショーツを厭らしく
鼻腔に翳し、卑猥な写真を凝視しながら、僕は強
く握り締めた自らの屹立を激しく擦りつけ、やが
て低い咆哮の呻き声と共に果て終えたのでした。
 それは妻の由美が帰宅する一時間ほど前のこと
で、さすがに帰宅後の妻の顔は妙な後ろめたさも
あり正視できませんでした。
 次に僕が義母を訪ねたのは翌々日の夕刻でした。
 明日が退院ということなので、僕は妻の由美から
もいわれていたので担当医師に会い、病状の経過と
退院後の養生を一通り聞いた後で、義母のいる病室
に入りました。
 ノックもドアを開けると、義母は驚きと狼狽の表
情を露わにして、逃げるように視線を逸らしました。
 濃紺のパジャマ姿でベッドに座って、細い銀縁の
眼鏡をかけ何かの本を読んでいたようでしたが、僕
が近づくと慌てたような素振りで本を閉じて、背を
向けるようにして身を横たえました。
 「先生にね、退院後の養生を聞いてきたら、やっ
ぱりしばらくは松葉杖生活になるっていってたよ」
 不快感を露わにしたような義母の素振りを無視し
て、僕はつとめて明るい声でいいました。
 背中を向けて布団を深く被ったまま、義母は寡黙
を通していました。
 「聞いてると思うけど、由美は今夜もPTA総会が
あり遅くなるといってた。明日の退院の前に今日の
内に持って帰れるものは持ってきてほしいというこ
とだけど…」
 やはり義母からの応答はありませんでしたが、見
回すとベッドの下と横の棚あたりに、膨れたバッグ
や物を包んだビニール袋が整理されて置いてあるの
がわかりました。
 義母がつい今しがたまで読んでいた文庫本を見る
と、太宰治の短編集のようでした。
 棚に置かれていたその文庫本を手に取り所作なく
と頁を捲りながら、
 「亜紀子、こちらを向いてごらん」
 と僕は短く声をかけました。
 義母を覆った上布団が小さく震えるように動いて
いました。
 「亜紀子―」
 寡黙なままの義母に少し業を煮やしたような響き
で呼びかけると、間もなく布団が大きく動きました。
 義母がむっくりと上体を起こし、そばにあった毛
糸のカーディガンに静かに羽織りながらベッドに座
位の姿勢をとってきたのです。
 銀縁の眼鏡の奥の瞳が何か強く光り輝いているよ
うに見えました。
 「浩二さん―」
 か細い指を眼鏡の淵に当てながら、短くそういっ
た義母の凛とした強い響きのある声でした。
 「これまでのあなたとのことは、改めてはっきり
いいますけど、足を挫いて怪我をしてしまいあの一
夜を過ごしてしまったことは、私にも責任の一端が
あります。そのことはご迷惑をかけたあなたにお詫
びします」
 理性に満ち満ちた低く重みのある義母の声に、僕
は少し驚いた目で彼女を見据えました。
 「…私も恥ずかしい話ですが…男のあなたを強く
拒めずにきてしまったことを、とても今後悔してい
ます。娘の由美のことを思うと、死にたいくらいの
気持ちでいます。…あなたを、あなたを今責めるつ
もりはありません。…だから」
 そういって義母は一度言葉を切って、姿勢を僕に
正面向くように直して、
 「だから浩二さん、昨日までのことは私も全て忘
れます。忘れますから…あ、あなたもどうか」
 と息せき切ったような声でいって、両手を膝につ
き頭を深く下げてきたのでした。
 顔を上げて僕に強い視線を投げてきた義母の顔に
は、何ものも受け入れないという強固な意志のよう
なものが感じられ、さすがに僕もたじろぎを余儀な
くされたのです。
 「…これまでのあなたとのことは私も悪夢だった
と区切りをつけます。そして忘れます。だから、浩
二さんも」
 義母のあまりの強固な毅然さに、正直なところか
なりの驚きと衝撃を受け、たじろぎの気持ちになっ
た僕でしたが、その次に自分のとった行動は思いも
寄らないことだったのです。
 僕は背広の胸ポケットからゆっくりとした所作で、
黙ったままあるものを取り出し義母の前に置いたの
です。
 少し色褪せた、白い封筒でした。
 しばらくは訝しげな眼差しをしていた義母の顔が、
唐突に大きな驚きと激しい狼狽の入り混じったよう
な複雑な表情を露呈したのを見て、僕の心の中で邪
淫で淫靡な悪魔が冷酷非道な笑みを浮かべていたの
でした…。

      続く

40
投稿者:ポルコ
2015/06/18 07:24:42    (vmwFHFm6)
続きが気になり毎日チェックしています。
大変でしょうが、最後までよろしくお願いします。
41
投稿者:kkk
2015/06/18 09:25:52    (f/x3pIWZ)
あの写真をとうとう出してしまいましたか・・。
でも、次につながっていく可能性が感じられるし、期待します。
彼女には意志を曲げて貰って・・・
何か書いていて期待と、哀れを感じておかしな文になった。
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