2012/05/10 14:32:36
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翌日もトモは昼からやって来て、私に付き纏った。
リコとユウは今日は来ないらしい。
ホットドッグ用のキャベツを刻んだり、ウインナーを焼いたりと結構手伝ってくれる。
8時から打ち上げの飲み会があるので、一度下宿に帰る事にした。
トモが私の下宿に寄ってみたいと言うので、帰る方向も同じ事もあって承諾した。
私はバイクなので、近くのバス停で待ち合わせする事になった。
トモが出てから、10分ほどして後を追いかけた。
バス停からは、バイクを押して下宿まで歩いた。
二戸一棟の平屋が、二棟並んで建っている。
手前の平屋には、先輩が住んでいる。
奥の平屋が私の下宿だ。
隣には同級生が住んでいたが、この春には郷里から戻る事無く、今は空室になっていた。
鍵を開けトモを招き入れた。
小さなキッチンにバスとトイレ、奥は六畳 一間に二間の押し入れが付いている。
テーブル代わりの火燵にトモを座らせ、テレビをつけた。
二日間風呂に入ってないので、トモにことわってシャワーを浴びる。
髪をタオルで拭きながら出てくると、トモは大人しくテレビを見ていた。
「ここから私の家まで5分もかからないよ。また来ても良い?」
「そりゃ良いけど。」
「じゃ私帰るから。」
何しに来たのかと思う程、あっさりと帰って行った。
打ち上げの後学校で泊まり、翌朝から祭の片付けに追われた。
朝から晴れ渡り、少し動くだけで玉の汗が流れた。
昼前に下宿に戻ると、玄関の前で座り込んでいるトモが居た。
今日は、ピタッとしたTシャツにカーディガン、下は膝上のスカートにフリルの付いたソックス姿だ。
大事そうに紙袋を抱えて、肩に大きめのショルダーバックをかけている。
「お帰り~」
「どうしたの?」
「遊びに来た。」
どういう了見か図りかねた。
「大分待った?」
「30分くらい。」
「よく帰る時間が分かったな。」
「昨日テントで先輩が、11時解散て言ってたから。」
「お弁当作って来たんだ。お兄ちゃん食べる?」
「ありがたいな。腹ぺこだ。」
玄関を開けると、五月の陽気に熱せられた空気が押し流されて来る。
「ちゃんとお掃除してる?」
トモが下から睨む。
「まぁそれなりに…」
昨日は窓欄間を網戸にして、流しの換気扇を回していたので感じなかったが、今日は完全に閉めきっていたせいだろう。
「お兄ちゃんこれからシャワーでしよ。その間に掃除しとくから。」
「天気良いからお布団も干しましょ。」
一瞬ギクッとした。
「待て!布団はやばい。ちょっと待て。」
トモは私の顔色を見て、「お兄ちゃん、エッチな本でしょ。」と、睨む。
「まぁそんなところ。ちょっと向こう向いてて。」
急いで布団の下に隠しておいた雑誌を抜き取った。
とりあえず押し入れの段ボール箱に放り込んだ。
「もう良い?」
「OK大丈夫。」
こちらに向き直ったトモは、ニヤニヤと笑っていた。
シャワーを浴びて出てくると、トモはキッチンの掃除をしていた。
「お兄ちゃん、排水口綺麗にしないから臭うんだよ。」
「ごめんなさい。」
トモはケタケタと笑い、「今お茶入れるから、座って待ってて。」
まるで新妻の様に言う。
この状況はなんなんだろうと、回らない頭で考える。
夕べはほとんど寝ていない。
トモが湯呑みとコーヒーカップにお茶を入れ、テーブルまで運んで来た。
紙袋から弁当を出し、広げた。
おかずは、唐揚げにウインナーと卵焼きだ。
ご飯はお握りで、おかかと梅干し。
朝から一人で作ったらしい。
食べ終わると、睡魔が襲って来た。
トモに訳を話し、布団の無いベットに横になった。
トモはここで勉強して良いかと聞くので、良いよと答える。
何を考えているのか分からないが、準備して来ているのを見ると、最初からその気で来ているのだろう。
考えるのも億劫になり、私はすぐに眠りに落ちた。