2021/04/19 18:44:25
(QT2e2/gv)
俺はキョウコさんに連れられてタクシーに乗った。
『ごめんなさいね。変なお願いして。お礼はちゃんとします』
『いいよ。お礼なんて、もうご馳走になったし、あんな所キョウコさんに連れて行って貰わなかったら一生行けないよ。それにこうしてキョウコさんといられるだけで充分だよ』
俺は笑顔でキョウコさんの肩を抱いた。キョウコさんは身体を預けて俺の太腿に手を置いた。たちまちモノが反応しだした。キョウコさんはそれに気が付いたのか俺の顔を覗きこんで優しく微笑んだ。
『ちゃんと大人しくしててね』
俺の耳元でそう言って頬にキスをした。タクシーはすぐに目的地に着いた。歩いても来れるような距離だったが、こういう小さな出来事のひとつ、ひとつで俺とは住む世界が違う人だと改めて思った。タクシーから降りて目の前の雑居ビルにキョウコさんの後から入った。色々な店の看板が壁に並んでいるが、入り口は狭く暗い感じで怪しげな雰囲気だった。このビルの5階のスナックの周年記念パーティーに一緒に行って欲しいと頼まれたのだ。この店のママには昔から世話になっていて、是非尋ねたいと思っていたが、女一人で行くとしつこく絡んでくる常連客の男が煩わしくて躊躇していたが、連れがいれば必要以上に絡んでくる事もないだろうという事らしい。会社の人間や夫には知られたくない場所で他に頼める相手もなく俺に電話してきたとの事だった。
『キョウコさんに変なちょっかい出す奴は俺が許さない。ちゃんと守るから安心して』
『フフフッ。ありがとう。でも大人しくしてね。お店にとっては大事な常連様だからトラブルは困るの。ケンちゃんは一緒に居てくれるだけで良いのよ』
『わかりました。大人しく守ります』
俺はおどけて敬礼して見せた。エレベーターが開くと店の前には祝いの札が付いた生花が沢山並んでいて賑やかな音楽や笑い声が扉の外まで漏れ聞こえていた。店の扉が開いて中から50代ぐらいのスーツ姿の男性と着物姿の女性が出てきた。
『ママ、ここでいいよ。また来るから』
『ありがとうございました。またお待ちしてます』
50代前半だろうか、着物だと年齢もスタイルも分かりづらくなるが、茶色の髪をアップにまとめたかなりの美人で、芸能人に例えるなら真矢みきに似ていた。こんな美人ママなら店は流行るだろう。俺たちと入れ替えにエレベーターに乗った客に深くお辞儀をして見送って、こちらに振り返り
『キョウコちゃん!ありがとう、きてくれたのね!うれしいわ、さあ入って』
『おめでとうございます。今日は一人じゃないのよ』
すれ違う為に生花の影に立っていた俺を引っ張り出してママの目の前に立たした。ママは俺の顔を見るなりハッとして、キョウコさんと俺の顔を交互に見ながら
『あ、あなた…』
と何か言いかけたが、キョウコさんが
『私が若い男と一緒だから驚いた?さあ入りましょう』
と言って店の中に俺の手を引いて入った。