「そうかぁ。グラビアもやってくれるかぁ」

袴田はニタァと笑い、何かを思い出すような素振りをした後、

「ちょっと待ってろ」

一度撮影スタジオから一人出て、数分経って戻って来た時には何か布切れのようなものを持っている。

「グラビア用の営業用写真も撮ってやる。今からそれ着てみろ。一旦外出といてやるから、着替え終わったら呼べ」


そう言い残すとカメラを室内に置いてタバコと共に外に出た。
雪菜が握らされたのは、面積の極めて小さいマイクロビキニで、下も細いTバックになっている。

立っての宣材撮影はトントン拍子に終わり、

「じゃあ今度は営業用の写真も撮るぞ」

ソファーに座ってやベッドに寝転んだりと、色々なポーズを決める。
ベッドに寝転ぶと、まだ幼さも残る雪菜の顔立ちに似合わないG乳が目立ってしまう。
袴田は乳を中心にして撮影しながら問いかける。

「水着とか下着のグラビアの話なんて来たらどうするんだ？断るか？」

地下アイドルになってから露出のある仕事は一切なかったが、いざあるかもしれないと言われると迷いもある。
でもそこからブレイクする芸能人がいるのも確かだし、売れるためであればと、、、

｢韓国…？｣

インスタに確認すると3人のメンバーが韓国旅行を楽しんでいる写真がアップされていて、少し寂しさを感じながらも楽しそうな3人の笑顔に僅かに頬を緩ませ。

｢え？…あ、はい。｣

聞こえた言葉に首を傾げるも撮影をすると言う言葉に頷いて袴田の後に着いてスタジオに向かい。
いくつかの衣装に着替えながら言われるまま表情やポーズを取りながら写真を撮られていき。

｢ありがとうございます｣

褒められた事に嬉しげな笑みを浮かべつつシャッター音が響く中、様々なポーズを取り。

「おう、入れ」

袴田は自席でスマホを見ていた。
SNSを見ているらしい。

「おぅ、アイツらもう韓国かぁ」

なんのことだかわからない雪菜だが、他のメンバーがあげているインスタのストーリーを見ると、雪菜を除く3人で解散お疲れ会として韓国旅行に行っているようだった。
誘われずに他のメンバーだけで行っていることも少しショックだが

「まぁお前は解散してすぐ仕事があるからって俺が言っておいたし。何よりお前は行く必要はないしな」

後半はなんのことを言っているかわからなかったが、他のメンバーが楽しそうなら何よりである。
実際はAV転向のための整形旅行に行かされているだけなのだが。



「まぁ早速やっていくか」

夜遅めの事務所には社員はもうおらず、袴田が1人。
机の上にある一眼レフを袴田が手に取ると2人で役員室を出た。

若い頃カメラマンの経験がある袴田は宣材写真を撮ることができ、シーズンズの宣材写真も袴田だ撮っていた。なので今回2人きりなことに違和感はない。
2人は階段を上がり、ステージと同じフロアにある撮影スタジオに来た。

真っ白な壁の面と、その逆側にはソファーやベッドが置かれている。

「じゃあ始めるか」

ヘアセットやメイクは自分で納得のいくものをやってきたので、アイドルっぽい衣装から清楚な衣装、少し大人っぽい衣装と何百枚も撮っていく。
人気がなかったとはいえ1年アイドルを続けてきた雪菜も表情の作り方はうまく。

「おぉ、いいじゃないか。」

袴田が頷いた事にホッとしたように息を吐くと今後のスケジュールに関して頷いてみせ。

｢分かりました…。来週の最後の舞台頑張ります…。再来週も開けておきます。…失礼します｣

頭を下げて事務所を出るとトボトボと自宅に向かい。

最後のステージをやり終えてメンバーと今後の活動への激励をし合ってから別れ。

翌週の水曜日、指定された時間に1人で劇場のステージに向かい。

｢ユキです…失礼します｣

事務所の扉をノックして室内に入り。

袴田は表情を変えることなくコクリと頷いた。

「他のメンバーには明日にでも伝えていく。劇場での公演はチケットが出ている来週末が最後だ。それまではシーズンズとしてきっちりやってもらうからな」

雪菜はシーズンズとしての最後の活動を完遂したいという思いからしっかりと袴田に返事をした。

「で、最後の公演が終わったらお前のソロとしての宣材撮影するから。再来週の水曜空けておけ」


そうして袴田は雪菜を帰らせた。



雪菜が帰ってから、、、

トゥルルルルル…

「あ、社長。袴田です。雪菜のやつ、ソロ了承しました。エロいカラダしてるんで、エロ売りしましょう。あとのやつは普通に売ってもダメなんで、整形と豊胸させてAV出しますわ。それくらいの先行投資はいいですよね？断ったら？タレントのマネージャーとして雇いましょう。元アイドルの性接待要員として。ハハハハハ！！」




そしてシーズンズは最後まで公演まで走り切り、数少ないファンに惜しまれながら解散した。

｢っ…それは…っ｣

新しくオーディションをする、という言葉とオーディションメンバーに勝てるかという言葉に断言出来るだけの自信はなく口を閉ざしてしまい。


｢本当…にみんなにも、ちゃんと仕事ある、んですよね……｣

袴田の言葉に少し悩んだ後に確認するように尋ね、肯定の返事が帰ってきたことを確認してから小さく頷き。

｢分かり…ました…｣

雪菜が抵抗すると袴田は「まぁそう来るよな」と思い苦笑いで、

「なぁに。アイツらを切るわけじゃない。アイツらに会った新しい仕事も用意してある。今のままグループをやっていくよりみんな幸せだろう」

そう言われると雪菜もグッと何も言えなくなり、

「グループアイドルもギャンブルみたいなもんだからな。この劇場を使う新しいグループのオーディションもやろうと話が出ている。新しいヤツらとシーズンズと比べて、そいつらより売れると断言できるか？負けたら全員仕事なくなるぞ？」

もはやぐぅの音も出ないほど逃げ道を塞がれているようである。

確かにこの事務所で過去に劇場で公演をしていたグループアイドルから、そこそこのタレントになっていっている先輩はいて、雪菜もそれに憧れていることもある。

「全員次の仕事があるなら」「自分がもっと売れるなら」と自分に言い聞かせるように解散を受け入れるしかなかった。

｢それは…その…｣

いつも通りパッとしない客席で辛うじて物販でギリギリ黒字になるかどうかという売上しかないため申し訳なさそうに俯き。次いだ言葉に眼を大きく見開き。

｢そんな…っ！みんな頑張ってるのに、解散なんて…っ｣

必死に言い縋ろうとするが次いだ台詞に視線を彷徨わせ。

｢そんな…っ、でも…みんなで頑張って来たのに…っ。わ、私、もっと頑張りますから解散だけは…お願いします…っ！｣

何とか解散を撤回してもらおうと頭を下げ。

｢｣