「…っ、な、っ、う、嘘…っ!そんな、そんなわけ…っ!!」大規模テロの主犯格として、ユウナ達の名前が挙げられる。先日のテロ行為は警察署に時限式の爆弾を仕掛け、爆発の混乱に乗じて地方貴族邸を襲撃、一族を殺し、獣人奴隷を救うというもの。明らかな敵意、殺意がこもったものであり、ユウナ達が主犯格とは到底思えなかった。思わず席を立ち上がりそうになるが、監視役の看守に押さえつけられる。嘘、であってほしいが、数枚の写真には武装したミナト達も映っており、その眼は殺伐としていた。屋敷で「リズベット様」と慕ってくれていた彼女達とはかけ離れていた。「破門…、私が…。…はぁっ、はぁっ、はあ…っ!!」ショックが治らないまま、破門状も差し出される。コーナー家の印章も押されてあり、一目で正式なものであることがわかった。自分が煙たがられていたことは知っているし、厄介者として扱われていた事も知っている。しかし、破門は完全に縁を切り、関わりを断つ事。捨てられたも同義なうえ、(これでは、コーナー家は私の国家反逆を認めたことになる…。お父様…、どうして…。どうして…っ!!)逮捕による破門は、コーナー家がリズベットの罪を認めたことを意味する。王家の血筋を継承するコーナー家の判断は、裁判では何よりも強い効力を放つはず。元使用人達の蛮行、両親から見捨てられたという事実。あまりのショックに呼吸が難しく、過呼吸を起こしてしまう。しかし、特に治療されることもなく、無理やり立たされ、引きずられるように牢に戻される。手枷に腰縄をつけられたまま、投げるように中に押し込まれた。「国家転覆などと馬鹿げたことをしていないことはお父様達は知っているはず…。なのに…」過呼吸がやっと治り、ぼーっと暗い天井を見上げながら呟く。獣人愛が強いだけで、攻撃的な思想はなく、むしろそういったものには批判的な立場。それは両親もよくわかっているはずだった。(きっと、いい機会だと思われたんだわ…。)リズベットが獣人保護活動を行えたのも、コーナー家の後ろ盾があるからこそ。破門により、リズベットは孤立してしまった。「明日裁判と言っていたわ…。力、付けないと…。」逮捕から間を与えない裁判スケジュール。弁護の主力はアオトであるが、このスケジュールでは準備もまともにできないはず。食欲は全くないが、つけられたままの腰縄のせいで、腕が胸へそより上に上がらず、スプーンで掬っても口まで運べない。「ああ…っ、もう…っ!無罪になって、ヨル達を迎えに行くんだから…っ!」リズベットが有罪ならば、獣人達の所有権は消失する。彼女達のためにも無罪になる必要がある。スプーンをおき、床に這いつくばってスープを啜り舐めた。絶対に負けない、そう強い意志を燃やしながら。(ぁ、ちょっと、もう…限界かも…。)スープを舐め終え、パンを口だけで食べた後、我慢していたものが催してくる。強いショックや緊張を味わったせいで尿意があったが、剥き出しの便器にする気もなれず、我慢してしまっていた。「ぅ、ん…、仕方ないわ…。誰もいない…し、今のうちにしちゃおう…。」格子の外をチラッと見て、看守がいないことを確認し、ズボンを手をかける。「あ、あれ…っ、あっ、手枷邪魔…っ。ぅ、ク…っ!ぅ、ん…っ、きゃあッ!!」手枷は木製で、大袈裟に大きく作られており、ズボンをなかなか掴めない。そのうえ腰縄で動きも制限されている。試行錯誤しているうち、床で犬食いしてこぼしたスープを踏んでしまい、滑って大きく転んでしまう。
...省略されました。