重たい拘束具を身につけた上、湿度の高い牢獄、質の悪いベッド。なかなか眠りにつけなかったが、ようやく夢の世界に堕ちていった。深い眠りの中で、屋敷での思い出の夢を見た。ーーーーーーーーーーーーー「ウチら獣人ってなんなんだよ…、リズベット…。」リズベット邸では幼年向け、青年向けにそれぞれ授業が行われていた。幼年向けには文字の読み書き、一般常識の授業を。青年向けにはそれに加えて、歴史や社会情勢、計算などの初等教育も行っていた。歴史、社会情勢についての本日の授業を終えたリズベットに声をかけたのは使用人になって一ヶ月も経たない、新人の猫人ユウナだった。獣人に向けられた差別や迫害。貴族による獣人狩りにより絶滅した獣人種もいるという内容を優しく噛み砕いた授業だったが、当事者のユウナにとってはショッキングな内容だった。都市部に住むことを許されず、郊外の山間部にひっそり住んでいたユウナの部族。獣人における人権制限法により、ユウナらは捕獲され、抵抗したユウナは顔に横一文字に大きな傷を負った。顔の大きな傷により商品価値を落としたことで、低級奴隷となったユウナだったが、それでも端正な顔立ちから、本当であれば嫁いで幸せな日々を過ごしていたはず。「獣人ってだけで、どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだよっ!そんなに人って偉いのかよ…っ」歯を食いしばり、悔しさを滲ませて吐き捨てる。「近しい存在を怖がって遠ざけようとして、人は臆病になっているだけなの…。でもね、きっと分かり合える。綺麗事かもしれないけれど、私たちみたいに家族になれるわ…。」授業の時だけかける眼鏡を机に置き、強く抱きしめた。警戒心が強く、人に対して強い憎しみを持つユウナは身を固くしていたが、いずれ心を開いてくれると信じて…。ーーーーーーーーーーーーーーーミナト「リ、リ…、リズベット様…。お話があって…。」「あら、四人揃ってどうしたの?」ユウナ、レノン、ミナト、スズナの四人がリズベットの私室を訪ねた。四人はリズベットの元に同時期に来たということもあり、仲が良かった。特にユウナは反抗的、犬人のミナトは見世物小屋に飼われていたこともあって塞ぎ込みがちであり、友人ができた様子に安心していた。ミナト「その、あの…えっと、…、その…。」ユウナ「ウチらさ…、家族のところに帰りたい…。リズベット様に恩を返し続けたい気持ちもあるんだけど…、でもやっぱり…。」言いにくそうにモジモジしているミナトを見兼ね、ユウナが口を開いた。リズベット「ええ、いいわ。故郷に返すとなると、所有権の移転とかはできないから、コッソリね。四人とも慣れてきたところだったから、正直寂しいわ」レノン「い、いいの…?えっと、私たちすごく我儘を言っていると思うんだけど…。」即答で許可をくれたリズベットにたじろぐ四人。手厚く保護し、衣食住を確保してくれた主に対し、失礼なことだとも分かっていたから。リズベット「我儘なんてことないわよ。この屋敷は貴女達を縛る場所じゃないの。待っている家族がいるなら、そこに帰るべきよ。ここはその準備するための場所だから…。」スズナ「…ありがとうございます、リズベット様。……リズベット様みたいな方だけなら、世界は平和なのに…。」四人のめでたい門出ということで、豪勢な夕食を用意し、早朝に彼女達は旅立った。故郷に無事に着くことを祈り続けたリズベットだが、彼女達の向かった先は獣人ゲリラの根城だった…。【以下、ちょっとしたキャラ設定です。そこまで必要かわかりませんが、イメージ的な…。ユウナ 猫人低級奴隷上がり。安価で取引され続け、身体は傷だらけ。
...省略されました。