イメプレ

《鈴香さんの地域が天気が悪い？お出掛けの予定でしたか？退院したばかりだから静かにお家で過ごしてるのかな？》

同じ家にいるが初めて一人になってる鈴香が気にはなるが、見たいのを我慢して部屋に籠って。

（何でも音痴な鈴だけど、クッキーとかお菓子を作ってる時には驚異的だから。普段は温めも苦手なくせにオーブンレンジは使いこなすから。）

その辺りの事は未だに理解出来ずにいた。そんな時にキッチンから、トン、トン、トンと聞き慣れない音が聞こえてきて。

そっとキッチンの様子を覗きに行くと鈴香が跳び跳ねながら生地を捏ねてる姿。

（やっぱり謎、不思議ちゃんだ、低いテーブルでやれば良いのに。）

などと思いながらも一生懸命な鈴香に声を掛けないまま自室へ戻った。

＜鈴の地域はお天気悪いです。
お出かけ予定だったけど、お家にいることにしようかなぁ＞


（恭どれくらいたべるかなぁー）

ぴょんぴょん跳ねるのはやめ、
クッキーを一生懸命型抜きしてクッキングシートに
クッキーを並べていく。

どれぐらい作ればいいか考えたが、答えはわからない。
しかしクッキーなので悪くはそうそうならないだろうと、
小ぶりのクッキーを５０個を目指して作っていくことにした。

《そうだったんですね。出掛けないで済むなら、家でのんびりまったり過ごした方が良いかもしれませんよ。倒れたら困るし。》

しばらく続いたトン、トンと跳ねる音が途切れた。

（型抜きかな？鈴は何個位作るのかな？まあ若い奴らも出勤してるから多かったら持たせれば良いかな。）

作り始めたら夢中で二人だけで食べられるとかではなく、たくさん作るのが鈴香。でも美味でついつい食べたくなるクッキー。

目を通す書類には鈴香達を苦しめたグループの物が混ざっていた。それらの処理で来月からは忙しくなりそうだ。

＜お出かけついでにプリンを買おうと思ってたけど、
んー恭平さんがそういうなら、
いい子にお家にいようかなぁ…＞


（あれっ？）

５０個のはずが、明らかにそれより一杯ある。
初めての型だから？
いや、昔から鈴香は多く作りすぎてしまう傾向にあった。

結果的には全部好評のままなくなるのだが。


あひるのクッキーは一つだけ、シルエットでなく、目を付ける。


「よいしょ」

クッキーを並べた鈴香が持つ鉄板を持ち上げて
何とかオーブンに入れる。

ボタンがいっぱいのオーブン。
おっかなびっくり押してはキャンセルして
んーと悩んでいる。

《天気が悪いのは台風の影響かな？風が強かったりとか蒸し暑かったりだと急に体調を崩したりするから。プリン、リアル近所なら届けてあげられるのに残念です。》

書類を一通り確認して案件毎にまとめると、封筒に入れてディスクに置いて。キッチンの方から聞こえる音に耳を澄ませた。

ピッ、ピピッ、 ピッ、ピピッ

（どうやら苦戦しているみたいだけど、呼ぶまで待ってないと、「一人で出来るもん！」って怒るからなぁ。）

お菓子作りは鈴香の絶対領域だから最低限の手助け以外は怒る原因だった。