その前夜、私はご主人さまと、ある宿坊に泊まっていました。 一晩中、ご主人さまの玉入りに調教され、身体の奥までその刺激を覚え込まされた翌朝。 私には、もう一つ予定がありました。 初めての「貸し出し」です。 宿坊をチェックアウトする前、ご主人さまは私の身体を麻縄で縛りました。 その上から服を着る。 鏡に映っているのは、いつもの私でした。 でも服の下では、麻縄が身体を締めつけています。 そして、このあと私はその姿のまま、ご主人さまが用意した男性に渡される。 ご主人さまからは以前から言われていました。 貸し出されたときは、普通の恋人のように振る舞うのではない。 「貸し出し用の肉便器になれ」 その言葉を聞いたときは、あまりにも露骨で、恥ずかしくて、自分が本当にそんな女になれるとは思っていませんでした。 けれど、その日は違いました。 もう空想ではありません。 待ち合わせは、ごく普通のカフェでした。 周囲にはコーヒーを飲む人たちがいて、何気ない日常が流れています。 その中で私は、ご主人さまと貸し出し相手の男性を前に座っていました。 誰も知らない。 私の服の下が麻縄で縛られていることも。 このあと、目の前にいる男性に貸し出されることも。 顔合わせが終わると、私はその男性の車に乗せられました。 ドアが閉まり、車が走り出す。 ご主人さまは、もういません。 知らない男性と二人だけになった瞬間、 「ああ、本当に私は貸し出されたんだ」 という実感が込み上げてきました。 怖さもありました。 けれど、それ以上に、これまで空想の中にしかなかったことが現実になっていくことに興奮していました。 ホテルへ入り、二人きりになりました。 服を脱いでも、宿坊でご主人さまに縛られた麻縄は、そのまま身体に残っています。 その縄を解かないまま、私は貸し出し相手の男性の前にいました。 そして私は、麻縄で縛られた姿のまま、その男性のペニスを咥えました。 ご主人さまが縛った身体で、ご主人さまではない男性を咥えている。 その事実が、私にはたまらなく背徳的でした。 「私はいま、本当に貸し出されている」 そう意識するほど、興奮していく自分がいました。 大学時代から何度も読んだ『O嬢物語』。 そこに描かれていた「他の男へ委ねられる女」という世界が、もう本の中の出来事ではなくなっていました。 やがて私は、その男性を身体でも受け入れました。 前夜まで、ご主人さまの玉入りの刺激を身体に刻まれていた私。 その身体の中へ、今度は別の男が入ってくる。 いつもの玉の凹凸とは違う感触。 けれど深く入って奥を突かれた瞬間、思わず声が漏れました。 ご主人さまの奴隷なのに。 別の男に抱かれているのに。 私は感じている。 その背徳感が強くなるほど、身体は逆に興奮していきました。 そして、その日の貸し出しには、私が知らなかったもう一つのことがありました。 ご主人さまは、貸し出し相手の男性に事前に、 「ゴムはつけなくていい」 と伝えていたのです。 最後は避妊具を使わず、その男性に中出しされました。 その瞬間、ご主人さまから言われていた言葉が、頭の中に浮かびました。 「貸し出し用の肉便器になれ」 命令として聞いていたときには、どこか現実感のない言葉でした。 けれど今、自分はご主人さまが選んだ男に貸し出され、その命令通りの扱いを受けている。 言葉だったものが、現実になってしまった。 その事実に、私は強烈な背徳感を覚えました。 帰り道。 私はまた服を着ています。 麻縄も、そこで起きたことも、外からは何一つ見えません。 電車に乗れば、どこから見ても普通のOLです。 周囲の人たちは誰も知らない。 ほんの少し前まで、ご主人さまに命じられた「貸し出し用の肉便器」として、知らない男に委ねられていたことを。 そして何より、自分でも驚いたのは―― それで終わりにしたいとは思わなかったことでした。 恥ずかしかった。 背徳感もありました。 それなのに、心のどこかでは、もう次を期待していました。 「次は、どんな男に貸し出されるのだろう」 「今度は、どんなふうに命令されるのだろう」 ご主人さまから「肉便器になれ」と命令され、 その言葉が現実になった日。 私は初めて知りました。 自分が憧れていたのは、ただ『O嬢物語』のような世界を眺めることではなかったのだと。 自分自身が、その世界の女になることだったのだと。 一度きりのつもりだった貸し出し。 けれど、その日を境に私は、 次に貸し出される日を待つ女になっていました。続く・・・