ようこそゲストさん。
ナンネットIDにログインしていません。
ID: PASS:
IDを保存 
ナンネットIDは完全無料のサービスです。ナンネットIDを取得するとナンネットの様々なサービスをご利用いただけます。
新規登録はこちら
ID・パスワードの再発行はこちら
祖母・昭子 その後
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:SM・調教 官能小説   
投稿の削除 パスワード:
1:祖母・昭子 その後
投稿者: 雄一
「凄い人ね…」
 「だから近場の神社でいいといったのに」
 「いいじゃない。あなたも私も東京っ子なのに、日本一の明治神宮に一度もお参りして
ないんだから。それに…」
 「え?何だって?」
 「来年の雄ちゃんに栄光がありますように」
 「栄光って?」
 「東大の入学試験に合格しますようにって、日本一の神様にお願いするの」
 「あ、あれはだな…ものの弾みでいっただけで…」
 「だめっ。指切りして約束したんだから」
 明治神宮の入り口から御社殿までの参道は、大晦日のこの夜、当然のように人、人、人
でごった返していた。
 紀子に無理矢理誘われて、僕は彼女が言うように、まだ一度も来たことのない明治神宮
に来ていた。
 一ヶ月ほど前、奥多摩の祖母の家で、初めて紀子を抱いた時、その後の寝物語で、
 「俺、まだ将来の夢なんて何もないんだけど、何かのテッペンに立ってみたいから、東
大でも狙ってみようかな?」
 と何の脈絡も、勿論、見込みもなしに、ぼそっと言ってしまったことを、紀子のほうが
真に受けてしまって、喜色満面の笑顔で僕に抱きついてきたことを、大晦日のこの日まで
引き摺ってきているのだ。
 後で、冗談だよ、と何度も訂正と取り消しの言葉を言ったのだが、紀子はまるで聞く耳
を持とうとしなかった。 
 今夜のここへの参拝をいい出したのも紀子で、まるで大奥のお局にでもなったように、
僕に自宅まで迎えに来させ、人で混雑するに決まってる大晦日の、中央線から山手線の電
車内でも、人混みと痴漢から自分を守れと言ってきたり、言いたい放題、したい放題の有
様だった。
 自惚れていうのではないが、紀子をほんとの女性にしてやったのは僕のほうで、もう少
ししおらしくなるのかと思っていたら、真逆の結果になってしまっていて、人生経験のま
だ浅い僕は、女ってわからん、と思うしかなかった。
 それにしても、この人の多さはまるで東京中の人が全部集まってきているような喧噪さ
で、僕は早く退散したい思いで一杯だったが、紀子のほうは僕の片腕を両手で痛いくらい
に掴み取ってきていて、
 「お前、そんなにくっついてくるなよ」
 とぼやきながら僕がいうと、
 「恋人同士だからいいじゃん」
 と悪戯っぽく白い歯を見せて笑ってくるだけだった。
 少し前にあった紀子の両親の離婚問題も、不倫騒動を起こした父親のほうの全面的謝罪
を母親が、娘のためにと渋々ながら許諾したことで、元の鞘に戻ったようで、その頃は半
泣き状態だった紀子も、生来の小煩い小娘に完全復活していた。
 紀子との東北への一泊旅行も滞りなく済ませていて、仙台のシテイホテルで、僕は彼女
とベッドを共にしていた。
 僕の祖母のように、長い人生を経験を踏まえた官能的な深さは無論なかったが、清流の
川で弾け泳ぐ若鮎のように清々しさに、他の女性の時にはないような感動にまたしても取
り込まれ、早々の撃沈に陥っていた。
 ひたすら陸上競技に打ち込んできている、紀子自身は自分の躍動的な身体の特性にはま
だ気づいてはいないようで、
 「私たちってまだ十六なのに、こんなことばかりしてたら、不純異性交遊か淫行罪で逮
捕されない?」
 などと無邪気な顔をして言ってきたりするのだ。
 押し競饅頭のような身動きできない人混みの中で、紀子は最後まで僕の腕を、両手で強
く掴み取ったまま、どうにか本殿の参拝所の前に辿り着き、僕は型通り五円玉を、紀子は
と見ると、硬貨で一番大きい五百円玉を惜しげもなく投入していた。
 騒然とした人の群れの声と熱気の中で、
 「これ、私からの雄ちゃんへの投資だからね。これから受験勉強頑張ってね」
 と横の何人かが振り返るような、大きな声を張り上げて言ってきた。
 そう言われても、半分は口から出まかせで出た言葉だし、僕には自信の欠片すらなかっ
たので、曖昧な笑顔を見せて曖昧に頷いてやるしかなかった。
 大鳥居を抜けようやく境内の外に出ても、駅のほうから歩いてくる人の波は引きも切ら
なかったが、僕はそこで奥多摩の祖母の顔を、はたと思い出した。
 毎年のことだが、大晦日の新年のカウントダウン前後には、いつも祖母に電話をするの
が僕の慣例になっていた。
 スマホで時刻を見ると、零時に七分前だった。
 「婆ちゃんに電話したい」
 まだ僕の腕から手を放さずにいる、紀子に独り言のように言って周囲を見廻したが、ど
こも蟻の群れのような人だかりで、静寂なスポットなどどこにもあるわけがなかった。
 かまわずに、スマホの画面に祖母の番号を出し、発信ボタンを押すと、やはり一回のコ
ールで祖母が出た。
 「雄ちゃん…」 
 周囲の喧騒の中でも、祖母のもう泣き出しそうな声が、はっきりと聞こえた。
 「婆ちゃん、今、明治神宮に来てる」
 片方の耳を抑えて、僕も精一杯声を張り上げて祖母に言った。
 横にいる紀子と初めて契りを交わした翌日に、雑貨屋の前の無人駅で言葉を交わして以
来、長い間、会ってはいない、祖母の色白で小さな顔が僕の脳裏に、懐かしくそして妙に
物悲しげに浮かんだ。
 あの時は紀子も一緒だった。
 二人はともに笑顔で言葉を交わしてはいたが、十六と六十代の女同士の瞬時の視線の交
錯に、鈍感な僕でも気づくくらいの、小さな火花のようなものが散っていたのを思い出し、
僕は思わず目を瞬かせた。
 若い紀子はともかくも、年齢を重ねている祖母の女の勘は鋭い。
 僕ら二人を駅で見送り、帰宅した祖母はきっと何かを嗅ぎ取るような、そんな気が僕は
していた。
 狭い歩道を歩く人だかりの中で、カウントダウンを叫ぶ声が合唱のように聞こえてきた。
 「婆ちゃん、おめでとう!」
 零時になった時、僕はありったけの声でスマホに口を寄せて叫び、横にいる紀子に目を
向けた。
 紀子の少し大人ぶって化粧した、艶やかな顔がいきなり僕の顔の前に近づいてきて、周
囲の人だかりを気にもせず、大胆にも唇に唇を強く押し当ててきた。
 耳に当てたスマホから、祖母のおめでとうの声がどうにか聞こえたが、紀子の思いがけ
ない行動に、僕の気持ちは完全に奪われていた。
 僕のマフラーの上に手を廻してきて、重なった唇は十秒近く離れなかった。
 唇が離れてすぐに、
 「冬休みの終わりに、また行くね」
 と祖母に声を張り上げて言って、僕はスマホのオフボタンを、慌てた素振りで押して、
改めて紀子の顔を見た。
 「おめでとう。これ私の新年のサービス。…それと」
 「何…?」
 「あなたのお婆ちゃんへの、小さなジェラシー」
 歩道の雑多な流れの一部を止めるように、紀子は少し上気した顔で、僕を本気とも冗
談ともつかぬ顔で見つめてきていた。
 祖母とのことについては、紀子には絶対に話せない、大きな秘密を抱えている僕は背
筋を少しヒヤリとさせながら、それでも普通の顔で彼女の目を見返した。
 「年越し蕎麦食べよ」
 紀子は明るい声でそう言って、まだまだ人通りの絶えない歩道を、原宿のほうに向か
って歩き出した。
 腕はしっかりと紀子の手で掴まれたままだった。
 若者の街といわれる原宿は、普段の平日でも夜の更けるのは、遅いのが当たり前なの
だが、大晦日のこの夜は、まさに老若男女を問わない人混みで、雑多なネオンも煌々と
していて、元旦の日の出まで、この喧噪は続けっ放しになるのではないかと思えるくら
いの賑やかさだった。
 僕にミノムシのように、しっかりとくっついている紀子からの声も聞き取りにくく、
こちらも大声を出さないと、会話が成り立たない。
 芋洗いの芋になって歩きながら、僕は虫と蛙の鳴き声しか聞こえない、、奥多摩の静
寂の夜をふいに思い出していた。
 綿入れを着込んで、蜜柑の置かれた炬燵の前で、一人静かにテレビの紅白歌合戦を見
入っている、祖母の小さな顔が、僕の目の奥のほうに続いて浮かび出てきて、この冬休
みの最後には、絶対に奥多摩へ行こうと、横の紀子には内緒で、そう決心した。
 
 この二日前の、二十九日の午後、僕は国語教師の沢村俶子の住むマンションにいた。
 前日の夜、高校教師で三十五歳の俶子から、生徒で十六歳の僕に、相談事があるので、
昼前に自宅に来て欲しいとのメールが入っていたのだ。
 (美味しいビーフシチューご馳走するから、明日のお昼前に来て)
 これまでにこのビーフシチューの誘いで、何回のに肉体労働を見返りに強いられてき
たか憶えてないが、続いてのメール送信で、私の結婚のことで…と書かれていたので、
僕は「りょ」と返信して、今、俶子の家のリビングに座っていた。
 「お話は食べてから」
 そういって、俶子はデミグラスソースのいい匂いのする、ビーフシチューと野菜サラ
ダの盛り合わせを目の前に置いてくれた。
 年明けの月末に、俶子は隣の市で同じ教師をしている五つ年下の男性と、晴れて華燭
の典を挙げるのだ。
 そのことは前から知らされていて、僕はこれまでの二人の関係を抜きにして、心から
の祝いの言葉を言って祝福していた。
 「私が高校の時の教頭先生の紹介で、昔風のお見合いみたいな場からお付き合いした
んだけど、高校では化学を教えている人で、真面目一筋で、誰かさんみたいな戸っぽい
面が一つもなくて…面白味には欠けるけど、私もそうそう贅沢言える顔でも年齢でもな
いし、この辺が年貢の治め時かなって思って、プロポーズ受けちゃったの」
 口ではそういいながら、眼鏡の奥の目を艶っぽく緩めたりして、僕に話していたのは、
ついまだ最近のことだった。
 「よかったじゃないですか。先生が幸せになってくれたら僕も嬉しい」
 いつもと違う丁寧語で、僕は俶子に祝福の言葉を送った。
 二人のこれまでの関係は、これで自然消滅ということになるのだったが、僕のほうに
は何の拘りも未練がましい思いもなかったので、
 「明日からは、沢村先生と一生徒に戻って、学校では仲良くしましょ」
 といってやると、俶子は目から涙をぼろぼろと零して、
 「そんなに明るくいわれると、逆にすごく寂しくなるじゃない」
 といって眼鏡を外して、ハンカチで目を拭ってきた。
 その俶子からの誘いが、目の間前のビーフシチューだったのだが、何故かあの時のよ
うな、恥ずかしながらも嬉しそうだった表情ではないようだったので、
 「何かあった?」
 と目ざとく僕は尋ねた。
 俶子の驚きの告白を聞くまで、多少の時間を要したが、話を聞いた僕も暫くは返答の
しようがなかった。
 結婚相手が今になってどうこうというのではなく、相手の父親の実の弟の顔を見て、
俶子は愕然としたというのだった。
 俶子が大学を出て高校の国語教師として、最初に赴任した高校の先輩教師と、何かの
教育セミナーで県外へ一泊二日で出かけた時、新人の彼女に優しく接してくれ、それが
きっかけで男女の関係に陥ったのが、今度結婚することになった相手の叔父になる人物
だったのだ。
 叔父という男は、俶子と関係を持った時にはすでに結婚していて、聡子もそれを承知
で、何年も肉体関係を続けたということのようだった。
 大学を出たばかりでまだ処女だった俶子に、男は縄で全身を縛り付けたりとか、蝋燭
を熱い蝋を身体に垂らしたりとかの、通常ではない行為で彼女を抱き続け、他にも野外
露出を強要したりとか、排尿や排便するところを見られたりと、恥ずかしいことを散々
に彼女の身体に沁み込ませた元凶のような男だった。
 女を女として扱わない、冷徹な甚振りや辱めに、何度も止めてくれるよう懇願し、つ
いには別れ話まで進展したのだが、それまでの恥ずかしい写真を種に、ずっと引き摺った
 その後に、その男は何の病気かは俶子にも記憶はないのだが、職場を休職し一年ほど
病院での入退院を繰り返し、交流は自然消滅のようになった。
 それから何年か後、俶子はある男性と結婚をしたのだが、どういう因果なのか、その
男も彼女の最初の男と同じ異常な性嗜好で、俶子自身は、男というのはみんな同じ性嗜
好者であるという曲がった思い込みが観念的に、身体にも心にも宿りついてしまってい
たということのようだった。
 十日ほど前に、俶子は婚約者から家族と親戚一同が介した集合写真を見せられ、その
時に、自分の処女を捧げた、相手の男の顔を見つけてしまったのだと、聡子は顔面を少
し蒼白にして、僕に話してきたのだ。
 婚約者にその男の今の素性を聞くと、現在は教職員を辞めて妻の父親が経営している
不動産会社に、専務という肩書で勤務しているとのことだった。
 俶子にとって、自分の女としての人生を捻じ曲げた、淫獣のような男が身内にいると
ころへ嫁いでいくのは、屈辱的な人身御供か、悪魔への生贄でしかないというのだった
が、話を聞いた聞いた僕もその通りだと思った。
 しかし、そのことを結婚式を一ヶ月後に控えた婚約者に、正直に告白する勇気は自分
にはないと俶子はいうのだったが、十六の僕には事情が重すぎて、何とも応える術も手
段も思い浮かばなかった。
 見ると、俶子は自分の前に置いたビーフシチューを、一度も口に入れていないようだ
った。
 「いいの。まだ若いあなたに、どうにかしてもらおうなんて思ってないから…ただ、
誰かに聞いて欲しいと思ったら、あなたの顔しか思い浮かばなかっただけなの。気にし
ないでね」
 無理そうな笑顔を見せて、俶子は逆に重々しく顔を沈ませている僕を、歳の離れた姉
のような口調で、慰めるように言ってきた。
 「で、でも、婚約者に黙ったまま結婚したとしても、きっと幸せな結婚生活にはなら
ないと思うけど…」
 正直な僕の気持ちを、僕は声を詰まらせながら、どうにか正直に言った。
 「そうね、余計な不幸者をまた作ってしまうだけかもね。ありがとう、雄一君。いい
意見を言ってくれて…私のこと真剣に考えてくれてるのが、すごく嬉しい」
 俶子のその声が、急に気丈な響きで聞こえてきたので、顔を上げると、
 「あなたの助言で、私、決めたわ。これからもあなたの下部で生きてく」
 と明るい声で言ってきた。
 それもどうか、といおうと思ったが、その時は僕は喉の奥にぐっと詰め込んだ。
 「あ、そうだ。あなた、東大目指すんだって?」
 「えっ、だ、誰に?」
 聞いた瞬間に、犯人が誰かすぐにわかった。
 あのバカ、と腹の中で僕は舌打ちしていた。
 「いいことよ、あなたなら一生懸命頑張ったら行けると思う。私も全面的に応援する
からね」
 「どうかな?…僕の学力は片輪みたいなものだから…」
 「数学がまるで弱いもんね」
 「弱いなんてもんじゃない。それにしても、あのクソバカ」
 「いいじゃない。彼女、すっごい嬉しそうな顔していってたよ」
 「女の口軽は最低だ」
 「未来の奥さんになる人を、そんなに言うもんじゃないわ」
 「えっ、そ、そんなことまで、あいつ」
 ほどなくして、僕と俶子はいつもの決まりごとのように、彼女の室のベッドにいた。
 どうしようもないお喋り娘への、僕の憤怒はまだ収まってはいなかったが、聡子のほ
うは、僕との対話で気持ちがすっきり振り切れたのか、
 「どこで誰と浮気してたのか、この僕ちゃんは」
 聖職の人とは思えないような、艶めかしい目をこちらに向けてきていた。
 着ていたセーターとスカートは、すでにカーペットの下に落ちて包まっている。
 紺色のブラジャーと揃いのショーツが、僕自身も久しぶりに見る白い裸身に好対照に映
えて、若い僕の下腹部の一ヶ所に集中し始めていることを知らされていた。
 「俺が欲しいか、叔母さん?」
 僕は徐に俶子が仰向けになっているベッドに駆け上がり、その場で身に付けていた衣服
のすべてを脱ぎ晒して、両足を少し拡げて仁王立ちの姿勢をとった。
 「叔母さん、そんなとこで偉そうに寝そべってんじゃないよ。お前の一番欲しいものに、
きちんと挨拶しろよ」
 急に芝居がかった声で言う僕の意を理解したかのように、俶子も眼鏡の顔を真顔に引き
締めてきて、おずおずとした動作で上半身を、ベッドから起こしてきた。
 どこでどういうスイッチが入ったのか、僕自身もわからないでいたが、俶子の身体への
嗜虐の衝動がどこからともなく湧き上がってきていた。
 十六の自分よりも二十近くも年上のこの女には、何をしても許される、という妙な自惚
れめいたものが、聡子と知り合った頃から漠然とだがあった。
 僕の二面性の性格の裏側にある、嗜虐の嗜好と、俶子のこれまでの、ある意味、不幸な
男性遍歴で知らぬ間に培われていた、被虐の思いが、歯車の歯が噛み合うように合致して
いるのかも知れなかったが、とにかく僕自身が淫猥な気持ちになってくるのは事実だった。
 ベッドに座り込んだ俶子の顔のすぐ前の、僕の下腹部のものはすでに半勃起状態になっ
ていた。
 俶子の両手がそこへ添えられてきて、間髪を置かず彼女の赤い唇が半開きになって、僕
の股間に迫ってきた。
 濡れて生温かい感触が心地よかった。
 俶子の身体を抱くのはいつ以来だろうと思い返しながら、僕は背中を少し屈めて、彼女
のブラジャーのホックを外しにかかっていた。
 室には暖房が入っていて温かかったが、聡子の背中はそれだけではない汗のようなもの
で肌は湿っていた。
 僕の下腹部のものは、俶子の口の中で早くも臨戦態勢を整えていて、学校のグラウンド
にある鉄棒のように固く屹立していた。
 満を持した態勢で、僕は俶子の口から刀を抜くように、唾液でしとどに濡れそぼった屹
立を抜き、彼女の上体をベッドに押し倒し、小さな布地のショーツを一気に剥ぎ取り、熟
れて脂の乗り切った太腿を大きく押し広げて、自分の身体をその間に割り込ませた。
 「ああっ…う、嬉しい!」
 感極まったような声でいいながら、聡子は僕の両腕を両手でがっしと掴み取ってきた。
 俶子の大きく拡げられた、股間の漆黒の下に目をやると、薄黒い肉襞が開いていて、そ
の中の濃い桜色をした柔らかな肉が、滴り濡れているのがはっきりと見えた。
 僕は固く怒張しきった自分のものに手を添え、狙いを定めるようにして、濃し全体を前
に押し進めた。
 「あ、ああっ…す、すごい!…は、入ってきてるわ…ああっ」
 久し振りに聞く俶子の咆哮の声は、室一杯に響くくらいに大きくけたたましかった。
 僕の腕を掴み取っている彼女の手の指も、痙攣を起こした人のように強い力が込められ
てきていた。
 じわりと締め付けるような圧迫の間に、三十五歳の女の身体から発酵したねっとりとし
た脂が潤滑油のようになって、俶子の胎内に僕のものは深く沈み込んだ。
 僕の腰が動くと、その潤滑油は温みのある摩擦を、僕のものに心地のいい刺激となって
与えてきて、俶子は俶子で僕の腰の淫靡な動きに幾度となく呼応し、眼鏡の奥の目を瞬か
せ、喘ぎと悶えの声を間断なく挙げ続けたのだった。
 「は、恥ずかしい…こ、こんな」
 「俶子の顔がしっかり見れるから、俺は好きだよ」
 僕はベッドに胡坐座りをして、俶子と胸と胸を合わせて重なるように抱き合っていた。
 俶子が汗に濡れそぼった裸身を晒して、僕の腰に跨り座っていて、重なった腰の下で、
列車の連結器のように、二人の身体は深く繋がっていた。
 顔と顔が否応もなく触れ合い、相手の息遣いまではっきりと聞こえるほどに密着してい
て、俶子の胸の膨らみの柔らかな感触が、汗に濡れた僕の胸に心地よく伝わってきていた。
 「あ、あなたの汗の匂いって、いい匂い」
 「俶子の女の匂いも、俺は好きだよ」
 「わ、私って、悪い女?」
 「どうして?」
 「の、紀子さんのこと知ってて…こんな」
 「そしたら、俺は大悪党だ」
 「大悪党でも好き!…キスして」
 お互いの歯と歯のぶつかる音が聞こえるくらいに、僕は唇を強く俶子の唇に重ねていっ
た。
 閉じた口の中に広がってくる、俶子の息が、燃え上った身体の熱の上昇を訴えるように、
ひどく熱っぽかった。
 結果を先にいうと、国語教師の俶子とその教え子の僕との、身体の交わりはその日が最
後になった…。



                          続く
 
 

 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
2023/06/01 13:19:07(.AwPQuri)
17
投稿者: 雄一
僕の訳のわからないような説明に、多香子は困惑の色を濃くするばかりだったが、彼女自
身も薄々ながら、僕という男を知ったことで、自分の身体と心の奥底に潜んでいた、被虐の
性癖を知り、望む望まないに拘わらず、そのことに気づかされたところがあって、ほとんど
見ず知らずだった僕に、格別の興味を抱いたことは、胸の奥のどこかで自覚しているはずだ
った。
 少なくとも僕自身の感性は、僕にそう訴えてきているのだった。
 まだ成人もしていない、男女の間で、と常識と見識のある人たちは、嘲笑するかも知れな
いが、年齢に関係なく、当人同士がそういう感性をお互いに感じ合うのだから、誰の口も目
も差し挟むことはできないと、僕は思っている。
 で、麗しい人魚か若鮎のような異性が、自分の胸の中に飛び込んできて、これに理性を働
かせて、欲情を抑制させる道徳感などを、持ち合わせている僕ではなかったので、僕の胸に
埋めていた多香子の細い顎に指をかけ、顔を上げさせて、そのまま自分の顔を下に下ろして
いった。
 唇と唇が何の障害もなく重なり、僕の舌は多香子の歯をすぐに割り込んでいた。
 多香子のしなやかな手の指が、僕の首に自然な動きで巻き付いてきた。
 裸身の多香子の肌は、細い肩や背骨の辺りのどこを触っても、その肌理の細かさの僕の手
の指先が、まるで蛸の吸盤になったみたいにぴたりとくっついて、離れにくい感じになって
いた。
 この感覚は紀子との時も感じていて、熟女には先ずない、若い女性の肌の特性なのだろう
と僕は思いながら、片方の手を多香子の胸の隆起に這わしていった。
 片側の乳房の膨らみを、掌を広げて軽く抑えるように這わせるた時の、弾力というのか、
軟式のテニスボールのように、押し返してくる反発にも、僕は内心で、おっ、と小さく呻い
ていた。
 比較するのが怖い相手だったが、やはり紀子の時にも感じた手の反応で、ついでにいうと、
大きさで言えば、多香子の乳房のほうが、大きさは少し勝っている感じだった。
 「ここでいいよな?」
 長いソファに、白い人魚のような裸身の多香子を、仰向けに横たえて、僕は自分の衣服を
慌てた動作で脱ぎながら、自分の精一杯の優しい目を向けて問いかけた。
 片腕で胸を、もう一方で露わになっている下腹部を覆い隠しながら、多香子は微かに不安
げな表情を浮かべながらも、目は決意を窺わせるかのように、凛としていて、細い顎を僕に
向けて委ねるように頷かせてきた。
 多香子の吸い付くような肌の感触と、香水か化粧の混じった女性的な匂いが、僕の身体の
血流を瞬く間には止めていて、衣服を脱ぎ捨てた時には、下腹部の漲りは、昔の表現を捩っ
て言うと、怒張、天を突く状態になっていた。
 多香子の白い裸身に改めて覆い被さり、弾力のある乳房に手を当てると、多香子のまだ二
十歳前の顔が、妖艶な熟女のように歪み、
 「ああっ…」
 と白い歯を覗かせ、短かな喘ぎ声を漏らしてきた。
 細い両腕が何かを探し求めるように、僕の肩と首に纏わりついてきた。
 この別荘に着いた早々で、この展開は僕も予想はしていなかったのだが、僕の心の中にず
っと潜み続けている、もう一人の淫猥な僕が、勝手に流れを作っている感じで、その脚本通
りに、自分が演じさせられているようにも思えた。
 直感的に、僕は多香子が初めてではないと確信した。
 男に命じられて、男の前で裸を晒すということではなく、男性との身体の交わりはすでに
体験しているというのが、僕の直感だった。
 当たり前だよな、と僕は納得し、そのことに拘る気持ちは毛頭なかった。
 二十歳前でこれだけの美貌で、いつも周囲には、僕なんかとまるで違う、優秀な頭の構造を
している男性や、スポーツ万能でイケメンの男たちに取り囲まれて、何不自由なく生きてきて
いる多香子が、バージンのままでいるはずがないと、浅薄な僕の頭は、良くも悪くもなく、そ
う断じていた。
 長さはあっても幅はそれほどない、ソファの上ということもあって、僕と多香子の身体の密
着は必然的に深くなり、男の僕のほうに攻撃的な利点があるようだった。
 幅の狭いソファに仰向けにされた多香子は、僕の我武者羅ぶったような愛撫を受けながら、
自分が大きく動いて、ソファから落ちないような気遣いをしなければならない分、防御が疎か
になっていた。
 僕の片方の手は、多香子の手の防御をそれほどに受けることもなく、彼女の下半身の長い足
の付け根を捉えた。
 「ああっ…」
 身体を小さく反り返らせるようにして、多香子はまた余韻の残る声を漏らした。
 舌に伸びた僕の手の指と掌が、多香子の剥き出しの繊毛の感触を、しっかり捉えていた。
 指をさらに下に向けて這わすと、いきなり、驚くほどのの滴りが、僕の手を激しく濡らして
きた。
 指の先二本が、多香子の柔らかな肉襞を掬うように撫でると、
 「ああっ…い、いや、は、恥ずかしい」
 とソプラノの少し高い声を漏らして喘いできた。
 僕の肩の周りを掴んでいた、多香子の手が爪先を喰い込ませるように力が込められてきてい
た。
 そしてこの後は、一つ年下の僕の勢い任せの激しい愛撫に凱歌が上がり、仰向けにした多香
子の両足を高く抱え込むようにして、僕のいきり立ったものを、彼女の胎内深くに向けてつら
ぬいた。
 僕の腰の律動に呼応するように、多香子は身悶えの声を挙げ続け、僕の腕を強く掴み取って
きた。
 多香子の二十歳前とは思えない、妖艶な顔の表情に、僕の身体の昂ぶりは、何度となく暴発
寸前にまでいきかけたが、必死に堪え、狭いソファの上に、彼女の細くてしなやかな身体を四
つん這いにして、背後から一段と勢いを込めてつらぬきの行為を続けた。
 「あっ…た、たまらないっ…か、感じてるわ…わ、私」
 「あ、ああ、俺もだよ、多香子」
 「こ、これからも、ずっと好きでいていい?」
 「俺は勝手な男だぜ、いいのか?」
 「か、かまわないわ。あ、あなたの好きにして」
 「ほ、他にも女がいる。それでもいいか?」
 「い、いいわ…あなたがこうして抱いてくれるなら」
 他の女がいるというのは本当の話で、多香子に言いながら思い浮かべていたのは、祖母と尼
僧の綾子と、国語教師の俶子と有閑マダムの益美の顔だった。
 僕のほうに、後ろめたさと心理的な恐怖感があるせいか、何故かこの時、紀子の顔は思い浮
かばなかった。
 やがて、僕のほうに限界が近づいてきた。
 「た、多香子…い、逝くぞ!」
 「き、きてっ…」
 僕の昂った血流の中から選ばれ抜かれた白濁の塊りが、下腹部の一点に集中してきているのが
わかり、僕は低い呻き声を挙げて、一突きした後、その白濁を多香子の白くて滑らかな、毬のよ
うな臀部に吐き散らした。
 僕の放出を浴びた、多香子のかたちのいい臀部が、小刻みに何度も震えているのが見えた。
 ソファに俯せたままの、多香子の背中に折り重なるようにして、暫くの間、夢幻の境地に浸っ
ていた僕だったが、どうにか身体を起こすと、それを待っていたかのように、多香子も顔を上げ
てきて、
 「シャワー室は廊下を出た奥のほう…」
 と言いかけて、思い直したように、
 「案内するわ」
 と言葉を続けて、ソファから起き上がってきた。
 多香子がシャワーを浴びて服を着替え、化粧を済ませて、僕のいるソファの横に、少し気恥ず
かし気な笑みを浮かべて座り込んできた時は、大きな窓の外は、夕暮れ前の赤い西日が、山の奥
に沈もうとしていた。
 多香子がもう一度煎れてくれたコーヒーを啜っている時だった。
 僕は大変なことを思い出して、愕然とした顔になった。
 「どうかしたの?」
 と多香子がコーヒーカップを下に置いて、訝りの表情で尋ねてきたが、それに応えられない内
容のことだった。
 紀子への連絡を、僕はついうっかりと忘れていたのだ。
 この前、紀子と会って話をした時、土日の自分の行動を、前以てできる限り連絡するという約
束を、僕は彼女と交わしていたのだ。
 それまでの何日間、ちょっとした誤解で、口を聞かない状態になっていて、仲直りをした時に
約束させられていたのだ。
 「うん、ちょっとうちの母親に頼まれていたことがあって、田舎の祖母にメールしておいてく
れって、言われてたこと思い出して…ちょっと、ごめん」
 そういって何故か、僕は多香子の傍から離れて、反対側のソファに座り込み、慌てた動作でス
マホを弄った。
 (同級生の三上たちに誘われて、原宿と秋葉原の買い物の付き合いで出かけてる。夕食でマッ
クのエビバーガー奢るって約束。以上)
 と出まかせメールを送信する。
 五分も経たないうちに返信があった。
 (友達いたんだ?男同士の付き合いだから、メールの遅延は許してあげる。風邪引かないよう
にね)
 こういう嘘がすぐに思いつくのが、僕の特性だった。
 改めて前に座っている多香子を見ると、白のブラウスに明るい黒地に、赤い花柄の丈の長いス
カート姿で、まだ少し訝った表情でこちらに目を向けていたが、僕と視線が合うと、
 「さぁ、お夕飯の用意するわね。すき焼きのお肉一杯買っちゃったけど、あなたに気に入って
もらえるかしら?」
 「ああ、砂糖だけしっかり入れてくれたら、もうそれでいい」
 多香子のすき焼き料理は、僕の、砂糖多めの意見も入れてくれたこともあって、すごく美味し
かった。
 ワインか何か飲む?と聞かれたが、下戸な性分の僕は断って、これまでの人生で初めて食べ
るような柔らかさの肉を、ガキのように無心に頬張った。
 多香子は上品な慣れた手の運びで、ワイングラスを持って、赤ワインを二杯ほど飲んでいた。
 昼間にあれだけのことをしておいて、夕食後は、僕と加奈子は中学生の気分に戻ったように、
ソファで身体を並べて、笑い、はしゃぎ合いながら、トランプとスマホのゲームに興じて時間
を過ごした。
 先に風呂に入った僕が出てくると、
 「お祖父ちゃんのパジャマだけど、体型的には一緒だと思うから着て」
 ときちんと畳まれたパジャマを、ソファの前のテーブルに出してくれていた。
 「私の寝室は、お二階の右端…先に行ってて」
 気恥ずかしそうに、そういい残して、多香子は浴室のほうに出て行った。
 木目一色の階段を上がると、廊下に面してドアが三つあり、右端のドアを開けると、多香子
が前以て、暖房を入れてくれていたのか、室は温かだった。
 八畳ほどの広さで、やはり木目装飾の壁で、木製の机と本棚と、少し大きめのベッドが壁に
添うように置かれていた。
 床は毛の長い絨毯だった。
 昼間に嗅いだ多香子のような匂いが、微かに漂っていた。
 室の隅に長方形の青のプラスチックボックスが、この室に少し、不似合いな感じで置かれて
いた。
 蓋があるのだが、少し隙間があって、そこから赤い色をした縄のようなものの端くれが、覗
き出ていた。
 それは縄ではなくて、登山用のロープのようだった。
 何気にボックスの蓋を開けてみると、そのロープと一緒に、女性用の登山靴が一足入ってい
たので、多香子の登山用具を入れるボックスだというのがわかった。
 瞬間的に、僕の頭に湧き出た発想があった。
 赤いロープからの、不埒不遜な思い付きだった。
 去年の夏休みに、奥多摩の高明寺の座敷で、祖母が赤い縄で全身を縛り付けられて、男たち
に凌辱を受けている光景が、僕の頭の中にフラッシュバック的に蘇ってきていたのだ。
 続けて、昼間の多香子の白い裸身が思い浮かんだ。
 赤い縄がより以上に映えそうな、抜けるような肌の白さが、目の奥に浮かび出て、一向に消
えてはいかなかった。
 自分でも、気持ちが気持ちが異常に昂ってきているのがわかった。
 長い夜になりそうな予感を抱いて、僕は多香子のベッドに勢いよく潜り込んだ…。





                            続く


  (筆者後記)
 また例によって、投稿ボタンの押し間違いでした。
 このような、いつもながらの独りよがりの拙文を、長く読んでいただき
ありがとうございます。
 投稿が遅くなったりするかも知れませんが、当分は頑張りたいと思いま
すので、よろしくお願いします。

 
 
 
 








  
 
 

 

23/06/12 16:07 (TxxONY9y)
18
投稿者: アラカン ◆KbK6VCTSKM
投稿ボタンの押し間
気にしてないですよ、少しくらい時間がかかっても投稿待ってますので頑張ってください。




23/06/13 00:15 (TJvZNr8e)
19
投稿者: アラカン
なにか投稿の押し間違ったようで投稿の文字が一部消えましたすいません。


23/06/13 00:23 (TJvZNr8e)
20
投稿者: 雄一
赤い縄を見て、突如として湧き出た、僕の淫猥な気持ちを察したかのように、多香子が、薄い
ピンクのネグリジェ姿で、室に入ってきたのは、僕がベッドに潜り込んで二十分ほどしてからだ
った。
 ネグリジェは薄いシースルーの布地になっていて、目を凝らして見ると、多香子の細い身体の
線が朧に透けて見えるという、悩殺的なデザインにで、明らかに僕という男を意識してのいで立
ちに見えた。
 風呂上がりのせいもあるのか、肌は艶々としていて、ほんのりと上気した顔で、
 「遅くなってごめんなさい」
 と目を俯けたままベッドに近づいてきた。
 昼間とは違う、少し赤さが際立つ口紅を塗っているのがわかった。
 多香子一人の入室しただけで、木目だらけ平易な意匠が目立つ室の雰囲気が、少し変わって見
えたのと、情欲をそそらせるような妖艶な匂いが、室の中に一気に漂っていた。
 「また、俺に抱いて欲しいのか?」
 内面の興奮を抑えながら、大人じみた声で僕が言うと、
 「は、はい…」
 と上気した顔をさらに朱色に染めて、小さく頷いて、潤んだような視線を僕に向けてきた。
 「昼間は昼間だ。夜はお前の本性が知りたい」
 ベッドに胡坐座りをしながら、目の前で恐々とした目を、虚ろに泳がしながら立ち竦んでいる
多香子に、
 「気づいてるんだろ?自分の恥ずかしい性分を」
 追い討ちをかけるように、僕は続けていった。
 「な、何を…ですか?」
 「普通のセックスでは物足りないんだろ?」
 「…………」
 「俺もそうだからわかるんだよ、お前の性癖」
 「…………」
 「昼間のは余興みたいなもんで、もっと恥ずかしいことして欲しいんだろ?お前」
 そういって僕は身体を前屈みにして、立ち竦んでいるだけの、多香子の手首を掴み取って、手
前に思いきり引き寄せた。
 崩れるようにして、多香子の細い身体が、僕の胸に飛び込んできた。
 「俺もさ、まだこんなに若いくせに、普通のセックスでは物足りなくて、SMって言うの?そう
いうのに嵌ってしまってるんだよ。だから、最初にお前に会って話した時、何となくわかった」
 例によって、自分の意思に関わらず、裏モードに入りかけている僕の口から、当てずっぽう的
な推測も含めた、下卑た話題をちらつかせ、多香子の本心というか、胸の内を開かせることに専
念した。
 多香子を胸の中に抱きすくめながら、
 「あそこにある縄で、多香子を縛りたいって、俺は今、思ってるんだけどな?」
 手で室の隅のプラスチックボックスを指しながら、多香子の顔を覗き下ろすように見つめた。
 ここで慌ててはいけなかったが、多香子の気持ちというか、胸の内を開かせるのに、
 「俺の言ってるのを思い込みだというなら、俺は違う室で寝るわ」
 と少しばかりのブラフを込めて、もう一度、多香子の顔を見下ろした。
 モジモジとした少しの間があった後、
 「あ、あなたを…し、信じていいの?」
 と多香子は自分から顔を上げて、僕の目を窺い見てきた。
 「決めるのはお前だよ、俺じゃない」
 突き放すように僕が言うと、赤い口紅が際立つ白い顔を、こくりと小さく頷かせてきた。
 今度はこちらが少し戸惑う番だった。
 去年の夏休みではないが、緊縛された女性を見たのは何度かあるが、自分自身が女性を縛る
のは、僕も初めてのことなのだ。
 ああ、そういえば、有閑マダムの益美が、プロの縄師を呼んで、自分を縛らせて男の凌辱を
受けたのを、目の当たりにしたことはあったが、その時の縄師の手練手管など、今、僕が憶え
ているはずがなかった。
 それでも、自分でも体験してみたいという、願望は僕の頭の中にはあったので、若者の特権
でもある、なるようになれ、気持ちで、僕は多香子から離れ、プラスチックボックスのほうに
足を向け、縄の束を取り出し、またベッドに戻った。
 多香子の悩殺的なネグリジェを脱がすと、彼女はブラジャーもショーツも身に付けてはいな
かった。
 「いい身体だ」
 正直な自分の気持ちを言って、これまでに実際に見た薄くて少ない記憶を辿るようにして、
最初に多香子の両手首を、彼女の背中に廻して緊縛を開始した。
 後ろ手に多香子の手首を縛り上げてから、縄を彼女の胸に這わして、乳房を上と下から
挟み込むようにして、幾重にもロープを巻き付けた。
 膨らみの豊かな多香子の乳房が、歪なかたちで縄に挟まれている。
 多香子は僕にされるがままで、おし黙ったままで口を噤んでいた。
 室の暖房の効きもあって、僕は汗だく状態になっていたが、足のほうは、僕の頭にこれとい
うイメージも図柄も湧かなかったので、稚拙な作業はそこで終えた。
 多香子はベッドの中央で正座して、その前に胡坐座りをしながら、パジャマの袖で流れ出る
汗を拭いている僕とは、さすがに視線は合わしてはこなかった。
 「こういう体験は?」
 という僕からの問いかけに、俯いた顔を多香子は横に振ってきた。
 「俺が言ったような自分を知ったのはいつ?」
 「…………」
 「そんな自分を知ったのは?」
 もう一度僕が尋ねると、多香子は少しの間を置いて、
 「ち、中学の一年…」
 苦しそうな表情で、多香子は応えてきた。
 「何かあったな?」
 「…………」
 「言いたくなかったらいいけど」
 「し、知らない男二人に拉致されて…」
 「暴行された?」
 多香子の鹿のように細い首が、悲し気にこくりと折れた。
 祖母の昔の話を、僕は条件反射的に思い起こしていた。
 美しい人は、どうしてこうも同じような悲しい運命を背負わされるのだろう?
 理由は簡単だ。
 美しい女性は、この世に生まれた時から、他人にはない美貌という天賦の才を、望む望
まないに拘わらずに授けられていて、幼少の頃から異性の目を引いたり、驚きや衝撃を、
自分自身にはさらさらに引けらかす気持ちはなくても、与えてしまうからだった。
 勿論、心と心の繋がりというものも、当然に数限りなくあって、さらに運とか縁という
ものが重なり、男性と女性は結ばれたり離れたりする。
 祖母の若い時の写真を見ても、孫の僕でも目を見張るほどの美しさだった。
 赤い色の縄が多香子の白い裸身に、歪に喰い込んだ、目の前の妖艶な光景に、僕は大い
なる未練を残したが、思考の方向転換を僕は急に思いつき、四苦八苦して拵えた緊縛を、
自らの手で解きにかかった。
 少し驚いたような目で、多香子が僕を見つめてきていたが、
 「いいんだ」
 という表情を浮かべて、彼女の身体から縄を解き外した。
 僕が先にベッドに寝転がり、多香子のために柔らかな羽毛の掛け布団を、彼女を誘うよ
うに手で捲ってやった。
 「気分が変わった。多香子の美しいその声を長く聞きたいから、昔の話聞かせてくれ」
 ベッドに横たわり、顔と顔を向き合わせた時、出来るだけ気さくで鷹揚な笑顔を見せて、
多香子に促しの視線を投げた。
 ここであの紀子だと、
 「雄ちゃんは、いつも身勝手で、自分の思った通りにしか動かないし、言わない」
 と一喝の声が飛んでくるのだが、まだ一、二回しか言葉を交わしていない、多香子には
遠慮があるようだった。
 多香子の詰まり詰まりしながらの、おぞましい告白と悲運の吐露がそこから、暫くの間、続
いたのだった。
 僕なりの多少の脚色や、想像も入っているが、概ね、以下の通りが、多香子の告白内容だっ
た。
 
 多香子が中学一年の時で、夏休みのある日の夕刻、図書館からの帰り道の途中で、いきなり
二人組の男たちに拉致された。
 歩道を一人で歩いていた多香子の横に、黒色のワゴン車が止まってきて、後部座席のドアが
開いて、夏なのに黒い目出し帽を被った男が降りてきて、あっという間に車の中に引き摺り込
まれた。
 声を出そうとした口に、黒ずくめの男が多香子の口に、ガムテープを貼ってきて、紐のよう
なもので手首を括られ、目はアイマスクで覆い隠されてしまった。
 「誘拐?」
 十三歳なりの推測で、多香子はそう思って背筋を寒くした。
 父は大手商社の副社長で、祖父はそこの相談役になっていて、田園調布に相当な敷地面積の
大邸宅がある、多香子は所謂、裕福な家庭の子だった。
 ワゴン車は随分と長い間走ってから、どこかで止まった。
 それまで耳に入っていた、外の車の音が聞こえなくなっていた。
 目隠しをされているので、そこがどこなのか、多香子にはまるでわからなかったが、車を降
ろされて少し歩いたところで、戸の開くような音がして、多香子はその中に、一人の男に肩を
掴まれて中に入れられた。
 二人組の男に間違いなかったが、車の中でも二人は会話らしい会話は、多香子を気にしてか、
言葉を交わすことは一度もなかった。
 どこかの住宅のようで、人が住んでいないのか、埃臭っぽくて湿った空気と、饐えたような
匂いが多香子の鼻に容赦なく入ってきて、何度も咽返させられた。
 靴を脱がされないまま、多香子は家の中に上がらせられ、やはり饐えたような異臭のする、
畳の室に入れられ、床の間の柱みたいなところに、座ったままで縄で男の一人に、雁字搦めに
括りつけられた。
 貼られたガムテープの中で、多香子は恐怖心もあって、うう、うう、と声にならない呻き声
を挙げるのだったが、男たちは意にも介さず、多香子一人を室に残して、外に出て行った。
 時間もどれくらい経ったのかわからなかったが、かなり長い時間、多香子は畳の室の柱の下
で放置された。
 誘拐されたとして、身代金の受け渡しが済んだ後、私はどうなるのだろう?
 映画やテレビのドラマでは、証人隠滅のため、大抵は犯人に無残に殺されるのが圧倒的に多
いのだが、自分も同じ運命を辿ることになるのかも知れないという、恐怖心と怯えと、慄きは、
十三歳の清廉な少女には、堪えがたい苦しみだった。
 もう一つ、多香子は口には出せない、恥辱的な災禍のようなものに、全身を見舞われていた。
 多香子自身も思ってもいなかった、尿意がある時点から、不覚にも湧き出していたのだ。
 始めは軽く考えていたのだが、アイマスクをされたままの暗い闇の中で、相当に長い時間、
放置されている間に、尿意は鎮まることなく、さらに強く、多香子の下半身に襲いかかってき
ていた。
 室内の噎せ返るような暑さもあったが、多香子の白い額や首筋には脂汗に近い水滴が浮かび
出て、幾筋もの線状になって下に垂れ落ちていた。
 もう自分では堪えられない限界点に達した時、人が家の中に入ってくる気配があった。
 その人が誰なのかは、多香子にはもうどうでもよかった。
 室に入ってきたのは一人で、多香子を拉致した男のようだった。
 多香子は汗の滴り出た顔を、激しく左右に振って、声にならない呻き声で、相手に必死で訴
える動作を続けた。
 多香子のあまりの必死の形相に、男が気圧されたように寄ってきて、口のガムテープを外し
てきたので、多香子はもう恥も外聞もない声で、
 「お、おトイレに行かせてくださいっ」
 と縋るように、男に訴えた。
 もう後一分も猶予のない状況で、多香子は喚くような声で男に哀願し、柱の縄を解かれ、ア
イマスクと手首の拘束はそのままで、家の外に連れ出された。
 草と土の感触が足にあるところで、多香子はいきなりスカートの中に手を入れられ、穿いて
いたショーツを男の手で、足首まで一気に引き下ろされた。
 ショーツを多香子の足首から抜いた男が、いきなり彼女を背後から抱き締めてきて、多香子
の両太腿を手でわし掴んできて、そのまま背後から抱き上げてきた。
 背後の男の腰が中腰になり、多香子は幼児が親に抱えられて排尿する姿勢をとらされた。
 屈辱以外にはない恥ずかしい態勢だったが、その時の多香子にそれを斟酌する余裕は何秒も
なかった。
 土と草に激しい水滴がかかる音がした。
 多香子の汗まみれの顔の目に、緊張が解き放たれた時の涙が滲み出ていた。
 長く堪え忍んでいた分だけ、多香子の放尿は中々止まらなかった。
 多香子を後ろから抱き上げていた男は、彼女の放尿が終わってからもずっと寡黙を保ってい
て、多香子をまた家の中へ引き連れ、同じ柱に括りつけてきた。
 ガムテープもまた口に貼られた。
 前と違ったのは、多香子の両足が前に広げて、投げ出されていることだった。
 脱がされたショーツを穿かされていないことに、多香子は気づいていた。
 多香子の下半身を隠すのは、スカート一つだけだった。
 柱への縄の拘束が前よりもきつくなっていたので、身体の動きは何一つできなくなっていた。
 男が拘束状態の多香子の多香子の前に、まだいるのが音と気配で分かった。
 その男が急にどたどたと動き出した。
 多香子が無意識に身を縮めると、前に投げ出された足首に、男の手が触れてきているのがわ
かった。
 何か棒のようなものが足首に添わされ、それを縄で括られているようだった。
 もう一方の足首にも同じ託し挙げられて果的に多香子の足の自由が損なわれたことになった。
 慄きの予感が、十三歳の多香子の全身を過った。
 スカートが人の手で捲り上げられるのがわかった。
 スカートはかなり上までたくし上げられて、自分の股間の奥までが露呈されているのを多香
子は気づかされ、さらに大きな呻き声を挙げたが、救いの声は何一つ耳には入ってこなかった。
 前にいる男の気配が静まっていた。
 見られていると、少女ながら多香子は直感していた。
 恥辱と屈辱の思いを打ち消そうとして、多香子は違う方向へ思考を巡らそうとした。
 徒労だった。
 思考を変えようとすればするほど、男に見られているというおぞましい感覚が、まだ少女の
身体の多香子の意識を、これまで考えたこともないような、およそ少女らしくない淫猥で熱い
思いがどこからともなく湧き出てきているのを感じ、多香子は心の中をひどく狼狽させていた。
 多香子の初めての生理は、小学校五年になってすぐのことで、身体の発育も他の同級生たち
よりは、一つ上をいっている感じだった。
 勿論、男性経験はまだなくて、性に関する興味は、人前では微塵も見せなかったが、父が若
い頃に読んだ書籍の中から、団鬼六とかいう作家の書いた本を、偶然に見つけ出し貪り読んだ
ことが数知れずあった。
 それでも直接的に、自分がこのような非道を受けるとは、多香子は考えてもいなかったのだ
が、目隠しをされたまま、自分の一番恥ずかしいところを、しかも得体の知れない男に見られ
ていることで、内心にじわりと湧き上がった興奮に、多香子はただ驚愕し、狼狽えるしかなか
った。
 突如、身体に強い電流が走ったような感覚に、多香子は襲われた。
 これまで誰にも見せたことも、触らせたこともない、自分の身体の中心部に、唐突に人の指
のようなものが触れてきたのだ。
 きつい縄の拘束で不自由な全身が、小さく跳ねるように動き、くぐもりながら出した呻き声
が一際大きくなった。
 前にいる男の指に違いはなかった。
 無遠慮な動きで、男の指は、止むなく剥き出しにされている、多香子の秘部を縦横無尽に這
い廻ってきていた。
 触られた時点から、十三歳の多香子はもう一人の女になりきっていた。
 汗に濡れ滴った顔がさらに大きく揺れ動き、ガムテープの中から漏れる呻き声にも、これま
でとは違う、余韻のようなものが響き出てきていた。
 多香子は本当に気持ちがいいと思った。
 これが小説でよく書かれている快感というものかとも、多香子は思った。
 多香子を責め立てている、男のほうも興奮しているのか、荒い息遣いになっていた。
 男が自分の目の前で、立ち上がったような気配がした。
 ズボンのベルトを外す音と、衣服の生地が擦れ合うような音が、多香子の耳に入った。
 ガムテープがいきなり剥がされた。
 多香子の顔に何か異物が盛んに当たってきていた。
 団鬼六の小説の、何小節かが多香子の頭の中に、淫靡に浮かんだ。
 多香子はアイマスクがかけられた顔を、上に向けて上げ、固く屹立しきっている、男
のものを、恐る恐る開けた口の中に、突き刺されるようにして含み入れた。
 汗の腐ったような異様な匂いが、多香子の小さな口の中に充満
した。
 小説の中の朧げの知識で、多香子は男のものに、歯を立ててはいけないことは朧げに
知っていたので、唇に力を込めて、口の中に何かを吸い取るような表情を見せていた。
 この行為の意味も何も知らないまま、多香子は男の屹立をひたすらに咥え込んでいた。
 男のものが、多香子の口の中で前後に動いていたので、男が腰を律動させていること
を知った。
 「むむっ」
 男の低く呻く声がしたかと思うと、突然、何かが多香子の口の中で噴射したようだっ
た。
 ねっとりとした水のようなものが、多香子の口の中で激しく飛散し、その勢いで彼女
の喉の奥にまで、水を入れた風船が破裂するように飛び散った。
 男の人の射精だと、間もなくして多香子は理解した。
 口の中に飛散したもののほとんどを、多香子は喉を鳴らしながら、食道に流し落とし
ていた。
 突然、携帯の音が鳴り響いてきた。
 男のものらしかった。
 「どうしたんですか?」
 多香子から少し離れたところで、男が急いたような声で電話の相手に聞き返していた。
 「そんなバカなっ」
 男の声に怒りが滲んでいた。
 「お、俺はどうすりゃいいんですか?」
 靴で激しく畳を叩いているようだった。
 「わ、わかりました」
 そういって男は携帯を切った。
 「お前、帰してやるよ」
 男が憮然とした声で、多香子に向かって言ってきた。
 声の響きで、若い男のような気が、多香子はしていた。
 「俺たちの計画は、おじゃんになったみたいだ。このまま帰してやるが、このままじゃ
行きがけの駄賃にもなんねえから、お前の身体だけでももらうから待ってろ」
 男はそういって立ち上がり、室を出て行った。
 男の言葉を信じれば、どうやら命の危険はないようだった。
 でも、男は私の身体をもらうとか言っていた。
 十三歳の少女ながら、頭の中に、犯される、という言葉が浮かび出ていた。
 つい、今しがたの男との行為が、多香子の頭に思い浮かんだ。
 指で愛撫された箇所に、まだ、あのゾクゾクとした快感の、余韻が燻って残っているよ
うな気が多香子はしていた。
 自分を拉致した悪党に間違いはないが、凶悪で無慈悲な、根っからの悪党でもないとい
うのは、漠然ながら多香子にもわかった。
 どかどかという大きな足音が聞こえたかと思うと、男が室に入ってきた気配があった。
 「俺も、間もなくトンズラしなきゃなんねえ。お前にぶち込んでからなら、何お後悔も
ない。向こうに布団用意したから、行くぞ」
 早口で男はそういって、多香子の足と手首の縄と、柱のも解いて、アイマスクだけはそ
のままにして、多香子の手を引っ張るように握って、室を出た。
 同じように、汗の腐ったような匂いの充満する畳の室のようだったが、多香子の足に布
団を踏んだような感触があった。
 畳よりはまだ柔らかいという、感触だけの布団に多香子は座らされた。
 両手が自由になっているので、多香子はアイマスクを、強引に外そうと思えばできたが、
何故か、敢えてそうはしなかった。
 男の顔を見る怖さもあったが、目隠しをされている分だけ、全身が敏感になることを、
少女ながらにも、密かに知ったということもあった。
 どこともわからない、こんな下卑た匂いのする室で、女性としての初めての体験をさせ
られるということには、難しい言葉で言うと、さすがに忸怩たる思いは残るが、逆にその
ことが多香子の少女の気持ちを、歪に昂らせていることも、心の片隅のどこかで薄々には
感じていたのだった。
 男が多香子に近づいてきて、彼女の、有名なブランドのロゴマークの入ったTシャツの裾
に手をかけてきたかと思うと、いきなり上に向けてたくし上げてきた。
 上半身が濃い青のブラジャーだけの裸身になった。
 乱暴な手つきで、男は多香子の両肩を押して布団に転がしてきた。
 スカートのホックに男の手がかかり、荒々しく足元から抜かれると、ショーツは外での
排尿の時に脱がされてから、身に付けていなかったので、多香子の股間の、まだやや薄い
繊毛がいきなり露わになった。
 男が多香子の近くで、急いて衣服を脱ぎ捨てている気配があった。
 多香子は背筋に生まれて初めて知るような、熱っぽい悪寒のようなものを感じていた。
 私は身も知らぬ男に、間もなく犯される。
 普通で言えば、最初に来るのは恐怖のはずだったが、多香子には真逆の、犯されること
への淫靡な期待のようなものが、まだ男性を知らない、十三歳の全身を覆ってきていたの
だ。
 男が自分の横に跪いたのか、片手が背中に潜ってきて、ブラジャーのホックを外しにき
ていた。
 ブラジャーが緩んだかと思うと、すぐに男の手が乳房の片方をわし掴んできた。
 かたちのいい唇を薄く開けて、蚊の鳴くような声で小さく呻いた。
 「中学生でも立派なおっぱいじゃねえか」
 男が感嘆の声を挙げて、多香子の乳房の膨らみを確かめるように揉みしだいてきた。
 男の汗の匂いが、多香子の鼻孔を強く刺激してきて、自分の顔の近くに男の顔が近づい
ているような気がした。
 男の息遣いを頬の辺りに感じたと思ったら、唇がすぐに塞がれた。
 アイマスクをしたままの多香子は、反射的に顔を動かせて逃げようとしたのだが、男の
抑え込む力に屈するように、顔の動きを止めた。
 男の舌が自分の歯の間を割って、強引に滑り込んできたのにも、多香子は内心で驚いて
いた。
 多香子の口の中に、煙草の臭いが満ちてきて、二度ほど噎せ返ったのだが、唇は離れは
しなかった。
 キスの経験も勿論、多香子には一度もなかった。
 それでも多香子は、自分の舌を男の舌に委ねるようにして、煙草の臭いにだけひたすら
堪えようとしたのだが、身体の奥底のどこかから、初めて知るような淫靡な恍惚感みたい
な感情が、知らぬ間に湧き上がってきているのに気づかされ、内心の狼狽と戸惑いを大き
くしていた。
 多香子は中学に入って一学期を過ぎたばかりの十三歳で、無論、男性の体験はこれまで
に一度もない。
 饐えた匂いの籠る布団に、成長の盛りの若鮎のような裸身を晒し、身も知らぬ男に唇を
奪われている姿は、まごうことなく生身の女そのものだった。
 やがて口の中に満ちていた、男の煙草の臭いすらまでも、多香子は愛おしくなりかけて
きているのだった。
 「ああっ…」
 男に剥き出しの両足を大きく割られ、若い繊毛の下から、男の屹立の侵入を受けた時、
多香子は自分の年齢にはまるでそぐわないような、歓喜の混じった喘ぎの声をはっきりと
漏らしていた。
 顔も見せてもらえない男に、多香子は愛すらを感じるようになっていた。
 初めて感じる女性としての官能の愉悦に、多香子は自我を見失い、少女とは思えないく
らいに浸り、顔の見えない男の腕に、手を強くしがみつかせていった。
 「ああっ…き、気持ちいい…ほんとにいいっ」
 と喘ぎとも悶えともつかぬ、女の熱い声を挙げ続けた。
 多香子をつらぬいている男のほうが、中学生の多香子の女性的な反応に、目を見張り、
思わず動きを止めるほどだった。
 「こ、これが最後だっ」
 男は叫ぶようにそういって、強い一突きを入れた後、多香子の身体から離れて、彼女
の腹の上に白濁の迸りを飛散させた。
 男に呼応するように多香子が最後に発した言葉は、
 「ああっ…す、好きっ」
 だった。
 アイマスクをそのまま被せられ、多香子は男の車に乗せられ、店舗や家の多く建ち並
ぶ、広い道路に出たところで降ろされた。
 車の中で男は無言を通していた。
 多香子は、警察には言うつもりはないから、せめて名前だけでも教えて欲しいと頼む
のだったが、男からの返答はなかった。
 「あなたは優しい人です。私は何もあなたを恨んではいません」
 男が道路脇に車を止めて、多香子に、降りろ、と言われた時、多香子が最後の言葉で
そう言うと、
 「西野卓也…」
 とだけ言い残して、男は去っていった。
 多香子はそこからタクシーを拾い、自宅に戻った。
 警察の刑事らしい男が二人来ていて、両親と深刻な顔で話し合っているところへ、多
香子が少し衣服を汚しただけで帰ってきたので、全員の驚きや喜びは大きかった。
 詳しく事情を聞くと、やはり、誘拐目的で多香子は拉致されたようで、身代金要求の
電話がすぐにかかってきたとのことだった。
 多香子がいた男と仲間の男が首謀者のようで、多香子といた男は、拉致した多香子の
見張り役だったようで、警察もまだその人物の特定には至っていないようだった。
 首謀者の男は綿密な計画も何もなしに、ことを引き起こしたようで、脅迫電話をした
携帯のGPS機能で逆探知され、あっけなく逮捕されたということだった。
 多香子も勿論、別の男といたということは一言もいわず、どこか知らないところで車
が信号で止まった時、隙を見て逃げ出したのだという説明を、ひたすらに繰り返し、警
察も両親もそれを信じるしかないという結末になった。
 それから十日ほどが過ぎたある日、テレビが首都高速での、多重事故を報じているの
を多香子は観るともなしに観ていた。
 今朝の午前四時過ぎに、車四台とトラック一台の多重衝突で、アナウンサーが無機質
な声で、事故の死亡者の名前を告げていた。
 「西野卓也さん、二十四歳」
 家のリビングでコーヒーを飲んでいた多香子は、思わず手からコーヒーカップを床に
落としてしまっていた。
 あの人?
 蒼白になった顔で、床に零したコーヒーを拭い取りながら、気が気ではない思いに襲
われ、多香子は自分の室に駆け込んだ。
 テレビのスイッチを慌てて入れると、かなりの大事故だったらしく、公共放送も民放
もこぞって、このニュースを取り上げていた。
 民放のある局が、死亡者の名前を告げ、画面に顔写真を出していた。
 西野卓也、二十四歳、無職とアナウンサーの女性が、冷静な声で言っているのを聞き
ながら、多香子は西野の顔写真に目を集中させた。
 長髪で痩せた感じの細長い顔で、眉の濃さと唇の輪郭がはっきりとしている。
 多香子にはわからなかった。
 多香子を犯した男も、痩せた体型だったような気がしたが、記憶にあるのはそれだけ
で、後は男の吐く息の煙草臭さと汗の匂いだけだった。
 事故は居眠り運転のトラックがアクセルを踏んだまま、走行車線を走っていた前の車
に追突し、その煽りで二台が玉突き状態になったとのことのようだ。
 そして最初に追突されたワゴン車に乗っていたのが、西野卓也のようだった。
 西野は即死のようだったと、アナウンサーが喋っていた。
 もう一つのチャンネルに変えると、事故現場が写されていて、最初に追突されたワゴ
ン車が、原形を留めないほど大破しているのが見えた。
 黒色のワゴン車というのが、多香子の目をひどく動揺させていた。
 多感な年代の少女の思い込みは激しく、多香子は声を出してベッドの上に泣き崩れた。
 その事故が報道されてから、十日ほどが過ぎたが、多香子の心の鬱はまだ消えてはい
なかった。
 毎夜、多香子は就寝でベッドに入ってから、自然に自分の手を自分の胸に当てるよう
にっていた。
 西野という男に犯された時、西野が多香子のブラジャーを外してきて、いきなり乳房
を抑え込むように掴んできた感触が、日が経っても忘れられないでいるのだ。
 普通、時が過ぎれば人の記憶は希薄になるものが、多香子の場合は逆だった。
 日が経つごとに、その感触がより鮮明な記憶として、多香子の胸の中を過ってくるの
だった。
 最初は胸に手を置くだけで、眠りに入れていた。
 胸に置いた手をゆっくりと動かすようになった。
 続いて、手で乳房をわし掴むようになって、パジャマの上に置いていた手が、いつか
らか、パジャマのボタンを外し、直接、乳房に手を触れさせるようになっていた。
 自分の手を下品に動かせて、強く揉みしだくようになってから、もう一方の手が、下
腹部に伸びるようになっていた。
 エスカレートはさらに深まり、この頃は、最初から全裸になってベッドに入るように
までなってしまっていた。
 両方の手で乳房を激しく揉みしだき、片手が下に伸びていき、誰に教えられたわけで
もなく、繊毛の下の肉襞を割って、指を指し込むまでにエスカレートしていたのだ。
 テレビの顔写真のイメージしかなかったが、多香子は自慰行為に耽る時、いつも小さ
な声で、自分の想像する西野卓也の名前を呼ぶのが癖になっていた。
 多香子が西野という男の面影を、自分の心の中から払拭で来た時には、二年生になっ
て校庭の桜の花が満開になったころだった…。

 「純愛だな…」
 多香子の話を聞き終わって、僕は素直な感想を言った。
 言いながら僕の手は、多香子の豊かに成長した乳房を撫でるように揉んでいた。
 僕のその行為は、多香子の話が終局になる、少し前から続いていた。
 「この話、あなたにしたのが初めて…」
 多香子は天井に目を向けながら、独り言のように言ってきたが、息のほうが少し乱れ
てきているようだった。
 饐えた匂いのする布団の上で、初めて男のつらぬきを受けた時のことや、相手の男の
死後、思いをつい入れ込んでしまい、自慰行為に耽った時のことを話した時も、多香子
の息が今と同じように乱れていたのを、僕はふと思い出していた。
 乳首を指で摘まんでやると、石ころのように固くし凝っていて、多香子の顔が小さく
歪んだ。
 「またしたくなってきた」
 僕がわざと甘えるようにそういうと、
 「私も…あ、あなたが変な話させるから…」
 「俺のせい?」
 「そう」
 多香子がそういって僕にしがみついてきた。
 唇を重ね合った後、多香子が白い歯を見せて僕を睨みつけながら、
 「どうしてなのかなぁ?…どうして私、あなたのことが気になったりしたんだろ?」
 と小首をかしげて、思いがけないことを言ってきた。
 「さあね、俺に聞かれても…」
 「あの喫茶店で見つめられた時、ほんと、私、驚いたのよ。あなたのその他意のない
目に」
 「他意なんかなんかあるわけないじゃん。俺は人を探してただけだ」
 「そうなのよねぇ…これ、私が自惚れて言うわけじゃないんだけどね。他の男子の人
が私を見る目とは、まるで違ってたのよ。あなたの目」
 「そうかい、そうかい」
 面倒臭そうに僕は言って、多香子の身体の上に覆い被さっていった。
 多香子の乳房を撫で廻していただけで、僕の血流は停滞ることなく、下半身のほうに
集中していたのだ。
 くん、と子犬が小鼻を鳴らすような声を出して、多香子も僕の首に小枝のように細い
腕を大袈裟に廻してきた。
 過去にあった秘めた話を、僕に打ち明けたせいもあってか、多香子は昼間より激しく
燃え上って、僕に応えてきた。
 自分のほうから僕の下腹部に身体と顔を持っていき、僕のすでにいきり立っているも
のへ、舌と口の愛撫を長く続け、その後で、自分の下腹部への僕の愛撫をせがんできた
りして、喘ぎと悶えの声も、外で餌を求めて、徘徊しているかも知れない、動物たちを
驚かせるくらいに高く大きかった。
 「そ、その西野って男にさ、抱きかかえられておしっこさせられた時、お前、気持ち
よかっただろう?」
 多香子を四つん這いにして背後からつらぬきながら、僕はわざと過去に話しを戻して、
意地悪く尋ねた。
 「ああっ…そ、そうよ」
 「どんなふうに、気持ちよかった?」
 「ああ…お、おしっこがね、止まらないの。土や草にかかる音が…い、いつまでもし
て…ああっ」
 「お、俺も、いつかさせてやる。そうだ、お前のウンチ姿が見たいなぁ」
 「は、恥ずかしいから…い、いや」
 「ふふん、満更でもねえんじゃねえの?」
 「あ、あなたになら…で、でも、嫌いに…な、なられたら」
 「嫌いだったら、初めっからここには来ないよ」
 「う、嬉しい…」
 最後は正常位の姿勢で、残った力全部出し切って、僕は多香子の腹の上に、白く滾っ
た白濁を絞り切るようにして放出した。
 多香子の咆哮の声は、このログハウス周辺の、動物たちすべてを追い払ったようにけ
たたましく高かった。
 階下に降りてシャワーを浴びにいく元気もなかったので、そのままベッドに僕は横た
わり、多香子も追随した。
 多香子が、ふいに何かを思い出したように、この場の雰囲気に、まるでそぐわないこ
とを言い出したのは、後少しで眠りに入ろうとした少し前だった。
 「そういえば、一昨日、私、生徒会の引継ぎで学校に行ったの。そしたら…」
 身体の半分以上が睡魔に追い込まれていて、欠伸と一緒に生返事をすると、
 「今度の生徒会長は文芸部の杉野君と、副会長が村山さんだって。でね…」
 村山という名前に、僕は思わず片方の眉をピンと動かせたが、素振りは気のないまま
にしていた。
 「村山さんって陸上の短距離やってて、はやいんですtt」
 
 




 
 
 


23/06/14 14:39 (qn9p6elN)
21
投稿者: 雄一
「村山さんって、陸上の短距離やってて速いんですってね。引継ぎで初めてお喋りしたん
だけど、スポーツしてるだけあってスタイルいいし、奇麗な人ね」
 睡魔があっという間に、どこかへ飛んで消えてしまっていた。
 それでも、素振りだけは眠そうなままで、
 「あ、そう」
 とぶっきらぼうに、僕は多香子に返した。
 「あなたも知ってるの?」
 「名前だけは…同じクラスじゃないから」
 「そう…でも何となくよかった」
 「よかったって…何が?」
 「ううん、私の思い込み。もう、寝ましょ」
 自分のほうがマッチポンプみたいにしておいて、と口に出しては言えないことを思いながら、
僕は頭から羽毛布団を被って、寝るふりをしたが、僕と紀子と多香子の三人の絡みは、これか
らの最重要注意点だなと、肝に深々と銘じて、改めて、多香子に向けて、おやすみ、と声に出
して言った…。




                                 続く
23/06/14 15:10 (qn9p6elN)
≪ 前 1 2 3 4 5 614 次 ≫
コメントを投稿
投稿前に利用規定をお読みください。
名前
メール
本文
スレッドを上げない
画像認証

上に表示されている文字を半角英数字で入力してください。
 
官能小説 掲示板
官能小説 月間人気
官能小説 最近の人気
作品検索
動画掲示板
画像で見せたい女
その他の新着投稿
人気の話題・ネタ
ナンネット人気カテゴリ
information

ご支援ありがとうございます。ナンネットはプレミアム会員様のご支援に支えられております。

Copyright © ナンネット All Rights Reserved.