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夏の記憶
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:シナリオ 官能小説
ルール: エロラノベ。会話メインで進む投稿小説
  
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1:夏の記憶
投稿者: 街絋
8月。
琥珀は一人、「緑翠荘」に宿を取った。

高校時代の友人の結婚式。周りは皆日帰りか、新婦の用意したホテルの部屋に泊まる中、琥珀が敢えて一人、この老舗旅館を選んだのには訳があった。


箱根の山深く、ひっそりと、でも悠然と構えるこの旅館に足を踏み入れると、あの夏、17歳の夏の日の狂おしい記憶が、甦ってくる。




 
2011/07/25 01:03:57(edC.5up3)
2
投稿者: 街絋
あの日、琥珀は家族旅行でこの緑翠荘に来た。
普段は到底手の届かない高級旅館に泊まるとあって、父親がえらく興奮していたのを覚えている。

琥珀は、というと、退屈していた。
この家族旅行もそうだし、あまり刺激のない平凡な高校生活にも、退屈していた。

琥珀は15歳で、とりわけ目立つわけでもなく、かといって地味でもなく、どちらかといえば優等生の、どこにでもいる普通の女の子だった。

一応彼氏はいるけれど、周りのカップルラッシュに焦って作った間に合わせの彼氏で、まだ手を握ったこともない。


不満はないけど、なんだか退屈な、そんな毎日を過ごしていた。
11/07/25 01:16 (edC.5up3)
3
投稿者: (無名)
夜、父親提案の花火を旅館の中庭で家族4人で遊んで、家族恒例「片付けじゃんけん」に負けた琥珀は、一人で水の入ったバケツを水道まで運んでいた。

「まじで重いし…ちょっとは手伝えよ…」

なんて考えながら両手でバケツを運んでいると、片方のバケツが不意に軽くなった。


「これ、そこまで運べばいい?」


ふわりと風が吹いた。

浴衣姿のきれいな男の子が琥珀に微笑みかけた。

「え…あ…あの、だいじょぶです」


突然のことにもじもじしていると、もうひとつのバケツも軽くなった。


「どうせ暇なんだ。手伝わせて」


水道に向かう、少年のあとを、琥珀はあわてて追った。




「家族旅行で花火かあ、いいね、うらやましい」

水道でバケツを洗いながら、少年が話しかける。
少年は長身で、きれいな黒髪と、長い睫毛をしていた。歳は琥珀より、少し年上に見えた。
捲った浴衣からのぞく腕が、細いけれど筋肉質で、琥珀の心にさざ波がたった。
男の人の浴衣姿は、とても色っぽかった。


「…ん?」

会話も上の空で、横顔を見つめているから、少年が琥珀の顔を見つめ返した。

琥珀はどぎまぎして、とっさにポケットの中の線香花火を差し出した。


「あっ、これ、余ったやつ、やりますか」


「うん」

少年が、幼い笑顔で笑うから、琥珀は嬉しくなった。



11/07/25 01:45 (edC.5up3)
4
投稿者: 街絋
線香花火の火を見ていると、不思議と気持ちが落ち着いて、少年との会話もはずんだ。


少年は父親と毎年この時期にこの旅館に来ているという。しかも、滞在はいつも1週間。


「ねえ、名前は?聞いても大丈夫?」


「こはく、です。上原琥珀。」


一瞬、少年が驚いたような表情をした。
風が吹いて辺りの蜩のカナカナとなく声が、いっそう大きくなった。


すぐに少年が笑顔に戻る。


「いい名前だね。
俺は城太郎。よろしくね」




11/07/25 08:33 (edC.5up3)
5
投稿者: 街絋
「ちょっと琥珀ー?早く来なさいよ」


客室のドアで、母が苛立った声で呼んでいる。


「待って、もー少し!あっ、先行ってていいからっ」


琥珀は鏡に映る自分の姿を見つめて、ああでもない、こうでもないと、セミロングの髪をいじくっている。


「お姉ちゃんどうしたんだろ。いつもはボッサボサのくせにね。」


「さあ?朝ごはん食べに行くだけなのに。何気合い入れてんのやら。」




昨夜はあまり眠れなかった。
目を閉じると城太郎の笑顔や、浴衣からのぞく首筋を思い出して、なかなか寝付けなかった。

琥珀はあんなにきれいな男の子に会ったのは初めてだった。

からかいや冗談なしで話しかけてくる男子というのも周りにいなかった。
城太郎の美しい外見と大人びた神秘的な雰囲気は、あのほんの数分で、琥珀の心を虜にしてしまったのだった。



朝食を取る大広間には、きっと城太郎もいるはずだ。


そう思うとボサボサの髪で行くわけにはいかない。

琥珀は鏡の中の冴えない自分の姿に、ため息をついた。


白い肌にセミロングの黒髪。
化粧っ毛のない顔は確かに目立つような美少女ではないけれど、琥珀は黒目がちな印象的な瞳をしていた。
本人は気づいていないけれど、磨けば光る、原石のような少女だった。



どうにか身支度を調えて大広間へ向かったけれど、城太郎の姿は見当たらなかった。


客の出入りがあるたびそわそわして落ち着かない。


彼は昨日、この旅館の客だと確かに言った。
だからまたすぐに会えるものだと、期待に胸を踊らせていたのだが、結局、城太郎が姿を表す事はなかった。



本当は、この旅館の宿泊客じゃなかったのかもしれない。
もしかしたら今日の朝早く、帰ってしまったのかも。
勇気を出して、アドレスとか聞いておけばよかったな。


1日中、頭の中は城太郎でいっぱいだった。




そして夕方、芦ノ湖観光を終えて旅館に戻ってきた時。

本館から離れをつなぐ渡り廊下で、昨日の、浴衣の少年の、後ろ姿を見つけた。



「城太郎君!」


城太郎が振り替える。
思わず声をかけてしまってから、琥珀は我に返った。

話しかけてみたはいいけれど、どうしたらいいのだろう。

昨日のささいな出来事なんて、城太郎は忘れてしまっているかもしれないのに。


「琥珀、ちゃん。どうしたの?」


「あっ、朝ごはんの時、大広間にいなかったから…」


とっさに言って、後悔。
これでは1日中城太郎のことを考えていたことを、見透かされてしまう。

城太郎は微笑んで、渡り廊下の先を指差した。


「俺が泊まっているのはこの先の離れなんだ。
ご飯も部屋出し。」


「へー!すごいね。セレブだね!」


無邪気な反応に城太郎はクスクスと笑いながら、言った。



「離れ、見てみたい?おいでよ。ちょうど琥珀ちゃんに見せたいものがあるんだ。」


11/07/26 00:12 (C/sVruQF)
6
投稿者: 街絋
「どうぞ」


城太郎に促されて、琥珀は部屋へと入った。


本館の客室とは格が違う。よく手入れされた庭園に面して、一面ガラスのまどが印象的な部屋だった。


琥珀はキョロキョロと辺りを探る。


「父さんなら、いないよ。」

察して、城太郎が言う。

「お散歩とか?」



「いや、別の部屋を取ってる。愛人と来てるんだ。この箱根旅行に。俺はそのカモフラージュ。」


突然の告白に、琥珀の頭はついていかない。

呆然とする琥珀をよそに、城太郎は続ける。


「父親一人で一週間も旅行に行ったら母親が怪しむだろ?だから俺を連れていくの。毎年、毎年。」


「なんで…」


「なんで、だろうね。なんでこんな裏切りの手伝いなんかをするんだろうな。
俺もよくわからないんだ。
ただ、父さんが、喜ぶから」



「でも、でもお母さんは?お母さん、かわいそうだよ…」



「いいんだ、別に。本当の母親じゃないし。」


そう言って城太郎は目を反らした。
その横顔は悲しそうで、辛そうで、いっそう美しかった。

琥珀はそばに寄って両腕で城太郎を抱き締めたい衝動にかられた。


こんな気持ちが自分の中から沸き出してくることが、とても不思議だった。



静寂を切り裂いたのは、琥珀の携帯の着信音。



「こはくぅー?どこ行ってるの、もう夕御飯だよ。早く大広間、来て!」

母親をなんとかなだめて、携帯を切る。



「城太郎君、ごめん、ご飯の時間で
私、もう行くね」


うつむいたままの城太郎に声を掛けて、立ち去ろうとする琥珀の腕を、城太郎が掴んだ。


大きな瞳が懇願するように琥珀を見上げる。


「待って。もう少し、ここにいて…」



11/07/26 00:44 (C/sVruQF)
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