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これは、妻が大和さんと過ごした1週間の夏が終わり、1年が過ぎた物語である。
季節は夏の暑さが過ぎて、秋の過ごしやすい陽気になっていた。 妻「ねぇ、パパ。土曜日の幼稚園の運動会は来れるの?」 残業を終えて帰宅した妻は食卓に夕飯を出しながら私に聞いた。 私「あー。そういえば土曜日だったな。うん。大丈夫。行けると思うよ。」 妻「そっか。お弁当は何がいいかなぁ。」 私「俺はおにぎりと卵焼きがあればなんでもいいよ。」 妻「三郎が唐揚げばっかり食べるからなぁ。うーん。鶏肉どれくらい買おう。」 私「そうだなぁ。あまり作りすぎても仕方ないから なぁ…。」 そんな夫婦の会話をしながら、私は妻の出した夕飯を食べ始める。 私「しっかし、土曜日は何とか休みが取れても、日曜日は仕事だろうな。」 妻「そうなんだ。最近土日の連休あまりないよね。」 私「仕方ないよ。今大きなプロジェクト任せられてるからなぁ。」 妻「そうなんだ。あまり無理しないようにね。」 今、私は去年から取引を始めたイベント会社から新たな社内システムの構築の仕事を請け負っていた。 久々の大型案件の受注で部長や課長からも、今後の取引継続のために、何としてもクライアントを満足させる仕上がりにするように、との厳命を受けていた。 しかし、私のチームだけでは正直人手が足りず、同期の藤田のチームからも、何人か応援を貰っていたが、それでも時間にあまり猶予はなかった。 私「ま、なんとかなるだろ。」 そう呟いて、私は妻の出したミートソーススパゲッティを口に運んだ。
2020/01/11 16:45:18(TSnRjRsG)
病院の待合室で待っていると、看護師の人に診察室へ入るように言われる。
私は1人診察室へと入る。 診察室には女性医師が電子カルテを入力しており、私が入るなり、私の方へ向き直る。 首から下げたネームプレートには日下部遥香と書かれていた。 遥香「まず、奥様の容態からお話します。体には異常な所見は認められません。が、念のため、緊急避妊用のお薬を処方しておきます。あと、性感染症予防のための抗生剤もです。」 私「はい。」 遥香「それから、PTSDの所見が認められます。詳しい診察は精神科の専門にお願いするつもりですが、まずは、明日から私の普段勤務する病院へ転院していただきます。」 私「PTSD……妻は大丈夫なんでしょうか!?」 遥香「今のところは。記憶障害の症状が出ているので、普通に話したりはしています。ただ、いつ症状が出るか分からないのが、この病気なんで今はまだ何とも言えません。」 私「入院先は?」 遥香「C県T市にある県立メディカルセンター病院です。精神科もありますから、治療も連携しながら行います。」 女性医師の勤務する病院は、電車で30分くらいのところにある病院だった。 私「分かりました。私は、明日はそちらへ行けばいいんでしょうか?」 遥香「そうですね。午前9時半から受付なので、窓口で入院手続をお願いします。」 私「ちなみに、入院期間は?」 遥香「とりあえず、1ヶ月です。」 私「1ヶ月ですか……長いんですね。」 遥香「いいえ、本当ならばもっと長く、と言いたいところです。ですが、具体的な症状がないと病床の関係で1ヶ月が限度なので。」 私「そうなんですか。」 遥香「あと、1週間、いえ、2週間は同居のご家族との面会は禁止させていただきます。」 私「え?では、付き添いや看護は?」 遥香「親御さんは、ご存命ですか?」 私「あぁ、はい。妻の母親がいます。」 遥香「では、年内は、もし可能ならばお母様にお願いしてもらって下さい。」 私「はぁ……しかし……」 遥香「ご安心下さい。お母様への症状説明はそれなりの内容で話をしますので。」 私「ありがとうございます。何故家族は面会禁止なんですか?」 遥香「大事なのは倒れた時の状況なんです。ご家族と会った時に倒れられた、ということは、心的に負担が大きいのはご家族だと思われます。」 私「そう……ですよ……ね。」 私は、涙があふれ出てしまった。 妻に全てを押し付けてしまった。 何の責任もない妻に負担を強いていた自分自身の甘えに腹がたって仕方なかった。 遥香「冷たいことを言いますが、今更泣いても、時間は元には戻りません。なら、これから先をどうするかについて考えるべきですよ。」 私「……はい。」 遥香「それと、一緒に来ていた女性を呼んで下さい。」 私は、待合室にいる梢さんを呼んだ。
20/02/03 13:55
(5Xte0GEP)
投稿者:
けい
大和さん登場ですかね?
20/02/03 15:45
(vZyOxus1)
梢さんが診察室に入ると女性医師は早速口を開く。
遥香「まず、Yさんの診察をして、一体何が起きたのかは、すぐに想像がつきました。現場に男は何人いましたか?」 梢「……分かりません。」 遥香「Yさんの治療に必要なことです。一切分かりませんか?」 女性医師の目つきが鋭く梢さんに突き刺さる。 梢「3……いや、……4人だと思います。」 遥香「相手に思い当たる点は?」 梢「イベントコンサルタント会社、株式会社I企画の吉田社長です。」 遥香「他の人は?」 梢「分かりません。」 遥香「本当ですね?」 梢「本当に分かりません。」 遥香「分かりました。」 私「あの……やはり、警察に通報しますか?妻は…」 遥香「医者は患者の治療を最優先するものです。今通報なんてして警察が来たら奥様は耐えられません。」 私「そうですか。やっぱり……」 梢「あの鬼畜……」 遥香「鬼畜?だとしたら、貴方達も同じよ。」 私も梢さんも、女性医師の放った言葉に返せる言葉がなかった。 遥香「貴方達にどんな事情があったのかは、分かりませんが、少なくとも奥様が望まない形での性交を強要された。そして、今まで話した状況から、それをどんな形にせよ、容認していたのならば、貴方達も同じじゃないんですか!」 その通りだ。私も容認をしてしまった。 梢さんは声を出して泣いていた。 遥香「すみませんでした。つい、きつい言い方になりました。とにかく、奥様の治療に全力を尽くします。治療に必要なのは、ご家族の協力です。」 私「分かりました。」 遥香「では、明日、入院手続をお願いします。本日は帰っていただいて結構です。」 私と梢さんの二人は診察室を後にした。
20/02/03 19:49
(5Xte0GEP)
私が会計をしている間、梢さんは顔を覆いながら泣き続けていた。
私は、会計を終えると深夜であったが、課長へ電話をして、妻が入院をすることになったことと、明日は仕事を休むことを連絡する。 課長は、プロジェクトが最後の仕上げ段階に入っている段階での私の休みに難色を示していたが、最終的には了承してもらえることが出来た。 梢さんはあまりにも動揺していたため、帰りの車は、私が運転を代わることにして私の家に向かった。 家に着くと、高橋さんはリビングのテーブルに座っており、まりんちゃんはホットカーペットの上で三郎と一緒に遊び疲れて眠っていた。 高橋「奥さんは、、、」 私「1ヶ月入院をすることになりました。」 高橋「そう……ですか。」 私「遅くまで本当にすみませんでした。私も明日は子供を送り出したら病院へ行きますので。」 梢「でしたら、私とまりん、こちらに泊めていただけませんか?せめて……家事くらいさせて下さい。」 梢さんは頭を下げて私にそう申し出た。 私「いや、しかし……」 私は高橋さんを見ると、高橋さんも真剣な顔をして 高橋「いえ、元はと言えば私から始まった問題ですから。」 私「高橋さん達は気にしないで下さい。悪いのは私ですから。」 梢「せめて明日くらいは手伝わせて下さい!」 梢さんの気迫に圧されて私は、高橋さん一家全員がうちへ泊まることを条件として高橋さん夫妻の申し出を受け入れることにした。 高橋さん夫妻は、自宅へ着替えを取りに一度戻っていった。 私は、三郎を一郎と二郎が眠る和室に移動させると、二階の親が泊まりに来た時に使用する部屋を高橋さん夫妻に用意した。 クローゼットから二組の布団を出して敷いておいた。 妻は月に一度使っていない布団も干していたので、幸い布団も使用出来る状態だった。 普段気にすることもなかった、妻のまめさをこういうところで実感する。 布団を敷いていると、自然と涙が止まらなくなる。 私は部屋で声を出して泣いていた。
20/02/03 19:53
(5Xte0GEP)
私は子供達と一緒に風呂に入っていたが、もう一度シャワーを浴びて軽く汗を流した。
シャワーから出てパジャマに着替えたところで、高橋さん夫妻が戻ってきた。 私「あ、もしよければお風呂使っていいですよ。」 高橋「あ、家で二人とも入ってきました。ありがとうございます。」 私「そうですか。二階の階段上がってすぐの部屋に布団二組敷いてあります。」 高橋「何か逆にすみません。」 梢「私まりん、二階に寝かせてくるから。」 高橋「分かった。」 梢「そういえば、一郎君は何時に小学校へ?」 私「7時半頃にいつも出ていきますね。」 梢「分かりました。明日は二郎君に三郎君、私が9時頃に幼稚園に送ります。」 私「ありがとうございます。私は、明日は病院に行きますので、そうですね……奥さんが幼稚園に送り届ける時間に一緒に家出ます。」 梢「はい。分かりました。」 私「今日は色々すみません。」 梢「家事なんかで手伝えることあればいつでも言って下さい。」 私「ありがとうございます。」 梢「では、まりんと先に寝ますね。おやすみなさい。」 私「おやすみなさい。」 そう言って梢さんは、まりんちゃんを抱き抱えて二階へと上がっていった。 高橋「明日は私は会社へ行かなくてはいけません。社長に怪しまれてしまうので。」 私「そうですね…。」 高橋「明日……そちらの会社に伺いたいのですが。新システムの件で。」 私「あぁ、そうでしたね。課長にLINEしておきます。」 高橋「ありがとうございます。では、私も休ませていただきます。」 私「おやすみなさい。」 高橋さんも二階へ上がっていったので、私も和室へと入る。 二郎と三郎の間に入り、眠りにつくと、私はすぐに眠ってしまった。
20/02/03 21:04
(tcgx7iya)
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