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「警鐘」
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:人妻熟女 官能小説   
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1:「警鐘」
投稿者: いちむら沙織
今回、二回目の投稿です。
家事の合間に書きためているので、進捗ペースはかなり遅いです。
前回同様、女性目線の為、オブラートに包んだ描写となっているので、物足りなさを感じるかと思いますが、言葉を噛みしめるようにゆっくり読んでいただきたいと思います。
 
2011/02/18 15:50:34(tpVKGPNI)
17
投稿者: いちむら沙織
第十四章

「一応、ほかのスタッフに救急車の手配はさせましたけど、この雪でいつ到着するかわからないし。私達でできることをやりましょう」
_庭朋美の指示のもと、私は、ベッドに横たわる女性のズボンのベルトをゆるめて、汚れたそれを脱がせました。その下の黒タイツまで脱がせると、サニタリーショーツが下半身を覆っていました。
──やっぱり生理による貧血なのかしら?
_少し躊躇しながらも、太ももをタオルで拭きながらショーツを下ろしていった。

「──これ、──なに?」
_目の前にあるものを理解できず、そう言うしかなかった。
_水分を吸収しきれず、ふやけたナプキンがショーツに貼り付いていたが、変色は見られない。いや…それよりももっと違和感を感じたのは、彼女の局部でした。
_私にしろ朋美さんにしろ、自分以外の女性の局部をまじまじと見ることは、そうないでしょう。
_その違和感とは──綺麗に剃毛された局部の上のふくらみ。そこには毛穴も見える。そして、局部を覆うように何かが貼り付いている?いいえ、そうじゃなかった。白いものが彼女の体内へ挿入されていました。

_性癖とは、それこそ多種多様だ。私は異物に依存しているし、庭朋美の場合は確証はないがペットに依存しているかも知れない。そして、ベッドの上の彼女もまた性癖によって自分をコントロールできず、欲に飲まれてしまったのでしょうか。
_彼女の膣に埋め込まれていたのは、白いバイブレーター。
「──どうして、──こんなのが?」
_朋美さんは顔色を変えながらも、それを指でつまんで抜こうとした。バイブレーターに絡まる体液のぬめりで指を滑らせながら、ゆっくり引き抜いていく。充血した紅いひだが外側にのびる様子が見える。
_その生々しい光景に誘発されて思い出したのは、分娩台の上で産気づいた自分自身の姿でした。
_ようやくバイブレーターが引き抜かれると、その先端は糸をひいて陰唇とつながり、膣からは大量のおりもののような体液が、どろっと流れ出した。やっぱり出血は見られない。

_お互い、なにも言葉が出なかった。無言のまま彼女の体を濡れタオルできれいに拭いて、下だけ着替えさせました。意識はあるようだが、ひどく疲れているような表情でうなされている。

──数分後。
_ベッドの上の女性が薄目を開き、天井を見たあと、私たち2人を交互に見た。
「──あの、──すいませんでした」
_そう言いながら上半身を起こそうとする彼女の肩を、私の手で支えた。
「どこか、痛いところはありませんか?」
_朋美さんが、彼女の不安そうな顔をのぞき込む。
「──いえ、大丈夫です。──それより私、──私、梅澤といいます」
_梅澤と名乗る女性は私よりも年上なのは確かだが、なんというか、昭和生まれというよりは平成の顔立ちだ。ハーフっぽさも要素に入っていて、かなりの美人といえる。
_そんな彼女がどうして?──というのが正直な気持ちでした。

_梅澤さんの口が動いた。
「──ご迷惑おかけしました。──こんなはずじゃなかったんです。──この歳になってまで、こんなこと──」
「倒れた時はどうなるかと思いましたけど、怪我もなさそうで良かったです」
と、気丈に言葉を返す朋美さん。そして少し間を空けて、目を伏せたまま梅澤さんはつぶやいた。
「──私の話、──聞いてください。実は──」

_彼女の話は、こうだ。
_梅澤さんは誰かに呼ばれて、ここへやってきた。その人とどういう関係なのかは言えないが、すでに別館のスクエアガーデンズに部屋がとってあった。部屋に入ると、テーブルの上にラッピングされた箱型のものが置かれている。これはどうやらサプライズの演出のようだと思ったらしい。そこへタイミング良くメールが来たもんだから、いよいよ期待に胸がふくらんだ。

_メールには「それを着けて本館のワイルドガーデンズに来て欲しい」と書かれていた。箱の中身を確かめると、先ほどの白いバイブレーターが入っていたそうです。経験豊富な熟女を満足させるには十分すぎる大きさ。
_ショーツに生理用品をあてて、男性器を思わせる玩具を膣の奥へ深々と挿し込む。
_誰にも知られてはいけない。スリルと紙一重の快感があった。
_梅澤さんは平静を装って、別館から本館へと移動した。その途中、何者かによって遠隔操作されたバイブレーターが凶器となって、膣内を乱暴にかき混ぜた。
_オンの状態では立っていることもできず、その場にしゃがみ込み、オフの時にはかろうじて歩ける状態だった。
_本館に着くころには、経血とはちがう水分を吸ったナプキンは、ずしりと重くなっていた。
_なんとか食堂の椅子に腰掛けて、ほっとしたのも束の間。ふたたび、子宮に近い膣奥を振動が襲って、性的ストレスが体中をめぐったあと、そこからの記憶があまりないそうです。
11/03/28 12:07 (hEfNdFiW)
18
投稿者: いちむら沙織
第十五章

「──私は一瞬、──気絶しました」
_そう言って、処女のように頬を紅くする梅澤という女性。
「気を失うとは思ってなくて。──ただ、彼に会いに来ただけなのに」
「──彼って、──彼氏ですか?」
「──いいえ」
_私の言葉を否定して、彼女は真剣な表情で、こう言った。

「オダノブナガ」

_聞き覚えのあるその名前。冗談で言ったにしては、梅澤さんの表情が緩むことはない。
「そのような名前の方は宿泊されてませんよ。」
_朋美さんも今までになく不思議そうな顔をしている。
「ちがうんです。──私も本当の名前は知らないんです。──私がこんなふうにだらしないから、バチが当たったんです、──たぶん」
_梅澤さんの言ったことに、私は、まさか?と頭をよぎるものを感じた。
_オダノブナガの本名は──千石弘和?──まさかね。千石さんはまだここに向かっている途中だし、今ここに居るはずがなかった。
_ただ、私もまたノブナガさんの本名が千石弘和だと本人から聞いたにすぎない。偽名の可能性もある。顔も知らなければ、年齢も不明。そう考えると、私が今ここに居ること自体、獰猛な狼の群れの前で性器さえも隠すことなく裸をさらしているように思えてきました。

_オリオン座を形成する星に代表される、リゲル、ベテルギウス。それらの星の和名はそれぞれ、源氏星、平家星といわれている。さらに、女戦士の異名をもつベラトリックス。
_夜空で輝く源氏や平家の女戦士は、織田信長の陰謀によって地に落とされてしまうのでしょうか。

_やがて遠くから救急のサイレンが近づいて、まもなく梅澤さんを乗せると、また雪山の麓へと遠ざかっていきました。
_結局、彼女が言う「オダノブナガ」が誰なのか、まだここにとどまっているのか、彼女を追って山を下りたのか、それを確かめることはできなくなってしまいました。

「なんだか──さっきより風がつよくなってきましたね」
_梅澤さんを乗せた救急車を見送ったエントランスで、重たい色の空を見上げる庭朋美。
_私は言葉もなく、同じ空を見上げて、千石弘和という人物像を追いながら、善人なのか悪人なのかと考えていました。
_そして二人、建物の中へと入って、自動販売機の前の長椅子に座った。朋美さんは小銭を鳴らしながら缶コーヒーを2本買って、「おつかれさま」と、そのうちの1本を私の前に差し出した。
「──すいません」
「それは私のセリフですよ。大事なお客様にいろいろ手伝わせてしまって」
「──すいません」
「三月さん…どうかしました?」
_私の中で沸々と湧き上がる、ある疑惑。それを読みとったのか、朋美さんの眉が歪んだ。
「──さっきの…あの女性が言ってたオダノブナガ。──私の知ってる人かも──」
_私の口から出た告白に困惑する朋美さん。
「──私が今日ここで会う約束をしている人も、織田信長に関係があるんです。──私の思い過ごしかもしれませんけど」
「──三月さんのお連れの方は、彼氏じゃないってことですか?」

_数秒の沈黙が息苦しくなり、缶コーヒーをごくりとひとくち飲んで、「実は──」と、千石弘和の名前を出そうとした時、あの三毛猫が、ひょこっと姿をあらわした。

「ここの看板猫なの」
_朋美さんは目尻にシワを寄せて、表情をゆるめた。
「癒やされますね。なんていう名前なんですか?」
「マサムネよ。なかなかの男前でしょ?」

_そんな調子で、私達ふたりが談笑していると、二十代半ばくらいの男の子ふたりが廊下の向こうから近づいてきて、私達に声をかけてきました。
「かわいい猫ですね。僕も猫飼ってるんですよ。お姉さん達、彼氏待ち?」
_いかにも軽そうな感じ。見た目は悪くないけど、生理的に受け付けない。
_私は左手薬指の結婚指輪を彼らに見せて、「私──これだから」と、軽くあしらった。
「そんなの気にしないからさ、一緒に滑ろうよ?」
「もうすぐ旦那が来るから、また今度、相手してよ」
_私に声をかけてくる男といったら、だいたいこの程度の男だ。これは私の勝手な想像だが、セックスにしたって、雰囲気づくりや前戯を省略して、自分の事しか考えない幼稚なセックスごっこに終わるに違いなかった。

「おまえ、女見る目ねえわ。さっき声かけた子も100パー独身とか言いながら、結局人妻だったしさ」
「ばか、違うよ。オレは人妻を見抜く目があんの」
「なに言ってるか全然わかんねえ。──最近の人妻は、どうなってんだか。みんな可愛い子ばっかだわ、ほんと」
「でもさ、さっきの子。完全にひとりだったしさ、声かけられるの待ってたっぽかったよな?」
_無駄に大きな声でしゃべり続ける彼ら。
_そしてようやく負け犬の遠吠え的会話が終わると、「──じゃあね」と四人とも手を振って、愛想笑いをしていたのは私たち女ふたり。
11/04/01 23:55 (ARk2G1Zj)
19
投稿者: いちむら沙織
第十六章

「ナンパされちゃいましたね。朋美さんの方ばかり見てましたよ、あの子たち」
「あれ?三月さん、気づいてなかったんですか?三月さんの胸とかお尻を、ちらちら見てたんですよ?とくに右側の子」
_お互い、年下の男の子に声をかけられたことで独身の頃にもどった気分になり、しばし、恋愛話に花が咲いた。

_北欧のたたずまいを見せるワイルドガーデンズも、正午を迎えようとしていた。
_それなのに、日差しを完全にさえぎる分厚い雪雲が低くひろがって、ますます暗くなるばかりだ。
_斜めに吹雪いたかと思えば、空に向かって舞い上がったりもする。
「そろそろ仕事に戻らないと──」
_そう言って朋美さんはかるく会釈をして、清楚な後ろ姿を私に見せた。それを追うように三毛猫のマサムネも、ぽってりとしたお尻をこちらに向けて、廊下の角をまがっていった。

_先ほどの梅澤さんの一件もあり、千石さんが今どのあたりに居るのか確認したかったので、私は二階の209号室に戻ることにしました。
_4時間ぶりに部屋に戻ると、テーブルの上の飲みかけのコーヒーは冷めて、石油ストーブから灯油の臭いがしていた。
_私は換気扇のスイッチを入れた。その次に、ところどころ赤黒く錆び付いたストーブに火をつけて、そこに手をかざした。
_こういう時にこそ、人肌のぬくもりというものが欲しくなる。
_肌と肌が触れ合えば、互いの心臓の音がシンクロして、ぬくもりの先の快楽が欲しくなる。
_肉体のパズルとなった2ピースの男と女が重なり合えば、女は精子の海に溺れて、子宮口が呼吸をはじめる。
_そして、息苦しいほどの快楽の先に、やすらぎが欲しくなる。
_女とは、つくづく欲深いものだと思いながら、私は千石弘和にメールしました。

_──約5分後、千石さんからの返信メールが届いた。
「雪の影響で道路が渋滞しているけど、夕方までには着くと思います」
_実際、この地域一帯には大雪警報が発令されていました。それを見越して、午前中でスキーを切り上げて帰って行く客もいるようでした。
_こんなひどい雪の中、引き返すことも選択肢にはあったはずなのに、それでも私に会いに来てくれる。そして密会の約束が果たされた時、そこに私が求めていたセックスがあるのだと、またもや妄想は飽和しそうになりました。

_気がつけば、私はベッドの上に寝そべり、左手がブラの下の素肌を揉みほぐし、右手は貝割れした陰唇の内側にまでもぐり込んでいました。
_指先につたわるのは、固くなった乳頭の肌触り。それと、すべりの良いローションをまとったような膣口。

ああ……あん……。

_半開きの唇から漏れる声。荒い息づかいに腹筋が上下に揺れる。
_異物を欲しがって、だらしなく緩む膣。私は、ベッドの四隅の支柱部分に目を向けた。天井に向かってそそり立つ支柱の先端が、なめらかに変形している。
_私の膣にはおさまりきらないほど太いその柱にまたがって、ゆっくり腰を沈めていきました。

はぁぁぁ…あぁぁぁ…

入ってくる…

_長い吐息とともに、異物感が膣を貫いていく。溢れる内容物が柱を汚して、体を上下させるたびに、ぬちゃぬちゃと音をたてている。
_その太さが、直腸と下腹部を圧迫して、淫らな肉汁を搾り出す。
_女の悦びを感じる瞬間でした。
_ぎしぎしと、ベッドをきしませながら、肉体の割れ目は何度も支柱を奥深くまで飲み込む。
_真っ白なシーツを変色させていく体液が点々と飛び散って、シミをつくっている。

(千石さん、はやく来て。…私の体はこんなにも男を欲しがって、熟してしまいました。…火照った体が、浮気をしたがっているんです。…あなたが本当に私の思っているような人なら、膣がすり減るほど愛してください)
_そんなことを思いながら、喘ぎ声をふるわせて、迫り来るものを感じていた。

…もうすぐ来る…絶頂が来る
…大きい…すごく大きい
…もっと膨らんで…快感が大きくなって
…下から突き上げて来る…もうダメ
…もう…イク

_子宮が縮むような感覚とともに支柱を抜いたが、そこから離れたくないとでも言うように、ふやけた穴から粘っこい糸をひいている。私はそのままベッドにへたり込んで、力無く横たわった。
_事を終えた自分の股間を手でさぐってみると、渇くことのない女の恥肉が熱をもって、クリトリスに触れれば過敏に腰が浮き上がる。
11/04/06 13:58 (QGA2ppSw)
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投稿者: いちむら沙織
第十七章

──思えば、最初に「性」に目覚めたのが、中学生の時でした。親に隠れて股間を弄ったり、鉛筆を挿入させたり。中学の三年間は毎日のように、そういう事をしていたんだと思います。
_そして高校、社会人と、その行為はだんだんエスカレートしていきました。
_彼氏とセックスしてもイクことができず、持て余した性欲は結局オナニーで消化していました。_私が愛した異物は数知れず、当然、愛が冷めれば捨てられて、また別の異物に手を出すという日々に明け暮れた時期もありました。
_そんな私も、アダルトグッズにだけは手を出せないでいました。通販で買ったとしても、それに関わった色んな人にバレてしまいそうで恥ずかしいからです。

_でも、それも今日で解禁になりそうなのです。
_千石弘和がメールで知らせてきた「例のモノ」こそ、私が欲求を蓄積させてきた、それそのものなのです。
_無抵抗な女に向けられる無数の道具の前では、従順な雌になるしかない。そんな光景を何度、妄想したでしょうか。
_妄想が現実になった時、私はそこから抜け出すすべを知らない。でも、もとの自分に戻れなくなったとしても、理性の糸が切れた今となっては、どうでもいいことでした。
_私自身が彼の道具になって、手足になって、性の象徴になりたい。

_夕べの寝不足のせいか、いつのまにか私は浅い眠りの中で夢を見ていました。黒い人影が見えて、眩しい日差しを浴びているのに、その輪郭はぼんやりとしている。
_やがてこちらに近づいて私に手をさしのべた。
「三月さん、ぼくです、千石です。きみを迎えに来た。さあ、ぼくの手につかまって。いいところに連れて行ってあげるよ」
「千石さん?やっと会えた。もっとよく顔を見せて?ねえ?こんなに近くに居るのに、あなたの顔が見えない。どうして?あなたは本当に千石さんなの?」
_そして私の体は黒い人影に包まれて、やがて目の前が真っ暗になった。
「ぼくはぼくだよ。きみがよく知っているノブナガさ。さあ、こっちにおいで。肉体の刀で貫いてあげるよ。そして二度と帰さない。武士の情けなどというものは持ち合わせていない。きみにはこの意味がよくわかっているはずだ」
「なにを言っているのかわからない。私はあなたを信じてここまで来たのに。──あなた…誰?」
_逆光を浴びた彼の姿が影絵のように屈折して、その顔が見えそうで見えない。
_もう一度、彼の名前を叫ぼうとしたけど、なぜか声が出ない。
_そして私は孤独になった。
_愛する家族に嘘をついて、一時的な衝動だけで男に会いに来てしまったことを後悔した。
_私は家族の名前を呼んだが、やっぱり声が出ない。抑えていた感情が溢れ出して、涙が頬をつたった。
_たいせつなものをなくしてしまった喪失感の中で自分を責めていた時、遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえてきました。

「──さん。──みづきさん」

_海の底からぶくぶくと泡といっしょに聞こえてくるようなその声は、しだいに輪郭がはっきりしてくる。

「三月さん?大丈夫ですか?」

_その時、私は目を覚ましました。
_私の名前を呼んでいたのは、庭朋美の声でした。ドアをノックする音も聞こえる。
_やや乱れた髪に手ぐしを通しながら部屋を見渡すと、その異変に気づいた。
_点いていたはずの照明が消えていたのだ。壁から私を見下ろす時計の針は、1時20分を指している。
_窓から見える四角い外の景色は、かろうじて明るく感じたので、夜中の1時20分ではないのは確かだ。それなのに、この暗さはどうしたというのでしょう。
_私はドアのそばまで歩み寄り、声の主を確かめました。
「朋美さん…ですか?」
「三月さん、このあたり一帯、大雪のせいで停電してしまったみたいなんです」
「え?停電?」
_ドアを開けると、薄暗い廊下に朋美さんが立っていて、懐中電灯の細い光が床を照らしていました。
「申し訳ありません。さいわい、ほとんどの方が午前中で帰られたみたいなんですけど、今、電話も通じない状態で…。外線だけじゃなくて、内線もダメになって、別館とも連絡がつかないんです」
「あの…、携帯電話はどうなんですか?」
_朋美さんは首を横に振る。
_私はバッグから自分の携帯電話をとり出して、電波状況を確かめた。
「──圏外、──あれ?」
_圏外のはずなのに、新着メールが1通とどいていたのです。とすると、圏外になる前に届いたメールということになる。
_それはまぎれもなく、千石弘和からのメールでした。

「遅くなってすいません。今、着きました。三月さんは本館のワイルドガーデンズに居ますよね?僕は別館のスクエアガーデンズで待ってるので、今からこちらに来てください」

_メールの着信時刻は、13時08分。ついさっきだ。
──やっと会えるというのに停電なんて、ついてないな。そんな事より、旅の目的である密会が果たされようとしているのに、私、どうしてこんなに落ち着いていられるの?──さっき見た夢のせい?

_本当は、恋をした少女のように、うきうきしたいのに、私は千石さんを疑いはじめていました。
11/04/09 23:53 (1ckD.f0w)
21
投稿者: いちむら沙織
第十八章

「私は別館のほうへ行かないといけないので、しばらくこちらで待機しててください」
_朋美さんの話によると、自家発電の切り替え作業は手動で行わないといけないそうで、それが別館での作業になるとのことでした。ご主人と連絡もとれない為、朋美さん自ら出向いて作業をする事と、スタッフと宿泊客の安全確認をする意味もあるようです。

_別館には千石さんがいる。会うべきか、それとも会わないほうがいいのか。
_ときどき感じていた、誰かに見られているような視線と気配。もしそれが千石弘和のものだとしたら──。
_いつの間にか私は千石さんに監視されていたとでもいうのでしょうか。SNSで知り合うずっと前、すでに私たちはどこかですれ違っていたか、接触していた?
──だとしたら誰?顔見知りの誰かの可能性も捨てきれない。
_そういえば、妊娠して子どもを出産してからのことを思い起こせば、まわりの環境が変わったし、私自身も変わったし、人間関係が変わった。
_そうなると、私を取り巻くすべての男性が容疑者だ。ひとりじゃなく、複数の可能性もある。
_目的は私の体?それともお金?いよいよ犯罪の匂いがしてきた。

_出会い系サイト絡みの性犯罪が氾濫する「平成」の世。けして誰一人、汚れることなく生きていくのは困難な時代。だからといって、私は被害者になるつもりはない。

_マイナス思考が止まらなくなっていた。私は、千石弘和を性犯罪者に仕立て上げようとしていたのです。
_いろんな思いが複雑に絡み合って、私の心の中に光と闇が共存しているようだ。

「──あの、──私も別館へ行きます。──彼がそこにいるんです」
_自分でも驚くような言葉が、喉の奥から勝手に出てきました。
_会わずに疑うより、会って確かめよう。そんな思いが勝っていたに違いない。こんな気持ちになったのは、生まれて初めてかも知れない。

_今の夫と知り合って、恋をして、結婚と出産を経験して、今日までの日々は幸せに満ち溢れていました。でも、そんな毎日にも足りないものが、ひとつだけあった。それが「刺激」でした。
_波風の立たない水平線がどこまでも続いて、「幸せ」という名の退屈に私はあくびが出そうになっていた。
_ごく普通の主婦というだけで恋愛対象にならないと言われるのは心外だし、女としてもうひと花咲かせてみたい。
_そこに飛び込んで来たリスキーな情事に、不機嫌な体は興奮をおぼえていたのです。

「それじゃあ、服を着替えたら、別館のスクエアガーデンズに一緒に行きましょう」
_朋美さんのその言葉を聞き終えたあと、もう後戻りはできないと心を決めました。

_ダウンジャケットにニット帽と手袋、そしてマフラーに下顎を埋めて玄関前に向かうと、冬装備をしているとは思えないほど着膨れのない美しい体型を整えた庭朋美が待っていました。
「──さあ、行きましょう。別館はすぐそこです」
_そう言って朋美さんがドアを開けると、空と地面の境目がわからないほど白一色の景色が、私たちに迫ってくるようでした。吹雪はおさまりつつあるものの、ときどき風が止んで静けさの中で降り続く雪に不気味なものを感じるほどでした。
_なぜなら、これが一時的なものだとしても、私たちは今、完全に外界とシャットアウトされているのだから。
11/04/14 13:23 (/AbLxmdh)
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