母が昔使っていた携帯が、お菓子の缶の中に入れ、押入れに入っているのを思い出し、それを誰もいない時に、引っ張り出した。自分の部屋に持っていき開けた。ガラ系の携帯が二つと充電器が入っていた。あの当時、母が離婚した頃に使っていた古い方をコンセントに繋げてオンにいた。
連絡先を見た。すると、あいうえおの一番最初、あ、とだけ登録したのがある。心臓がドキドキしてる。僕は、電話してみた。

女が出た。
とっさに僕は聞いた。いくらですか？
女が言った。60分3万5千円です。
どんな人がいますか？
容姿のいい、人妻を揃えてます。どんな感じ‥
僕は電話を切った。
変な汗がでた。ものすごい嫌やな気分になった。
続けて母の携帯を調べた。それらしき形跡はなかった。が、母が結婚相談所で最初に紹介された男性と母とのメールのやりとりが残っていた。男性から送られてきたメールには、
件名、これで雅美さんを幸せにしてあげる。
内容、あなたのこと幸せにしてあげたい。あなたは、幸せにならなきゃいけない人です。娘さんも、息子さんも可愛いよ。僕が守ります。こう見えて、絶倫です。必ず雅美さんを満足させてあげます。できたら、あなたのアソコの写メを撮って送って欲しい。
自分で撮った大きくなったオチンチンの写メが付属されていた。

夏休みになると、お姉ちゃんに一歳年上の彼氏ができた。電話でそう話しているのを聞いた。
僕の方は、ロマンスグレーと、お母さんが結婚相談所で最初に紹介された人、お母さんにチンコの写メを送ってきた人、名前は鬼塚さん。と連絡を取るようになった。お母さんとお父さんを別れさせるには、どうしたらいいか聞いた。
鬼塚さんは言った。なんで、別れさせたいの？
僕は言った。ムカつくからです。
そう言われてもなあ、と鬼塚さんは言った。お母さんは好きなんだろ。
うちのお母さん、デルヘルで働いていたんです。
鬼塚さんの顔色が変わった。デリヘル？
はい。
鬼塚さんが言った。別れさせてあげたら、僕が、お母さんのこともらってもいいかな？

僕は頻繁に鬼塚さんとメールした。お母さんの写メが欲しいと言うので送った。パンティーの写メも欲しい。送った。お姉ちゃんの写メが欲しい。送った。お姉ちゃんのパンティーの写メが欲しい。それも送った。ついでに使用済みナプキンの写メも送ってあげた。
親しくなるにつれて、鬼塚さんのことをお父さんと呼ぶようにもなった。鬼塚さんの家にも行った。平屋の借家だった。あまり帰って来ないと言っていた。普段は箱根に居るんだとか‥‥。
鬼塚さんは、僕を裸にした。そして、身体を舐めてきた。
雅美から生まれてきたんだね、と言いながら。
不思議な感覚に、興奮を覚えた。

僕が中学2年の時、大事件が起こった。お姉ちゃんが孕まされた。まだ高2なんだよ。お姉ちゃんを孕ました男の母親が来て土下座した。土下座なんか始めて見たから、なんか、びっくり。
でも、誠意が感じられた。
うちのお母さんなら、僕が女の子を妊娠させても、土下座なんかしないよ、きっと。
とにかく、お姉ちゃんは、子供をおろしたってこと。
その頃、また聴診器でお母さんとお父さんの部屋の声を聞いた。
まさか京香が子供をおろすなんてさ、予想外だよな。とお父さんは言った。俺は本当の父親じゃないから、こういう時、怒れないよ。
ちゃんと怒って、とお母さんは言った。そうじゃないとあの子ダメになっちゃう。
沈黙した後
なあ、とお父さんは言った。君は、高校生の時どうだった？してたのか？処女捨てたの何歳だよ？
お母さんは、黙っていた。
教えろよ。なあ、何歳で股を広げたんだよ。高校の時？
こんな時に、話すこと？デリカシーがないの？

沈黙

嫌、今日は、嫌、お母さんの声。欲情しないで。嫌、もういやだってば。
たまらないよ。とお父さんが言った。京香が股広げてたなんてさ。君と同じで娼婦の素質があるんじゃないのか。
どう言う意味？
いいか、君たちは、僕の顔に泥を塗ったんだかな。僕だって、いろいろ我慢してるんだからな。続けて、これからは僕も好きにさせてもらうからな。京香、京香、好きだよ。
やめて、京香の名前なんて言わないで。嫌、そんなんで欲情しないで。

京香！