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1:妄執 亡夫の愛に狂う女
投稿者:
熊髭
◆OQJdZRTLq.
あの糠漬けが食べたい
夏が過ぎ、朝晩は冷え込む季節 ぼんやりと自分は考えていた 折しも週末は三連休 ピン、と頭の中で弾ける音がした 今日は師匠の命日だ 四半世紀に及ぶ記憶が目まぐるしく脳内を駆け巡る 秀之 ヒデさん、そして 裕美子さん… 「週末は〇〇県に三連だから」 「あ、そうなの? ワンコ久し振りにドライブ連れてけると思ったのに」 二つ歳下の妻が唇を尖らせている ワンコは空気を察したのか、妻の側に添いながら自分を睨み付けている 「また今度、あそこの道の駅に連れてくからさ」 「お土産、地酒なら許す」 「はい すみません」 ウォークインクローゼットの片隅から、丸竹でしつらえた和竿造りの渓流ミノーイングロッドを引っ張り出す ヒデさんが自分にくれた、世界で唯一無二の竿だ 今年でヒデさんと同い年か… アラフィフ んー、実感無いなあ そんなことを思いながら、釣り道具をピックアップしていく あれから四半世紀、か… 二十数年前、自分はまだ二十歳過ぎの若造で、釣りの為だけに生きていた 知り合いから安く譲り受けた三菱の四駆が、寝床兼タックルボックスだった 二十数年前の当時、渓流のミノーイングに嵌まっていた自分は、ある県内を流れている有名河川の支流に固執していた 頭の中にはその流れの隅々まで記憶していて、あの夏の釣行は更に上流を攻めるものだった 対面がやっとすれ違い出来る程の山道をゆっくりと走る 沢の音は微かに聞こえているから、あとはアプローチ出来そうな場所を見付けるだけだ そう思った時、一軒の食堂が目に入ってきた 山の中腹なのだろう、一角だけ開けていて駐車場も何台かは止められそうなスペースが有った 沢の音はより鮮明に聞こえていた 今までの経験から、この駐車場から入渓出来る、と踏んだ自分は静かに車を寄せた ウェーダーを身に付けて、駐車場の縁を、探す 見付けた 雑草で覆われているが、確かに人が踏み固めた道が有った 入渓だ まだ若い自分は小走りで駆け降りた 眼前に予想外に水流豊かな沢が広がる 数分歩くと、高さ二メートル程の堰が自分を阻んでいた この、この堰の上がパラダイス そう自分に言い聞かせながら、岩をよじ登った 「あ、ああっイク イク イクうっ」 岩場から頭を覗かせた瞬間、眼鏡をかけ、顔を真っ赤に上気させた女が居た 対面だが高低差が有るため、見下ろす自分には気付いていない 自分と同じようにウェーダーを身に付けた男女が、岩場で行為をしている 男は何か玩具のような物で、ウェーダーを膝下まで下ろし、岩場に手を付き尻を突き出した女を責めていた パニックに陥り、冷静さを失った自分はポカンとその光景を眺めていた 「イク… ヒデ…イクっ」 生白い尻を痙攣させながら、女が仰け反った 目が 目が合ってしまった 「あ、あ、誰か見て、見てるぅぅっ」 女は自分を凝視しながら絶頂していた パラダイス… 確かに、堰を登った先は、パラダイスだった 続く
2019/11/15 22:30:45(bjNXACfk)
投稿者:
熊髭
◆OQJdZRTLq.
三角巾を頭に被り、秀之と色違いの薄紫色の仕事着を着た裕美子が、カツ丼より先に漬け物と味噌汁を運んできた
他の客 おそらくは地元の農家か漁協の連中だろう、若者から初老のオヤジまで、揃いも揃ってうどんを啜っていた 見るでもなく連中を視界に入れていると、奇妙なことに気付いた 皆、一様に視線が裕美子を捕らえている 配膳の際も、注文を取り厨房へ戻る時も、うどんを啜りながらチラチラと、だがねっとりとした視線を浴びせ続けていた 作務衣風の麻で出来た仕事着 前屈みでテーブルを拭いたりしていると、豊かな尻の丸みがくっきりと見えた 勿論、下着のラインまで丸分かりだ 「カツ丼お待ち」 秀之が厨房から客席に自らカツ丼を運んできた 秀之の姿を見て、連中は慌てて視線を裕美子から逸らした 「半年ぶりだけど上手く出来たんだ、お代は要らないからゆっくり食べな」 秀之が満面の笑みで厨房へ戻って行く まずは味噌汁に口を付け、漬け物を噛じる (この胡瓜の糠漬け、旨いな) 恐る恐る、カツ丼を持ち上げ、一切れのカツを頬張る (醤油の味しかしない!) 連中がうどんしか食べていない意味を即座に理解した 「旨いか?」 「はい、御飯がよく進みます」 この食堂は、裕美子の尻が支えている様なものなのだろう ピッチャーから何度も水を注ぎ足し、気付けばピッチャーは空になっていた 昼時だというのに、客は先程の連中以外には入って来なかった 手持ちぶさたになった秀之が再び現れる 「今朝のお礼と言っちゃなんだが、少し先に養鱒場が有る 併設の釣り堀で時間潰して来な」 手に何かの券を握らされた 「この季節なら夕方には服も乾くから」 先程、自分が浴室で自慰をしている間に、裕美子はずぶ濡れの服を洗濯してくれていた 「帰って来たら作業場に来てくれ」 秀之はそう言って厨房に戻って行った 外に出て、駐車場に止めている車に乗り込む 裕美子が運転席の窓をコンコン、と叩いてきた 「気を付けていってらっしゃい、後…」 「後?」 「若いから仕方無いけど、あんまりお風呂でおイタしてはダメよ びっくりしちゃった」 裕美子はそう言って顔を赤らめながら微笑んだ 「はい、はいはいはいっ、い、行ってきますっ」 バレていた 猛烈な速度でシフトをバックに入れ、スキール音を鳴らしながら駐車場を飛び出した (なんだよ、もう) 顔面がカアッと熱くなる 車の窓という窓を全開にしてもまだ、火照りは収まらなかった
19/11/17 10:53
(xAcZzi.T)
投稿者:
熊髭
◆OQJdZRTLq.
かれこれ二十分程、車を走らせていた 地方のいう「すぐ先」「五分くらい」を甘く見てはいけない、そう感じていた
〇〇村営養鱒場 ホーロー引きの看板に、そう書かれていた ここだ、ちゃちなアスファルト舗装の山道から、脇の砂利道に入って行った 「よう、ヒデ…ん?」 「すみません、この券、使えますか?」 釣り堀の入り口に有るプレハブ小屋が受付のようだった 中に居た初老の男に釣り券を見せる 「顔に何か付いてますか?」 「ああ、いや知り合いの野郎にあんたがそっくりなもんで、つい見入ってしまってな」 「あ、ヒデさんですか」 やはり裕美子の言う通り、秀之と自分は似ているらしい 本人はそうは思って居ない様子だったが 貸し竿を受け取り、ぼんやりと釣糸を垂らす 玉ウキに板重り、鱒針に練り餌というシンプルなタックルだ ビールケースが椅子代わりで尻が痛い 一時間と保たずに腰を上げてしまった 20メートル×10メートル程の四角い池には、自分と、向かいに一組の中年カップルしか客は居なかった 「あ、あれヒデさんじゃない?」 「違うよ、髭生えとらんし、年も若い」 「でもあの服、ヒデさんのシャツそっくり」 ここでも秀之と間違われてしまった 居たたまれなくなり、席を立って釣り掘を後にした 車に乗り込むとやにわに雲行きが怪しくなってきた 一雨来る気配がした 案の定、食堂に戻ってきた時には土砂降りになっていた 駐車場に車を止める直前、大慌てで洗濯物を取り込む裕美子を見た 仕事着を脱ぎ、白いTシャツ一枚の上半身は雨に濡れ、下着が透けていた 見てはいけないものを見てしまった気がして、暫く車中で時間を潰してから食堂に入ろうとしたが、入り口には鍵が掛かっていた それでは、と 隣の古民家の勝手口に回り込む 「おう、お帰り じゃ作業場に付いてきな」 古民家の更に裏手には、離れの様な建物が渡り廊下の先に建っていた ところ狭しと竹材や動物の毛皮、漆の入った缶などが納まっている 壁際にはズラリと和竿が吊るされていた その中に、今朝自分に尺岩魚を釣らせてくれた朱赤のテンカラ竿を見付けた 今はちゃんとグリップが付いている 布袋竹の根を丁寧に黒漆で仕上げたものだった 布袋竹の根は個体差は有るが、間隔を置かず不規則に節が入り、根元部は松茸の笠のように膨らんでいて、人の手に馴染みやすい形をしている なんというか、つまる所、男性器そっくりだ 異形の男性器、そういう表現がピタリと当てはまる 「今朝、グリップが無いって言ってただろう? 実は裕美子のお気に入りなんだよ」 「?」 「だから、グリップ外して裕美子に使ってたんだってば」 「はあ」 なんとも間抜けな返事をしていた
19/11/17 13:30
(hf/TvdAR)
投稿者:
熊髭
◆OQJdZRTLq.
「はあ、へ?」
使う、ということは…この異形のモノを裕美子のアソコに? 見様によってはグロテスク極まりない、布袋竹を裕美子に抜き挿しし、その刺激であれほどの連続イキをしていた、と… 「あのう、さっきお気に入りって…」 「そうだよ、まだ有る」 壁際にズラリと吊るされた和竿、十数本は有るだろうか その全ての握り、グリップは布袋竹だった 変態だ 変態夫婦だ 「あれは裕美子の竿だと言っただろう、そういうことだよ」 秀之は真顔で呟いた その表情は、昼間とうって変わって仄暗い影を見せている 裸電球がチカチカ、と一瞬明滅した 「さ、話は終わりだ タカ、どうせお前さん、今夜はどこかで野宿でもする気だっただろう?泊まっていけ」 「今日会ったばかりの自分に良くしていただいて有り難いのですが…」 「いいから早く風呂でも入ってこい 飯にするぞ」 秀之は半ば強引に離れから自分を連れ出し、台所で晩の支度をしていた裕美子に声をかける 「タカな、今晩泊まっていくぞ」 「ちょうど良かった、洗濯物、濡れちゃったからまた洗い直した所なのよ」 どうやら晩飯は裕美子が支度しているようだ 昼間のカツ丼を思い出し、心の中で安堵した 同時に、背を向けている裕美子の尻に目をやる こんな可愛らしい人が、あんな… 「あいつの尻、良いだろ?」 秀之が小声で囁き、ニヤリと笑った
19/11/18 10:34
(IDys1M5m)
投稿者:
熊髭
◆OQJdZRTLq.
「あら、タカちゃん先にお風呂?」
夏物のゆっくりした薄手のワンピースを着た裕美子が振り向いた ノースリーブの脇からはチラチラと下着が見え隠れしている 「着替え用意するから待っててね」 障子を開け放した奥の部屋へ向かい、南部箪笥から甚平を取り出した裕美子を先頭に、再び風呂場へ向かう 「お昼に入ったから勝手は分かるわよね?」 「はい、あの、昼間は…」 なんともバツが悪い 「ちょっとびっくりしただけだから良いのよ、それでね…」 「はい、はい分かってますっしません、もうしませんからっ」 裕美子は今までの明るい表情から一変して、もじもじしながらそっと囁いた 「それはそうなんだけど、勿体無いから我慢していてね?」 「?」 自分の耳元でそう囁くと、くるりと振り返り、裕美子は台所に戻って行った 昼に一度浴びたとはいえ、この季節は何度シャワーを浴びても気持ちが良い 汗を流し、用意された甚平に着替えて居間に向かおうとすると、玄関から秀之が声を荒げていた 「だから今夜は客が来てるから店は開けないって言ってるだろう?十三さん、あんたもう十分酔ってるみたいだし、今夜は帰ってくれ」 「ちぇっ、分かった分かった、何だよ、他所から来て裕美子をかっぱらいやがってクソ」 五十絡みの短躯の男が、悪態をつきながら乱暴に戸を閉めて出て行った 「ヒデさん、あの、自分の為にお店閉めたなんて、すみません…」 「良いんだ、夜は酔っ払いしか来ないし、どいつもこいつも裕美子の尻目当てだからな」 秀之は豪快に笑うと、台所の床下から何かを取り出した 藁の束が刺さった一升瓶だ 「タカ、お前さん、酒は飲めるか?今夜は特別だ、ドブロクって分かるか?」 「一応、飲めます…ドブロク?って何ですか?」 「まあいい、さあ、飯だ飯だ」 茶の間に戻ると、卓上には地の物であろう煮物や焼き物が並んでいた その中に、一際大きな岩魚の塩焼きを見付けた 「今朝の尺岩魚だ、食え」 夕刻から宴が始まり、二時間程過ぎただろうか すっかり秀之と意気投合し、バカ話や釣りの話で盛り上がっていた 「だからよ、釣りと裕美子、どっちが魅力なんだ?タカ?」 「そりゃ裕美子さんは可愛らしいけどヒデさんの奥さんだし、やっぱ釣りですかね」 「あ?じゃなにか、裕美子には魅力無いのか?」 秀之はいささか悪酔いしているようだ 「じゃヒデさんはどっち何です?」 「うむ、両方」 そう言い放った後、秀之は大の字で寝転がり 大いびきを立て始めた 「あら、主人、寝ちゃったの?」 いつの間にか風呂に入っていた裕美子が戻ってきた 白地に藍色や薄紫色で染められた紫陽花の柄が入った浴衣に着替えていた 「全く、無理の利かない身体なのにドブロクなんか飲むんだから」 湯上がりで桜色に染まった肌、髪をまとめ上げたうなじから垂れる後れ毛、浴衣の合わせから覗く豊かな胸元… 「はい、ヒデさんたら裕美子さんと釣りの自慢話ばかりして大変でしたよ」 「うふふ、付き合わせちゃって、ごめんなさいね」 裕美子はふんわりした笑顔を向けると、空のビールグラスを手にした 「タカちゃん、お酌してくれる?私も飲みたくなっちゃった」 ビール瓶に手をかけると、裕美子は首を振った 「そっち」 なみなみと注がれたドブロクを、一気にコップ半分程グイグイと飲む 上下に蠕動する喉元が艶かしい 「タカちゃん、タカちゃんて、奥さんとか彼女さんとか居るの?」 上目遣いで、じっとりとした視線を自分に向けている
19/11/19 07:31
(mpfPX/T9)
投稿者:
熊髭
◆OQJdZRTLq.
眼鏡を外し、少し潤んだ瞳 明らかに湯上がりの火照りではない肌の紅潮…
「結婚もしてないし、釣りばかりで彼女なんてもう何年も居ないですよ」 対面の秀之は大の字で大いびきのままだ はす向かいに座っていた裕美子が、じりじりといつの間にか右隣に居た 右手を伸ばせば、裕美子の肩を抱き寄せることも出来そうな距離だ 「あのね、タカちゃん…今朝のことなんだけど、」 「分かってますっ誰にも言わないし何も見てませんっ」 忘れていた こんなに良い人達だけど、変態夫婦… 「そうじゃないの…ああいうことをする様になったのは、私のせいなの」 裕美子はグラスの中のドブロクを、残り半分、一気に飲み干した 「タカちゃん、おかわり」 「はいっ」 ふう、と息を吐いた裕美子は、崩していた足を揃え直し、真横で正座していた 「もう随分前の話なんだけど…」 自分がヒデさんや裕美子さんと知り合った当時より、更に昔の話だった 中学二年に上がりたての裕美子は、あの沢で暴漢に襲われそうになり 思わず沢に飛び込んで流されてしまったこと、偶々釣りに来ていたわかき日の秀之に助けられたこと、粗忽な秀之は助けようと飛び込んだものの、川底に頭を打ち、裕美子を救って岸辺に上がってすぐに血塗れでぶっ倒れてしまったこと… 「それでね、血塗れの秀之、主人を介抱も出来ない自分が歯痒くて、人を助ける仕事がしたくて看護学校を目指したの…」 「あ、じゃあそんな昔からお付き合いを…」 「いいえ、その時は人を呼んでお仕舞い…次に会った時は六年後、私が二十歳、主人が二十七、だったかな また血塗れで私の勤める病院に担ぎ込まれて来たのよ?今度は身体中血塗れで」 裕美子が思い出し笑いをしている 血塗れこと、秀之は…大いびきのままだ 一升瓶のドブロクが、みるみる減っていく…
19/11/19 12:45
(qPP8XRgb)
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