ハッピーエンド♪
良かった♪♪
良かった(^O^)/

女の子は少女になって少年を男にし、男の子は少年になって少女を男にする、と。

間違えた。

女の子は少女になって少年を男にし、
男の子は少年になって少女を女にする、ですね

良いものを読ませていただきました。 ありがとうございます。

サツキが何故、囲ワレ者という選択をしようとしたのか考えていたら。。

良かったらどうぞ。

番外編


去年の冬は父さん、今年の秋には母さんか・・。

相次いで両親を失ったあたしは、諸事情により天涯孤独の身の上になってしまった。
お通夜、お葬式、その他諸々で忙しい。
泣く暇なんてありゃしない。
集落の女衆は入れ替わり立ち替わり、何くれと世話を焼いてくれるが、あの書類、この書類、役所に行って何だかんだで、あたしは結構、忙しい。

何より困ったのは『喪主の挨拶』だったな・・。

父さんが死んだ時だった。
母さん、式の途中で具合が悪くなっちゃったから、あたしが代わりに挨拶する羽目になったっけ。

「ほら、これ。そのまま読めばいいからよ。」

神主から渡された紙には、馴染みのない単語がツラツラと記されていた。
忙しそうに去っていく神主。

何、これ・・？

故人は？一重に？ご厚誼？

読み仮名くらい振ってくれればいいのに・・。

いかん・・緊張してきた・・。

あたしは急に心細くなってきた。
集落の皆が見守る中、黙り込んでしまう自分の姿が脳裏に浮かぶ。

こんこん

窓から覗くのは幼馴染のヤヨイの顔。

助かった・・。

実際、ヤヨイはタイミングがいい。
側に居て欲しい時には、いつだって側にいてくれる。
今日だってそうだし、今までだってそうだった。
きっと、これからだってそうに違いない。

がらり

あたしが建て付けの悪い窓を開けると、冷たい冬の外気と一緒に学生服姿のヤヨイが、よっこらしょとばかりに窓から部屋に入りこんだ。

「助けてよ。」

「へ？」

「読めない字が多いし、長過ぎるよ・・。」

「あー。」

さもありなん。
そんな表情を浮かべたヤヨイは、手真似で何かを書く仕草をする。
ボールペンを渡すと、読み仮名を振り、適当に棒線で文章を潰して挨拶を短くしていく。

こいつ、アタマいいよな・・。

隣に座って覗き込むあたし。
互いの肩が触れ、互いの体温が伝わってくる。
ヤヨイの匂いがする。
あたしはヤヨイの匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
たったそれだけで、あたしは安心する。
あっという間に五枚あった挨拶文は二枚程に縮まった。

「ん。」

「・・あ、ありがと。」

無愛想に紙を突き出すヤヨイ。
相変わらず口が重く、余分なことは一言も、、いや、、必要なことすら口に出さない時もある。
でも、あたしを気遣って様子を見に来てくれたのは、その表情から手に取るように分かっていた。
その配慮が嬉しくて、不謹慎にも顔が緩む。

「へへへ・・。」

「・・練習しとく？」

「・・うん。そだね・・。」

あたしは突っかえながら、結局は三回も練習させられる。
三回目の練習を終え、あたしは紙からヤヨイの顔に視線を移す。

「大丈夫かな？」

「大丈夫だと思う・・。」

幼馴染のお墨付きは、あたしに安心をくれる。
いつだってそうだった。
本当に困った時、ヤヨイの姿が視野の片隅に映る。
ただ、それだけで安心出来る。

「じゃな。」

そう言って立ち上がったヤヨイは窓に向かう。

「ね。待って。」

あたしは座ったまま、ヤヨイの方に顔を向けて眼を閉じる。

可愛らしい『おねだり』のポーズ、、のつもり。

えっと・・・頭を撫ぜる、とかでもいいし・・

おでこ、とかホッペに・・・とか・・

出来れば触れて欲しいんですよ、ね・・。

もっと言えば、唇で・・とか希望してます・・。

「こんな時に？」

「こんな時だから、だよ。」

眼を瞑ったまま、答えるあたし。
ヤヨイの『こんな時』は葬儀の最中を意味するが、あたしの『こんな時』は心細さを意味していた。
心細さを払拭する為のちょっとした儀式、それがあれば万事が上手くいくような気がする。

・・やれやれ・・。

ヤヨイはそんな表情を浮かべているに違いない。
ヤヨイの手があたしの片頬に優しく添えられた。

「ん！」

いきなり唇を塞がれた。
しかもヤヨイは舌まで捻じ込んでくる。

ち、違う・・。

こ、こんな時に・・あんた・・。

でも・・ま、いっか・・。

温かく湿ったヤヨイの舌。
あたしは自分の舌を絡めながら、ヤヨイの舌を存分に味わう。
ヤヨイの唾液が口の中に流れ込む。
唾液と一緒にヤヨイの気持ちまで流れ込んでくるような気がした。
あたしはヤヨイを味わいながら、至福の時を過ごす。

・・ずっと・・こうしていたいな・・。

だが現実は無情だ。
頬に添えられていたヤヨイの手が外され、ヤヨイの顔が離れていく。

「じゃな。」

「うん。ありがと。」

おっと確認しておかなきゃ。
これ結構、大事。

「ヌシゃ、式には出てくれるんだよね？」

「ん。」

ならば大丈夫。
ヤヨイの姿さえ見えていれば安心だ。
小さくて弱虫、泣き虫だったヤヨイ。
その背中は、いつの間にか大きく広くなっていた。
相変わらず、はっきりしないし引っ込み思案で煮え切らない時は多々あるけれど。
ヤヨイを見送ったら、急に腹が減っていることに気付く。
腹が減っては何とやら。
あたしは食べ物を探しに台所に向かった。