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2022/03/27 19:31:51 (jSj4bea1)
え?嘘でしょ?無理無理。だってそんな関係じゃないでしょ?俺は奮発して予約した分不相応の47階のフレンチレストランで今月末から支払いが始まる指輪を突き返された。

37歳の俺はこの日、付き合って一年経った32歳の夏美に結婚を申し込んで見事に断られた。
自分のおめでたさに腹が立つ。断られるなど想像だにしなかった。それどころか昨夜など指輪を眺めながら夏美の喜ぶ様を妄想し、その妄想に感動し感涙したりしていた。

夏美は良い女だ、ショックを受けて狼狽える俺に今日の勘定は流石に私が持つと言って自分のカードで支払ったのに俺のTポイントカードを提示して俺にポイントを付けた上にタクシーを拾い、元気出して貴方はとても良い人よ、きっと良い相手が見つかると励まして俺を帰宅させた。

俺はタクシーの運転手に散々愚痴って聞かせた。運転手がうんざりとした顔でお客さん駅着きましたけど自宅はどちら?と尋ねてきた。
俺は自宅までタクシーに乗らず、夏美が運転手に告げた最寄り駅でタクシーを降りた。

俺は駅前の立ち飲み屋に吸い込まれる様に入っていき、力の限り呑み、食った。俺はそのあとも目についた店に何軒か入って酒を浴びるように呑んだ事は覚えている。さらに言うと最後の二軒ほどは誰かと一緒に呑んでいた気がしていた。

俺は唯一自慢出来る事がある。どんなに呑もうとどんな睡眠時間が短かろうと必ず6時半にカッチリ目覚める体質だ。

俺は翌朝きっかり6時半に目覚めた。どうやらスーツを着たままベッドに倒れ込んで眠ったらしい。
上半身を起こそうとすると流石に二日酔いらしく頭がズキンと痛む。

痛む頭を抱えて上半身を起こそうとするが身体が重く動かない。首を持ち上げ痛む頭を起こすと俺の身体の上に女が乗っかっていた。

俺は仰天したが夏美が戻って来たのかと喜び、夏美!と呼び掛けて俺の身体の上にうつ伏せになっている女を起こした。

女が顔を上げる。俺と目が合う。頭が混乱する。全く見ず知らずの女だった。俺は仰天して上半身を起こした。俺が起き上がった事でうつ伏せだった女か仰向けに転がりベッドの端で目を覚ました。

壁は水色でジャンプしたイルカが描かれて、その目が俺を覗き込んでいる。俺の部屋じゃない、ベッドの横にはビニール製の観葉植物。間抜けな南国ムードのラブホテルの一室だった。

ベッドの端で目覚めた女と目が合う。女は俺の顔見てクスッと悪戯に笑う。
凄い。よく起きたね。昨夜のこと覚えてる?酔っ払いさん。女は薄い水色の下着姿だった。シーツをかき寄せると体に巻き付けて俺ににじり寄る。

全然覚えてないの?私達結婚することになったのに…俺を見つめてくる。
俺はドキリとしていた。女はサラサラの肩までの黒髪を揺らして綺麗な瞳に微笑みを浮かべてこちらに左手をすっと伸ばし、俺の顔の前で手のひらをひらりと反転させた。

女の薬指にキラリと指輪が光る。
それは昨夜、夏美に突き返された支払いがこれから始まるエンゲージリングだった。

俺が呆然とその指輪を見つめると、出し抜けに俺のスマホの着信音が沈黙を引き裂く。
布団の中からスマホを見つけた。画面は夏美からの着信を知らせていた。
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2022/03/28 19:07:28    (Zve5esuj)
素敵なお話ですね(//∇//)
16
投稿者:チャーリ ◆tzA0zKThYY
2022/03/28 18:06:33    (W/FZ3wM0)
泣けてくる。どうか続きがハッピーエンドに
なります様に…
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投稿者:(無名)
2022/03/28 16:10:39    (uKwP7utM)
ラブストーリーは突然に。が流れてきそうだよ
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投稿者:(無名)
2022/03/28 15:19:09    (HKIVWP01)
最近は浮気だ不倫だ寝取られだと不愉快な話ばかりだったからたまにはこんな話もいいもんだね(笑)
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投稿者:(無名)
2022/03/28 15:16:51    (9F6uCgDc)
泣けるね!
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投稿者:(無名)
2022/03/28 14:15:25    (RUMxPpOM)
いい話し。
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投稿者:サクマ
2022/03/28 13:50:44    (X7MXRSfh)
俺たちはその日、海岸で昼過ぎまで過ごした。
海岸では何度も見つめ合い、キスを繰り返した。

まさかこんな展開になるなんて思わなかった。俺がポツリと漏らすと、カオリはそれは私の台詞だわ。と笑う。

俺がまだお昼12時回ったばかりなんだね。と腕時計を見て気がつく。朝、6時過ぎからカオリと一緒に目まぐるしい展開の1日だった。そろそろ夕方の気分でいたが時刻は昼を回ったばかりだった。

ねぇまだ時間、大丈夫?俺はカオリに尋ねる。
勿論。大丈夫。カオリが答える。

これからどうしようか?と尋ねた俺に、どうしたい?とカオリが微笑む。
カオリは笑いながら言った。
ねぇ。たぶん同じコト考えてる。ユウちゃんは振られた次の日、ましてやプロポーズの翌日に違うひとに色々考え過ぎて言い出せないでいる。
だから、私が言ってあげる。
今、直ぐに抱いて。

俺はカオリを抱きしめた。
カオリさん、言えなくないよ。僕が言います。
貴方が好きだ。僕も今すぐに君が欲しい。

カオリは俺から身体を離すと俺の頬にキスしたあと俺を見つめて微笑み、言っちゃったね。と言った。
俺はカオリを見つめ返して、うん。言っちゃった。と答える。

じゃあ早く2人きりになろう。カオリが言う。
俺が、そうしようと立ち上がると立ち上がった俺に背後からカオリが抱きついて言った。
わたし、意外と本気かも。
俺は背後のカオリに僕は初めて本気かもと答えた。

俺たちは、そのあと海岸線をじゃれあいながら歩いていき、海岸道路ぞいのホテルに笑いながら入っていく。

チェックインを済ませてエレベーターに乗る。
カオリは、こんなカップル居るかな?1日で2度もラブホテルに行く人たちなんて。と笑う。

しかもラブホテルで一緒に泊まって、翌朝恋に落ちて付き合う事になって昼過ぎに別のラブホテルに行くって。そんな奴ら居ないよねと俺が笑う。

601だって。俺はフロントで渡されたキーについた部屋番号を見せる。
6階でエレベーターの扉が開く。正面に601号室。
俺が部屋の扉を開けて部屋に入り、背中でドアが閉まる音を聞いた時には、お互いの感情は高まり激しくむさぼる様にお互いのくちびるを吸いあっていた。
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投稿者:サクマ
2022/03/28 10:46:57    (X7MXRSfh)
毎朝通勤で使う電車を最寄駅から、ほぼ同じ時間に反対方面にカオリと乗った。
土曜日ということもあるが、まるで違う電車に乗った気分になる。天気が良かった、電車の中は光に溢れていて通勤とは逆のくだり電車の車窓は緑に溢れていた。

カオリは春先の眩しい陽光の中で明るく笑う。こんなに穏やかな気持ちになったのは、どれくらいぶりだろうか。

電車に揺られて俺たちは色々な話をした。カオリが夏美と同じ歳であることや、25歳で6歳年上の隣町の市会議員秘書と結婚して、その旦那が翌年立候補、当選してから議員夫人として支援者や後援会、婦人会に駆けづり回り、その間に子が出来ない事を男親夫婦や支援者に言われ続け、疲れきった時に旦那の女性問題が発覚。

丁度、2期目の選挙の時で旦那は謝るどころか、対立候補陣営の陰謀だ、リークだと怒鳴り散らし、後援会からはこんな時こそ旦那を支えるのが妻の務めだと言われて選挙の出陣式には支援者を前に私の不徳の致すところですと頭を下げる旦那の横で、私が至らないばかりにと一緒に頭を下げることになったのだという。

当選し連日、支援者や後援会にお礼回りに明け暮れていた時に旦那が未だ女性と切れていない、奥さんからも手を切る様に先生に言ってくれと後援会の重鎮から言われ、最早旦那に対する愛は冷めきっていたものの夫婦で苦労して築き上げた立場を壊さぬ為に、重鎮の指摘を伝えるとお前は黙っていろ、俺がひとりでどれだけ苦労してると思っているんだと始まったのだそうだ。

その旦那の顔を見て離婚を決意、翌日に家を出て昔のツテをたどり、結婚前に取った資格を活かしてひとりで生活を始めたのだという。

明るい表情で昔のことよと笑い飛ばしながら話してくれたがカオリは相当な苦労をしてきた女性だった。

終点のひとつ手前の駅で電車を降りて、カオリが好きだという全然有名じゃない小さい海岸、名前は知らないという海岸に俺たちは向かった。

途中のコンビニに寄って俺たちは、缶ビールやサンドイッチ、新聞を買い込んだ。
コンビニ脇の細い下り坂を下ると目の前に青い海が広がった。

春先のこの時期、海岸はまだヨチヨチ歩きの子供を連れた若い夫婦が波うち際を散歩しているだけ。
晴れ渡る空、海は穏やかで遠くから潮騒と子供の笑い声が聞こえる。

砂浜に俺たちは新聞紙を広げ、海に向かって並んで腰を下ろした。

来て良かったね。カオリは春風に髪をそよがせて俺に微笑んで言った。
うん。良かった。昨夜は地獄だったけど、今は天国にいるみたい。海、綺麗だね。俺は答えた。

本当に綺麗。カオリは涼やかな瞳で海を見つめて言う。俺に振り返ると、お天気良いし、海は綺麗だし、ユウちゃんは生き返ったし、こりゃ飲まなきゃならんでしょと缶ビールを取り出し俺に寄越してあのいたずらな笑顔を見せた。

乾杯!俺たちは缶ビールで乾杯した。
何もかも間違えてたなぁ。俺は笑った。
もう夏美ちゃんの事も、プロポーズ作戦の失敗も吹っ切れたけど、いずれにせよ俺があんな初めて行った高級レストランでプロポーズしようとか、見栄張って無理して高価な指輪渡したり、付き合い方というか生き方っていうか全然、無理してた。

今こうしてると、こういう事かって思うよ。休みの日に電車乗って、のんびり海岸でコンビニの缶ビール飲んで。
これで良かったのかも、これが良かったのかも。
こんな風に過ごせる人と結婚すべきなんだろうね。

そんな穏やかな日常の先にいつか、こんな海岸でこんなふうに過ごしてプロポーズとかするのが平凡だけど最高の幸せなのかもしれないなぁ。
俺は幸せそうに波打ち側ではしゃぐ若い子連れの夫婦を見ながら呟いた。

そうね。幸せって普通の生活をずっといつまでも普通に出来ることなのかもしれないね。確かにこんな時にプロポーズされたら思わず受けちゃうかもしれないわねと言ってカオリがビールを口にしながら笑う。

練習していい?俺はカオリに尋ねる。
え?練習?カオリが微笑む。

そう。いつかこんなふうに幸せな時に指輪を渡す予行練習。俺はカオリに笑いながら提案した。

カオリはまた、あの魅力的ないたずらな笑顔を見せて、良いね!やろう!練習しよ。と言ってくれる。

俺は胸のポケットから指輪を取り出した。
こっち向いて。俺がカオリに言うとカオリはこちらに向く。ときおり強い春風がカオリの髪を彼女の顔に撫でつける。

カオリは髪を指で掬い、耳にかけて笑顔を見せる。
俺はカオリを見つめて言った。
初めて君を見た時は酔っ払ってて覚えてないけど、2度目に君をベッドで見た時からずっと好きだった。カオリさん、結婚して下さい。

俺は指輪をゆっくりと彼女の指に嵌めた。彼女は指輪を眺めて綺麗ね。有難う。と言って俺に向き直る。

ユウちゃん、貴方を初めて見た時、貴方は彼女にプロポーズを断られて、お酒に酔っ払っていた時だった。傷ついて酔っ払っても貴方は彼女を悪く言わなかった。わたしは初めて見た時から、そんな貴方を大好きになったわ。

彼女は微笑みながら俺にキスしてくれた。
俺は、これって練習なんだよね?とカオリに尋ねる。

カオリは笑いながら
当たり前でしょ。練習よ。本番は高級レストランでして貰わなきゃと言ってもう一度キスをしてきた。

俺たちの付き合いはこんなふうにして始まった。

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2022/03/28 10:30:09    (XZsQqube)
続きが読みたくなりました♪
よろしくお願い致しますm(__)m
8
投稿者:(無名)
2022/03/28 06:05:28    (sAiNU9/F)
すごい面白い!
もっと読みたいですね。
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