来た。私は心で呟くのと同時に鼓動が高くなって来ました。「はーい」と玄関に迎えに行った妻の声もいつもより上ずっています。カチャ。と鍵を開ける音が聞こえ次に健の声が聞こえました。「おぉ。これはこれは…由紀ちゃん。何だか今日はとってもセクシーだね」きっと頭から足の先まで舐めるように見てるに違いない。そんな健を想像してまだ何もされてもないのに興奮していました。「もう、健さんったら…あんまりジロジロ見ないで、早く上がって」褒められてまんざらでもない妻の言葉。私の予想は的中していました。「まぁ、いつも由紀ちゃんはセクシーだけどね」そんな事を言いながらリビングに入って来ました。「よう」私と健は顔を合わせると同時に声を出していました。「なぁ、あの服装、宏樹がさせたのか?凄くセクシーだな」妻には聞こえないように小声で話してきます。「イヤ、俺は何も…」「マジで?じゃあ俺の為に?」健は興奮したようにそう言うと「なぁ、いまさらだけど本当にいいんだな?」もう後戻りは出来ない。それに私は早く見たいという気持ちしかなく「本当にいまさら…だな。ここまできて、俺が止めてくれって言ってもどうせ聞かないだろ?」私は健の優しさに冗談で返し「まぁな。あんな由紀ちゃん見て我慢出来る方がどうかしてるよ。なぁ、俺たち、これからも友達だよな?」健らしくないと言えば失礼かもしれませんがそんな言葉に「当たり前だ」と答えました。「最初は見てるんだよな?」「あぁ。ずっとじゃないから安心してくれ。くれぐれも由紀にはバレないように頼む」「わかった。任せておけ」こそこそ話している二人を見て「もう、何男同士で内緒話してるの」と、ちょっと怒ったような口調で妻が割って入って来ました。「ごめんごめん。じゃあ俺は出ていくから。由紀。健といる間は俺の事を気にしなくていいから」そう言って抱き締めました。「うん…わかった。愛してる」「俺も愛してる」言葉を交わした後「じゃあ健…後はよろしく」と言って玄関を出て鍵を掛けました。といっても本当に出ていく訳もなく、階段を降りて僅かに上げていたシャッターを潜り家に戻ると、足音を立てないように階段を上って行きました。既にリビングに二人の姿はなく、向かって右側、玄関に近い方の引き戸が半分程開いてる状態で、微かに二人の声が聞こえました。私は慎重に健が作ってくれた隙間に近付き二人の会話を聞いていました。「由紀ちゃん。本当に…大丈夫?さっき宏樹にも聞いたけど…」その言葉に今まで抱いていた健の印象が私の中で変わっていきました。人懐っこいところが好きでしたが、どこかで女好きでチャラい奴と思っていたのですが、本当に優しい一面があるのだと思って聞いていました。「私なら大丈夫だよ。心の準備はしたから。ちゃんと宏樹とも話し合ったし、それに…健さんだから抱かれてもいいって思ったの」確かに私にもそんな事を言ってましたが、健本人に言うとは予想もせず、私が聞いてる事を知らない妻の言葉に嫉妬してしまいました。「俺に?嬉しいな…じゃあ、今だけはお互いの相手を忘れて楽しもうか」会話はなくなり耳を澄ましていると舌を絡ませているとわかる音が聞こえ恐る恐る、中を覗きました。私の目に飛び込んで来たのは、立ったまま妻が背中を向けていて健の首に両腕を巻き付け濃厚なキスをしている二人の姿でした。
...省略されました。