2026/07/04 22:58:43
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「おはようございます。」
ゆっくりとスライドするドアの奥から現れた見知った女の姿。
以前と違ったのはその服装。
元々控えめで清楚な印象だった女が、前回よりもタイト目な洋服を選び髪型も変わっている。
明らかに男の目を意識したモノ。
色気づいた…、と言えば語弊がありそうだが、それはまさにプログラムを意識した変化と言えそうだ。
失礼ながらにモニターを見つめながらひとまずの挨拶だったが、届いていなかったのか。
神妙な面持ちで、椅子に腰を下ろしてから口を開く。
(まぁ、そんなところだろう…と思っていたけどね…。)
想像通りあるいは想定の範囲内の懺悔にも近い告白に耳を傾けながら、程なくして手を止め、身体を完全に女の方に向けて話を聞いていた。
帰宅後、色々考えたのが手に取るようにわかる。
少し上気して見える表情、やや上ずった声色、上下する胸元。
かなりの羞恥を感じながら、相応の勇気を振り絞って、想いを言語化している。
一度開いた口、吐き出した言葉は戻らない。
勢いのままに全てを吐き出し、さらけ出した感情を全て引き受けた後、男はゆっくりと言葉を返す。
「よく…勇気を出してくれましたね…、果歩さん。
羞恥心は必要なことだと、前回は私は言いました。
しかし、必要だと感じながらも、その羞恥心を受け入れること、その羞恥心を求めることとでは雲泥の差がある。
私にはまだ、心の準備が、必要だと感じました。
貴女の身体の反応に異常など一つもありませんよ。
その羞恥心も、そしてその羞恥心から感じる感覚が下着を湿らせていたことも…、異常ではない。
確認しましたよね…?
勃起はどうして起こるのか…。
貴女は性欲を感じて勃起する、勃つものだと仰いました。
勃起することは性的興奮から生まれる。
下着を湿らせたのも同様です。
果歩さんにとって、羞恥は性的興奮に繋がっているんだ。」
すっとデスクから引き抜いた『長島氏ED回復プログラム』のカルテ。
その数ページ目を開くと、「妻:長島果歩の性的興奮、性癖の理解。」と書かれている項目を指し示す。
「わかりますか…?ご主人が貴女に性的な興奮を強く感じることが最も重要。
では、その為には何が必要か…?
果歩さん…、貴女自身が自分の性的な興奮の対象が何なのかを知ることなんです。」
強引と言えばそれまで。
しかし、出来る限り自然な流れで違和感を極限まで抑え、導いていく。
「視覚へのアプローチ。見せる行為、見られる行為に何を感じるのか。
それは触覚でも聴覚でも同じことです。
何を見せることが、どこを触れることが、触れられることが…、貴女を興奮させるのかを知らなければいけない。
最愛の妻の興奮している姿程、夫にとって性的興奮につながる要素はないんです。
今プログラムは、貴女の性癖を確認するプログラムでもあるんですよ…。
だから必要なんです、貴女が貴女を偽らない事、誤魔化さない事。
その為にも私が、それに足る人間でなければならない。
分かって頂けますか…?奥…、いや、長島…果歩さん…。」
気づけばそっと女の手を取り、強く握りしめていた。
しなやかな指先を包むように男らしい、太く手長い指先。
それ以上に力強い視線が、やや下から見上げるように女の心を鷲掴みにするように瞳の奥に注がれている。