2025/05/27 23:18:57
(pcf8GjSA)
「ふぅ…。」
悩んだ末、とはいえ、受付を終えてもなおこの選択が正しかったのかどうかわからない。
どんな意味合いを含んだため息なのかも定かではない中、待合室で今まで感じたことのない緊張感を覚えながら俯き気味に腰を下ろしていた。
症状の原因は大方想像がついている。
自身に非はないとはいえ、やはり男性を象徴するモノの機能が不全というのは受け入れがたい羞恥を感じさせる。
詳しくは知らないものの、診察は女性がするらしいことは調べた限りでは間違いないらしい。
ただでさえ惨めにも感じる症状を、女性の前で晒すのか…。
そう考えれば考えるほど、症状が悪化しそうな気さえしてくる。
とはいえ、口コミを見る限り評判は悪くない。
症状の改善、あるいは、患う以前よりも良くなった、という書き込みさえ見かける。
一縷の望み…、しかしそれはいったい誰の為なのか。
原因を作った妻…?
あるいは自身の男としてのプライドの為…?
齢38にして、ある意味岐路に立たされている気がした。
職場ではそれなりの役職に就き、慕ってくれる部下も少なくはない。
何とか取り戻さなくては…。
生き甲斐…にも近い、男としての自信を…。
なんとか自分の中で踏ん切りをつけ、心新たに診察に臨もうか…そんなタイミングでの事。
「あ、あ…はい…。
お願いします…、櫻井…です。」
心ここにあらずだったか、目の前で、しかも跪いてまで声を掛けてくれていた少女…?に気づくのが遅れてしまう。
そう、少女…と思ってしまう程、その跪いた女性は幼く…それでいて、想像以上に愛らしかった。
「こ…んな…。」
こんな可愛い子が…。
と言いかけて慌てて口を塞ぐ。
容姿なんて…、外見なんて関係ないはず。
しかしどこかで、どうせやっつけ仕事で自分に近い年齢の女性が…と思っていた。
それがまさか、少女と思ってしまう程幼く見える女性だったなんて…。
この先に待ち受ける診察…の想像もできない出会いだった。
【櫻井和人 38歳 大手商社勤務 課長職。
黒髪の短髪。
173cm 中肉中背。
際立ってイケメン…というわけではないが、職業柄清潔感という点では日ごろから注意をしている。
本来の人柄は、物腰が柔らかくおおらか。
人当たりも良く、部下からの信頼も厚い。
妻の不倫を知ってもなお、妻の為と言い聞かせ診察に赴くのはやはり真面目であり、妻を愛しているからか。】