はっ、はっ、はっ、はっ…(神戸に戻ってからの律子は再び泳ぐための身体を作るために走り込みを毎日しています。朝の気配に白い息。寒さはまだ肌を刺しますが、前を向いた律子には心地いい刺激です。)はーっ!はーっ!はー…サボってたからなぁ…まだまだだわ……まな…どうしてるだろ?(水を飲みながら休憩して、ふと空を見上げる律子は、あれ以来連絡していなかったまなみを想います。すればできるのに、なぜかできずにそのまま…何かを決めたように、律子はまた走り出します)…しゅんいち、岡山いこ?あたし、まなに会いに行きたい!電話で一言も大事だけど、それよりも会って話したいから…(その返事を渋るしゅんくん。律子はその手を握ります。)あたし、知ってるよ?しゅんいちが考えあって、あたしからまなを遠ざけてたの。絡まりすぎないように離してくれたんだよね?でも、今のあたしはもう違うから。今度はまなにも、それを知ってもらって、2人でまた変わりたいの。(決意の瞳はかたく、まっすぐにしゅんくんを見つめて射抜きます。ため息をひとつ大きくつき、やれやれと笑うしゅんくん。一緒に行くよ?と律子の頭を撫でます)ありがと。じゃあ、ゆうさんに連絡しておくわ。…?まなはね…何となく今は話しにくいな…恥ずかしくて…ね?…え?りっちゃんがくるの?いつ?今までどうしてたか、何か言ってた?(あれからのまなみは、やはり普通に生活する中に、あの冷めた瞳が時折出るような状態でした。ゆうすけさんから律子の事を聞くと、ゆうすけさんの腕を掴んで揺さぶりながら、矢継ぎ早にいろいろ質問をします)りっちゃん…りっちゃん…りっちゃんに会えるんだ…ようやく…会える…(嬉しそうに律子の名前を何度も呼び子供のように笑いますが、その瞳はまたあの暗く冷たい瞳…ユラリ…あの瞳で微笑みを向けられて、ゆうすけさんは背筋が凍る思いがします。そして約束の日…)「まな…ただい…うわっ!ちょっと!」りっちゃんおかえり!おかえりっ!ずっと声かけなくてつらかった!怖かった!何かあったの?大丈夫なの?ねえ?ねえ!「ちょっ…落ち着きなさい。あとでゆっくり話すから。まずは…あがらせてくれないかな?」あっ…ごめんね?(律子はくっついて離れないまなみと一緒にあがります。ゆうすけさんに笑みを浮かべて軽く会釈する様は、あれから一皮も二皮もむけて大人の女性になったとゆうすけさんに思わせます。律子はふとした拍子によろけます。しゅんくんが支える為に手を伸ばした時です)…だいじょうぶです…(小さく呟き、その手から律子を離すように抱きしめるまなみ。そしてしゅんくんも、まなみの暗く冷たい「あの瞳」を目の当たりにします。しかもその視線の狙いが自分に向けられるように鋭くて…一瞥するように目を瞑り、律子を向くまなみの瞳はいつもの恋する乙女のように…)ほら、りっちゃん!お茶しようよ?りっちゃんの好きなお菓子、用意してあるからさ?子供たちも待ってるよ?お話、ゆっくりでいいから聞かせて…(今一度手を伸ばしたしゅんくんのその手を、ゆうすけさんは止めます。そして、話があるから外に出ようと目くばせします)なに、ゆうすけさん。散歩がてら買い物?あまり遅くなっちゃダメだよ?(いつもなら、ほしのくんも来たばかりだからゆっくりさせて?と言われるはずが、しゅんくんの名前すら出さずに送り出します。律子もまた、2人を見送る瞳の暗さを見抜き、息を飲みました。)「し…しゅんいち?ごめんね、着いたばっかりで。ちょ、ちょっとゆうさんと…おねがいできる…かな?」(おかしい…おかしすぎる…見た事のないまなみの瞳に怯えて戸惑いの顔をして、律子はしゅんくんを気遣います。とにかく、まなみはしゅんくんをいない人のように扱うのです。まわりには明るく振る舞いますが、そのテンションも異様に高く、和やかながらピリピリした空気が漂います)『まながおかしい。ゆうさんに何か心当たりないか、聞いてみてください』(律子はお茶の支度をするまなみの目を盗み、しゅんくん
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律子は旅行から戻ると、本格的に水泳を再開する為に毎朝走っていた。僕は律子が戻ると必ずマッサージをして、筋肉に疲れを残さず、筋力をあげるツボを押さえて競技への復帰の後押しをしていた。そんな時に律子から「…瞬一、岡山に行こ?あたしまなに会いに行きたい!電話で一言も大事だけど、それよりも会って話たいから…」といつものマッサージを終えて言われた。僕は遂にその日が来たか…律子はもう大丈夫だと思うけど、これまで連絡を取らさない様にしていたから…まなみさんがどんな思いでいるのかどうか…突然会いに行った時のまなみさんの反応が心配だ…と思って返事を渋っていると「あたし、知っているよ?瞬一が考えあって、あたしからまなを遠ざけてたの。絡みすぎない様に離してくれていたんだよね?でも、今のあたしはもう違うから。今度はまなにも、それを知ってもらって、2人でまた変わりたいの。」と僕を真っ直ぐ決意のこもった瞳で言ってくるので…僕はため息一つついて、「やれやれ…仕方ないな…それじゃ僕もついて行くよ?」と言って律子の頭を撫でた。「ありがと。じゃあ、ゆうさんに連絡しておくわ。」「えっ?まなみさんにじゃあないの?」「…まなはね…何となく今は話しにくいな…恥ずかしくて…ね?」と言う律子。僕は何となく恥ずかしいだけではない、まなみさんに対する不安もあるような気もしたけど、真剣な律子の表情を見てそんな事は言えずに微笑んでいた。ある日、僕は律子から電話がかかり驚いた。「りっちゃん?りっちゃんかい?久しぶりだね?元気していたみたいだね?とても声に張りがあって、イキイキして聞こえるよ!あんな事があって苦しんでいるのは知っていたけど…えっ?こっちに来るって?まなみに会いにかい?そうか…きっとまなみは喜ぶよ…でも…どうして、僕に連絡をくれたんだい?いつもなら直接まなみに連絡するのに…まぁ、いいよ?いろいろあったんだろう。僕からまなみに伝えておくよ?」と話をして電話を切った。僕はまなみのイヤな変化を律子に伝えて良いのかどうか、悩みながら話をしていたせいか、いつもより声のトーンが低く、話にも歯切れが悪かった。まなみに対しては極めて普通に「今度の休みに律子が来るよ?」と話をすると…まなみは僕の腕を掴み、揺さぶりながら矢継ぎ早に質問をして来た。あの暗い感情のない瞳で子供のようにはしゃぎながら僕に微笑むまなみを見て、背筋が凍る思いがした。するとその日から律子が来る日まで、まなみは僕を誘う事はなかった。僕が誘ってしても、その瞳は僕を見つめているのに、僕を見ていなかった…まるでこれから来る律子を待ちわびているようで、早く律子に抱かれたい!そんなふうに感じて、まるで感情のない人形を抱いている感じがして…それでも僕はまなみの中に芽生えた闇を祓う様に律子が来る日まで僕はまなみを抱いた。だけど…まなみの闇を祓う事は出来なかった。そして律子が来る当日。まなみは朝からかなりテンションが高く、鼻歌交じりに準備をしていた。律子が来るとすぐに抱きつき、纏わりつきながら、くっついて離れず玄関先で話をしていた。律子に言われてようやく一緒に上がり、僕に笑顔でお辞儀した律子は一皮も二皮も剥かれ大人の綺麗な女性に変わっていて、息を飲んだ。律子が玄関を上がったふとした拍子によろめきしゅんくんが手を伸ばした時「…大丈夫です…」としゅんくんの手から離す様に律子を抱くまなみ。しかもあの暗く冷たい瞳でしゅんくんを睨み付ける様にして…しゅんくんの表情が強ばるのが解る。まなみは一瞥する様に目を瞑り、再び律子を見る瞳は恋する少女の様に耀かせながら「ほら、りっちゃん!お茶しようよ?りっちゃんの好きなお菓子、用意してあるからさ?子供たちも待っているよ?お話、ゆっくりでいいから聞かせて…」と話するまなみ。もう一度手を伸ばそうとするしゅんくんの手を取り、ゆっくり頭をふり話があるから外にと目配せして、出ようとすると「なに、裕介さん。散歩がてら買い物?あまり遅くなっちゃダメよ?」といつもなら着いたばかりなのに…と言うのにしゅんくんの名前さえ呼ばずに送り出そうとするまなみに僕は『まさか、まなみはしゅんくんに対して、敵意を持っている?律子の旦那になる人だからか?イヤ…それはもう随分前にわかっている筈。
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(律子に会ってタガが外れたように、あの瞳のままでまなみは律子にずっと寄り添っています。距離が近すぎ、過剰なまでのスキンシップを求めてきます。律子はひとまず、自分に起こったことをゆっくりと話していました)そっか…あのおかげでそんなことに…それで誰にも会えなくて、話せなくて、水泳お休みしてたんだね?でも…以前よりも元気になって、もっともっと綺麗になって、まなのところに帰ってきてくれてよかったぁ…ほんと、心配したんだぞ?「その件はホントにごめん。あたしも限界超えちゃってボロボロだったから…でもね?何か変わるかと旅行に行って、しゅんいちが懸命にささえ…」(しゅんくんが寄り添ってくれて…そんな話になった途端、まなみの気配が変わります。表情は相変わらずにこやかですが、その中はひどく暗く冷たい…律子は息を呑み怯えて言葉を仕舞い込みます)「ん…な、何でもない…よ?」そう?ともかく、りっちゃんがこうしてまた笑ってくれて、まな本当に嬉しいよ!「あ…う、うん…ありが…とう… …んっ…」(怖い…律子の心は明らかに今のまなみに怯えています。子供たちはお昼寝中…身体はグイグイと求められ始め、ベッタリ引っ付き、胸を押し付けるように寄り添います。手は腰に回して撫で回され、律子は思わず小さく声をあげます。それは感じたのと怯えたの両方。心と身体、両方丸呑みされるくらいのまなみに、律子は心の中で叫びます)〈たすけて!しゅんいち…!〉「あら?珍しいじゃない、そのツーショットなの?」(しゅんくんの律子を守る断固とした決意を見せられて、事は穏便に済まないだろうと思い、いっそ彼にまなみの夜のこともすべて…と口を開きかけた時、唯に声をかけられます)「星野さんいるって事は…律子もう来てるんだ?ゆうすけさんから連絡もらって、お土産もってあの子の様子を見に行こうとしてたんどけど……まなの事…?」(だまって頷く2人。何かを確信したかのように、唯はしゅんくんに問います)「ねえ、星野さん?律子はどっち選びました?まなと…前以上にひとつになるか、それとも離れるか…?まなは…あの子は自分には律子がいないと、律子にも自分じゃなきゃダメだってずっと思ってる。あの2人は、魂の根っこで繋がってて、どちらがかけても成り立たなくなる。今回の事で、律子は外に外に伸びていこうと決めて、まなは今その枝を絡めとってまた自分の中に仕舞おうとしてる…そんな気が…します」「ちょ…っ…まって…ま…な…っふっ…」りっちゃん?まなはずーっとりっちゃんの事待ってたんだよ?ゆりなの時以来…まな、律子が欲しいよ…律子を包んで砕いてしゃぶって…また…ひつとになりたいよ…「まな…まちなさい!まな!あなたおかしいよ?いつものまなじゃない!どうしたの?まな?ま…んっ!んんんんんっ!」(耳元で囁かれてビクビク!と反応してしまう律子。指先で首筋を撫でられて力が抜けた拍子に押し倒されます。両手首を頭の上で押さえつけ、明らかに怯えて拒絶の色を見せる律子の唇を奪います。)くち…くちゅ…ん…ちゅぱちゅ…あむぅ…んむぁ…りつこ…りつこぉ…んむうっ「っひぅっ!あもっ…んむううっ!まなまって!まなっあもおおおおっ!おむうっ!んむううっ!」(唾液たっぷり絡ませた舌を、律子の口のなかでかき混ぜます。びくん!びくん!と身体を弾けさせる律子。本当に飲まれてしまいそう…懸命に律子は口を離すと、つい叫んでしまいました)「ぷはあっ!たすけて!しゅんいち!」…そっか…やっぱり…りつこはそっちに行っちゃうんだ…「何言ってるの!あたしがしゅいちのお嫁さんになるって、一番喜んでくれて泣いてくれたの、まなでしょ?」…させない…そんなことさせない…りつこはあたしだけのものなんだ。あたしだけが交わっていいんだ… いやなの?りつこはあたしとエッチするの…いやなの?(まなみの瞳の影は恐怖をまして、釘付けにした律子を金縛りのように瞳でも押さえつけます。しゅんくんの名前を出した途端、凄みも加わりました。)あたしの律子を…閉じ込めて連絡も奪って…許さないんだから…あたしから、律子を摘み取ろうとしても…そうはさせないんだから…「まな、こわいよ!だめだよまな!そんな気持ちじゃだめ
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僕はしゅんくんの覚悟を目の当たりにして、僕もまなみとの関係を…夜の営みについて話そうとした時に「あら?珍しいツーショットね?星野さんがいるって事は…律子もう来てるんだ?
裕介さんから連絡もらって、お土産持ってあの娘の様子を見に行こうとしてたんだけど…
…まなの事…?」と唯さんに声をかけられて言われ…
黙って僕たちは頷くと唯さんが何かを確信した様にしゅんくんに向かって「ねぇ、星野さん?律子はどっちを選びましたか?
まなと…前以上にひとつになるか、それとも離れるか…
まなは…あの娘は自分には律子がいないと、律子にも自分じゃなきゃダメだってずっと思っている。
あの2人は魂の根っこで繋がってて、どちらが欠けても成り立たなくなる。
今回のことで、律子が外に外に伸びようと決めて、まなは今その枝を絡めとってまた自分の中に仕舞おうとしている…そんな気が…します。」と言われて、顔色が変わるしゅんくん。
「確かに律子は外に伸びようとしている。
でも…でもあのまなみさんが…そこまで…」と狼狽えながら言うしゅんくん。
それは僕も同じ気持ちだった。
唯さんの言う通りだったとしても、あのまなみが一番大切な律子に対して果たしてそこまでするだろうか?と僕はある意味軽く思っていると
…
「ともかく!早く帰んなきゃ!
何か…嫌な予感がするんです!必ずまなは律子を求める…でも…心がお互いを向いてないなら…それは無理矢理犯すのと同じだもの…」と言う唯さんに促され急いで家に戻った。
しゅんくんは険しい顔をして先頭に立ち、家に入るとそこには律子に馬乗りになっているまなみの姿があった。
「…あ、もう帰ってきたんですか?…」と言うまなみの下に怯えて涙を浮かべている律子が目に入ると同時に「律子からどけ!まなみ!」と叫びまなみの身体を力一杯突飛ばして怯えて涙ぐみ震えている律子を抱きしめた。
「大丈夫か?律子…帰って来るのが遅くなってごめん。もう大丈夫だからな?」と言ってセーターを下げ、スカートも直して、露になっていた肌を隠して律子の頭を優しく撫でていた。
僕が入った時、ちょうどしゅんくんがまなみを力一杯突き飛ばす瞬間を目の当たりにして、まなみを思わず抱きしめた。
しかしまなみは律子の方に行こうともがいていた。
すると唯さんがまなみの瞳を見て「うそ…やだ…あの瞳だわ…ううん…あの頃よりも…もっと冷たくて…暗くて…怖い…」と言ってその場で震えて立ち竦んでいた。
僕の胸の中で暴れるまなみが「なんで引き離すの!裕介どいてよっ!あなたも律子を離してよ!」としゅんくんを睨んで叫ぶまなみ。
続けて「律子はあたしだけのなんだ!だから…だから…
だから返して!あたしの律子を今すぐ、あたしの中に返してよ!」と叫んだ。
僕はまなみを僕の方に向けて「まなみ!いい加減にしろ!目を覚ませ!
今、自分が何をしているのかわかって、やっているのか!
律子はまなみのじゃない!律子は律子のだ!
今まで守ってくれていた律子に今、まなみは何をしている?何をした?
律子はもう1人のまなみじゃなかったのか!
それなのに、それなのに…している事はまなみが一番されたら嫌な事をしているのは何故だ!
今のまなみこそ、一番今の律子に相応しくない!」と言ってビンタをした。
すると子供たちが起きた気配がして「唯さん。悪いけど、子供たちの面倒頼めるか?
今のまなみの姿…子供たちに見せたくない。」と言ってお願いをした。
そして「僕はまなみをこのまま連れ出す。このままじゃ話にならない。
りっちゃん、ごめん。もうまなみはダメかも知れない。
僕がまなみの深層心理にもっと早く気づいていたら、りっちゃんにこんな思いさせなかったのに…本当にごめん。
しゅんくんと幸せに…」と言って
暴れるまなみを抱えて家から出た。
【まなみさん…こんな感じにしか出来なかった…
子供たちにこんなママ見せたくない。】
(突き飛ばされて大きく転げていくまなみ。起き上がった瞬間みたものは…ほぼ全裸に近いくらいに剥かれて、衣服が乱雑に乱され、怯えて泣きながらもまなみを心配してこちらを見る律子。思わず差し伸べた手に対して律子は…)「いやっ!やだこないで!触らないでっ」(律子は、とにかくまなみの瞳が怖くて仕方なかったのです。それは以前自分が堕ちた暗く冷たいプールの水と同じ漆黒…はっとした時には、すでにしゅんくんの胸の中に守られてしまいました)「あ…あたし…そんなつもりじゃ…きゃ…」(言葉を遮られてぎゅっと強く抱きしめたしゅんくんの腕は震えていました。続いてバシンッ!となる乾いた音。言葉を失い泣きながら音の方を見ると…)…っ!いたいっ!…なによ!なんでよ!みんなしてりつこばっかり!あたしの気持ちはどうでもいいの?わけも分からず連絡が途絶えたりつこの事を、どれだけ心配したか…毎日身が引き裂かれる想いだったのに!知らない電話が鳴る度にビクビクして!手をどれだけ伸ばしても!どれだけ心を想わせても!あたしからいなくなろうとしてるりつこを取り戻そうとして何が悪いのよ!っ!いたいぃっ!(溜め込んだ思いの丈を思慮なしにぶちまけるまなみ。ゆうすけさんはもう一発反対の頬をぶつと、まなみの無理矢理抱えて家を出ます)いやだっ!やだああああっ!りつこ!りつこりつこりつこおっ!(呼ばれた律子は何も答えられず俯いたままでした。その気持ち…痛いほどわかる。けど、今のあの瞳のまなには振り向けない。悲しいくらい複雑な表情で出て行くまなみを目で追います。そして矢継ぎ早に…)…え?帰る?まってしゅんいち!まななら少し頭を冷やせば間違いに気づくから、またいつも通りのあの子に戻って帰ってくるから…おねがい、しゅんいち…いまこんな形で別れたらあたしたちもう…しゅんいち!しゅんいち!お願い待って!」「…こんな姿にされてまで、まだまなみを信じるのか、律子!」「ちょ…ちょっと!離してよ!ゆ…唯!まなに伝えて!あたし待ってるって!待ってるからって!」「…どうなっちゃうの…わたしたち…どうして…こうなったの?」「…あれ?ゆいおねえさん?ママは?」「あ、ゆりちゃん…ママたちはね?ちょっとお出かけするって?お姉さん、留守番頼まれたの…りっちゃんたちもね?急に用事できて…これなくなっちゃった…」「そっかぁ…残念だなぁ…?お姉さん、どうして泣いてるの?っ!ちょ…力強いよ!ちょっとぉ!」「ごめんねゆりちゃん…ごめんね…ごめんね…」(嫌な空気だけが残る部屋に1人残された唯。起きてきたゆりなをきつく抱きしめると、崩れ落ちて泣いてしまいました。その頃、車で連れ出されたまなみは、律子の言う通り、時間が経つにつれて自分のした事言ったことを冷静に捉え出しました。でも瞳はあのまま…ゆうすけさんは以前にまなみと蕩けるように一つになった高台の駐車場に連れて行きます。日も落ち始め、眼下の街に灯りがともりだします。)…手…つないで…(自分がした恐ろしい事…一人で受け止めるのが怖くて、まなみは手を伸ばします。ですが、ゆうすけさんは険しい顔で前を見据えたまま…)無視しなくてもいいでしょ!あたしだってさっきの事はダメな事したって思ってるわ!だから!手を握って話したいって言ってるじゃない!「今のまなみから何を言われても聞く気にならない」?どういうこと?いまのあたしって!「今のおまえの顔をよく見てみろ!」ちょっ…ゆうすけ痛い!離して!はなし……これ…だれ…?(ゆうすけさんに無理やりルームミラーを向けられて頭を掴まれて見せられたその顔は…)なに…?この目…真っ暗で…怖い…醜くて…ドス黒いなにか…感じるよ……そっか…あた…まな…こんな酷くて醜いままでりっちゃんに迫って…ほし…のくんも…傷つけた…ゆいちゃんもたぶんいま…泣いてる…それにゆうすけ…さんにまで…まな…まな…(自分の姿を見せられて、初めてまなみは我に帰ります。「あたし」から「まな」へと戻り、それぞれを傷つけたことを後悔して…ゆうすけさんはここで初めて抱きしめようと手を伸ばします。ですが…)触らないでっ!まなは…いま…そこに行く資格…ないんだ…ごめんね…ゆうすけさん…ごめんなさい…
...省略されました。