2014/03/05 21:26:55
(elsssErr)
今、ガキの部屋の布団の中だ。
雨の中、午前6時15分に着いた。
近くの駐車場に車を止めて狭い道を歩いてガキの家へ。
ああ、どうしてだろう。
連絡してないのにガキが門の所で待っているのは。
小さな水色の雨傘とショーパン姿。
門の外に立って、じっと俺の方を見つめている。
「お兄ちゃんだ。やっぱりお兄ちゃんだ。お兄ちゃんが来てくれた。」
すごい勢いで傘を捨てて駆けてくる。
危ないなあ。俺の傘を捨てなくちゃ。
雨の中で両手を広げて俺の首に飛びついてくる。
抱き上げた・・・。相変わらず軽すぎるぞ。
「お兄ちゃん・・・」
一度抱きついた俺の首から身体を離し、ガキは俺の目をじっと見つめる。
ガキの目には「どうしたの?」とも「お仕事は?」とも聞いていない。
ただ、俺が目の前にいることを、ひたすら確認して納得している。
もう一度、抱きついてきた。俺も抱きしめた。
どうして、こんなに細くて軽いんだ。
そのくせ、どうしてこんなにすばらしい抱き心地なんだ。
ガキの顔を見たら、学校が終わるまでどこかで時間を潰すつもりだった。
でも、ガキは無理やり家に引っ張りこむ。
母親に挨拶する。この女性も不思議な人だ。
俺が急に来た理由も、遭難したことも、ガキのインフルエンザのことも聞かないし言わない。
俺がガキに鬼畜したって分かってるはずなのに、今日も感じの良い笑顔で迎えてくれた。
ガキが無理やり俺を朝食の並ぶ食卓に坐らせる。
「私が作ったから上手じゃなくごめんね。」
すまなそうの表情でみそ汁を注いでくれる。
俺の家でみそ汁作ってくれた時と同じセリフだね。
美味しいよ。何より温かいよ。
って待てよ。みそ汁も飯もお前の分じゃないか?
朝飯が終わったら、ガキが二階の自分の部屋に布団を敷いてくれた。
「朝早くて眠たいでしょう?少し休んでね。」
服を脱いで布団に潜り込む。
ありがたい。ガキの布団だ。ガキの匂いがする。
ガキの匂いに包まれて、あっという間に眠りについた。
疲れ溜まってたかな。目が覚めたのが午後2時すぎ。
ガキも母親もまだ帰っていない。
一人でガキの用意してくれていた昼食を食べる。
なんか、自分の家に帰った感覚だぞ。遠慮も気後れも感じない。
ガキの部屋に戻って部屋の中を見回す。
この前と壁に貼っていた賞状が代わってるぞ。
新しいのは県内読書感想文最優秀と市内1500メートル走準優勝か。
すごくないか?俺のガキ。
でも、俺自身が褒められた時より嬉しいのはなぜだろう?
こんな感情初めてだ。本当に誇らしいぞ。
ガキが帰ったら、いっぱい褒めてやるんだ。