2023/11/22 20:22:18
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〇〇温泉への道をひた走ります。
相変わらずのいい天気でした。
天気予報では今週後半から急に冷え込むと言っていましたが、とても信じられません。
11月なのに夏を思わせるような気温でした。
気分も晴れ晴れしています。
カーナビのマップ上に、下調べしていなかった温泉名が表示されていました。
(△△温泉・・・)
聞いたことないですが、もともと私もこの地に詳しいわけではありません。
〇〇温泉に向かっているこの道の途上にあるようでした。
いちど車をとめます。
スマホで調べました。
立ち寄りの湯があるのかよくわかりませんが、少なくとも足湯はあるようです。
(寄ってみるか)
そこからはすぐでした。
道沿いに建物が増えてきます。
無料駐車場に乗り入れて、車をとめました。
(さーて)
車から降りてど田舎の寂れた一本道を数分歩いていくと、足湯が見えてきます。
誰もいませんでした。
自販機でペットボトルのお茶を買って、足湯のふちのベンチに腰かけます。
ソックスを脱ぎました。
チノパンのすそを、ひざ下までめくりあげます。
そして足をお湯に入れました。
(ふー、気持ちいい)
気持ちのいい秋晴れと、気持ちのいい秋風・・・
寂れた道ばたの足湯で、
「ふー・・・」
ひとりまったりくつろいでいると、時間の感覚がなくなっていきます。
これから〇〇温泉までずっと運転していくのが、なんだかちょっと億劫になってきました。
(でもなあ、はるばるここまで来たんだし)
(やっぱり行ってみたい)
その〇〇温泉に行ってみたかったから、今回はこの地方を選んだようなものです。
とても風情のある温泉のはずでした。
「ふー・・・」
この後、また運転しなければなりません。
足をちゃぽちゃぽさせながら、ひとときの休憩時間を満喫しました。
お茶がほどよく冷えていて、
『ごくごくごく』
乾いていたのどを潤してくれます。
(美味しーい)
この足湯は、かけ流しのようでした。
はじっこに古くて色の変わった金属管のようなものがあって、
「どぼどぼどぼどぼ」
お湯が足湯槽に落ちています。
反対側のはじっこでは、一定の高さからあふれたお湯が側溝に流れ出ていました。
お湯の深さは15センチぐらいでしょうか。
(どきどきどき)
少し汗ばんできていました。
(どきどきどき)
さっきからずっと・・・誰もいません。
それを意識した瞬間、いきなり胸の鼓動がはやくなりました。
今すぐにでも、ここで『お風呂に入りたい』という不埒な衝動が高まってきます。
(どきどきどき)
もういちど周りを見渡しました。
ブロック塀と立て看板・・・
けっこうひらけた場所なのですが、人の往来はありません。
少し外れた向こう側に見える道には、あれは古い民家・・・それとも商店?
いずれにしろ屋外に人の姿はありません。
(どきどきどき)
駐車場からここまで手ぶらで来ていました。
チノパンのポケットには、車のキーと小銭とハンカチが入っているだけです。
(どきどきどき)
足湯なのに・・・寝そべって入浴しちゃう?
いまなら誰も見てないよ?
でも、でも・・・
(いくらなんでもだめでしょ)
そんなことしたら・・・
お湯から足を出しました。
さすがに決心がつきません。
だけど、なおもどきどきが加速していく私の心臓・・・
(無理だよ・・・ぜったい無理・・・)
(思いっきり道沿いじゃん)
さっきの混浴野天での興奮がよみがえっていました。
緊張感が襲ってきて胃袋がきゅうっとなります。
(そういう馬鹿なことをして)
(どきどきするのが好きなくせに)
濡れていた足が、もう乾いていました。
ソックスをはくのももどかしく、素足をスニーカーに突っ込みます。
一本道を急ぎ足で駐車場に戻りました。
(よし)
とまっているのは私のレンタカーだけです。
ドアを開けて、エコバッグにタオルだけを突っ込みました。
万一の紛失を避けるために、再びロックしたあと車のキーはある場所に隠しておきます。
確信がありました。
ここからの一本道を急いで走って戻れば・・・
走って稼いだ時間のその分、
(2,3分?)
いや、車をとめた人が到着したその瞬間にもう『歩き始めてる』わけではない・・・
(だから確実に4分ぐらいは)
少なくともその数分はあの足湯に現れる人は誰もいないということです。
(行こう)
(いや、待って)
向こうに着いてから服を脱ぐその時間が無駄でした。
いまこの瞬間、とりあえず今はまだここに他の人の車は1台もないのです。
すかさずスニーカーを脱ぎ捨てていました。
シャツ、チノパン、あっという間に下着も脱いで・・・
素っ裸でまたスニーカーだけをはきます。
脱いだ服はすべてエコバッグに突っ込みました。
左右の持ち手を結ぶようにして、袋の口を閉じます。
(ああん)
駆け出していました。
最初の曲がり角のところで立ち止まって振り返ります。
(だいじょうぶ)
とりあえず現時点でも私の車以外はありませんでした。
今すぐ他の誰かの車が駐車場に入ってきたとしても・・・
その人が歩いてきて足湯に着くまでには、じゅうぶん時間があります。
(よし、だいじょうぶ)
全裸で駆け出しながらテンション爆上がりでした。
エコバッグひとつだけを片手に持って、全速力で田舎道を疾走しています。
(だいじょうぶだよ)
(どうせ誰もいないよ)
趣味でジョギングしているときの感覚とはまったく違いました。
スポーツブラすらしていないと、
(あああ、ああああ)
貧乳の私でもおっぱいが上下左右に跳ねてしまいます。
(ああ・・・貧乳なんて言わないで)
(私は痩せてるの・・・贅肉がないだけなの)
いつも後から思うことなのですが、こういうときのハイテンションは本当に危険でした。
このときも頭ではわかっていながら、
(ああ、あああー)
心がどんどん前のめりになっていきます。
素っ裸で全力疾走しながら、何もつけていない股のあいだがスースーしました。
(こんなの知り合いにバレたら)
(私、もう生きていけない)
「はあ、はあ、はあ・・・」
もちろん寄り道する時間などありません。
時間をロスすれば、もともとどれだけあるかもわからない持ち時間がさらに減ることを意味していました。
頭では、そうわかっているけど・・・
わずか400~500メートルの、このランニングが爽快でなりません。
はだかで風を切る疾走感に、高揚感いっぱいでした。
(見られたら終わりということなら)
いきなり道端にしゃがんで、
「ううー」
う〇ちをイキみます。
それこそ、こんな姿を誰かに見られたら一発アウトでした。
でも、緊張しすぎていてさすがに出ません。
(あああ、ああ。。。)
背徳的な感情に全身がぞくぞくします。
そして、また駆け出す私・・・
あの角を曲がったところが足湯のある場所でした。
(どきどきどき)
虫の知らせというやつでしょうか。
異様にわきあがる高揚感を制するように、ランニングの足が鈍ります。
最後は慎重に歩いていって、
(どきどきどき)
角からそっと様子見しました。
ブロック塀の横から首だけをひょいと出して・・・
え、うそ、
人がいるじゃん・・・
(うそ、うそ、うそ、うそ)
脳内が思いっきりパニックに陥りました。
大慌てでパンツをはこうとして、
(やばい、やばいっ)
そのパンツがスニーカーに引っかかります。
私がいるのはまだ角を曲がる前のこっち側ですから、みつかったわけではありません。
だいじょうぶ・・・落ち着いて!
パンツを引っ張り上げます。
スニーカーを脱ぎながら、同時にブラをつけていました。
チノパンをはいて、急いでシャツを着ます。
(どきどきどき)
なんで・・・なんでいるの?
かかとを踏んづけてしまったスニーカーをきちんとはき直して・・・
何食わぬ顔をつくりながら、歩いて角を曲がりました。
足湯のベンチに腰かけているおばさんと目があって、お互いに会釈をします。
そうか、
(あっちにも道がつながってるのか)
まだ胸のどきどきがとまりませんでした。
さっき置き去りにしてしまっていた飲みかけのお茶のペットボトルを取ります。
「これ、私の・・・忘れちゃって」
「取りにきたんです」
おやまあという感じの微笑みを向けてくれるおばさんでした。
だいじょうぶ、
(バレてない)
怪しまれている様子はありません。
一本道を戻っていきました。
その道すがら、今頃になって一気にからだが震えはじめます。
(ばくばくばくばく)
駐車場で車に乗り込んで、
(あぶない・・・あぶなかった)
ようやくほっと胸をなでおろしている自分がいました。
じっとり背中が汗ばんでいます。
(やばいやばい)
(調子に乗りすぎた)
再び発進させて、今度こそ〇〇温泉に向かう私でした。
(続きます)