2009/07/18 00:35:02
(sI5WxFZK)
桶を持ったまま『庭』に踏み込み、再び1歩1歩おじさんたちのほうに近づ
いていきます。
板塀の存在を意識してぎこちなくならないように、なるべく『自然体』な素
振りを意識しました。
大岩の横まで来て、おしっこをしたあたりに桶のお湯をまきます。
何事もなかったかのように再び湯船のほうに戻りました。
元の位置に桶を置き、そのまま建物に入りました。
内湯には誰もいませんでした。
結果論ですが、やはり他の入浴客にみつかる心配などなかったということで
す。
どっと力が抜けました。
脱力感と言ってもいいほどです。
すっかり体が冷えていました。
今度は内湯の湯船に入り、温泉につかります。
お湯につかりながら、心底ほっとした気分でした。
安堵感に包まれながら、自分の行為を振り返っていました。
おじさんたちが、少し高い『見下ろす位置』にいたことを考えると、おそら
く私の下半身の肝心な部分までは見えてなかっただろうと思います。
それでも、じゅうぶんでした。
あれだけのことをやってのけたのですから。
そして・・・、私の楽しみはここからでした。
これから、素知らぬふりをしてあのおじさんたちの前へ出ていかなければな
りません。
イメージを膨らませます。
私は、待合スペースでまた『つんとお澄まし』してみせるつもりでした。
酔っぱらったおじさんたちは、そんな私を眺めながらどう思うでしょうか。
『おまえの裸を見てやったぞ』
内心の嘲笑が聞こえてくるかのようです。
『すべて見てたんだぞ』
『あんなとこで、立ったままおしっこしてただろう』
私は、この顔に3人の勝ち誇ったような視線を受け止めるのです。
自ら醜態を演じたのは、すべてそのためなのですから。
日常生活では味わえないレベルの『恥じらい』という興奮を求めて・・・
お湯から上がりました。
脱衣所へ向かいます。
全身をバスタオルで拭いて、新しい下着を身につけました。
浴衣を、隙なく『きちんと』着ます。
脱衣所の鏡に映る自分を見ました。
あんな下品なことをする女にはとうてい見えません。
われながら『清楚な女の子』そのものです。
深呼吸して心を落ち着かせます。
かなり緊張していました。
大げさに聞こえるかもしれませんが、一歩踏み出すための強い決意が必要で
した。
「がらっ」
サッシの引き戸を開けます。
『つん』と、例のおすまし顔をつくりながら、スリッパをはきました。
ノレンをくぐります。
決意を固めてノレンをくぐった私を待ちかまえていたのは、空っぽのソファ
だけでした。
・・・誰もいません。
待合スペースは、がらんとしていました。
(なんで?)
しばらく意味を理解することができませんでした。
・・・このときの拍子ぬけした気持ちのことは、未だに鮮明に記憶に残って
います。
ただ、ただ呆然としてしまいました。
(どうして?)
なぜ『いない』のか理解できません。
頭の中で『3人そろって私を待っている』と勝手に思い込んで、意識の中で
それが前提になっていました。
・・・肩すかしもいいところです。
とりあえず紙コップに水を汲みました。
ひとりでソファに座って、時間をつぶします。
(これから出てくるってこと?)
U湯の入口を見つめながら、はかない望みを繋げようとしていました。
5分ぐらい待ちましたが、誰も出てきません。
私はソファから腰を上げました。
U湯の入口の前に行きます。
男湯の入口に、スリッパはもうひとつも残っていませんでした。
がっかりでした。
自分の部屋に戻ってからも、かなり落胆していました。
(もう!)
私なりに、かなり大胆なことをやってのけたつもりでしたので、虚しくてな
りません。
そうは言っても、どうしようもありませんでした。
誰かを責められるような筋合いでもありません。
部屋にいてもテレビを見るぐらいしか、やることもありませんでした。
そして、そういうときに限って、面白い番組などやっていないものです。
ひとりでビールを飲みながら客観的に分析していました。
私は本当に『おしっこ姿』を見られたのでしょうか?
待合スペースでの3人のあの会話の内容・・・
私が女湯に入った直後に男湯になだれこんでいった3人・・・
私の入浴姿を覗きに行ったのは間違いないと思えました。
あの3人は板塀の裏で顔を並べて、ずっと隣の女湯を覗き続けていたのでし
ょうか?
冷静になった頭で考えてみると、それはないような気がしてきました。
女湯よりも、男湯のほうが利用客が多いのは確実です。
ずっとあの3人の貸し切り状態が続いたわけがありません。
もし途中で他の入浴客が入って来たりすれば、3人の覗き行為も中断せざる
を得なかったはずです。
おそらく私は、入浴姿を覗かれはしたことでしょう。
でもそれは、昨日の夜に私が男湯をちょこっと覗いたのと同じ程度のレベル
にすぎなかったのかもしれません。
(いや、もしかしたら。。。)
そもそも、まったく覗かれていなかった可能性だって否定できません。
私のあの下品な行為は、誰からも見られていなかったような気がします。
今となってはそうとしか思えません。
やりきれない気分でした。
たった1分程度の行為でしたが、私にとってはあれでも大冒険だったので
す。
私はこの外見の容姿もあって、会社では『清楚な美人』として通っているの
です。
普段からなかなか自分の殻を破れなくて、いつも『静か』な性格の私なので
す。
そんな私が思いきってあんなことしたのに・・・
私にとっては、ものすごいことを頑張ってやったはずだったのに・・・
ひとりっきりの旅館の部屋で、時間だけが経っていきます。
虚しい思いが募るばかりでした。
せめて、もういちどお風呂に行ってみようかと思いました。
でも、いまさら行くだけ無駄です。
つまらないテレビを点けっぱなしにしたまま、悶々としていました。
frustrationを感じていました。
ひとりでビールを飲んでいるうちに、
『何もなくてもいいから、やっぱりもういちどお風呂に行こう』
という気持ちになりました。
部屋でじっとしていられなかったのです。
露天のお風呂で、全裸の開放感を味わうだけでもかまいませんでした。
時計をみると、まもなく0時になろうとしているところでした。
途端にいやな予感がして、旅館の案内を見ます。
浴場は、23時までとなっていました。
もうとっくに終わってしまっています。
(ついてない・・・)
虚しさを通り越して、今度はなんだか無性に腹が立ってきます。
バスタオルを持って、部屋を出ていました。
だめとわかっていて、浴場に向かいます。
階段を下りて右に曲がり、待合スペースまでやってきました。
当然のことながら、やはりお風呂はもう終わっていました。
最初からわかっていたことですが、いよいよ諦めざるをえません。
U湯、D湯、ともにノレンが外されてしまっています。
引き戸も開けっぱなしになっていました。
D湯の入口から顔を覗きこむようにして、中を窺ってみます。
脱衣所に人の気配はありません。
少しばかり感情的になっていたこともあって、ちょっとした反抗心(?)が
湧いていました。
もしも誰かにみつかったとしても、『間違えた』ですむでしょう。
多少の後ろめたさを覚えながらも、いたずら気分で、そっと脱衣所に入って
みました。
何の計算があったわけでもありません。
『無断で立ち入っている』という思いから、後ろめたさに呼吸が重苦しくな
ります。
外されたピンクのノレンが、脱衣所内の壁に立て掛けられていました。
脱衣カゴが全てひっくり返されて並べられています。
大きな鏡に映っている私の顔が、真赤でした。
さっきは酔っぱらいの中年男性たちのことを、あんなに軽蔑していたくせ
に。
今の私は、ビールでこんなに赤い顔をしています。
でも、酔っている自覚はぜんぜんありませんでした。
むしろ普通以上に神経が冴えているのではないかと思えるほどです。
浴場の照明は、まだ点いているようです。
内湯への戸をほんの少し開いて、中の様子を窺いました。
浴室内には誰もいない感じです。
イスや洗面器が綺麗に片づけられています。
少しだけ開けた戸の隙間から、目を凝らしました。
内湯の窓ごしに、外の露天の様子を見ます。
(あ。。。)
露天スペースに、誰かいます。
あれは・・・
研修生のあの男の子です。
デッキブラシのようなもので、露天スペースの床(?)を磨いているようで
す。
(ほかには、誰もいない?)
(本当にあの子だけしかいない?)
・・・間違いなく、あの研修クンひとりきりです。
(学生の体験実習って、こんな夜中まで続くの?)
(そうじゃなくて、社員としての新人研修か何かなの?)
そんなことをちょっと考えたような気がしますが、もうどうでもいい感じで
した。
とっさに状況を把握しての、それこそ『瞬間的』な判断でした。
私は、急いで浴衣を脱ごうとしていました。
気持ちが高ぶっています。
どきどきしていました。
きっとこのときの私は、さっきのおじさん3人組に対する悔しさが大きな反
動になっていたんだと思います。
それがなければ、こんな行動をとっていたはずがありません。
何か、かけがえのないチャンスに奇跡的に巡りあわせたような気分で、気持
ちばかりが先走っていたように思います。
全裸であの研修クンに鉢合わせしてしまう私・・・
『11時までです』と聞かされて、
『ごめんなさい知らなくて・・・』
恥ずかしさに両手で体を隠しながら、そそくさと立ち去る私・・・
そんな場面を想像して、体をはだけていました。
下着も脱いで、あっという間に全裸です。
手近にあった脱衣カゴを裏返し、バスタオルといっしょに突っ込みます。
大きな鏡に、今度はオールヌードの私が映っています。
もう何ひとつ身につけていません。
どう見ても、細くて白くて華奢な女の子がそこにいます。
くるっと鏡にお尻を向けて、両手で馬鹿みたいに左右に開いてみました。
あそこと、お尻の穴が見えます。
妙なもので、自分の体なのに『モノ』のように見えてしまいます。
気持ちが高揚していました。
(こういうときほど冷静にならないと。。。)
そうでなければ、とうてい『演技』などできません。
わかっているのに、急き立てられるような気分です。
いろいろな感情が原動力となって、私を突き動かしていました。
さっきの悔しさが胸にありました。
他でもないこの私が、あれだけ頑張って下品な真似をしたのです。
それが無駄だっただなんて。
愚かな自分に腹が立ちます。
私は、『あの男の子に自分のヌードを見せたい』と思ったのではありませ
ん。
実はこのとき、見られようとすること自体にはちょっと拒否感がありまし
た。
『知らないうちにこっそり覗かれる』というシチュエーションではなかった
からです。
正面切って裸を見られるなんて厳しいと思ったのです。
(でも・・・)
真っ裸の私をいきなり目の当たりにしたら・・・
(あの子は驚くんだろうな。。。)
どう見ても清楚で繊細そうな『この私』が、恥じらいに赤面する様子・・・
それをあの子に見せてあげたいと思いました。
そういうシチュエーションに身を置こうとすることこそが、私にとって興奮
そのものでした。
このとき、自分ではまったく酔っているという感覚はありませんでした。
でも、もしかしたらやっぱりビールの影響も多少はあったのかもしれませ
ん。
正直なところ、このときかなり『驕った』気持ちもありました。
思いがけずに全裸の私と出くわすあの男の子・・・
もちろん驚くはずです。
慌てるかもしれません。
でも、彼にとってそんなに迷惑なハプニングでしょうか。
不可抗力のハプニングで、OLのオールヌードを見れたとなれば・・・
(あの子だって悪い気はしないはず。。。)
なにせ、相手は『この私』なんだから・・・
この顔で、この物腰の『私』なんだから・・・
(あの子だって内心では喜ぶはず。。。)
(誰にも迷惑をかけるわけじゃない。。。)
心の中で、自分に都合のいい言い訳ばかりを並びたてます。
内湯への戸を少し開きます。
中を覗きました。
研修クンが、露天で掃除しているのが確認できます。
フロントでの彼とのやりとりを思い出します。
初々しい表情が印象的でした。
あの子は私のことを憶えているでしょうか。
数少ない若い女性客ですから憶えてくれているかもしれません。
研修中の身分にある彼に、変なことをされるような危険はありませんでし
た。
間違えてお風呂に入ってきた女性客に何かしようものなら、大問題になるは
ずです。
その点だけは、安心していられました。
私は、そっとすべりこむように内湯に足を踏み入れました。
手にハンドタオルすら持っていません。
正真正銘の真っ裸です。
吸い込む空気がのどにつまりそうに感じるぐらいの息苦しさでした。
それぐらい緊張感がありました。
気配を悟られないように、そっと中を進みます。
(見せてあげる。。。)
(わたしのはだか。。。)
(喜んでね。。。)
緊張にひざが笑いそうになりながら、意識だけは高ぶっています。
素っ裸で、男の子に近づいていく私・・・
(あぁ。。。)
こんな張り裂けそうな気持ち、初めてです。
自ら、裸の私を見られにいこうとしています。
こんな大胆な冒険・・・、気持ちが押しつぶされそうです。
私と鉢合わせした瞬間の、彼の驚きを想像します。
間違えて入ってきた女の子を目にして、心の中では嬉しいはずです。
決して表情には出さなくても、私の全裸に内心では興奮してくれるはずで
す。
そして、憐れにも私はその目線に晒されて恥をかくことになるのです。
その場になったら・・・
(どこを隠せばいいの?)
手は2本しかないのに。
どんどん気持ちが追い込まれます。
(まずいよ、まずいって。。。)
内湯の中を進んでいくそのひと足ごとに、呼吸が苦しくなります。
(ほんとうに見られちゃう・・・、見られちゃうよ。。。)
プレッシャーに、心臓が締め付けられます。
すべて自分の意思でやっていることなのに、
(やだよ、見られちゃうよ、恥ずかしいよ。。。)
もう泣きそうでした。
そして、その泣きそうな感情に、興奮していました。
言葉には言い表せません。
passiveに見られようとするのと、activeに見せつけに行くのとではこんなに
も興奮の質が違うものなのでしょうか。
あっという間に、露天に出るためのガラス扉の前まで来ました。
ガラス越しに、研修クンの後ろ姿が見えます。
すぐそこで背を向けている研修クンは、まだ私の存在に気づいていません。
心臓の鼓動が異常なほどの早さです。
緊張で胸が締め付けられました。
『どきどきどきどきどき・・・』
(・・・どうする、どうするの?)
崖っぷちのハラハラ感です。
(ほんき?ほんき?ほんきなの?)
何も身につけていません。
何も隠せていません。
このまま扉の向こうに出る?
(むりだよ、むりむり、ぜったい無理。。。)
あまりにも無防備すぎる自分の姿に、脚が震えそうです。
ここまで来て、
(ハンドタオルのひとつも持ってないのは不自然すぎる。。。)
余計なことを考えて躊躇し始めてしまいます。
(どうしよう。。。)
透明なガラス扉1枚を隔てたすぐそこで、男の子が掃除をしています。
私に背中を向けて、デッキブラシで力強く床を磨いています。
私は『すっぽんぽん』・・・
(むり、むり、むり。。。)
プレッシャーで、最後の1歩をなかなか踏み出せません。
それなのに、やっぱりやめて戻るという気持ちにはなりませんでした。
(あぁ、こんな格好で。。。)
(どうしよ、見られちゃう。。。)
開き直るしかありませんでした。
どうしても耐えられなくなったとしても、両手で下さえ隠せれば・・・
いざとなったら胸ぐらい見られたって・・・
(もういい)
触られるわけじゃあるまいし・・・
(最悪おっぱいぐらい、いくらでも見せてあげる。。。)
(好きなだけ見たらいい。。。)
演技のシナリオなど、何もありませんでした。
何も考えませんでした。
扉を開けてから考えようと思いました。
足もとを確かめるかのように、顔を下に向けます。
「ガタン!」
うつむき加減で、勢いよく扉を押し開けました。
空気の冷たさだけを感じます。
時間が止まったかのような感覚とともに、私の演技はもう始まっていまし
た。
小さく1歩・・・2歩・・・
視線を真下に落としたまま、静かに露天スペースに足を踏み入れます。
『ふっ』と顔を上げて、目線を前に向けました。
わずか3~4m先に、研修クンが立っていました。
目を真ん丸にして『信じられない』という顔で私を見ています。
私も『まさか』という、驚愕の表情を返しました。
その場に立ちすくみながら、とっさに両腕を交差させて胸を隠します。
お互いに目が合ったまま凍りついた瞬間でした。
まさに『鉢合わせ』の状況です。
お互いに硬直したまま、1秒・・・、2秒・・・
間違えて入って来ちゃったように演じながらも、彼と目を合わせた瞬間から
重苦しい空気に押しつぶされそうになっていました。
すぐに
(むりだ。。。)
(耐えられない)
張り詰めたこの『空気』に耐えられない、と思いました。
「・・・いやっ」
予想以上のあまりの『場の重さ』に、かすれるぐらいの小さな声を出すのが
やっとでした。
彼のほうも、かなり面食らっていたようです。
『いやっ』という私の小さな悲鳴に非難めいたニュアンスを感じたのか、明
らかに戸惑った表情です。
「あ、あ、・・・こちら、11時までで・・すが」
完全に焦った口調です。
「・・・えっ」
あたかも初めて知ったかのように、表情だけ『きょとん』としてみせます。
そして、『突然目の前に現れた男性が旅館の人だと理解した』かのように、
ちょっとほっとしたように演じかけてしまっていました。
(もっと取り乱して、恥ずかしがらなきゃいけなかったのに)
そう思わなくもありませんでしたが、現実にはとてもそんなふうにはできま
せんでした。
行き当たりばったりの演技をしたせいで、自然とそんなリアクションになっ
てしまっていたのです。
そんな素振りになってしまっていた私でしたが、本当の気持ちは正反対でし
た。
『ほっ』となんかしていません。
ほとんど、もう限界でした。
10代後半の男の子に、私は全裸で向き合っているのです。
相手は服を着ているのに、私の体を隠してくれているのは、自分の手だけで
す。
(こんなのむりだ。。。)
私はこのシチュエーションに負けていました。
(もうだめ)
この場から逃げたいという気持ちしか生まれませんでした。
いちおう体裁だけは整えようと、
「・・・もう終わりだったんですか?」
「すみません、・・・ごめんなさい」
私も戸惑ったような口調で謝ります。
「いえ、」
研修クンが私を見ていました。
「たいへん・・・申し訳ございません」
言いながら目線が小刻みに上下しています。
私の体に、チラチラ視線を走らせているのがわかります。
腕でおっぱいを隠しているだけの・・・『すっぽんぽん』の私に。
彼の目の動きを感じながら、耳のあたりが『かーっ』と熱くなります。
見られてしまっていることは頭で意識しつつも、恥ずかしさは感じませんで
した。
それぐらいに、とにかく気持ちに余裕がありませんでした。
無防備のままのアンダーヘア・・・
そのあたりに向けられる彼の視線を感じながらも、ほとんど硬直したままの
私でした。
ただ、ただ、『この場から逃げたい・・・』、『これ以上いられな
い・・・』
それしかありませんでした。
脳が働きません。
セリフが浮かんできません。
後悔していました。
こんな馬鹿なことをするなんて・・・
異様なほどの空気の重さに耐えかねていました。
「ほんとうに、すみませんでした」
なんとか口に出して、きびすを返していました。
早く自分の部屋に帰りたい、安全地帯に戻りたいという気持ちしかありませ
んでした。
「申し訳ござ・・・」
彼の言葉を最後まで耳にしていられずに、逃げるようにその場を去ろうとし
ていました。
後ろ姿は、まるっきりのノーガードです。
足早に建物の中に戻ろうとする私の後ろ姿が、彼にまる見えです。
(ああん、恥ずかしい。。。)
今さらながら、急に羞恥心に襲われます。
彼から見えている私の姿・・・
無防備にお尻を見せたまま、ガラス扉を押し開けるしかありません。
今、私はお尻の下あたりに彼の視線を浴びているに違いありません。
その隙間から『恥じらいのゾーン』が見えるんじゃないか・・・と。
それを意識したときに、気持ちが『きゅっ』ってなりました。
ほんの一瞬のうちに、悲劇のヒロインの気分になりかけていました。
浴衣を脱いだときからここまでの、わずか1~2分の間に、いろいろな感情
を味わっていました。
その起伏の激しさには、自分でも驚くばかりです。
なぜか急に自虐的な気分になっていました。
(なんてかわいそうな私。。。)
自分の心にそう錯覚させようとしていました。
(何の罪もない私が、どうしてこんなめにあわなきゃいけないの?)
そんな気持ちを無理やり頭に刷り込みます。
10秒前の自分が嘘のように、後ろ髪を引かれはじめていました。
(ああ、わたし。。。)
(このままでいいの?)
内湯に踏み込んだところの脇にすぐ、『それ』はありました。
ピラミッドのようにきれいに積まれているお風呂のイスです。
引き寄せられるように・・・とでも表現すればいいのでしょうか。
体が自然に動いていました。
(あの子にもう少しだけ見せてあげよう。。。)
わざとらしくない程度に、ほんの少しよろけてみせます。
『思わず』という感じでそのピラミッドに手をかけていました。
「ガチャガチャ!ガラ、・・・カララン!」
大きな音が、浴場の天井に響き渡ります。
自分でやっておきながら、その音の大きさに私自身がびっくりしていまし
た。
それぐらいに派手な音をたてて、プラスティックのイスの山が崩れ落ちまし
た。
そのときにはもう即興の演技を始めていました。
すかさず、ガラス扉の向こう側を振り返ります。
『やっちゃった』という顔で研修クンを見ました。
呆然と立ちつくしてみせます。
彼はちょっと驚いたようですが、すぐに営業用スマイル(?)を向けてくれ
ました。
デッキブラシを置いて、こちらに歩いてきます。
(来る・・・、ああ、来た。。。)
真っ裸の私に、男の子が近づいてきます。
本来、体験できないシチュエーションです。
日々の生活の中ではあり得ない場面です。
『どきどきどきどき・・・』
一気に鼓動が激しくなります。
私は、手近に転がっているイスをひとつ拾いました。
ピラミッドの『崩れないで残った部分』に継ぎ足すように積み重ねます。
ちょっと泣きべそ気味に『ごめんなさい顔』をつくりました。
ガラス扉を開けて入ってきた研修クンが、
「よろしいですよ」
「おけがはありませんか」
業務用の丁寧な言葉づかいで言ってくれました。
彼の表情に、さっきまでの戸惑った雰囲気はもうありません。
「すみません」
謝ります。
今度は胸も隠していませんでした。
どうせ相手は『旅館のお風呂係の人』です。
それに、私が演じている『この女性客』は、自分がイスの山を崩してしまっ
たことに焦ってしまって『それどころじゃない』のです。
申し訳なさそうな顔で、次のイスを拾い上げます。
「あ、だいじょうぶですよ」
「やりますから」
研修クンが言ってくれます。
恐縮したように
「いえ、けど・・・」
私が顔だけ向けると、フロントで見せていたあの初々しい笑顔です。
でも・・・
それなのにその目は、私の胸をまっすぐ捉えています。
従業員としての立場を忘れて目線の方向を『相手の女性客』に悟らせてしま
うあたりに、この子の『未熟さ』というか『幼なさ』を感じます。
(いやぁっ)
また『かーっ』と耳が熱くなりました。
ようやく(?)、本格的に恥ずかしさを感じていました。
(ああん)
この男の子は私のおっぱいを見ています。
私は今、10代後半の男の子に自分の乳首を見られているのです。
(恥ずかしい。。。)
(そんなに見ないで。。。)
もちろん表面的には、私が演じる『この女性客』は、そんな彼の視線になど
気づきもしません。
申し訳ないという気持ちから、次のイスも拾い、横のピラミッドに積もうと
します・・・
『すっぽんぽん』のままで。
ますます自虐的な気分が加速してきているのを自覚していました。
「いいですよ、やりますから」
そう言ってくれている彼に、
「あ、いえ、でも・・・」
意味をなさない返事を返し、作業を続けようとしてみせます。
研修クンも、そんな私をそれ以上は引きとめませんでした。
この男の子のことを、完全に見抜いていました。
この子は私のヌードに釘付けになっています。
そして、完全に注意散漫になっています。
私は若いし、まだ太っていないし、そして・・・いちおうこの顔です。
彼の目を引きつけるだけの容姿は備えている自負があります。
その私が今、『すっぽんぽん』で目の前にいるのです。
まだ研修中でプロになりきれていないはず(?)の彼が、目を逸らすことな
どできるわけありません。
(恥ずかしい。。。)
羞恥心に身を焦がしながらも、だいぶん自分を取り戻してきていました。
「もうー、やだぁ」
真っ裸の私が、何も隠すことなく一心不乱にイスを片付けます。
「なにやってんだろー、どじだなぁ」
(ああん、男の子がいるのに。。。)
(まっぱだかだよぅ。。。)
おっぱい・・・、ヘア・・・、お尻・・・
(見られてるよぅ。。。)
1分前には彼の前から逃げようとしていたはずの私だったのに・・・
興奮していました。
そして、なんだかぐいぐい自分のペースに持ちこめている感覚を得ていまし
た。
今この瞬間、私はあの子の視線を独占しています。
ひとりの男性の意識を、私が独り占めにしているのです。
今、この子の頭の中には私という女のことしかないのです・・・。
(どこ見てるの?)
(胸?おしり?)
足元のイスを拾いながら、自分の視野の端っこで、さりげなく研修クンの様
子を窺います。
作業する私の様子を見ながら、彼も『ゆっくり』イスを拾っています。
(いやぁん、そんなに見ないで。。。)
崩れ落ちたイスは、わりと狭い範囲内に散らばっていました。
たぶん15~16個ぐらいのプラスティックイスが転がってしまっていたか
と思います。
「もうー、ほんとうに私、なにやってんだろ・・・すみません」
「いえ、こちらこそ申し訳ありません」
お互いに『ふたり並んで』と言ってもいいぐらいの近い距離でイスを拾って
は積んでいきます。
私は興奮を通り越して、充実感を覚えていました。
こんなにすぐ近くに男性がいる横で、私は全裸でいます。
いやらしい目で見ている男の子がここにいると承知の上で、生まれたままの
姿でいるのです。
裸を見られていること自体の興奮よりも、『いまこんな状況に自分が置かれ
ていること』に快感を得ていました。
私が体の向きを変えるたびに、この男の子はさりげなく背後に回りこんでき
ます。
(ああ、だめぇ。。。)
もはや彼の視界の中から、逃れることはできません。
ヌードの私は、この子に裸を見られるしかないのです。
(ああん、かわいそうな私。。。)
もちろん、すべては私が自ら演出したハプニングです。
本当の私は・・・、いつもの私は・・・、内気で臆病すぎるほどおとなしい
性格なのに・・・
そんな私にとって、この非日常的なシチュエーションそのものが快感でし
た。
かがんでイスを拾っては、積む・・・
動作を繰り返すたびに、お尻の割れ目が開くのは避けられません。
私のすべてが見えていたはずです。
お尻の割れ目の奥にひそむ『それ』が・・・
美人ともてはやされる私・・・
その私の『あそこ』や『お尻の穴』が・・・
そんな『人には見せられない部分』が、この男の子には見えてしまいます。
イスを拾おうと、かがむたびに・・・
あそこはともかく、お尻の穴は恥ずかしくてたまりません。
私は、う●ちを出すための汚い穴を見られて平気でいられるほど図太くない
のです。
そんなの、とても耐えられないのです。
(ああん、絶対みえちゃってる。。。)
いくつもの感情が錯綜します。
『その汚い穴まで見せてあげる』という被虐的な気持ちと、
(お願いだからそんな恥ずかしいところ見ないで)
という本音の恥ずかしさとのジレンマです。
(やっぱりだめ。。。)
イスを拾おうと上半身をかがむたびに、すぼまっていた肛門が姿を現してし
まいます。
う●ちの出口のしわが、花のように開いてしまいます。
(いやっ、いやぁだぁ。。。)
(見ないで、見ないでぇ)
研修クンが私の背後に来るタイミングを計ります。
(ああ、真後ろ・・・)
イスに手を伸ばします。
(ああぁ、真後ろぉ。。。)
お尻のお肉が左右に割れます。
2mと離れていない彼の前で、お尻の穴が思いっきり広がります。
(あああん、イヤぁ。。。)
汚い穴がまる見えです。
彼を背後に従えたまま、次のイスに手を伸ばします。
(だめぇ、だめっ)
かがんで、お尻の割れ目を開きます。
(いやぁっ)
肛門を見せつけます。
しわの色まで彼の目に焼きつくように。
(はぁあん。。。)
自分の気持ちをどんどん高みへと持ち上げていきます。
もう、高慢と言ってもいいぐらいの心境です。
心の中で呟いていました。
(ねぇ、私、みんなから美人って言われてるんだよ)
(あなたもそう思ったんでしょ?)
イスを拾っては積み重ねる・・・たったそれだけの作業を繰り返します。
(ねぇ、その美人のお尻の穴みえちゃってるんでしょ?)
驕った気持ちに、自ら酔いしれます。
(私のそんなとこ見れるなんて、特別なんだよ。。。)
さっき鏡に映した『それ』の形が、記憶でよみがえります。
(ああ、・・・ああ、でも。。。)
かがむ動作の一回一回は、ほんの一瞬です。
その一瞬のチャンスに、この子が目に焼き付けようとするのは、肛門などで
はなくきっと性器のほうに違いありません。
股の間で閉じている、奥二重の唇を見ようと必死になっているに決まってい
ます。
(そんなの、ただ割れ目なだけなのに)
(せっかく頑張ってお尻の穴まで見せてるのに。。。)
ここでもまた、さっきのおじさん3人組に対する悔しさを思い出していまし
た。
イスは、あっというまにどんどん片付いてしまっています。
悔しさとともに虚しくなってきます。
(・・・またなの?)
そして焦りました。
(そんなのいやっ)
相手は小学生の男の子ではありません。
10代後半の男の子に対して、ここまでこんなにも必死に頑張り続けたので
す。
私の限界を超えたシチュエーションを耐えたのです。
もうさっきみたいな思いだけはしたくありません。
気持ちの勢いは、まだ残っています。
残りのイスがどんどん減っていくことが、不完全燃焼に終わることを避けた
いという強迫観念(?)を生み出します。
時間がありません。
私は焦っていました。
何をするにしても、もうすぐそのタイミングを失ってしまいます。
焦りで、どんな大胆なことでもできそうな気持ちです。
それを自分でもわかっていて『その気持ちに乗ってしまえ』と頭が判断して
います。
『こんな気持ちになれることなんか、滅多にないんだから』と分析していま
す。
(もう、何でもやっちゃえ)
でも、でも・・・
この状況で何をどうしたらいいのでしょう・・・
残り少なくなったイスを拾うたびに、今も彼に体を見られているはずなの
に、もうその満足感を味わえなくなっています。
ここで恥ずかしい姿を見せつければ、私はもっと陶酔感を味わうことができ
る・・・
あとで思い出して、いっぱいオナニーすることができる・・・
足が攣ったふりをする?
思い切って、すべって転んでみせちゃう?
(でも、)
(でも。。。)
できませんでした。
どうしても不自然になってしまうはずです。
いくら慌てている女だからといっても・・・
演技でカバーできる範囲ではありません。
私が『わざと裸を見られようとした』ということを、この男の子に悟られる
わけにはいかないのです。
そっと最後のイスを山に重ねていました。
これまでの演技の流れのまま、なるべくわざとらしさが出ないように気をつ
けます。
「すみませんでした」
彼にもう一度お詫びを言います。
最後の最後まで未練が残ります。
まだ迷いがあります。
思い切って、『少しの時間でいいから、シャワーだけでも使わせて』とお願
いしてみようか、などと考えがよぎります。
でも、やめました。
間違えて入ってきた女にしては図々しすぎます。
私は、この子にとって『清楚で華奢な』美人OLでなければならないので
す。
最後までそれを貫かなければなりません。
・・・やはり『もう立ち去るべき』です。
そう思ったとたんに、気持ちが引けてきます。
あの『はやく逃げたい』という気持ちがぶり返してきます。
この男の子は、私の体のすべてを見た子なのです。
私はこの子に、汚いう●ち穴まで見られているのです。
演技ではなく本当にもじもじした気持ちになります。
最後は情けないほど、どぎまぎしながら
「本当に、いろいろすみませんでした」
彼に背を向け、足早に脱衣所へと歩きだしていました。
脱衣所に戻ってからがまた大変でした。
いろいろな感情が溢れ出して、気持ちの整理をつけるのが容易ではありませ
ん。
とにかく『逃げなきゃ(?)』という気持ちに急きたてられて、慌てまし
た。
どたばたと下着と浴衣を身にまとい、外の待合スペースへと飛び出します。
階段を駆け上がるように昇って、自分の部屋を目指していました。
もう安全圏に戻ってきているのに、いちばん心臓をどきどきさせていたかも
しれません。
心配していた不完全燃焼の気持ちなどなく、自分のなしとげた『大冒険』
に、満足を感じます。
こんなことまで正直に書くのはさすがに恥ずかしいですが、『1秒でもはや
く部屋に戻ってオナニーしたい気持ち』でいっぱいでした。
(PS)
翌日のチェックアウトのとき、さすがにちょっと緊張しました。
もしかしたら、あの研修クンがフロントにいるのかもしれないと怖かったの
です。
もしいたとしても、もちろん何食わぬ顔で『さらっ』と流すつもりでした。
裸を見られたとはいっても、それは『見た』側の彼の意識の問題です。
『ハプニングで見えちゃった』のか『ここぞとばかりに観察した』だったの
かは、彼本人にしかわかりません。
私は、間違えて終了後のお風呂場に入りこんでしまっただけ。
ちょっと間抜けでおっちょこちょいな、よくいる客(?)のひとりにすぎま
せん。
そんなふうに自分に言い聞かせながらフロントに行きましたが、そこに彼の
姿はありませんでした。
ものすごく『ほっ』としましたが、同時にちょっとだけ残念な気分でした。
オールヌードで、恥ずかしいところはすべて『お披露目』した私です。
その私が化粧をして『きちんとした姿』で現れたときの、彼の反応を見てみ
たい気もしていたからです。
長文に最後までお付き合いくださってありがとうございました。
記憶を辿りながら、なるべく細かく、そしてできるだけ正確にありのままを
書いてみたつもりです。
このサイトの他の方々の体験談に比べれば、私の体験など大した内容ではな
いかもしれません。
ですから『せっかく読んだのに、ただ長かっただけ』と、がっかりされた方
も多かったかと思います。
ごめんなさい。
いよいよ夏も本番ですね。
東京の夏は、湿度が高くて苦手です。
皆さんも暑さに負けないように、体に気をつけてくださいね。