何年間かを無駄にしただけの結婚生活にピリオドをうち実家に戻った。 うちは農家で広い屋敷に両親だけが住んでいたが、数年前に父が亡くなり今は母が独りだったから、あんまり迷惑がられずに済んだ。 いざ帰ってみると、昔は嫌だった田舎暮らしがそれほど気にならなくなった。 むしろのんびりしていて心も体もリフレッシュしたい身分には最適な場所に思えた。 母はまだ元気だけど、今は畑は他所に貸していて家の雑用やガーデニングをマイペースで楽しんでいるようだ。 仕事に追われてないせいか、昔よりおっとりしたような気がする。 車で15分ほどのスーパーで働かないかと話が来たのは、実家に戻って一月も過ぎた頃だ。 都会にあるスーパーなんかに比べたらかなり大きい。 衣類から自転車までうっている。 田舎の方のドンキみたいなものか。 幸い貰うものはしっかり貰えたし実家暮らしだから金銭的には困ってはいなかったが、少しは世間と繋がっていた方がいいかと思って、とりあえず手慣らしがてらやってみることにした。 母も買い物からは一切開放されるから少しは役にも立つことになる。 初めてみると居心地は悪くなく続けられそうだった。 田舎の方とはいえ、そんな顔見知りばかりでもないのが不思議な気がした。 もちろん長く働いている人で知ってる人もいたが。 自分としては茶飲み友達でもできればいいなあと、それくらいに思っていた。 田舎町のスーパーでもその中はひとつの世界でもある。 その中に二十人弱の人がいれば、当然派閥も生まれるし色恋沙汰も起こる。 ちょうど私と同じような境遇の女性がいなかったせいもあり、私はそれらを俯瞰して眺めるようなポジションにいた。 だから、ニュートラルの立ち位置のせいかけっこうみんなから色々相談されたりするのだ。 どのグループにも属してなく中立的にみんなとうまくやっていたからだろう。 口が固そうにも思われていたかもしれない。 私は入って間もないのにいつしか事情通になっていた。 ある時、お店の大学生のカップルの彼女の方から相談を持ちかけられた。 二人はここで知りあって交際を始めたらしい。 彼女の方の言い分は、彼が最近ちょっとつれない…自分より他を優先してる気がする… パートの主婦らにも可愛がられてて、本当は男として可愛がられてるんじゃないのかと疑い始めている… そんな内容だった。 女が疑いを持った場合、それはだいたい当たっていると教えてくれたのは、離婚の際にお世話になった興信所の所長さんだった。 私はある日彼をこっそり呼び出した。