レンタカーのハンドルを握っていました。本気で行こうと思えば、帰り途中にもう一度立ち寄ることが可能です。(行こう)(少しぐらい帰りが遅くなってもいい)どこへって?あの公共温泉です。昨夜泊った旅館近くの、公共のボロ温泉・・・(もう1回どきどきしたい)昨日のことを思い出しながら、何度イメージしたことか。所詮、私は自分の欲求に打ち勝つことはできないのです。(ああああ)(やっぱり怖い)混浴というのは、やはり私にとって恐怖の要因でした。見られることを前提として来ていると思われるのは、怖すぎて嫌なのです。見覚えのある町並みに戻ってきて・・・適当なパーキングに車を駐車します。荷物を持って、降り立ちました。(ああ、混浴・・・)(混浴か・・・)自分の中の一線を越えてしまったような気がして落ち着きません。でも、(だいじょうぶ)気持ちの拠り所はありました。(あの人・・・)(ジイさん、バアさんばっかりって言ってた)昨夜のおじさんの言葉を思い出しながら、あの公共温泉へと向かって歩いていきます。(そうだよ)(だいじょうぶ)少し離れたところには、もう1つ『公営』のちゃんとした温泉もあるのです。昨日そのことを宿に戻ってから知った私でした。(観光客は、ほとんどそっち)(こっちに来るのは地元のお年寄りばっかりのはず)歩きながらイメージを膨らませます。おじいさんとおばあさん2~3人がいるお風呂に、全裸のまま入っていく私・・・チラチラと視線を感じながら、(いい気分)それでもゆったりとお湯につかる満足感・・・(そうだ)昨夜は使わなかったけど、洗い場も2つ3つありました。お年寄りとはいえ男性もいるその空間で、(見ないでえ)内心悲鳴をあげながら、悠々と自分のからだを洗う私・・・(だいじょうぶ)(今日はお風呂道具もちゃんと一式持ってきてる)あるいは、(逆もありえるか)どんどんイメージが膨らみます。誰もいない無人の浴場で、ひとりお湯につかって待ち受ける私・・・入浴に現れたおじいさんは、そこに若い女がいるのを見てどんな表情をするでしょうか。(どきどきどきどき)建物が見えてきました。入口の内側、どきどきしながら左手の戸を開けます。(あ・・)脱衣場に、おじいさんがひとりいました。現れた私を見て、なぜか厳しい目を向けてきています。一瞬にして、(ああ・・)気が弱くなってしまっていました。内気に陥りそうになるそんな自分から逃避(?)しようと・・・「Boa tarde」とっさに外国人を装う演技をしてしまっている自分がいます。呆れた顔で、『ハぁ?』
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