第33章 公開される所有
今日も仕事が滞りなく終わり、海は一息ついていた。
「ふぅ……梵様、お疲れ様です」
「ああ、お疲れ。任せたSNSの管理はどうだ?」
「はい……見られてます……😳」
海は少し顔を赤らめて続けた。
「男の人は……相変わらず、おちんちんの写真を送りつけてきたり……いじめてやるだの、裸の写真くれだの……一度お茶でも、とか……」
「全部ブロックしちゃいました……😅」
「プロフィールのところにも、『カップルアカウントです。管理は私がしていますが、あくまでもカップルアカウントです』って追加しました。よかったですか?」
「ああ、好きにしなさい」
「写真の投稿も、『梵様の言いつけだからしています』って、いつもコメント欄に付けています」
「あと……あと、M女性からメッセージが来て、少しやり取りしました。舌が凄いって……。話した内容を報告しようかと」
矢島は軽く笑った。
「ふふ、女性同士の話を盗み聞きしようとは思わないよ。楽しいならいい」
「だけど、トラブルが起きたらすぐ報告だ。いいな?」
「私もたまには画像以外も見るよ」
「……はぃ😌」
少し間を置いて、矢島の声が落ちた。
「そうだな。駅に着いたらオシッコしなさい。そして服を全部脱いで、写真を撮ってその場でアップしなさい。リアルタイムです。駅のトイレで裸です。『言いつけでしています』ってな」
海の喉が、くんと鳴った。
「……はぃ……梵様」
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海は駅に向かって歩き始めた。
最初は人通りもまばらだったが、駅に近づくにつれて、徐々に人が増えていく。
通勤帰りのサラリーマン、学生、買い物帰りの人たち。
普通の光景なのに、海の心臓は次第に高鳴り始めていた。
(……服を着ているのに、恥ずかしい……)
鞄を胸に強く抱きしめる。
誰かと目が合うたびに、胸の奥がきゅっと縮むようだった。
「……梵様……」
「どうした」
「……何でもないです……ただ、少し……」
「ここにいるよ」
その声で、少しだけ肩の力が抜けた。
駅の改札を通り、多目的トイレの前に立つ。
ドアを開け、中に入って鍵を閉めた。
便器に腰を下ろす。
外の喧騒が、扉越しに聞こえてくる。
足音、話し声、電車の発車ベル。
(……こんなに近くに、人がいる。なのに、私はこれから……)
海はゆっくりと服を脱ぎ始めた。
ブラウスのボタンを一つずつ外し、スカートを下ろし、下着を外す。
冷たい空気が肌に触れるたびに、小さく息を詰まらせる。
全裸になった瞬間、自分がひどく無防備な存在に感じられた。
(……一人で、裸になっている。この狭い空間で……)
スマホを取り出し、インカメラに切り替える。
画面に映った自分の顔を見て、思わず目を細めた。
(……私、やらしい顔……してる……)
「ふふ、顔は投稿するなよ」
イヤーカフから、矢島の声がした。
「あっ……梵様……恥ずかしい……」
「さあ、身体を写して、『これからオナニーします』と投稿しなさい」
「……んっ……はぃ……」
海は震える指でシャッターを切り、すぐに投稿する。
『今、駅のトイレにいます。梵様の言いつけで、これからオナニーします。』
送信した瞬間、胸の奥が熱くなった。
「んっ……ぁんっ……」
「もう、そんなになって。興奮してるのか?」
「……ぁんっ……梵様の声……がぁ……」
「リロードしてごらん」
海は画面を更新した。
コメントが、次々と流れ込んでくる。
『えーーーどこの駅??』
『エロい身体してんなーー』
『みたいみたい!どこの駅よ』
『おっぱいでか!』
『ボカシ取った写真キボンヌ』
『コレ~駅じゃね?』
『電話で喘ぎ声聴かせて!』
『動画ほしー』
閲覧者が、どんどん増えていく。
「ああっ……梵様……見られてますぅ……」
「ああ、200を超えたぞ。変態女を見てるな」
「ハァ……ハァ……ハァ……ァァンッ……」
海は壁に背を預け、脚を開いた。
指が自然と秘部に伸びる。
「ああん……ああん……んーーーっ……」
「梵様……見てますかぁ……?」
「ああ、300を超えた。お前の裸を見てるな」
「んーーーっ……ァァンッ……ァァンッ……あっ……ァァン……」
「指を三本入れろ」
「……んっ……ハァ……はぃ……」
三本の指が沈む。
熱い肉壁が、すぐに締め付けてきた。
「あ~~~っ……あぁぁん……」
「梵様~っ……ビデオ通信……ァァンッ……いい……ですかぁ……」
「ピロンッ」
スマホの画面に、矢島の顔が映る。
海は思わず、声を詰まらせた。
「~っ……梵様~っ……んっ……んっ……」
「ふしだらな姿だな」
「んっ……んっ……梵様~っ……んっ……あっ……あっ……あっあっあっあっーーーっ……」
指の動きが、勝手に速くなる。
画面の向こうで、矢島が自分の姿を見ている。
その事実だけで、腰が震えた。
「逝き……たい……んっーーーっ……」
「ダメだ、海。戻りなさい」
海の肩が、びくりと縮む。
指が止まり、身体が強張った。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ~……ハァ~……」
「煽り過ぎた。私の側ではないからな。そこまでにしなさい」
海は壁に額をつけ、ゆっくりと呼吸を整え始めた。
「スゥ……ハァ……スゥ……ハァ……」
「……はぃ……戻れました……」
「よし、いい子だ。早くお帰り」
「……はぃ😌」
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服を着直し、トイレを出る。
改札を出て、ホームや通路を歩く人波の中に混ざる。
なのに、海の感覚はどこかおかしかった。
周りの男性の視線が、自分に集まっているように感じる。
目が合うたびに、胸がきゅっと縮む。
(……この人、写真を見た人なんじゃ……?)
被害妄想だとわかっていても、羞恥が止まらない。
鞄を強く抱きしめたまま、足を速める。
「……梵様……」
「どうした」
「……大丈夫、ですか……? 私……」
「大丈夫だ。ここにいるよ」
「……梵様……」
「聞こえている。ちゃんと歩いて帰りなさい」
「……はぃ……」
何度も、矢島の名前を呼ぶ。
そのたびに「ここにいる」と返される声が、海の背中を支えてくれた。
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家に着き、海はシャワーを浴びた。
湯を浴びながら、自分の身体を確かめるように撫でる。
(……私、こんなに濡れて……梵様に……見て頂けた……ふふっ)
指先で、一つ一つのピアスを優しく確認する。
次に、身体に残る傷をゆっくりとなぞった。
そして、両腕で自分を抱きしめる。
「梵様……」
誰にも聞こえない声で、そう呟く。
矢島には言っていない、海だけの夜のルーティーンだった。
湯気の中で、海は目を細めた。
今日も、ちゃんと「所有されている」一日が終わったことを、静かに噛み締めていた。
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