…………食事は30分程度は控えて、それからにして下さいね
この日の最後の患者の治療を終え、そう言葉をかけて送り出した。
雑務をを済ませると歯科医の姿から私服に着替えて、勤め先の歯科医院の入るビルを後にする。
今日は夫の帰りが遅く、夕飯は外で済ませてくるはずだからスーパーで簡単なものを揃えるか、それとも自分も外食をしてから帰るるかを考えていた。
過度に派手でもなく地味でもない、年相応に見栄えのするウエストを絞ったデザインのワンピースに身を包んだ明美は、どこにでも居そうな一般的な女性といえた。
後で縛っていた髪の毛を解き、セミロングの黒髪を微風に揺らして歩く姿はまだ十分に30代の名残を残す色香さえ漂わせている。
明美は結局結論を出せまいまま駅にたどり着き、改札を潜った。職務中は仕事に集中していればよかったけれど、この場にまで来ると嫌でも数日前の出来事が頭を過ってしまう。
いい大人の道徳感やプライドを潜り抜け、されるがままになってしまった自分を、明美は恥じていた。それも相手はまだ、あんな少年だというに……。
車窓に映る少年の顔を見るとどこか中性的ににも見えるまつげの長さが印象的で、まさかごんな子がという動揺する気持ちが対応を鈍らせたのだ。
なんというのか強引さはなくスマートにことは進められ、皮肉なことに上手だったのだ現実の中にありながら、非現実感の中で感じさせられる奇妙だけれど、その事実が明美を動揺させる。
自分の中の理性が、自己嫌悪を呼び起こすからに他ならない…手が空くと不意に思い出し、その度に悪い嫁を見たのだ、この次に同じ目に遭えば、その時は毅然と対応してやると、明美は心に誓うのだった。
そしてその時は意外にも早く、訪れた。
梅雨の合間の曇天、湿気を含んだ重い空気の中を歩いて駅に着いた頃、服の下の肌は僅かに汗ばんでいた。到着した電車がホームに風を引き連れて滑り込んでくる。
明美は額にかかる髪の毛を直しながら激しく揺れるワンピースの裾を押さえ、扉から吐き出される人の群れを待って乗り込む人の後に続いた。
いつものように扉の脇の手摺りを掴んで、場所を確保する。電車が動き出して、間もなくのことだった。男性にしてはか細い女性的な指を持つ手の感触が、お尻を撫で始めたのだ。
明美は何気なく俯かせていた顔を、はっ…と持ち上げ、肩から下げたショルダーバッグを両手で握りしめた。
それはまるでこれから始めるよと知らせるようでもあり、普通の痴漢が女が興奮するに違いないと勘違いした、過剰に撫で回す気色の悪いものではなかった。
労わりを感じさするように優しく触れて、お尻から腰へ。そして太腿の外側から下へと流れ、やがて裾が持ち上げられていく。
今こそ制しなければいけないのに、この期に及んで明美は逡巡する自分を認識する。中に入った手が先程と同じようにお尻から太腿の外側を回って前側に達しようとしたとき、意を決して明美は服の上からその手を掴んだ。
子供であっても、こんなことを好きにさせていけない。でも無情にも掴んだ場所は手首であり、指先は肝心な所へと伸びてしまう。反射的に内腿を閉じたが、ショーツのクロッチ越しに、局所的に撫でられてしまっている事実は変えようもなかった。
まるで膝の上で喉を鳴らす猫が、狭い額を指の腹でマッサージを受けるように繊細で優しく、でも確実に効果が伝わるように………。
片手で押さえる明美の手の下で蠢く少年の手が、体裁を繕う車窓に向けた明美の顔を無表情にさせる。
下着の生地越しに指の腹が小さな園を描き、上下に何度も擦る。閉じた柔肉を割った指先が何度も往復を繰り返し、やがて指先が湿り気を感知した頃になると、上へと動く少年の手に被さる明美の手も一緒に動く。
少年の指先はショーツ上側を浮かせ、中へと潜り込んでいく。焦燥の真っ只中の明美に成すすべはなかった。
卓の指先は縮れた陰毛の森を潜り抜け、ぷっくりと充血して顔を覗かせたそこに辿り着いていた。
指を動かされる度に汗ばんだ肌に、ショーツの浮いた隙間から冷涼な空気が入り込む。下唇を噛んだ明美の口が、不意に薄く開いた。
車窓の外に向けられた明美の目は何も語らことなく、動かされる指からの快感を享受することにしか意識は向かなくなっていた。
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