25日は給料日なので、振込みと手渡しとで4人分ね、A駅の信金に行ってたはずです。いつもは車で行くんですけど、この日はスケジュールにも書いてるようにオイル交換と点検で車屋さんに預けて、電車でA駅の信金に行ったはずです。

　
と老眼鏡をかけながら話してくれる


あーっ、冬タって書いてるから冬タイヤの予約もしたはず。


「メモしてると色々思い出すもんですねー。我々も職業病のようになってますからね。で、時間は何時頃ですか？」


給料日の時は振込もあるから、必ず昼までに、よっぽど体調が悪くない限り、大体10時30分から11時までに行くことに決めてますのよ。


そう言いながら、今度は別なノートを奥からパラパラと捲りながらやって来た

　
えーと、これは入出金、給料関係のノートでATMで振込みした分を綴じてますからね。
えーと、10月25日10月25日

振込時間は10時46分になっている




で、刑事さん、私がボタンの持ち主で疑われてるんですか？

「ママさん、そのボタンですが、気づいたら取れてるようなものでしょうが、もし、覚えてるようでしたらお聞かせ願えませんか」


ボタンも25日に電車の中で取れたのよ。ちょうどA駅に着く間際に携帯が鳴ったから確認するのにポケットから携帯を取り出した時に取れちゃっタのよ。刑事さんも乗った事あるでしょうけどシートがベージュ系の色で、あのボタンと同系色と言うか保護色と言うか、電車は駅に着くし、まっいいかと思って電車を降りたのよ。で、その日リンちゃんを病院連れていくのに、すぐ近くのショッピングモールにブランド店があるの知ってたからボタンを買いに行った訳なのよ、刑事さん。

金舟は電車のシートとボタンとを思い浮かべていた。


確かにシートはベージュの色｡そしてボタンもベージュ。本物のボタンならもう少し濃い色だから気づいただろうが、コピーの方なら確かに気付きにくいだろう。ましてや急いで電車を降りなければいけないとなると、

ママさんの話に納得しながら

「良くわかりました。電車を降りる間際、直前にボタンが取れたんですね｡先程の振込時間で一番早いのが10時46分となってましたから10時35分ごろには駅に着いてた感じですね。」


給料日の25日は10時30分から11時までに行くことにきめてますからね！あそこは駅前ですぐだから刑事さんが言うくらいの時間に駅に着いてたんだと思いますわ｡以前はあの信金の並びに店を出してたんですよ。でも、さびれちゃったから、こっちに店を出したんです。


「そうなんですか。あの駅前で店をね。ちなみにママさん､3年前はまだ店を移転してなかったんですか？」


いや､こっちへ変わって来て今年で4年になりますよ。来年は五周年ですからね。刑事さんも飲みに来てくださいよ。


「歌の上手い奴がいるんでまた、来ます｡ところで､念のためにきくんですがね、、」


念のために？なんなんでしょうか？







とママさんは不思議そうな顔をしている。

「念のために聞くんですが、3年前とかに誰かに恨まれるような事はなかったですか？」


この私がですか？

「はい。誰かに恨まれて、罪をなすり付けられそうなぐらいに恨まれたようなこと」


念のためにって言うから、何かと思えば。恨まれるような事は全然ないですよ。


「現場にボタンが落ちてたもんですから。そうですか、なら良いんです。」

「ちなみに、この中に知り合いなどいてませんか？水商売されてるママさん達は、結構おきゃくさんの名前と顔を覚えるのが得意な方が多いですから｡この前も一回しか行った事のない店に半年ぶりぐらいに行ったら、金山さん久しぶりって言われもんですから」


と、　　


写真を4枚取りだし広げて見せる金舟。

その4枚の写真とは、









１枚目は、



ホームに並ぶ人びと


AさんBさんCさんの顔がハッキリと解る写真


「この中に知ってる人が写ってないですか？」



さあー、知りませんねー。見たことない人ばかりです。



「2枚目てすが、どうですか？」

Dさんと、Eさんがハッキリと写っている。



う～ん、見たことないですね。



3枚目の写真


横山幸恵さんと、ゼツの顔がハッキリと写ってる写真である。

「たしか、4年前までは隣町、隣の駅前、信金の並びで店をしてたんですよね」


と

3枚目を見せる金舟


そこには横山幸恵さんと、津川善次(ゼツ)の顔がハッキリと写っている。






この女の人って、
芸能人の北川景子さんじゃないの！

で

この男の人は
中山産業のゼツさんよ！

3年前の事件って、この人じゃないの刑事さん。このすぐ近くの事務機の人で当時、警察やらマスコミが沢山来てたわよ。亡くなった方には申し訳ないけど、私たちも夜道は気を付けなきゃね、って言ったら、
ママさん達は大丈夫って言われて、それって綺麗じゃないって事！って茶化されてたもの。あそこの会社の人も何人か来てるけど、綺麗過ぎて近寄り難い女の子だったらしいわね。


「そうなんです。あれから3年経つんですよ。いまだに解決出来てなく遺族の方や市民の方には申し訳ない気持ちです。」


それでさっきの写真の中に疑わしい人物がいるのね。


「くれぐれも、ご内密に口外しないようにお願い致しますよ」

と言いながら

4枚目の写真を出す


ゼツと全く関係ないＡさんが写っている写真である。


金舟は

Ａさんの方を指差し

「よーく見て下さい｡見たことないですかねと、聞く。」

さあー？この人見たことないわねー。こちらのゼツさんなら、中山産業の淀さんと先月も来ましたからね。

「ゼツさん？珍しい名前ですね｡１度聞いたら記憶に残りますね」

私がね、ゼツさんて絶倫のゼツさんですか？って冗談半分に聞いたら、ニックネームだけど、案外、当たってるかもって、向こうも冗談半分で返してくれたわ。

「良く来られてるんですね」


いやいや今年、新年会の帰りに初めて淀さんに連れてこられて、先月で2回目ですわよ。
昔は会社から歩いてすぐで淀さんも良く来てくださったけど、今は不景気よね。年に3回も来れば良いところよ。嫌になっちゃうわ。


「ママさん、もう一度良く見て下さい。」と
Aさんを指差す金舟



知らないわ。お役に立てなくて申し訳ないです。


「ありがとう御座いました。今日の事はくれぐれも、ご内密に口外されませんようによろしくお願い致します。また、ご連絡なり寄せて頂く事になるかもですが、よろしくお願い致します」






なぜ？

全く関係ないＡさんを指差し？
何度も確認したのか？

金舟さん？

大丈夫かよ！

スナックパドックを出たのは7時を回っていた。運良く、他の客も従業員も来る事なく、ゆっくりと話が聞けた。

電車の中で降りる直前にボタンを落とした事。駅前の信金で10時46分に振込みしてること。中山産業の淀さんと一緒に初めて来たのが1月。2回目が9月。
津川善次！奴のニックネームはゼツか！
絶倫のゼツ。当たってるかも？もし、奴が犯人なら大当たりじゃないか！


内密に口外しないようにとお願いしたが、人の口に戸を立てる事は出来ない。

ましてや、マークしている中山産業の津川善次が他の社員も年に数回と言えどやって来てるとなると、中山産業のことやゼツと呼ばれている人物の事を根掘り葉掘り聞いてしまうとママさんも誰が怪しいか、ピンとくるだろう。どこでどう捜査状況が漏れるかわからない。


それなら、Aさんには申し訳ないが、全然関係のないAさんの写真を指差し再三見たことないですかと、注意が行くように無難にカモフラージュしたまでである。



そんな事を考えながら

寄り道をして署に帰る金舟であった。

金舟が署に戻ったのは8時半である。

本部長が金舟の帰りをまっていた！

馬田本部長
「金舟、ボタンの持ち主は解ったか」

金舟
「粟田優子。あの横山幸恵さんの勤め先のすぐ近くでスナックパドックを経営。そこのママさんですね。」

馬田本部長
「しかし、りんってペットだったとはな。思い込みは禁物だな。」

金舟
「北さんが一番に気づいてくれて良かったです。」

馬田本部長
「で、ボタンはいつ何処でなくしたか、覚えてたか？」

金舟
「向こうも商売してるだけあって、スケジュール手帳を置いてまして、3年前の事もスラスラと覚えてくれてました。3年前の10月25日に栗駅に着く直前に電車内のシートの上に落としたと言ってますね。」

馬田本部長
「その話が本当ダとして、誰かに恨まれるような、罪を擦り付けられそうな事はなかったのか？」

金舟
「全くなかったらしいです」


馬田本部長
「金舟がそう言うなら間違いないだろう。そうしたら、念のために栗駅でビデオテープを借りて来て裏付け捜査だな」


金舟
「帰りに栗駅とママさんが乗った東駅と両方のテープを借りて帰ってきましたから」

馬田本部長
「さすが金舟！早速、観てみようじゃないか！」




金舟の寄り道は
そう言う事だったのだ！




金舟
「粟田優子。」
金舟
「」

まずは東駅のビデオ。
栗駅のひとつ手前の駅である。
粟田優子さんが乗った駅。

改札を歩いている


金舟
「ポケットの部分を拡大してみますね」


馬田本部長
「ポケットのボタンがぶらっと付いてるな」


ホームのビデオも見てみましょう

ホームのビデオではポケット付近がハッキリとは、写っていなかった。


栗駅のビデオ。

金舟
「10時32分の電車からポケットを気にしながら降りて来ましたね。立ち止まって電車の中をみたりしてますね、拡大してみます」


馬田本部長
「おっ、ボタンが無くなってる。証言どおりだな。」


馬田本部長
「ん？ちょっと待て？粟田優子さんの後ろを走る男。滑り込みセーフのように電車に飛び乗る男。これは金舟がマークしてる男じやないのか？」


金舟
「画像を静止して確認してみます。津川善次です。間違いない。」


馬田本部長
「入れ替わりで乗り込んだな。奴がボタンを拾ったに違いないな！」



ようやく

ボタンと津川が繋がった訳である！

その頃、ゼツは




大きな菓子箱を持って


105号室のインターホンを押していた



そう、
コインランドリー横のアパートである



ピンポーン


「どちら様ですか？」

「今度、こちらに引っ越して来たものです。菓子箱を持って挨拶に伺ってます」

「ちょっと待てくださいね」

ガチャ

ドアが開く。


が

チェーン錠されている


そこに菓子箱を差し出すゼツ


チェーン錠をはずし、ドアが大きく開く


すかさず１歩踏み込んで目の前に菓子箱を両手で差し出すゼツ



その時に


差し出した右手に持っていたキーホルダーをわざと、落としてみせる


「あっ、落ちましたよ」

と言って、しゃがんで拾おうとするSYさん。



素早く後ろに回り込み


口を塞ぎ羽交い締めにするゼツ



騒ぐな！

そのまま手足をバタバタとしているSYさんをズルズルと廊下を引きずり奥の8畳ほどの部屋に引きずりこむ。


テーブルの上に転がっていたボールペンを目に突き刺すように持って行くと


ナイキのジャージを引きずり下ろし

上は捲り上げた

怯えた目
今にも暴れ出しそうな目

見開いた目





血管が1本1本見えるぐらいに見開いた目



家に居るときはノーパンノーブラなのだろう。下着は付けていなかった




手足をバタバタさせる力が次第に弱くなり

断末魔のうめき声を上げ目だけが見開いてる




その顔は横山サチエそのものであった


ゼツはドクドクと脈を打たせる








そうして

自慰にふけった


ゼツは風呂から上がると

寝床に入り眠りに付くのであった。