ようこそゲストさん。
ナンネットIDにログインしていません。
ID: PASS:
IDを保存 
ナンネットIDは完全無料のサービスです。ナンネットIDを取得するとナンネットの様々なサービスをご利用いただけます。
新規登録はこちら
ID・パスワードの再発行はこちら
祖母・昭子
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:SM・調教 官能小説   
投稿の削除 パスワード:
1:祖母・昭子
投稿者: 雄一
女の人の、男子として妙に気持ちをそそられそうな甘い化粧のような匂いを、
僕は鼻孔に感じ、同時に薄くすべすべとした布地の感触を通して、人肌の温み
を頬肉の表皮に感じさせられて、茫漠とした気持ちで薄目を開けた。
 すぐ間近に人のような気配を感じ、顔を少し動かせて目を大きく開けると、
畳に寝転んでいる僕の身体に、誰かが覆い被さってきているようだった。
 開けた目の真ん前に、薄い水色のすべすべとした布地が揺れていて、その布
地の中の人肌の温みが、感じのいい化粧の匂いを含ませて、僕の顔のあたりの
空気をほんのりと包み込んできているのだ。
 少し慌て気味に顔を上げた時、僕の鼻先と頬に水色の薄い布地の中の柔らか
い肉が触れてきたのがわかった。
 居間の畳の上に僕は身体を横たえて、うたた寝よりももう少し深い眠りの中
に落ちていたのだ。
 そこへ風呂から上がってパジャマ着替えた祖母が来て、寝入っている僕にタ
オルケットを掛けてくれていたのだ。
 寝がえりか何かでタオルケットがずれたのを、祖母がまた掛け直してくれる
のに身体を僕に寄せてきた時に、僕が目を覚ましたのだった。
 「風邪ひくわよ、こんなとこで寝ちゃ」
 身体を少し離して、祖母がかたちのいい唇から白い歯を覗かせて微笑んでき
た。
 「あっ、ごめん。婆ちゃんにおやすみの挨拶しようと思っ てたら、つい寝込
んじゃった」
 「そんな気を使わなくていいのに」
 「あ、それとね、婆ちゃんにいい忘れてたことあって」
 「何、いい忘れててことって?」
 「あのね、僕の発見なんだけど…演歌の歌手でね、三味線抱えて歌う人で、
その人の顔が婆ちゃんにそっくりなんだよ。名前はたしか…長山、何とかってい
う人。スタイルも婆ちゃんと一緒で小さくて奇麗な人。何日か前にテレビに出て
たんで母さんにもいったら、驚いてた。」
 「そうなの。婆ちゃん喜ばなくちゃいけないわね」
 「ああ、そういえば、婆ちゃんの娘の母さんもチョイ似てるね。でも婆ちゃん
はほんとに瓜二つだよ」
 「はいはい、もういいから早く寝なさい」
 「うん、おやすみ」
 他愛のない話を祖母とし終えて、寝室の布団に身体を横たえると、現実の状況
がすぐに僕の頭にもたがってきた。
 竹野という男のことだった。
 当然に、僕はまだ竹野本人には会ってはいなくて、知っていることといったら、
年齢が祖母よりも二十二も年下の四十二歳で、例の高明寺のお守り役として働い
ていて、坊主頭であることと、性格的には自分の書いた下品で下劣としか思えな
いような拙文をわざわざ祖母にメールに書き写させて、それを読ませたりとか、
相当な偏執狂のような面があったりという変人的な人物のようである。
 祖母のスマホのメール情報では、過去に離婚歴があり、この村へは四年ほど前
に流れ着いたとのことだが、それまでの住まいとか仕事歴はわかっていないよう
だ。
 祖母との性の関係もそうだが、推測するまでもなく、所謂SM嗜好者であるのは
間違いないようだ。
 性の問題は、たかだか十六歳でしかない、著しく若輩の僕が偉そうにいうべき
ことでないことはわかっているので、どうこうと意見はいわないが、SM嗜好その
ものについては、僕自身は侮蔑や軽蔑の対象外だと胸の奥では密かに思っている。
 恥ずかしいことだが、思春期真っ盛りの一年ほど前のある時期、僕は女性の生
理について、唐突に歪んだ好奇心を持つようになり、自宅の便所の汚物入れにあ
った自分の母親が捨てた汚物を手に取り、テッシュに包まれたものを開いて、赤
い血や黄色い沁みを見て、訳もなく興奮したことがある。
 人はさまざまなのだと僕は思う。
 つつましく穏やかで清廉な僕の祖母を、恥ずかしく凌辱し虐げる竹野という人
物には、憎悪や嫌悪や憤怒といった感情が、何故かあまり湧いてきていないこと
に内心で少し驚いているというのが、僕の正直な気持ちで、肉親である祖母には
申し訳ないのだが、性行為に伴うSM嗜好への興味の思いのほうが強いのかも知れ
ないと恥ずかしながら思っているのだ。

 
 「明日の夜ね、婆ちゃん、また寄り合いがあるの。雄ちゃん、留守番お願いね」
 祖母の口から待望(?)の言葉が出たのは、それから三日後のことだった…。


 
 
2023/01/27 22:12:19(7WqPo0xO)
192
投稿者: (無名)
6人目ゲットですなあ。複数プレイの組み合わせが様々あって楽しみです。
23/04/03 22:12 (lwJyJmmD)
193
投稿者: 雄一
「バカに手回しが早いな」
 「あ、あなたが悦んでくれると思って…」
 「そんなしおらしいとこあったんだ」
 「…嫌いになった?」
 「ちょっとな。イメージと違う」
 「いやっ!」
 「悪いな、キャッチ入ってるから」
 そういってスマホを切った。
 益美からの電話だった。
 山岡荘八の「徳川家康」に、久し振りに目を向けたい気分になって、僕は区立図書館に来ていた。
 益美の家を訪ねた翌日の午後だった。
 「徳川家康の」の、大阪夏の陣が書かれた十三巻を書棚から取り出して、窓側の席に座った時に
かかってきた電話だ。
 発信者の名前を見て、僕は少し驚いた、というより、意外な気分になった。
 くすみがかった茶色表紙の本を、一旦書棚に戻して、僕は隣りの芝生公園に出た。
 昨日の今日で、益美の声が妙に弾んでいるのが気になったが、昨日の話の中でちょこっと出た、縄
師の報告で、亡夫の伝手を頼ったりして、本物の縄師を探したということを、僕に報せる電話だった。
 僕個人の感覚でいうと、益美はその美貌に群がってくる男どもを、勝手自在に取捨選択して、男ども
の言葉には、自分から唯々諾々とした態度や姿勢は見せないという、孤高の女性のイメージを抱いてい
たので、少し拍子抜けのような気持になったのだ。
 裏返していえば、それは僕個人が彼女のお眼鏡に叶ったということになるのだろうが、何故かそれが
妙に嫌だった。
 男なら誰でも群がってくる美貌を、顔と身体に備えているのは間違いのない益美は、いつでも凛とし
た孤高感の中にいて欲しいというのが、彼女への僕の贅沢なイメージだった。
 益美の声を聞いて、僕の読書の意欲はすぐに雲散霧消した。
 代わりに湧き上がったのは、益美への嗜虐の思いだった。
 僕はスマホの着信履歴の最新番号を出し、オンボタンを押した。
 「俺だ。さっきは邪険にして悪かったな」
 掌返しに声を優しくいってやると、
 「一発でフラれたって思ってた」
 と益美は安堵し、嬉しそうな声で返してきた。
 「いつ見れるんかな?」
 「えっ…どういうこと?」
 「益美が縛られるとこだよ」
 「私が…?」
 「おかしなこといってるか、俺?」
 「誰か別の人だと思ってたから…」
 「益美しか、俺の頭にはない」
 「夜、お家出れる?」
 「問題ない」
 「また連絡します」
 益美からその連絡が入ったのは、その日の夕刻だった。
 明後日の七時に、夕食を用意して待っているとのことだ。
 裕福な資産家の美貌の有閑マダムといわれている益美が、十六歳の高校生でしかない僕如きのた
めに、自分のほうからこれほど、能動的に動いてきたのには、僕自身も少なからず驚いたが、それ
は僕と彼女にしかわからない、あの錠前と鍵に例えた、お互いの身体と心のフィット感が大きく作
用しているのだと僕は思った。
 益美があの紀子の叔母だということは、ここでは忘れなければいけないと、自分なりに割り切っ
て、僕は約束の日時の刻限に、田園調布の大邸宅の、玄関のチャイムボタンを押していた。
 おそらく有名な画家が描いた作品だろうと思われる、絵心のない僕にはただの幾何学模様にしか
見えない、五十号以上のサイズの、高価そうな絵画が壁にかかった、広い玄関に出迎えに出てきた
益美は薄い紺色の色無地の着物姿だった。
 十六の僕には難しい表現はできないが、櫛で奇麗に解かした、ふんわりとしたボブヘア風の髪に、
白さの際立つ小さな顔、長く引かれた眉が顔の白さに対比して、その下の切れ長の目と同じように、
美しく熟れた女性の妖艶さを醸し出していて、彼女の細身のその姿を見て、僕は少しの間、惚けた
顔になっていたのだと思う。
 この時の僕を益美がどんな目で見ていたのか知らないが、ほとんど声をかけることもできないま
ま、僕は彼女の上品な誘いの仕草に載せられて、少しおぼつかない足取りで、リビングまで通され
た。
 五、六人掛けのテーブルの上には、テレビでよく見る高級レストランの、フルコースのような料
理が並べ置かれていて、普通のサラリーマン家庭の僕の目は、また点になって固まってしまってい
た。
 テーブルを挟んで、艶やかな着物姿の益美と対峙する位置に座った僕に、
 「美味しいかどうかはわからないけど、これ、お昼から自分一人で全部作ったのよ。遠慮しない
で召し上がって」
 と赤い口紅が映える唇の中から、歯並びのいい白い歯を覗かせて、少し恥ずかしげな表情で声を
かけてきた。
 益美のその声に、浮つき気味だった僕はようやく意識を正常に戻し、
 「旨そうだな。遠慮なくいただくよ」
 と言葉を返し、ナイフとフォークを音を立てながら手に持った。
 中には味のよくわからない一品もあったりしたが、メインのステーキは柔らかく濃厚なタレで美
味しかった。
 僕のほうが意識的にそうしていたというのでもないのだが、会話のほとんどは益美の口から出る
言葉ばかりで、僕のほうは、ああとか、そうとか、うんとかの返事を返すだけで、テーブルの上の
料理を口に運ぶことに重きを置いた感じで、十六歳と五十二歳という、極めて不釣り合いな年齢の
二人の晩餐は、奇妙な空気感の漂う中で済み、応接間のソファで、上等なコーヒーを二人で向き合
って啜っていた時、
 「七時半にね、縄師の方を呼んでるの。私も七、八年ぶりくらいに会う人なんだけど、縄師とい
っても、それがその人の本業ってわけじゃないの。亡くなった主人の会社で部下として長く勤めて
いた人でね。今は自分で起業して立派にやってらっしゃる人…」
 と益美は僕に視線を合わそうとせず、淡々とした口調で話してきた。
 その顔に微妙な赤みが差しているのが、僕の目にもはっきりとわかった。
 「あんた、人に見られてするのが好きなんだ?」
 僕が返した言葉に、益美の色白の顔が益々赤くなっていた。
 「ま、また狭い室で申し訳ないけど…あ、あそこの室で…」
 益美と僕との間の微妙な空気感は、まだ消えないまま、刻限は流れた。
 彼女がコーヒーカップを流し台で洗い終えた頃、玄関のチャイムが唐突に鳴り響いたので、僕は
ソファから立ち上がり、覗き部屋の小さなドアに足を向けた。
 それから二十分近くも待たされ、気分が少しイラついてきた頃、マジックミラーの前のベッドの
ある室のドアが開いた。
 入ってきた益美の色無地の着物には、すでに真っ赤な縄が幾重にも巻き付けられていて、彼女の
手は後ろ手にされていた。
 男は妙に時代がかった、薄茶色の着流し姿で、浅黒い肌をした、見た目には三十代半ばくらいの
痩身な体型をしをしていた。
 顎の線が細く、鷹のように鋭い感じで、その視線が室に入るなり、何もかもわかりきったような
表情で、ミラーに向けられていた。
 「ふん、この向こうにあんたの新しい恋人がいるってわけか。八年経っても性分は治ってねえな」
 「そ、それはい、いわないって」
 ミラーの前で妖艶な緊縛の身を晒して、益美が男に訴えるようにいう声が鮮明に聞こえた。
 「偉そうなこというんじゃないよ、この淫売女が。さっきも俺にしがみついてきて、キスしてきた
のは誰なんだよ」
 「お、お願い…もうやめて」
 「久し振りに呼んでもらったと思ったら、こんな三枚目をさせられるとは、俺も落ちぶれたもんだ
な。…ま、そのうちにお前の本性を、恋人の前に晒してやる」
 男はそういって、身軽な動きで横のベッドの上に上がり、益美を縛っている赤い縄の先を、天井に
向けて放り投げた。
 この前の時に僕も気づいていなかった、鉄製のフックのようなものが天井から、間隔を置いて吊る
されていて、男の投げた縄尻がそのうちの一つにかかっていた。
 ベッドの上から、男が掴み取った縄を引き上げると、着物姿の益美の細身の身体が浮き上がるのが
見えた。
 益美の足元に目を向けると、白足袋の足先が、床に付くか付かないかぐらいの不安定さで止まって
いた。
 男が結び目を固定して、ベッドから身体を下ろし、益美の不安定に揺れる身体のすぐ前に立ち、彼
女の細い顎を片手で挟み付け、憎々しげな表情を見せ、
 「これからあんたの昔のこと、恋人の前で洗いざらい全部喋ってやるよ」
 そういっていきなり彼女の赤い唇を塞ぎにいった。
 足元のおぼつかない益美は、何の抗いもできないまま、男に長く唇を塞がれ続けた。
 着流しの男のさも憎々しげな表情や、益美の真剣そうな怒りと怯えの表情を見て、
これがどこまでが演技で、どこまでが本当の話なのかの判別は、まだ経験値の少ない
僕には、この時はわからなかった。
 どちらかというと、益美の美しい眉間に皴を寄せて、予測とは違う方向に向かって
いることに慌てふためいている様子が、真に迫っているような気はした。
 唇がようやく離れると、
 「さて、もうひと仕事だ。それからゆっくり昔話といこうか」
 といって、床に垂らしていたもう一本の縄尻を持って、身軽くベッドに飛び乗った。
 その縄の先を天井のフックにかけると、また同じようにゆっくりと引き上げた。
 と、益美の着物の上前の辺りがはらりと割れ、足先の白足袋が上に上がってくるの
が見えた。
 それまで隠されていた白い脹脛が見え、その上の太腿の青白い肌が露わになり出し
てきた。
 上に持ち上げられた益美の足の、膝の上辺りに赤い縄が二重三重と巻き付けられて
いて、その縄尻を男がゆっくりと引き上げていたのだった。
 片方の、床に付くか付かない足だけが支えの頼りの益美は、声を出すまいとしてか、
自分の歯で下唇を強く噛み締めながら、美しい顔を苦しげに歪ませていた。
 上に引き上げられた益美の片足は、着物の帯に近いところ辺りまでせり上がってい
て、開かれたその先までが覗き見えそうだった。
 ベッドから下りた男が、苦しげに顔を歪ませている益美の前で、着流しの帯を解き、
ステテコ一枚の裸身になった。
 無駄肉のほとんどない、男の引き締まった上半身が露わになった。
 男は益美の前の床に胡坐座りになり、彼女の上前をはだけられ、露わになった白い
足の奥を覗き込んでいた。
 「ふふん、上品な奥様はさすがに着物を着る時は、下着はお召しにならないんだな。
奥のほうまでしっかり見えてるぜ」
 「ああっ…は、恥ずかしい」
 噛んでいた下唇を離して、切なげな声で益美がいうと、
 「ほんとに恥ずかしがってんのか?どれどれ」
 といいながら、男は片手を彼女の着物の中へ差し入れていき、
 「昔と一緒だな。大変によくお湿りで、もう、早くも欲しい欲しいって濡れきってる
ぜ」
 と益美に顔を向けて、卑猥な笑みを浮かべながら、指先の濡れた手を前に翳してきた。
 「あんたと初めて会ったのいつだったかなぁ。営業部でくすぶっていた俺を、あんた
の旦那に、女の縄縛りが得意というだけの引きで、秘書室に配属された時、サラリーマ
ンの運って、どこに転がってるのかわからないもんだと、俺はつくづく思ったよ。筆頭
秘書だったあんたがその色香で、社長夫人の座を掴み取ったのと同じだ。仕事も精力旺
盛だった社長は、女に関しても絶倫だったもんなぁ。ついには高じてSMの世界におのり
込めになった。…社長の目の前で、社長夫人のあんたを抱けっていわれた時には、さす
がに俺もおったまげたけど…あの時のあんた、俺よりもかなり興奮してたもんな」
 男は益美の足の奥から引き出した手を、また中に差し入れて、胡坐座りのまま、目を
どこか遠くに向けて、懐かしげな表情で喋り出していた。
 それは益美本人だけでなく、すでにミラーの向こうにいるとわかっている人間にに聞
かせているのかも知れないと、僕はふと思った。
 「社長の前で初めてあんたを抱いた時、俺の背中に血が出るほど爪立ててきて、俺の耳
元で何て囁いてきたか覚えてるか?…あなたと一緒に逃げたいって。その後も、あんたは
何回か同じことを俺にいった。俺もちょっとその気になりかけたけど、今にして思うと、
思い止まってよかったと思うよ。社長の援助のお陰で、こうして今も商売していられるか
らな。…あの時のあの言葉は本気だったのか?」
 当時を思い出すような口調で喋りながら、男の手が益美の着物の奥で妖しげに動き続け
ているのが僕にもわかった。
 益美の顔の表情もいつの間にか様変わりしていて、苦しげな表情はどこかに立ち消え、
愉悦の表情に変わってきている感じだった。
 喘ぎか悶えかわからない声が、間欠的に漏れ出してきていたのだ。
 「そうそう、そういえばあの時も強烈な印象だったよなぁ。東南アジアの大手商社の社
長を接待した時、場所がどこだったか忘れたが、二部屋が続きの間になってる室で、あん
たが向こうの社長の秘書をしていた、背の高い黒人の秘書二人に抱かれて、悶え狂ってい
た時、別室にいた二人の社長を含めた数人が、いきなり押し入ったら、あんたはっベッド
で四つん這いになり、前からと後ろからの両方に、どでかいものをぶち込まれているのを
見て、俺はあんたの、女としての美しさと怖さというものを同時に教えられた気がしてい
るよ」
 男は喋り疲れたのか、徐に床から立ち上がり、益美の身体をミラーの正面に向けてきて、
着物の裾を上に向けて大きくたくし上げてきた。
 向こう側から見ると、鏡に益美の無体であられもない姿が映り、こちら側からも同じよ
うに益美のあられもない裸身が見れるのだった。
 男の意識は鏡ではなく、ミラーの僕に向いているのは明白だった。
 僕には男の顔が見えるが、男には僕の顔は見えていない。
 そのことへの男の焦燥か、もしかしたら嫉妬のような思いを相手は抱いたのか、益美の
身体を緊縛していた赤い縄を、急ぐような動作で解き出してきていた。
 縄を解き休むことなく、益美の着物の帯の何本かを、さらに動きを早めて解き出してい
た。
 益美が身に付けていたものすべてが、白足袋一つ残して床に落ち、男に寄り倒されるよ
うに、彼女の裸身はベッドに横たわらせられた。
 男も自分の身に付けていたものをすぐに脱ぎ捨て、益美の身体の上に獣が獲物に襲いか
かるように覆い被さっていった。
 ミラーから見えるのは、男の浅黒い背中だった。
 「あうっ!」
 男の背中の向こう側から、益美の短い声が聞こえた。
 白足袋を履いた益美の白い両足が、天井に向けて高く上げられた。
 男の剥き出しの腰が、前のものを突き刺すような動きを続け出していた。
 聞こえてくるのは、益美の口から出る喘ぎ声だけだった。
 やがて二人の身体は、ミラーの向こう側にいる僕を意識してのように、向きを変え、動き
を変えてきた。
 四つん這いのかたちで、益美の顔が僕の正面に向けられた。
 髪がかなり乱れ、前髪の何本かが額の汗に、纏わりついているようだった。
 背後からの男のつらぬきを受け、益美の白い背中が震え動いていた。
 あるところで益美の視線が、きっとミラーの中の僕の目を捉えてきた。
 益美のその強い視線は、男からのつらぬきにも堪え、ひたすらに僕の目をミラー越しに凝
視してきていた。
 自惚れるわけではないが、何かを僕に訴えかけているような、真剣な眼差しに、僕には見
えた。
 男の益美への責め立ては、その後も長く続き、鏡の中にいる僕を大いに意識したかのよう
に、幾つかの煽情的dな体位を取ったりして、彼女を喘がせ悶えさせていたが、僕のほうはど
のあたりからか記憶はないが、何かどこかで覚めたような気持になっていた。
 このことを企てた益美の心理状態を、難しく掘り下げない程度に僕は考えていた。
 縄云々の話は、確かに僕の一言がきっかけだったのは、僕も認めるしかない。
 益美は純粋に僕を悦ばそうとして、古い伝手を頼って、僕にこのショーを見せているのか、
大人の凄さを僕に誇示し、たかだか十六の僕を傅かせようとしているのか、それこそ大人の
女の魂胆がよくわからなかった。
 そのどちらにしても、益美は十六のこの僕を、一人の大人の男と認めていて一人ているの
には違いないと、僕は短絡的に結論を出し、自分の心の中のスマホに強い思いを込めて登録
をした。
 意気揚々とした思いで何年振りかに益美を訪ねてきた男は、益美の妙に冷めた視線に、少
し意気消沈した思いで、彼女の家の広い玄関を出て行った。
 シャワーを浴びて浴室から出てきた益美を、二階にある彼女の寝室で僕は抱いてやった。
 抱いてやった、という表現が間違いでなかったくらいに、彼女は僕の前で激しく燃え上り、
全身を、獲れたての鮎のように跳ね上がらせ、泣きそうになるくらいの声で喘ぎ悶え果てた。
 ベッドの上で僕の腕枕に頭を寄せながら、
 「初めて人を好きになった時の感じって、こんなだったかな、って、あなたに抱かれてい
て、私、そう思ったの」
 とおかしなことに、片側の目だけから涙を一筋零しながらいってきた…。



                          続く





 
  

 

 

23/04/05 16:16 (lM0RgOHY)
194
投稿者: 雄一
「なぁ、今度の土曜日、奥多摩へ行ってみないか?」
 国語教師の俶子が、風邪を引いて休んでいると、校内の誰かがいっているのを聞いて、
帰宅部のキャプテン候補の僕は、誰より早く校門を出て、彼女の住むマンションに向か
った。
 薄いピンクのパジャマの上に青のガウンを着込んだ俶子が、ひどく驚いたような顔を
して、そしてすぐに泣きそうな顔になって、僕を迎えてくれた。
 風邪を引いてなかったら、そのまま僕に抱きついてきそうな顔だったが、さすがに教
師らしく、すぐにダイニングの棚から、新しいマスクを持ってきて、うつすといけない
からといって僕に渡してきた。
 何もかまわなくていいからといって、俶子をベッドに戻して、他愛のない会話が続い
て、それが少し途絶えた時に、僕が彼女に向けていった言葉が、奥多摩行きの話だった。
 「でも、風邪じゃなぁ」
 大した意図もなく、励ましのつもりでいった言葉だったので、即座に僕は打ち消そう
としたのだが遅かった。
 化粧も何もしていない俶子の顔が、もう喜色満面になっていたのだ。
 「行く行く。嬉しい!」
 そういって僕の手に、自分の手を伸ばしてきて、
 「前言撤回はなしだからね!」
 と病人顔とは思えない元気さで、僕の発言を封じてきた。
 そんなことを僕がいい出したのには、伏線があった。
 この数日の間に、尼僧の綾子から、少し辟易するくらいに、メールが何通か僕のスマ
ホに届いていたのだ。
 例によっての長文ばかりだったので、既読にはしたものの、最後まで読みきったのは
一通もなかった。
 それで頭に漠然と思い浮かべたのは、国語教師の俶子をダミーに使っての対面だった。
 綾子も元国語教師だから、何となく接点は見出せるのではないかという、きわめて短
絡的な発想を、僕は持っていたのだ。
 僕の邪悪な本心は、尼僧の綾子と現役の国語教師の俶子を交えての、妖しい享楽と愉
悦の中に浸ってみたいという、極めて自分本位的で、勝手至極な、加えて不埒不遜な企
みにあったのだ。
 同学年の紀子の叔母を、ある意味強気な手段で屈服させて、まだ幾日も経っていない
というのに、また別の熟女たちとの享楽を企てている自分に、自分自身が呆れ返ってい
るのが、正直な僕の気持ちだった。
 そんなこんなで、つい、病身の俶子の顔を見て出てしまった失言だったのだが、ここ
で断固拒否をすると彼女との関係もやばくなる気がして、僕は言い出しっぺの責任を取
るかたちになった。
 しかしそれを実行するとなると、大きな問題がまだ一つある。
 祖母の扱いだ。
 奥多摩まで出かけて、祖母と会わずに帰るのは到底不可能な話だった。
 国語教師同士を引き合わせて、俶子を綾子の家に泊まらせ、僕が祖母の家に行くとい
うのは、自分の淫猥な目的から大きく逸脱するので没にした。
 苦肉の策を僕は思いついた。
 夜ではなく、昼間の出来事にすればいいのだと思った。
 朝早くにこちらを出て、奥多摩に午前中に着き、その足で直接、寺の尼僧を訪ね数時
間を過ごす。
 帰りの列車に乗る一時間ほど前に、僕が祖母の家を不意打ち訪問をして、またゆっく
り来るからと宥めて列車に乗る。
 祖母を宥める手段で、僕の機転はまた悪賢く働いた。
 夏休みの宿題レポートで、僕は高明寺から借り受けた平家落人の資料を基にして書い
たレポートが、優秀作品として九月の校内新聞に載った。
 その校内新聞を祖母に見せて、それの追加研究の一環として、学校の国語教師同伴で
寺を訪ねていたといえば、体裁は繕える。
 また尼僧の綾子と俶子を繋ぐ接点材料ともなるので、我ながら一石二鳥の謀略になる
と、僕は内心でほくそ笑んだ。
 第三セクター線の乗り継ぎ駅で、八時過ぎの列車に僕は俶子と二人で乗り込んだ。
 数日前には風邪で沈み込んでいた俶子の顔は、真反対にうきうきとしていて、手作り
で僕の朝飯の弁当まで作ってきてくれていた。
 俶子は白のコットンパンツに、薄いグレーのセーターと濃紺のハーフコートという地
味ないで立ちだったが、顔の化粧はいつになく濃いめの感じだった。
 列車の座席に並んで座り、今から訪ねる奥多摩のことについて、一頻り喋り終えると、
俶子は少し悪戯っぽい目をして、
 「ね、あなた、私と尼僧さんと会わせて、何か企んでない?」
 と明るい声で尋ねてきた。
 女の勘の鋭さには、いつもながら辟易とした思いにさせられている僕は、
 「何にも考えてなんかいないよ」
 と負けずに切り返した。
 「あなたと一緒の旅行だから、何があってもいいの」
 窓外に流れる景色に目を向けながら、俶子は何も不安のないような表情を見せている
のに、僕の心は微かに痛んだ。
 雑貨屋のある駅に降りたのは、僕と俶子の二人だけだった。
 雑貨屋の叔父さんに見つからないよう、早足で僕は俶子の手を引くようにして離れた。
 尼僧の綾子には、昨夜、夏休みに資料を借りたりして世話になった、平家落人のレポ
ートが校内新聞に載り、追加研究をすることになり、担当の国語教師も同行するのでよ
ろしくと、到着時間と併せてメールしてあった。
 (わかりました。嬉しい気持ちと少し複雑な気持ちが混濁)
 というのが綾子からの返信だった。
 坂道から階段を上がると正面が本堂で、左側に庫裏がありその横が綾子の住む住家に
なっている。
 僕と俶子が階段を昇り終え、一息ついた時、綾子の住家の玄関の戸が開き、いつもの
法衣姿で彼女が外に出てきた。
 僕と目が合い、小さく会釈してきた。
 僕は俶子に目で合図して、綾子のほうに近づき、如何にも他人行儀風に、
 「おはようございます。今日は急なお願いをして申し訳ありません。あの、こちら、
僕の高校の国語教師の沢村先生です」
 と堅苦しく挨拶をすると、綾子も心得たように、
 「いえいえ、どういうことか詳しいことは存じ上げませんが、この寺のことが少しで
も皆様のお目に留まれば何よりのことですわ」
 と儀礼的に、口元に薄笑みを浮かべて返してきた。
 俶子はというと、意外なことに、口に手を当て驚きの表情で、綾子の顔を凝視してい
た。
 見知った顔に会ったという顔つきだった。
 「あ、あの…さ、坂井先生じゃございません?」
 喉を引き攣らせたような声で、俶子は僕のことなどまるで無視して、綾子に向けて声
をかけていた。
 「えっ…あ、はい、旧姓は坂井ですけど…?」
 「北岡中学校の…私、先生に国語を教えてもらった沢村俶子です。先生の担任クラス
ではないですけど…当時の校長先生が名古屋という珍しい名前の」
 「あっ、ああそういえば、いつも図書室で樋口一葉なんかを熱心に読んでた、あの沢
村さん?」
 僕一人だけが蚊帳の外のように、唖然と突っ立っていた。
 綾子と俶子の二人が、中学時代の恩師と教え子の関係だったということは、僕には全
くの想定外だったので、内心で僕は大いに困惑し戸惑った。
 この場合のプランBは、僕は全く考えていなかった。
 かくなるうえは、後はもう流れに任すしかないと、僕は腹を決めて、二人の約二十年
ぶりの感動の再会の傍観者になるしかなかった。
 綾子も俶子も、恩師と教え子という立ち位置になってしまって、すぐ近くにいる僕の
ことなど眼中になくなっているのだろうと思いながら、二人が手を取り合って綾子の住
家の玄関を入っていく後を、金魚の糞みたいに付いて行った。
 見覚えのしっかりある、居間の座卓に俶子と並んで座り、法衣姿の綾子を前に、僕は
改めて今日の来訪の空疎な趣旨を述べたのだが、頭も心の中も上の空一杯だった。
 今日の僕の本当の目論見が、儚く消滅していきそうな空気の中で、僕は顔で笑いなが
ら、心で落胆を大きくしていたのだが、横にいる俶子の口から、これまた想像外の強烈
な一言が飛び出し、六畳間の居間の空気が見る間に激変したのだった。
 「先生、二十年ぶりにお会いした恩師の先生に、こんなお話するのは、大変恥ずかし
く申し訳なく思っているのですが…私、この上野、いえ、雄一君とは…き、教師と教え
子の関係を超えた間柄になっています」
 俶子は濃い化粧顔の眼鏡の奥の目に、これまで僕も見たことのない真剣な光を満ちさ
せているのが、ぽつねんとした表情で横にいた僕にもはっきりと見えた。
 「あ、あらまぁ、そ、そうなの」
 二人の前に静かな眼差しで座っていた綾子は、古い教え子の俶子に、いきなり機先を
制されて、口元に手を当て、薄い眉の下の目に微妙な笑みを浮かべていた。
 二人の熟女の、僕の目になど見えることのない女の戦いは、今のこの場での俶子の予
期せぬ発言の、もっと前から続いていたのかも知れない、と事の当事者であり十六歳の
僕ながらに何となくだが、わからないでもないような気がしていた。
 座卓を挟んで二人の女が、恩師と教え子という垣根を越えて、目と目で激しく火花を
散らせている、というのが今の構図のようだった。
 本能的に、僕は無言を通すことにしていた。
 どちらの側に立っても、その時点で敵を一人作ることになるのだし、第一自分自身が
どちらの側に立つことを、僕の思考は求めてはいなかったのだ。
 女二人の火の出るような睨み合いが、どういうかたちで終結するのか。
 おそらく明快な解答は出ないだろうと、少年ながら僕は読んでいた。
 二人は根本的に女同士だ。
 女を一つの左廻りの歯車として、そこに同じ左廻りの歯車を槌み合わせたら、絶対に
同じ方向には廻らない。
 あまりに単純過ぎる僕の理論は、三十分後に一つの答えを出していた。
 居間の間仕切りの襖戸を開けると、八畳の仏間になっている。
 室の中央に布団が敷かれていた。
 そこに布団の用意をしたのは、この家の家主の綾子だ。
 布団には綾子と僕と俶子の三人が、川の字になって身を横たえていた。
 綾子は袖頭巾だけ残した長襦袢姿で、僕はブリーフ一枚だけで、俶子はブラジャーと
ショーツ姿になっていた。
 僕がどういう意見で、熟女二人を得心させたのかというと、言葉は何一つ発してはい
ない。
 左廻りの女の歯車に、右廻りの男の僕の歯車が介在したのだ。
 意見は何もいわずに、僕はただ自分の身体を動かせただけだった。
 最初に僕の真横にいた俶子を、言葉もなく抱き寄せ、尼僧の綾子の眼前で唇を奪い塞
いだ。
 僕のいきなりの行動に驚きも露わに、大きく目を見開いた俶子だったが、抗いの仕草
は何一つなかった。
 重なった口の中で、俶子の舌は僕の舌にすぐに絡んできた。
 戸惑うように僕の胸に置いていた俶子の手が、僕の首にゆっくりと巻き付いてきた。
 突然の僕の予期せぬ急襲に、全身を強張らせていた俶子の身体から、力が抜けていくのを
察知した僕は、そこで彼女から離れ、座卓を廻って綾子の法衣の肩を抱きしめ、同じように
彼女の唇を奪いにいった。
 綾子も同じように、若い僕の俊敏な動きに驚き、狼狽えの表情を見せたが、口の中の歯は
苦もなく開き、恐る恐るだったが、自らの舌を僕の舌に差し出してきた。
 現役の教師という、多少の優越感を持つ俶子には、綾子より先に抱きつくことで小さな満
足感を与え、尼僧の綾子は得度・剃髪を終えて、長年の仏門生活で培われた我慢・忍耐を発
揮してもらうという、きわめて短絡的な十六の少年の発想から出た行動だった。
 そして最後の決め台詞は、二人同様にある母性本能への訴えで、
 「二人を一緒に愛したい!」
 という結末だった。
 自分本位といわれても仕方のない、勝手な行動だったが、これも頭の中で考えていたこと
ではなくて、僕の男の本能が本能のまま動いただけということだった。
 まだ昼前の明るい刻限だというのに、八畳の仏間にはただならぬというか、異様な熱気の
ようなものが充満していた。
 俶子のブラジャーのホックを外してやると、丸く柔らかそうな乳房が弾け出るように、僕
の胸の辺りにぽろりと零れ出た。
 膨らみを掴んでやると、俶子がふふんと小さく鼻を鳴らした。
 僕のもう一方の手は、栄子の長襦袢の襟の中深くに潜り込んでいて、膨らみに置いた手の
指二本が、彼女の丸い乳首を柔らかく摘まみ取っていた。
 綾子のほうは年上の女性らしく、まだ声を噛み殺しているようだった。
 自分が望んだこととはいえ、二人の熟れきった女性を相手に、僕の体力がどこまで持つの
かわからなかったが、船はすでにもやい綱を外し港を出ている。
 欲望の赴くままにだ、と割り切った僕は、身体の向きを俶子のほうに向けた。
 裏しそうな顔をして俶子は、自分から身体を僕に押し付けるようにして、抱きついてきた。
 唇を長く塞いだ後、膨らみの豊かな乳房に顔を埋め、舌と歯を乱暴に駆使して愛撫しまく
ってやると、
 「あっ…ああ、す、素敵!」
 と周囲にかまうことなく、喜悦の声を張り上げ身悶えた。
 俶子のショーツに手を伸ばすと、僕の手にもわかるほどの湿りが、薄い生地の下から滲み
出ていた。
 男一人に女二人という異様な状況に、俶子は酔っているのだと僕は思った。
 「ああっ…ゆ、雄一さん!」
 俶子は自分の乳房に自分の手を当て、自分で揉みしだいていた。
 鼻息なのか鼻声なのかわからない短い声を、俶子は絶え間なく出し続けていた。
 これは僕への反応は勿論だが、隣にいる恩師である綾子への、一人の女としての挑戦の声
なのかも知れなかった。
 俶子のショーツを脱がす時、僕は布団の端で悲しげな目で、こちらを見ていた綾子に、
 「着ているもの全部脱いでおけ」
 と命令口調でいってやった。
 僕が声をかけてやっただけで、綾子の目に嬉しそうな表情が浮かび出ていた。
 僕は身体を起こし、俶子の足と足の間に腰を埋めた。
 勿論、僕の下半身は、いつからか知らぬ間に、痛いくらいに屹立し、皮膚が裂けそうなく
らいに怒張しきっていた。
 「ああっ…ゆ、雄一さんっ…す、すごいっ」
 何の前触れもなしに、僕が俶子の下腹部を刺しつらぬいてやると、俶子はまた目を大きく
見開き、怖いものでも見るような表情で、僕を見つめてきた。
 「き、今日の雄一さん…ほ、ほんとにすごいわ!」
 この時、僕は俶子の顔から眼鏡がなくなっていることに気づいた。
 腰の動きを続けながら、俶子の眼鏡なしの顔を見ていると、瞳の黒さが際立って、これま
で知らなかった可愛い一面を知ったような気がした。
 綾子の顔が目の端に見えた。
 身体を横向きにして、僕に向き出た乳房を見せてきていた。
 前に進んで出ることのないような、控えめな性格の綾子にしては、それが精一杯の僕への
誇示かと思うと少し意地らしく思った。
 もっとこちらへ来いと手招きしてやると、口元に薄笑みを浮かべながら、蓑虫のような動
きでにじり寄ってきた。
 俶子へのつらぬきは続けたまま、綾子のお椀のように丸い乳房の片方を、僕は思いきり強
くわし掴んでやった。
 女二人の声が、同時に僕の耳に飛び込んできていた。
 俶子の目線が動いたのが見えた。
 横に近づいている綾子に一瞥を繰れ、すぐに僕の目に視線を向けてきた。
 子供の悪戯を嗜める母親の目のような、存外な眼差しだったので、僕も可愛く薄笑みを返
してやった。
 綾子もだったが、俶子のほうも、居間で火花の散るような睨み合いをした強い嫉妬の視線
は、教育者の女性の分別なのか、いつか知らぬ間に、消滅してしまっているような気配にな
っていた。
 これで少しばかり図に乗った僕は、俶子を責め立てている腰に、さらに力と気持ちを込め、
我武者羅につらぬき続けた。
 四つん這いの体位も含めて、十六の僕が知っている限りの責め技を駆使して、ひたすらに
躍動した。
 「ああっ…も、もう…お、お願い…私もう」
 俶子の苦しく切なげなその声を聞いた時、僕のほうにも限界の門が見え出していた。
 「い、一緒だ。一緒に逝くっ」
 「ああっ…い、逝くわ!…あ、あなた、大好き!」
 最後の僕の咆哮は、獣のような呻き声だけだった。
 僕も俶子も、ぐったりとした身体を、上下に重ね合わしたまま、暫くは動けなかった。
 この後、率先して動いたのはやはり綾子で、一度脱いだ長襦袢を着込んでダイニング
に行き、二人のために冷えたミネラルウォーターを持ってきたり、僕と俶子にタオルを
用意してくれたりと、甲斐甲斐しく動き廻った.
 綾子と俶子は、何がきっかけだったのかわからなかったが、元の恩師と教え子の仲に
戻っていて、布団にだらしなく横たわったままでいる、僕の身体を挟んで、仲良さげに
何かを話し合っていた。
 それから一時間も経たない間に、熟女浮体の裸身を前にした僕の分身は、何の見識も
なく復活の狼煙を上げ、近くにいた綾子の手首を掴み取りにいっていた。
 血気盛んな若者にとっては、飽きるということのない享楽の行為に、相手を変えて僕
はまたはしたなくも挑んでいった。
 相手変わればではないが、同じ行為が同じと思えないのが、僕の若さなのかも知れな
かった。
 そして今度は綾子を責める僕に、俶子の応援も加わり、三者三葉の快楽を貪り合った
のだ。
 僕が綾子の下半身を責めている時、俶子が綾子の唇を唇で塞いでいたり、その逆もあ
ったりで、興奮の度合いは何も変わらず、昂まったままだった。
 僕がこれまで内緒で観てきた、アダルトビデオにも負けるとも劣らない情欲場面が飽
くことなく続き、また夥しい白濁の飛沫を、僕は綾子の胎内深くに飛散させたのだった。
 「もう一時だわ。…お昼も食べないで、私たち」
 俶子が苦笑いの表情を浮かべて、僕と綾子に向かっていった。
 それをしおに、綾子が身なりを整え台所に向かい、短い時間で手際よく温かいうどんを
作ってくれ、三人で美味しく食べた。
 綾子と俶子の二人は、僕の想像していた以上に親密になったようで、俶子が、
 「次は私一人でも来ます」
 と僕の顔を悪戯っぽく見てきながらいったりしてた。
 綾子の見送りを受けて、僕と俶子は高明寺を辞去した。
 今から祖母を訪ねる僕の気持ちは、少し複雑になっていた。
 寺を俶子と訊ねてからの、思いも寄らない展開が合ったものの、三者三葉に気持ちのい
い気分になったのだが、僕は何か祖母一人を取り残したような気分に捉われてしまってい
たのだ。
 一人で寂しく家にいる、祖母の小さな顔が、俶子と歩く道々で浮かんでは消え、消えて
は浮かんできたりしてた。
 「このまま真っすぐ駅に行こう」
 僕は後ろを歩いている俶子に、思わず強い口調でいった。
 「あら、どうして?お婆ちゃん、待ってるんじゃないの?」
 「いや、今日ここへ来るのはいってないんだ。ふいを突いて驚かせてやろうと思ってた
んだけど、年寄りだから心臓に悪い。また改めて出直すよ。行ってもゆっくりできないか
ら。帰ろ、帰ろ」
 そういって僕は、訝しげな顔をしている俶子に背を向け、駅に方向転換をして歩いた。
 勘の鋭い祖母のことだ。
 このまま俶子を連れて行って、本当に彼女が国語教師とわかったとしても、祖母は僕の
素振りを見て、きっと二人の隠れた関係を看破してくる。
 それでまた祖母を心配させ、悲しませるのが、殊勝ながら僕はつらいと思った。
 祖母へのこの埋め合わせは、きっと近いうちにしようと、僕は心に強く決めて、俶子と
二人で帰路の列車に乗った…。



                              続く
 

 
  
  
23/04/06 15:38 (OOT6IaV2)
195
投稿者: 雄一
会社のゴルフコンペに出かけていた父親が、喜色満面の笑顔で家に帰ってきたのは、日
曜日の夕刻だった。
 三十五人くらいの大会で、優勝してきたというのである。
 二十五年のゴルフキャリアで、初めての快挙だと自画自賛しながら、
 「優勝トロフィーは後日に、名前を刻んで貰うんだけどな、副賞が何と、日光の鬼怒川
温泉のペアの一泊旅行なんだよ。な、母さんどうする?」
 リビングで珍しく親子三人がいる時の会話だった。
 父親ほども興奮していない母親が、
 「で、日は決まってるの?」
 と冷静な声で父親に聞くと、
 「日はこちらの都合のいい日を選べるってことだ」
 「日光って、私、この前、社内旅行で行ったばかりよ。」
 「ああ、そうだったな」
 「あなた、会社のどなたか誘って行ったら?」
 「せっかくの褒美だから、もっと何か有意義になぁ。…そうだ、奥多摩のお婆ちゃんにプレ
ゼントしたらどうだ?」
 「ペアなんでしょ?誰がお供するの?」
 「お前、親孝行で一緒に行ったらいいじゃないか?」
 「親孝行しなければいけないほど、私は親不孝はしていません」
 そこで両親の目が合って、テレビを観るともなしに観ていた、僕のほうに同時に向けられた。
 話はそこで確定した。
 「僕だって色々都合あるから」
 内心の喜びを隠して、僕はあまり気乗りしない表情をしたのだが、両親はもう決まったも同
然の顔で、
 「早くお婆ちゃんに知らせてあげて。日程は二人で決めればいいから」
 母親のその言葉で、ゴルフの副賞問題は解決になった。
 自分の室に戻り、祖母に電話を入れると、またワンコールで祖母は出た。
 祖母と孫のペア旅行に至った経緯を説明し終わると、
 「ほんとにほんとなの?」
 とまだ半信半疑のように、祖母は問い返してきた。
 この前、国語教師の俶子と尼僧の綾子の家を訪ねた日から、五日が過ぎていた。
 祖母はともかく、僕は学校があるので土、日でしか決められなかったので、来週と再来週の
土、日ということで決めて、あくる朝、その旨を父親に伝えた。
 この前のこともあり、僕としては一日でも早いほうがいいと思っていたら、何と今週末にホ
テルの空室があるとのことだったので、急遽、そのことを祖母に伝えたら、僕と思いは同じで、
 「早く雄ちゃんの顔見たいから、それでいい」
 とのことだったので、後四日ほどしかないがそれに決めた。
 水曜日の朝、学校の玄関で紀子とばったり出くわした。
 出くわしたというより、紀子のほうが僕を待っていたようだった。
 彼女も高校総体が近づいていて、部活に精を出しているお陰で、あまり接触がなかったのだ
が、僕のほうもそろそろ一度くらいかまってやるか、と思っていたので、健康的に日焼けした
顔のつんと尖った鼻が、妙に新鮮に見えたのだが、それをいうとまた調子に乗ってくるので、
 「何だよ」
 とぶっきらぼうにいうと、僕の目の前に青いハンカチの包みを差し出してきた。
 弁当だというのがすぐにわかった。 
 「一昨日の夜ね、久しぶりに雄ちゃんの夢見たから、今日、頑張って早起きして作ってきた
の」
 歯並びのいい白い歯を見せて、にこやかな声でいってきた。
 何人かの生徒たちが、珍しい組み合わせに、意外そうな顔をして通り過ぎていくのが、目の
端に見えたりしたので、僕は頭をぺこりと下げておとなしく受け取った。
 紀子のほうはまだ何か話したそうだったが、人通りの多い場所ということもあったので、僕
がそのまますたすたと歩いていくと、背中のほうから、
 「今日は卵焼き間違いなく入ってるからね」
 と彼女の大きな声が飛んできた。
 紀子の弁当のおかずの半分以上が、この前の当てつけのように卵焼きで占められていた。
 食べた弁当箱を返そうと思い、帰宅部を止めて陸上部が使っているグラウンドのほうに行く
と、ランニングシャツとパンツ姿の紀子が、部員の何人かと談笑しながら歩いてくるのが見え
た。
 途中で紀子のほうが僕に気づいて、仲間から離れ駆け寄ってきた。
 長い髪を後ろに束ねていて、カモシカのような細長い足が、何故か妙に眩しかった。
 「弁当ありがとう。卵焼き旨かった」
 そういって弁当箱を返し、
 「お前、カモシカのような足してんだな。蹴られたら骨折れそう」
 と冗談っぽくいうと、
 「蹴られるようなこと、最近、何かしてるの?」
 とまた鋭い勘の角を突き出してきたので、僕は早々にグラウンドから引き上げた。
 家に帰ると母親が珍しく早く帰っていて、
 「あなた、旅行はいいけど、観光コースをどう廻るとか何も予定組んでないでしょ、はい」
 そういって母親は、旅程表みたいなものが書かれた用紙を渡してくれた。
 父親がゴルフコンペの優勝で獲ってきた副賞の、日光・鬼怒川温泉旅行は、高級ホテル一
泊のペア券と東武鉄道の往復の特急乗車券だけで、観光地の遊覧見学は個人で立案すること
になっていたので、母親が旅行社に頼んで作ってもらったとのことだった。
 日光東照宮とか華厳の滝とかへの観光遊覧は、日光駅前のバス営業所で、一日お任せコー
スがあるから、それを利用したらいいとのことだった。
 こういう時の母親が、僕は一番好きだった。
 「引率者のあなたがしっかりしてないとだめよ。お婆ちゃんはメインゲストなんだから」
 ダメ出しのようにそういわれて、母親の評価は少し下げた。
 金曜日の夕方に、祖母が日光旅行の前泊で、わが家へ来るということで、僕は何故だかわ
からなかったのだが、木曜の夜、紀子に電話を入れていた。
 「ああ、悪いな、こんな時間にいいか?」
 「驚いた。ちょっと待って」
 紀子のびっくりしたような声の後、どたどたと階段を上がるような音がして、
 「お待たせ。雄ちゃんから夜の電話って初めてだね。ちょっと嬉しい」
 自分の室のベッドか椅子にでも、どっかりと座り込んだのか、話を引っ張ってきそうな嫌
な雰囲気を感じたが、こちらからの頼み事に近い用件だったので、
 「あのさ、明日の四時半から五時頃って、お前、まだ部活か?」
 「明日?…部活でいつも四時半くらいまで学校だけど…?」
 「ああ、そう。…ならいいや」
 「何よ、そっちから電話してきて、ならいいやって」
 「い、いや、お前は俺みたいな帰宅部と違って、陸上の花形選手だもんな」
 「嫌味ないい方。喧嘩売ってる?」
 「用件ってのはな、明日の夕方、奥多摩から婆ちゃん出てくるんだよ。それで俺が駅まで
迎えに行くんだけど、お前もどうかなって誘っただけだよ。部活なら仕方ない。総体も迫って
るからな。ごめん、悪かった」
 「行く!」
 「は?」
 「部活休んで、明日は雄ちゃんの帰宅部に入る!」 
 押し問答が長く続き、僕自身の本心もあったので、ここで紀子に強引に押し切られ、駅での
待ち合わせ時間を決められる。
 「いや、ほんとに無理しなくていいんだぜ。ただの迎えだけだから」
 「私もあなたのお婆さんに会いたいの。お婆さん、何しに来るの?」
 「うん、まぁ…」
 「何よ、勿体ぶって」
 「あのな、明日から俺、婆ちゃんと二人で、日光の鬼怒川温泉へ一泊旅行いくんだ」
 「わあ、羨ましい!」
 ここで一頻り、日光行きの事情を説明をさせられる。
 「いいなぁ、私も行きたい」
 ここで、僕はいわなくていいことを、ついいってしまい、話をさらに長引かせてしまった。
 「またいつか、俺が連れてってやるよ。あ、今日の弁当のお礼もあるからな」
 「ほんと?嘘つかない?」
 「お前、俺と同じホテルの同じ室で、一緒に寝れるのか?」
 紀子が返事に詰まると思ってたら、
 「平気よ、雄ちゃんとなら」
 「俺って危険だぜ」
 「どう危険なの?」
 「そりゃ、俺も男だからな」
 「私が欲しい?」
 「な、何いいだすんだよ、いきなり…」
 「ゆ、雄ちゃんなら…い・い・よ。おやすみ」
 翌日の四時に駅前の改札口付近に行くと、紺のジャージの上下に例のスタジャンを着込んだ紀
子が丸い柱の横に立っていた。
 後ろに束ねた長い髪をなびかせて寄ってきた紀子が、
 「何時の電車?」
 「四時四十八分」
 「まだ時間あるね。あそこのスタバ行かない?」
 「うーん、あそこ学校の奴らよくいるし…お前といると」
 「関係ないじゃない」
 「お前がよくても、こっちがややこしくなるんだよ」
 「意気地なし」
 「学校のアイドルさんと、しがない帰宅部では釣り合いがな」
 口喧嘩するために紀子を呼んだようになったしまったのだが、それでも祖母が来た時には彼
女は満面の笑みで迎えてくれて、祖母も大層に喜んだので、
 「今日はありがとうな。今度はあのスタバにお前と堂々と入って、美味しいエスプレッソ奢
るよ」
 そう約束して紀子と別れ、僕は祖母と二人で自宅に帰った。
 駅からの帰り道の途中、僕の後ろを歩いていた祖母が、
 「雄ちゃんのお嫁さんには、あの紀子さんはピッタリね」
 と藪から棒にいい出した。
 「な、何いってんだよ、婆ちゃん。僕たちまだ十六だよ。まだ早いよ」
 「男と女にはね、相性ってのがあるの。婆ちゃんにはわかるの」
 祖母が僕ら親子が住むこの家に来るのは、三、四年ぶりとかで、家族四人での夕食とその後
の歓談も笑顔だらけで終わり、祖母は一階の客間に寝た。
 寝る前の歯磨きで洗面所にいたら、後ろでパジャマ姿の祖母が立っていた。
 周りに誰もいないのを確認して、僕は歯磨きしたての唇を、祖母の艶やかな額に軽く押し当
ててやって、二階への階段に向かった…。




                              続く
 
 
 
 
 
 
 
23/04/07 08:42 (1NIbhkNC)
196
投稿者: 雄一
東武鉄道の日光までの特急乗車券が、新宿駅発になっているので、自宅のある駅から山手線
経由でそこに向かい、スペーシア号とかいう特急車両の指定座席に座ったのは、九時に五分前
だった。
 土曜の休日で通勤客がいないというのに、朝早くからの駅周辺の混雑ぶりに、祖母は終始目
を大きく開けっ放しで、席に座った時、何度も肩を揺らして大きな息を吐き続けた。
 奥多摩の限界集落寸前の、昼間でも人の往来がほとんどない村から出て来ての、駅構内の蟻
の集団のような雑多な人の流れは、祖母には驚きと衝撃以外何もなかったのだろうと思った。
 天気は秋晴れの快晴だった。
 ここから約二時間ほどの電車の旅だ。
 祖母は薄い水色のセーターに白のブレザーとジーンズ姿で、ブレザーの上に濃紺のジャンパー
を着込んでいた。
 僕のほうもジーンズとジャンパー姿は祖母と一緒だった。
 「何か…雄ちゃんと二人きりになったら、あれも話そう、これも話そうと、一杯思ってたんだ
けど、今は何も出てこないわ」
 窓側に座った祖母は、忙しく流れていく外の景色に目を向けながら、独り言ちのようにいった。
 「思い出したらいってよ。あ、逆に僕から聞くけど、あの吉野さんの後始末って、もう全部澄
んだの?」
 「え、ええ。あの無二の親友とかいう稲川さんが、何もかも全部奇麗に捌いてくれてね。吉野
さんが住んでいた家の近くに、間もなくお墓まで建ててくれるらしいって」
 「そういえば、婆ちゃんが吉野さんから預かったというバッグ、僕はまだUSBメモリーしか見て
ないんだけど、お墓建てるっていうんなら、それ返したほうがいいかな?」
 「ああ、そうね。何かあの人の大事なものが、あるかもしれないから、一度古村さんにでも相
談してみようかしら?」
 「その古村さんって、どうしているの?」
 「さ、さぁ…お仕事のほうは、吉野さんと似たような関係みたいだけど、詳しくは私も…」
 「連絡はできるんだ?」
 「お電話番号は聞いてるけど…」
 祖母の表情が、古村氏の名前が出るごとに、少し微妙に変化するように見えたので、その話は
僕のほうから打ち切って、
 「昨日、僕といた紀子ってさあ、あいつ、ああ見えて陸上競技の百メートルでは、この広い都
内でもベスト3に入るくらい足速いんだよ」
 ここで紀子の名前を出してしまったことを、僕は少し後悔した。
 自分が如何に、平凡で話題の少ない男なのかを露呈してしまった感じだ。
 それに昨日の駅からの帰り道、紀子のことで祖母が妙なことを口にしたことも思い出し、もう
一度話題を変えようと思った時、
 「陸上の話は、この前、益美さんたちと家にきた時に聞いてたわよ。今はスポーツしてて健康
的な日焼け顔だけど、美人系の顔立ちだから、この先もっと奇麗になるわよ」
 と祖母が話を繋げてきた。
 「そうかなぁ…でもあいつ結構口煩いよ。人のことああだこうだとかさ」
 「それは、あなたが危険そうに見えたりするときがあるからよ。私も時々そう思う時がある」
 祖母に変に断定的な口調でいわれて、僕の頭の中に何人もの女性の顔が、フラッシュバックの
ように走って流れた。
 「雄ちゃんには…いえ、あなたには自分でも、薄々気づいているのかも知れないけど、純粋な
心を持った顔と、危険を抱えた顔が表裏一体であるわ。…でも私はあなたの、そのどちらの顔も
好きよ」
 この時だけ、祖母は窓の外に向けていた顔を僕に向き直して、凝視するような目でいってきた。
 それは祖母という眼差しでは断じてなかった。
 東武日光駅に着いたのは昼に近い刻限だったので、僕はスマホで事前に調べてあった、駅近く
の和食店に入り、僕は単純におかずの多そうな御前定食にして、祖母はこの辺の名物の湯葉うど
んで昼食を摂った。
 定職も美味しかったが、祖母に少し食べさせてもらった、湯葉うどんの舌触りが絶品だった。
 日光東照宮までは、駅から歩いても四十分くらいだったが、周遊バスが何本も出ていたので、
僕と祖母はそれに乗った。
 祖母は昼食を摂ったくらいから、もう無邪気な旅行者になっていて、東照宮の境内では何十回
も感嘆の声を挙げ続けていた。
 石鳥居を入って正面の表門や左側の五重塔に目を見張り、神厩舎の三猿に長く目を向け、陽明
門の前では、周囲の人が振り返るくらいの声を挙げて、感激を露わにしていた。
 陽明門を少しいったところの唐門とか、神楽殿の回廊とか祈槌殿とかの建物があるところすべ
てに両手を合わせて、目を深く閉じたりしていた。
 喜色満面の表情で、顔を忙しげに周囲に振り向かせていた祖母は、陽明門の参道を戻る時、知
らぬ間に僕の片腕を、人目も憚ることなくしっかり抱き締めながら歩いていた。
 石鳥居から駐車場まで来ると、華厳の滝行きのバスが出るところだったので、二人で慌てて飛
び乗った。
 バスは観光客で込んでいて、僕と祖母も吊革に掴まっていたのだが、ここでも祖母は僕の片腕
をしっかり掴み取ってきていた。
 三十分くらいで華厳の滝に着いた。
 展望台に行くエレベーターは満室状態だったが、祖母は僕の腕を掴んだまま殊更に、小さな身
体を僕のほうへ押し付けてきているようだった。
 そのことに気づいて祖母の顔を見下ろすと、まるで小娘のような悪戯っぽい目で笑い返してき
ていた。
 高さ九十七メートルの滝は文字通りの荘厳さで、周囲の観光客からも盛んに感嘆の声が挙がり
続いていたが、祖母も負けないくらいの大声を出して、感激に目を瞬かせていた。
 祖母は完全に自分の年齢を忘れたかのように、はしゃいだ表情で滝に魅入られていたが、それ
が何の違和感もなく、若々しい所作に見えるのも、本人自身は気づかない祖母の一つの才覚なの
かも知れないと、僕は思い、二人でいることの喜びを改めて知らされた。
 今日の観光コース周遊はこれだけで、中禅寺湖とかいろは坂巡りは明日に予定になっていて、
僕と祖母は華厳の滝を後にして、鬼怒川温泉行きのバスに乗った。
 時刻は三時過ぎで、バスの窓に差し込む陽射しに少し赤みが差してきているようだった。
 「もう、この一日だけでも充分だわ。ほんとに楽しかった」
 幸いに席が空いていて、二人は並んで座れた。
 まだ祖母の手は、僕の片腕に巻き付いたままだった。
 「まだ、ホテルの夜がある」
 少し大人びた声で、祖母の耳元に囁くようにいってやると、祖母の小さな顔が見る間に赤くな
った。
 「バカ…」
 祖母の髪の毛の匂いが、微かに僕の欲情をそそった。
 一時間ほどでバスは、鬼怒川温泉街のバスターミナルみたいなところに着いた。
 バスの運転手に、泊まるホテルの名前をいって道順を尋ねると、ここから歩いて数分ほどと教
えてくれた。
 ホテルの建物を見て、僕も祖母も思わず足を止めたくらいに瀟洒で豪華そうな外観だった。
 父親がいっていた言葉を、僕は思い出した。
 鬼怒川温泉ではベスト3に入る四つ星ホテルで、僕たちが泊まる室は五万円を有に超えるとのこ
戸のようだった。
 大きなガラスドアの入り口を入ると、とてつもない広さのロビーがあって、高価そうなソファが
幾つも並び置かれていて、天井も高い吹き抜けになっている。
 高級感と気品のあるフロントの前のソファに、完全に気持ちも身体も委縮させてしまっている祖
母を座り込ませ、僕は喉をカラカラにしながらカウンターの前に立った。
 ホテル発行の宿泊券を出すと、派手な黄色の制服を着たホテルマンが慇懃な対応をしてくれた。
 十二階建てのホテルらしく、最上階が展望レストランになっていて、僕たちの泊まる室は十一階
だった。
 室の案内担当らしいホテルマンに案内されて入った室でも、僕も益美も驚かされることの連続だ
った。
 泊まるのは二人なのに、和室と洋室の二間があって、洋間はベッドで和室にはもう布団が敷かれ
ていた。
 それ以外にも応接間風の広いスペースがあって、浴室も五、六人が楽に入れるくらいの浴槽にな
っていて洗い場スペースも広かった。
 「こんな高級なところで、私、眠れるかしら?」
 次から次へと目を襲ってくる光景に、毒気を抜かれたような顔をしてソファに座り込んだ祖母が
ため息交じりに呟いた。
 「こういうところに、だけど平気で泊まれる人間もいるんだろうね」
 祖母のため息が移ったかかのように、僕も唖然押した顔で呟いたが、
 「ま、こんなことは二度とないことだから、贅沢に楽しもうよ、婆ちゃん」
 と気を取り直すようにそういって、応接間にある大型テレビの、リモコンスイッチのボタンを押
した。
 僕が長いソファに身体を載せて、テレビ画面を観るともなしに観ていると、ジャンパーとブレザ
ーを脱いだ祖母が添い寝をするように寄りかかってきた。
 祖母の女の匂いが僕の鼻先をすぐに刺激してきた。
 「昭子」
 そう呼んでやると、
 「はい」
 と嬉しそうな声が返ってきた。
 祖母の、もう赤く上気しかけている顔が、僕の顔のすぐ前にあった。
 唇と唇が、どちらからともなく重なった。
 祖母の両腕が、僕の首に巻き付いてきていた。
 口の中でも、祖母の舌の動きは激しかった。
 幅のあまりないソファの上で、僕は祖母のジーンズのボタンを外し、足を器用に使って足首から抜
き取ってやった。
 剥き出しになった太腿に手を添えてやると、祖母の小さな身体が鮎のように跳ねようとしていた。
 ショーツに手を当ててやると、祖母はまた鮎のように跳ねた。
 「ああっ…ゆ、雄一さん…な、何日も前から…ずっとしたかった」
 唇が離れると、息せき切ったように祖母は喘いでいった。
 「俺もだよ。…長く一人にした」
 「こ、こんなに身体が辛くなるの…私、初めて」
 「俺もだよ…お前の夢ばかり見てた」
 祖母のショーツの生地の上に湿りが出ていた。
 ショーツの下に、僕は手の先を滑り込ませると、湿りは滴りに変わっていた。
 「入れたい」
 「い、入れて…」
 その言葉だけでよかった。
 僕はソファから上半身を起こし、ジーンズとブリーフを脱ぎ下ろした。
 祖母の滴り濡れたそこへ、自分自身のものを刺しつらぬきたかった。
 祖母の身体の匂いを鼻先で嗅いだ時から、僕のものはすでに猛り狂っていた。
 他の女の誰よりも、祖母の匂いが僕の一番好きな匂いだった。
 もう一人いた。
 紀子だ。
 紀子と初めてキスした時に、僕の頭を過ったのが祖母の匂いだった。
 同じ匂いの女が、僕には二人いた。
 今はしかし、僕の目の前にいるのは祖母一人だ。
 獣のようになって、僕は祖母のショーツを剥ぎ取るように脱がし、細い足の間に身体を入れた。
 大きな息を一つ吐いて、僕は自分のものの先端を、祖母の身体の中心に添えおいて、気持ちの焦り
に堪えながら、腰をゆっくりと前に押し出した。
 「ああっ、き、来てる!…あ、あなたが」
 「むむっ!」
 僕の浅知恵では表現のしようのない、柔らかく包み込むような圧迫が、僕の屹立に滴り濡れた薄い
膜を張るようにして、覆ってきているのが、自分でもわかるくらいだった。
 もしかしたら、あの紀子もそうなのかも知れないが、この言葉では表せない感覚は、間違いなく祖
母でしか感じることのできない刺激だった。
 「ああっ…は、入ってる…あ、あなたが私に」
 「むむ、お、俺もわかるぜ」
 前にも感じたことのあるような、何か自分のものの形に合わせた鋳型に嵌め込まれたような、今の
言葉でいうと、気色のいいフィット感が、祖母のそこには間違いなくあるのだった。
 「も、もう…ほ、ほんとに…私…し、死んでもいい!」
 お互いに下半身だけが裸の状態で、僕はまだそれでも、高みの絶頂感を求めるかのように、祖母の
小さな身体を激しく責め立てた。
ここが高級ホテルの一室だという意識は、僕もそうだがきっと祖母にも、ももうなくなっていたと
思う。
 前もそうだったように思うが、祖母が意識を失くすのと、僕が咆哮の声を挙げたのが、ほぼ同じだ
った。
 祖母との行為の後で、いつも僕が思うのは、この人はどんなことがあっても離せないという思いが
いつも湧いて出てくることだ。
 残念ながら他の女性の誰にも、僕はそう思ったことは一度もない。
 そしてこのことを、深く掘り下げようという気持ちも、また僕にはない。
 自分がそう思うなら、それが僕の感性なのだから、それでいいと思うだけなのだ。
 夕食時、僕と祖母は十二階の展望レストランにいた。
 こんな高級ホテルなのに、二十席ほどのテーブルはほぼ満席状態だった。
 普段の僕は内向的で、あまり前向きな性格ではなかったが、こういう場所では何故か腹が座り、物
怖じすることはなかった。
 祖母にもその旨をいって、臆することなく堂々としてればいいといっておいた。
 室番号で座るテーブルも決まっていて、料理も予め決まっているようだった。
 制服を着たウエイターを呼んで、僕は今日のメニューを聞くと、和風御前とかいって、昼に日光駅
周辺で食べたのと同じようだったので、洋食のステーキに変更して欲しいと申し入れた。
 和風御前より値段が安かったので追加料金はいらないとのことだった。
 僕とウエイターとのやり取りを見ていた祖母は、
 「とても頼もしく見えたわよ」
 と感心したような声でいってきた。
 祖母との一戦があったこともあってか、ステーキはあっという間に僕の胃袋に消え、祖母の料理に
まで手を出し室に戻った。
 ホテルの大浴場は、祖母との一戦の後、僕一人で入っていたので、
 「一緒に風呂入ろ」
 と僕から誘って室の広い風呂に入った。
 手で乳房と下腹部を隠して、浴室に入ってきた時、僕はいきなり祖母に抱きついていった。
 広い洗い場の中央で僕は仁王立ちし、祖母の肩を下に抑え込むようにして跪かせた。
 祖母は無言のまま、自分の顔の前にある、僕の半勃起状態のものに手を添え、唇を寄せてきた。
 祖母の口の中に含み入れられた時には、僕のものはもう半勃起
 
 
 
 
23/04/07 17:55 (1NIbhkNC)
≪ 前 137 38 39 40 4147 次 ≫
コメントを投稿
投稿前に利用規定をお読みください。
名前
メール
本文
スレッドを上げない
画像認証

上に表示されている文字を半角英数字で入力してください。
 
官能小説 掲示板
官能小説 月間人気
官能小説 最近の人気
作品検索
動画掲示板
画像で見せたい女
その他の新着投稿
人気の話題・ネタ
ナンネット人気カテゴリ
information

ご支援ありがとうございます。ナンネットはプレミアム会員様のご支援に支えられております。

Copyright © ナンネット All Rights Reserved.