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1:わたしの生きる道
投稿者:
富美代
私には、人には言えない秘密がある…
私は富美代。30歳で社内結婚。夫との間に二児を授かるまでは仕事を続け、長女の出産後は退社し、家事育児に専念しました。愛する夫と二人の子供たちに囲まれ、平凡だけど幸せな毎日を過ごしていました。 しかし、私が40になる頃、最愛の夫が末期ガンであることがわかりました。治療の施しようがなく、その半年後、夫を亡くしました。長女が小学生になったばかりで、夫に先立たれたわ私は、悲しみにうちひしがれる間もなく、小さな二人の子供を、これから一人で育てないといけない母親としての責任と、その責任の重さに、大きな不安でいっぱいでした。 ただ、私も出産するまでは、同じ会社で夫と勤務していたので、会社の方が私を気遣い、取引先や下請けなどの会社をいくつか紹介してくれました。それが何より助かりました。私はさっそく、紹介してもらった会社へ面接へ行くと、正社員として、すんなり採用してもらえました。社員数は小さいですが、設計事務所の事務として働くことになりました。小さな子供たちには、ずいぶん寂しい思いもさせてきたかも知れませんが、子育てと家事を何とかこなしながら、朝から晩まで必死に働きました。 夫を亡くして10年。50を迎えた私。子供たちも大きくなりました。あんなに小さかった長女の香…長男の司も、色々ありましたが、今は高校生、中学生になりました。
2012/09/25 21:40:15(A517TMHR)
投稿者:
富美代
続きです。
子供を育てるために、帰りが遅くなることも珍しくない毎日。それでも、子供たちのごはんや、洗濯、掃除などは、時間を見つけては、きちんとしてきました。 子供たちが遅くまで、私の帰りを待ってくれていることもありましたが、たいていは、長女が母親代わりをして、長男と一緒に寝てくれていました。遅くに疲れて帰る私にとって、たとえ会話ができなくても、そういう長女のしっかりしたところが頼もしくもあり、二人の寝顔を見るだけで、心が癒やされ、明日も頑張れる力がわいてきました。 でも、それは、私にとって都合のいい、 一人よがりな自己満足感であって、仕事にかこつけて、子供たちのことを、本当は何もわかっていなかったんだと思います。思春期を迎えた子供たちは、どんなに辛いことがあっても、心配をかけまいと、私に話したい気持ちをこらえ、自分たちで抱え、何とか乗り越えてきたのだと思います。私も、何となく子供たちが 悩んでいることがある、と感じたことはありました。でも、この子たちは利口だから…と、信じていたと言うと聞こえはいいかも知れませんが、忙しい自分を言い訳に、何かに気づいていながら、子供たちを放っていただけでした。 長女が中学校へ通い始めるようになり、 次第にすれ違いが起こり始め、長女と口論することも増えてきました。私は思春期だから…と都合のいい理由をつけて、 自分だけ納得していました。クラブ活動もありましたが、長女の帰りが私より遅くなったり、髪を染めり化粧もし、服装も派手になっていきました。初めのうちは、私も強い口調で、「あなたがそんなことでどうするの?」と、長女を叱りつけましたが、もう私の言うことには耳をかしません。 ある時、仕事中に、長女が通う中学校から電話がありました。要件は、長女がいじめをしている…しかも主犯格…殴る蹴る、無視、嫌がらせはもちろん、恐喝してかなりの金額を巻き上げている、とのことでした。私は仕事を早退させてもらい、学校へ向かいました。私は、あんなに利口でしっかりしていた長女が、なぜそんな馬鹿なことを…と信じられない気持ちより、裏切られた気持ちでいっぱいになり、長女に対する怒りを抑えられませんでした。 中学校へ着くと、相談室に案内されました。中には、悪びれた素振りもなく、足を投げ出し、ふんぞり返り椅子に座る長女と、5、6人の女の子がいました。私は、長女のした過ちはもちろん、反省のない居直った傍若無人ぶりに、情けなさや恥ずかしさはもちろんですが、怒りを抑えきれず、長女の髪を掴み、「あんたって子は!人間として恥ずかしくないの?いつからそんな情けない子になったの?」と怒鳴りつけ、思いっきり頬を平手打ちしました。長女は無言でしたが、 すごく鋭く冷たい目で私を睨みつけていました。長女は、今まで私に言いたいことも言えず我慢してきたこともあったでしょう。長女は言えなかったのではないのです。 『どうせ私はあんたにとって、都合よく使える奴なんでしょ?』 『あんたは私のことなんて、心配してないじゃない!あんたに迷惑かけてるから怒ってるだけなんじゃない?』 今思えば、見たことのない長女のあの眼は、私の浅はかな身勝手さを見抜いた、 それでいて私に自分の気持ちをわかってもらいたいのではなく、私に何の期待もしていないという、長女なりのサインだったのかも知れません。馬鹿な私は、 無抵抗で睨みつける長女に対して、さらに感情的になり、罵声と平手打ちを浴びせ続けました。何を言ったかは、全く覚えていません。ただ、長女に対する怒りにまかせ、大声を出し、涙を流しながら、何度も長女の顔を平手打ちしました。 それ以降、長女はいじめはもちろん、他人に迷惑がかかることは一切しなくなりました。しかしそれは、反省や改心をしたわけではなく、もっともらしいことを聖人のごとく偉そうに並べる私に耐えれなかったのでしょう。私への無視はもちろん、家で顔を合わせることが次第に減りました。 本当に改心をしなくてはならないのは私であることは、私自身が気づいていました。母親だということを理由に甘え、長女に原因を全て押し付け続けました。 私と長女の関係が悪くなり、家の中には常に張りつめた、冷たい雰囲気でいっぱいでした。馬鹿な私は、駄目な長女を引き合いに出し、中学生になった長男に期待するようになりました。長男は私の期待に必死に応えようと、勉強もクラブ活動も頑張ってくれました。ああ、この子は私の言っている意味がちゃんとわかっている…私はまた、都合のいいように解釈し、長男には期待をかけました。私が誉めると、照れくさそうにはにかむ、いかにも思春期の男の子らしさを感じていました。しかしそれは、私の想像とは全く逆で、私に対する罪悪感、地獄から救い出して欲しい…監視に気づかれないように、必死に本心を隠しながら、私に救いの手を求めるサインだったことは、その時の私には全くわかりませんでした。
12/09/26 01:02
(9PeFxgYa)
投稿者:
富美代
長男の司は、私と長女の香が対立していても、決してどちらかのことを悪く言うことはありません。私が帰宅した時に、
香が家にいると、ついつい私は、香に対して、「あなたのためなの!」と、母親という立場で、自分の思いを一方的に伝えていました。香は、そんな感情的になる私を見透かしたように、冷めた鋭い眼で私を睨み、無言で家を出ます。今の私には、香がどこへ行ったのか、全くわかりません。司に聞いてみても、 「そっとしておいた方がいいよ、母さん。今は姉さんに何を言っても、聞いてもらえないよ。冷却期間をおいたら、いつか姉さんも素直に心を開いてくれるよ。大丈夫、母さんが心配するほど、姉さんは悪くないよ。今も昔と変わらず、僕のことは気にかけてくれてるから。」 と、私をなだめるように話し、コーヒーをいれてくれたり、肩をマッサージしてくれます。そんな司の優しさに、私は何度も癒やされました。それは、男性としてではなく、息子として精神的にも立派に成長してくれている、という母親としてです。勉強の成績も、我が子ながら本当によくでき、クラブでも周りから慕われる、自慢の息子です。母親としての喜びをかみしめながら、私は夫の仏壇に手を合わせ、司の成長を報告します。 そんな毎日を過ごすなか、崩壊への足音が、少しずつ私たちの家族に忍び寄っているなんてことは、私だけは全く気づいていませんでした。
12/09/26 07:04
(9PeFxgYa)
投稿者:
肉便器
つ続きを…
12/09/26 19:59
(7L0xNOFB)
投稿者:
富美代
長女の香とは、相変わらず、すれ違ったままです。香が家にいて私が帰宅すると、同じ空間でいることに耐えれないのか、私と入れ替わるように、無言で家を出て行きます。もちろん、行き先などは私にはわかりません。近頃では外泊することも多くなりました。ただ、高校へは、遅刻しながらも、毎日通っています。私は朝起きると、私と子供たちのお弁当と朝ごはんを作り、子供たちより早く家を出ます。私が帰宅して、その時香が外出していなくても、空のお弁当箱と、着ていた衣服が洗濯ネットにまとめて、洗濯かごの中にあります。私の衣服と絡むのが嫌で、せめても…の思いでそうしているのでしょう。最近多い、年頃の娘さんをもつ世の男性みたいな虚しさを感じる反面、ほっとします。例え、衝突が多いとは言っても、香は私の娘です。母親として、いつも香のことは気にしています。お弁当箱や洗濯カゴが、香の無事を確かめる、連絡手段になっています。
そんなある朝、いつものように朝ごはんとお弁当の用意をするのに起きようとすると、身体がだるく、少し熱っぽい感じがしました。もう少し横になりたいと思いながら、ごはんの支度をし、家を出ました。会社に向かう道で、軽いめまいもしましたが、何とか会社までたどり着きました。ただ、あまりのしんどさにぐったりしていると、上司や同僚が気遣ってくれ、その日はそのまますぐ家に帰りました。 何とか家についたのが、午前11時過ぎ。 子供たちは学校で、家には誰もいない… 玄関の鍵をさして回すと、扉が開きません。 …司が閉め忘れたのかしら? もう一度鍵を回して扉を開けると、上で物音がします。靴をみても、全員のものが出ていてわかりません。 「司?香?誰かいるの?」 物音のする二階へ階段をのぼりました。 すると、私の寝室の扉が勢いよく開き、 急いだ様子で香が飛び出しました。 「香?何してるの?」 しんどさで張りのない声で呼び止めましたが、私から目を逸らすように、小走りで通り過ぎ、階段をかけ降り、家を出て行きました。確かめるために寝室に入りました。すると、押し入れの、私の下着がしまってある引き出しが開いていて、 ブラやショーツが散乱しています。他は特に変わった様子がないのですが、妙なことに、下着がいくつか無くなっています。しかも、どちらかというと、かなり使い古して、恥ずかしいですが、クロッチが黄ばんだ大きなシミのついたものが、一つ残らず無くなっています。 「…香が持ち出したの?どうして?あんな汚い物を何のために?」 私はすぐに、香の携帯へ電話しましたが、呼び出し音が鳴るだけで、電話に出ません。2、3回かけ直したところで、 通話拒否されました。一階のリビングに降りて、家の電話やメールもしましたが、次々と拒否されました。体調不良と、何が何だかわからない出来事で、身体の力が一気にぬけ、腰を下ろしたソファーで寝てしまいました。
12/09/27 21:33
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投稿者:
富美代
「…んんん……」
誰かが私の頬を軽く叩きます。会社から戻って、不可解なことをした香と連絡が取れず、いつの間にか腰を下ろしたソファーで、私は眠っていました。あれからどれくらい眠っていたのでしょうか。 何やら、聞きなれない声でざわついています。笑い声もします。まだ身体がしんどいこともあり、頭がぼぉっとする中、 身体を反らして伸び、ゆっくりと瞼を開き、私は起き上がりました。部屋の明かりがついていて、寝起きの私の目はぼやけて、まだよく見えません。ただ、何人かの人影が、目の前には何となくあることはわかりました。 「…司?もう帰ったの?…もうそんな時間?…母さん今日は身体がしんどくて、 ソファーで眠って…お友達がいるの?ごめんなさい、すぐに…」 ガバッと後ろから髪を掴まれ、頭を持ち上げられました。 「…痛っ!?何!?誰!?」 明かりのまぶしさはありましたが、髪を引っ張られる痛みで、私は目が完全にさめました。 「えっ!?何よこれ!?どういうこと!?」 私がいるのは、確かにリビングですが、 この時、私の目に入ってきたのは、パンツ一枚でイスに縛られた司と、パーティーグッズにある、色々な覆面を被った何人もの人だかりです。 「誰なの!?警察呼ぶわよ!?」 「ハッハッハッ…警察?呼んでみろよ、この状況で?」 「おはよう。もう完全に目さめちゃったね。起きたばっかで、何が何だかまだわからないみたいだね?」 「ワシたち、アンタが楽しませてくれるって言うから、来てやったんだぜ。 全員、掲示板の書き込み見てな。 なぁ?」 「私、何も知りません!一体何を始めるつもりなの?」
12/09/28 10:47
(MOIshdE.)
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