エピローグ…｢パパっ早くしないと遅刻しちゃうよっ｣｢大丈夫だよ…それより美咲…ママに挨拶したか？｣｢あっ！してなかったっ｣と言うと美咲は慌てて庭に出て桜の木に手を合わせた。｢美咲行くぞ～｣｢ああっ待ってぇ｣美咲は中学生になった。今日は入学式だ。｢ママ何て言ってた？｣｢頑張ってねって｣｢それだけ？｣｢後、パパの事大好きだよって言ってた｣｢そうか｣｢私もパパとママ大好きっ…パパは？｣｢美咲と同じだよ｣そう言うと美咲は桜と同じ笑顔を見せ、腕を組んできた。中学校に向かって歩いて行くと｢あっマスターおはようございます｣｢おおっおはよう…今日から中学生かい？｣｢へへっ似合う？｣｢ああっ可愛いねぇ｣｢ありがとう…行ってきます｣｢気を付けてな｣やがて学校に着いて受け付けをする。｢じゃぁまた後でな｣｢うん｣俺は体育館に行き通路側の席に座ると小さい桜の写真を出した。やがて式が始まり新入生が入って来た。少し緊張してた美咲は俺を見つけると笑顔になった。式も滞りなく終わった。俺は校門の所で美咲を待った。

やがて大きな鞄を持った美咲が出てきた。｢お疲れさんっ｣｢パパ重い持って｣｢しょうがないなぁ…うわ重いっ｣｢でしょう？｣そう言ってから知り合いの親に声を掛け校門の前で写真を撮って貰ってから帰った。…夕方２人で居酒屋に行った。｢おっ？来たね｣いつものメンバーがいた。店の中には[美咲ちゃん入学＆誕生日おめでとう]と垂れ幕があった。まずは皆で写真を撮った。俺達はいつもの席に座り桜の写真を飾ってから、テーブルに並んだご飯を食べ始めた。｢早いねぇ…もう１３歳かぁ｣｢桜ちゃんも喜んでるかな？｣｢ママ喜んでるよ…今も皆に会えて嬉しいって｣｢そっか美咲ちゃん見えるんだっけ｣｢うん…この日とパパ達の結婚記念日だけだけどね｣そう美咲は６年前のこの日から桜が見えた。皆しんみりした。すると｢もう毎年しんみりしないでよぉ…今日は私の誕生日だよぉ｣と怒った。｢そうだなっ悪いっ歳とるとしんみりしちゃっていけねぇや｣そう敏さんが言うと三味線を取り音を奏でた。それからはいつもの騒ぎになり宴を楽しんだ。

やがて宴も終わりそれぞれ帰り始めた。美咲も騒ぎ疲れて寝ていた。すると｢ママ…｣と言って涙を一筋流した。｢美咲ちゃん寂しいんだね｣と直美が子供を抱きながら言った。｢源ちゃんは見えないのかい？｣ママが聞いた。｢あの日だけです…見えないけど…この日と結婚記念日には桜が近くにいるのが解ります｣｢そうかい｣そう言うとマスターは６個のコップを出し少しだけお酒を注ぎ、一つを桜の写真の前に置き｢源ちゃんと桜ちゃんの出会いの日に乾杯｣と言って飲み干した。｢じゃぁそろそろ帰ります｣｢そうか気を付けてな｣｢はい…美咲帰るぞ｣起きない美咲をおぶって店を出た。家に入り美咲をリビングのソファーに下ろした。それから俺は冷蔵庫から小さいビールを出し、コップを持って寝室を通り抜け、縁側に座りビールを注いでから、桜の木に向かって掲げ｢乾杯｣と言って飲み干した。しばらくすると美咲が起きて来た。｢パパ…ママと話してるの？｣｢うん…いつもの報告だよ｣｢そっか｣そう言うと美咲は俺の右側に座った。

｢ママ…嬉しいって｣｢そっか…俺の左側いるだろ？｣｢うん…座って肩に頭乗せてる｣｢だと思った｣｢何で解ったの？って｣｢何か左肩が重く感じたからな｣｢そうなの？｣それから暫くすると左肩が軽くなった。それに気付いた俺は｢桜…帰るのか？｣と聞いた｢もう行くねだって｣｢そっか…また来いよ｣｢ママまたねっ…バイバイって手振ってる｣｢バイバイ…｣｢消えた…｣心地よい風が吹き桜が帰ったのが解った。いつしか俺は泣く事はしなくなり、笑顔で桜を見送る様になっていた。…完…

素晴らしいお話ありがとうございました。
泣きながら家族のありかたを考えさせられました。