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1:雪のファンタジー
投稿者:
翔
小学生の頃から、雪山に魅せられて、スキー一筋に打ち込んできた。
高校大学とスキー部に所属し、大学生の時に1級を取った。 何かひとつのスポーツにストイックに打ち込んていると、よほどの不細工でない限り、そこそこモテる。告られたり、アピールしてきたりする女がいない訳ではなかったが、特定の彼女をつくるとデートだなんだで、スキーに行く金と時間を奪われるのですべて断った。 そのせいで、就職して3年経っても、素人童貞のままだったが、特に気にしてはいなかった。 性的嗜好で言えば、同世代の女性よりも年下、それもJK、JCあたりに惹かれるという自覚はあった。だがそれも、どうせ女と付き合う気はないのだから、どうでもいい事だと思っていた。その、少女と出会うまでは。 スキーシーズンに、1回でも多くゲレンデへ行く為、オフシーズンは節約に努めていたが、それも限界がある。ひとりで車を運転して山へ行けば、体力も消耗する。そこで俺は、1シーズンに何回か、スキーバスツアーを利用した。 昼寝をしている間にゲレンデまで連れて行ってくれて、リフト券や宿泊セットにすると、車で行く時のガソリン代や高速料金より安く済むものが結構あった。 その年、俺は商店街のスポーツ用品店が主催するバスツアーに申し込んだ。ゲレンデ前のロッジに1泊、リフト券付き、到着から帰りのまでは自由行動。俺のイメージ通りのツアーだと思っていた。 ところが、集合場所からバスに乗り込んでビックリ。俺以外の参加者がほぼ全員家族連れて、しかも互いに知り合い同士のようなのだ。 『こりゃあまるで…』 だが、どんな事情でこうなっているかはともかく、バスでスキー場まで連れて行ってくれることには間違いないないだろうと思い、後ろの方の空いている席の窓側に陣取った。 すると、出発間際の時間になり、乗り口から俺の方に、ピンクのスキーウェアの少女が歩いてきた。キョロキョロと通路の両側の様子を見ながら奥へ進んで来たが、俺の席の横に立ち止まると 『あの~ ここ、いいですか?』 と聞いてきた。 『ああ』 俺が答えると、隣にチョコンと座ってきた。 『この子もどこかの家族連れのひとりなんだろうが、席の都合で親と一緒に座れなかったんだろう』 最初俺はそう考えたが、しばらく見ていても、他の席の人と話をしたり、手を振ったりする様子がない。 『まさか、この子もひとりで?』 そう思い始めた頃、前の席から初老の男性が、愛想笑いを浮かべながら近づいてきた。見ると、ツアーを主催するスポーツ店の店主だった。 「すいませんねぇ。見ての通り、このツアーは町内会の旅行みたいなもんなんですよ」 「あなた方が申し込んできた時、どうしたもんかと思ったんですが、だからといってお断りするのも変な話だし…」 これでようやく事情が飲み込めた。 「いや、俺は別に、ゲレンデに連れてってさえくれれば後は好きにやりますんで、どうか気になさらずに」 俺が言うと、店主は頭を掻きながら「すいませんねぇ」を繰り返したが、 「すいませんついでに、こちらのお嬢さんを見てやってもらえませんかね? と言ってきた。 「えっ?」 俺が言うと、少女は恐縮して、少し頬を赤らめて俯いた。 「いや、まだ中学生なのに、おひとりで参加なんですよ。なので、何か困ってる様子だったら…本当は私が見なきゃいけないんですが、ご覧の有様で…」 見ると確かに、前の方の席で、はしゃぎまわる子供たち、それを叱る母親、早くも酒盛りを始めるオッサン達と、手間がかかりそうな参加者ばかりだった。 「ああ、そういうことなら…」 俺が引き受けると、店主は何度もペコペコしながら、前の席に戻っていった。 『困ってる様子だったら、助けてやればいいんだよな。小学生じゃないんだから、それ以外はほっといても…』 そう考えながら改めて少女の顔を見てみると… 《誰もが認める美少女》というタイプではなかったが、性格のよさそうな丸顔に、素直だが意志の強そうな瞳、柔らかそうで形のいい唇。要するに、俺の好みにピッタリの子だった。 だからといって、こんなに年上のサラリーマンが急に愛想よく話しかけ出したら、怪しすぎる。 俺がためらっていると、少女の方から 「あの、ゆきって言います。中2です。宜しくお願いします」と言ってペコリと頭を下げた。 「ああ、こちらこそ。スキー得意なの?」 「あ、いえ、まだ今日で2回目なんです」 その答えに俺は絶句した。 『2回目?そんな初心者の中学生が、ひとりでバスツアーか?いい度胸だな…』 俺が驚いていると 「あ、でも、ちゃんとリフトに乗れるし、ひとりで降りてこられます。あの、転びながらですけど…」 まあ、2回目じゃそんなもんだろう。 俺は自分の2回目の時を思い起こした。 1回目は、とにかく雪と戯れるのに夢中で、転んでも何しても楽しかった。 だが2回目は、周りの大人の真似をしてターンに挑戦しても、うまくゆかず、その上ブッシュに突っ込んで身動きが取れなくなり、もうやめて帰ろうかとまで思った。 だがその時、一緒に来ていた年上の従兄弟が、厳しくも丁寧に基礎から教えてくれたので、俄然楽しくなって、その後もずっと続けている。 そう、2回目の時には誰かがつきっきりで教えてやらないと、スキーが嫌いになる。だがこの子は… それでも俺は、大人の男の汚い下心を疑われないかとずいぶんためらったが、結局がまんできずに 「教えてやろうか? 俺で良かったら…」 と、言っていた。
2020/01/04 01:30:25(8lW7LiOL)
投稿者:
翔
俺が電話に出ると、ゆきは
「あの…ゆきです。お姉さん、ウェア貸してくれるって。スキー行けます!」 と弾んだ声で言った。 「そうか、よかったな。じゃあさっそくロッジの社長に電話しとくから」 「はい!お姉さんに、男の人からスキーに誘われたって言ったら、ガンバってって言われちゃった…」 ゆきは少し恥ずかしそうに付け加えた。 俺はこれを聞いて、トキドキしてきた。 『ガンバるって、何をだ?』 この時まで俺は、ゆきをスキーに誘う理由を 『せっかく上手くなりかけてるのに、もうスキーに行けない可愛そうな教え子を、救済するため』と考えていた。 もちろん心の奥では、ゆきともっと親しくなり、できたら彼女にしたいという願望はあった。だが、社会人のサラリーマンのくせに女子中学生相手にそんな期待をして、裏切られた時は二重に恥ずかしいし、情けない。そんなことにならないよう、自分で自分に『これは純粋な師弟愛なんだ!』と言い聞かせていたのだ。 ところがゆきは、まるでデートに誘われたような言い方をする。これではせっかく封印していた願望が、いやでも頭をもたげてしまう。 俺が口ごもっていると、ゆきは、俺のテンションが下がっていると勘違いしたらしく 「あ、でも、本当に連れてってもらっていいんですか?私、本当にもうお小遣いなくて…お母さんに話したら、お昼代だけは持たせてくれるみたいなんですけど…」 と、心配そうに聞いてきた。 『お、親にまで話したの?』 これはこれで衝撃だったが、もういい加減、何か気のきいたことを言わないと、ゆきに俺がその気がなくなっていると思われてしまう。 「実は俺、女の子とふたりでスキーに行くの初めてなんだ。すげえ楽しみなんだけど、ちょっと緊張してる」 俺が正直にそう言うと、ゆきは電話の向こうでクスクスと笑ってから 「私もです」 と言った。 それからゆきは、ほぼ毎晩、何かしら用事を作っては電話してきた。お姉さんから2着借りたアンダーウエアの、どっちの色がいいか?とか、図書館でスキーの教本を借りてきたとか、当日の朝食に、おむすびとお茶を用意したいけど具は何が好きか?とか、他愛ない内容ばかりだったが、メインの要件が終わったあと、いろんな話をした。 ゆきは中学校ではバスケ部に入っていて、2年生ですでにレギュラーになってるらしい。元々運動が得意なのだろう。 俺の方は、仕事の内容をざっと説明し、職場での失敗話などを面白おかしくゆきに聞かせ、笑わせた。 俺は次第に、夜のゆきからの電話を心待ちにするようになった。仕事をしていても、ふと気を抜いた時に、彼女のことを考えてしまう。 『なにをやってるんだ?俺は。こんな思春期の少年のような恋をして、むこうが全然そんなつもりじゃなかったら…』 コーチのお礼と称して、ファーストキスをくれたこと、従姉妹からガンバってと言われたことを、わざわざ俺に報告したこと、毎晩飽きもせずに電話で長話をすること。 考え合わせれば、まったくその気がないとも思えないが、そもそも俺たちは年が離れすぎている。お互い気があったとしても、うまく行かない確率のほうが高いだろう。 そんな、およそアスリートらしくない悶々とした想いを抱えたまま、ゆきとの約束の日を迎えた。
20/01/13 22:14
(sN5KNREK)
投稿者:
キタ
続きが気になっております
20/01/18 06:55
(/t6jktIP)
投稿者:
翔
約束の日。
俺はゆきが住む市営団地の駐車場で彼女を乗せ、スキー場へと車を走らせた。 車に乗り込むとすぐに、ゆきはハイテンションで、あれこれと俺に話しかけてきた。 今日行くスキー場が載っている、古いガイドを図書館で借りてきたらしく、助手席でそれを広げ、どのコースに行ってみたいとか、このリフトに乗ったら景色がよさそうだとか。 それまで、ひとりで車を運転してスキーに行く時は、いかに体力を消耗せずに行き着くか、そればかり考えていたが、この日は久しぶりに道中が楽しかった。 途中ドライブインで、ゆきの用意したおにぎりとお茶をごちそうになる。おにぎりというのは簡単なようで、実は結構奥が深い。ふだん料理などしない娘が見様見まねで握っても、かならず緩すぎて、食べるそばから崩れて来たり、塩加減が間違っていたり、具にシャケやタラコを選んでも、焦げていたり生焼けだったり。流行りの言葉で言えば、女子力が露骨に表れてしまうのだ。 ゆきの作ったおにぎりは…これまで食べた中で最高だった。俺はそんなにグルメではないが、それでも彼女がかなり、料理ができる、慣れていることが、おにぎりから感じられた。 きっと、働き詰めの母親を助けるために、かなり家事を負担しているのだろう。 普通の中2の女子なら、家にいるときはスマホでラインやSNSで友達とダラダラ過ごしているだように。 『この子のこと、なんとかしてやれないかな?』俺はその時初めてそう思った。 スキー場のロッジに着くと、最初に社長に挨拶。ゆきを紹介した。社長は愛想よく 「よく来てくださいました。楽しんで行ってくださいね」と微笑んでリフト券を手渡してくれた。 だが、ゆきがトイレに行っている時に近づいてきて 「ずいぶん若いな。いくつだ?」 と聞いてきた。 滑り始めるとゆきは、真剣そのもの。俺たちは中学か高校の部活の、鬼コーチと選手みたいだった。とんな厳しい要求をしても食いついて来たので、ゆきはメキメキ上達した。 12時過ぎ、ロッジに戻って昼食を取る。ゆきが壁にはられていたメニューの値段を、真剣な顔で見ていたので、俺は 「カレーでいいかな?ここのは絶品なんだ」 と言って食券は買わず、厨房にいた顔見知りのオバサンに、「カレーふたつお願いします」 と頼んだ。 ゆきは食べながら「ホント、すごく美味しい…」とつぶやいたが、笑顔はなかった。 午後もタップリ滑り込み、ラスト一本では、俺が先導しなくても、下まで通しで転ばず降りてこられた。 先に下で待っていた俺の元にゆきが降りてきて、すぐ横に止まったので、俺は 「やったじゃないか!」 と思わず両手を広げて抱きしめそうになったが、すんでのところで止めて、肩を叩いた。 この時はゆきも笑顔だった。 ロッジの社長にお礼と挨拶をし、帰途に着く。 帰りの車で、ゆきは行く時と打って変わって無口で、俯いて何かを考え込んでいる様子だった。 『さすがに疲れたのかな?』 そう思って俺も無理には話しかけなかったが、走り出してしばらくした頃 「今日のお金、ほんとは全部、翔さんが出してくれたんですよね?リフトも、お昼も…」 俺は一瞬言葉に詰まったが、これ以上うそを重ねてもしょうがないと思い 「最初はね、そうしようと思ったんだ。ゆきちゃんとどうしても、ふたりでスキーに行きたかったから。」 「でも、あの社長に話したら、君の分は本当に全部無料にしてくれたんだ。俺にいつまでたっても彼女ができる気配がないのを心配してくれてたからかな、ご祝儀だって言って…」 「かっ、彼女さん…」 「ん?」 「いないんですか?」 「ああ。ずっとスキーばっかりだったからな。年齢イコール彼女イナイ歴ってやつだ」 俺が笑って言うと、その時だけ一瞬、ゆきの顔がゆるんだような気がした。 車がそろそろ、俺たちの住む市内に入る頃、俺が 「もうじき着くな。乗った所と同じ場所でいいか?」 と聞くと、ゆきは、少しかすれた声で 「まだ帰りたくない…」 とつぶやいた。 「お母さん今日夜勤で、帰ってもひとりだから…」 「そうか、じゃあ晩メシでも行くか?」 ゆきは俯いたまま大きく首を横に振り、 「翔さんのお部屋に連れてって」 と、小さな声だがハッキリと、そう言った。
20/01/19 12:15
(f4mMBhzl)
投稿者:
ぽんた
凄い面白くて、一気に読んでしまいました。
是非是非続きをお願い致します。
20/01/23 13:15
(./RbKR3P)
投稿者:
翔
俺はその言葉を聞いて、急にドキドキし始めた。
『どういうことだ?まさか…』 だがすぐに、自分の中学時代を思い浮かべ、思い直した。 あのころ俺たちは、特に告ったりした仲でなくても、お互いの家の部屋に入れてもらっただけで、それまでより親しくなれたようで、妙に嬉しかった。ゆきもきっとそういうことを期待しているのだろう。 「俺の部屋なんか来たって何もねぇぞ。スキーの本とビデオくらいしか」 「それでもいい。連れてって。」 今思い返せば、いつも遠慮がちで控えめなゆきが、ここまでキッパリと自分の希望を口にしたのはこの時が初めてだった。 俺は車を自分のアパートへと走らせ、ゆきを部屋に入れた。 狭い2DK。その内ひと部屋はスキー用具置き場になっていたので、残りひと部屋にベッドと座卓が詰め込んであった。 「その辺に適当に座ってて。冷たいお茶でいいか?」 俺が聞いても、ゆきは返事をせず、壁に向かって突っ立っている。 「どうした?」 俺が言うと突然、俺に背を向けたまま、従姉妹のお姉さんから借りてきたピンクのスキーウェアのファスナーを下ろし、脱ぎ始めた。 「お、おい!なにを?」 俺が戸惑っている間に、ツナギのウェアを足元まで下ろし、アンダーウエアとスキータイツだけの姿になると 「シ、シャワー…借りてもいいですか?」 と聞いた。 「あ、ああ。こっち…」 俺がトイレの横の小さなドアを指差すと、ゆきは脱いだウェアを抱えて俺の横をすり抜け、バスルームに入っていった。 シャワーの音が鳴り響くのを聞きながら、俺は頭をフル回転させて考えた。こんなことを考えるのは、慣れてない。 ゆきは、大人しくて控え目なボンビーガール。その認識は間違ってないはず。それが、知り合って2週間の男の部屋で、こんな行動に出るとは。 いくら考えても、その理由はひとつしか思い浮かばなかった。 『もしそうなら、俺はどうしたら?』 結論が出ない内に、ゆきが出てきた。裸にバスタオル1枚の姿で。そして、俺とは目を合わせずにベッドに横たわり、目をつむった。 俺はためらった。このまま手を出したとしても、ゆきは受け入れてくれるだろうし、それでふたりの関係が終わってしまうこともないだろう。だがしかし、いくらなんでも… 「ゆきちゃん、服着て。」 俺が言うと、ゆきは涙声になり 「やっぱり…ダメですか?こんな子供の身体じゃ…」 「冗談じゃない!これでも、今にも飛びかかりそうになるのを、ガマンしてるんだ」 「ガマンしなくていい!」 「けど、それは、ゆきちゃんにとってすごく大事なものだろ?それを、スキーのお礼なんかのために…」 「お礼なんかじゃない!」 「……」 「す、好きなの!すごく。翔さんのことが。一日中翔さんのことばっか考えちゃって。だから、もう…」 ゆきのこの言葉は、もちろん俺にとって、天にも昇るほど嬉しかった。 自分の中学時代を思い出せば、友達で好きな子に告白して付き合いだした子もいたが、せいぜいふたり切りで出かけたり、キスしたりする程度。よほど長く続いて、深い関係になった子もいないではなかったが。 ゆきの周りの同級生とかの恋愛も、おそらくそんなものだろう。なのにゆきが、告白と同時に身体の関係になろうとしているのは、大人である俺に合わせようとしているに違いない。 ならばここは大人の余裕を見せて、ゆきの気持ちを受け入れた上で、『でもこういうことは、もっとお互いよく分かってからにしよう』とでも言ってあげようと思った。だが… 結局のところ、このあたりが俺にとって、ガマンの限界だった。 俺はベッドに上り、ゆきの耳元に口を寄せて 「俺もお前が好きだ」 と囁き、胸の上で止めてあったバスタオルを、ゆっくり開いていった。
20/01/25 16:46
(ln/7N475)
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