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(無題)
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:人妻熟女 官能小説   
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1:(無題)
投稿者: 昌子
人の人生って、チョットしたきっかけで大きく変わって
しまうモノですよね。
以前の私は「そんな事は他人事、自分には関係の無い事」として
考えもしませんでした。

私は32歳。結婚4年目で、経済的には楽ではないけれど、
パートにも出てますし、やりくりしながらそれなりに安定した
生活を送っています。
子供が居ないので、その点も負担が少ないと思います。

夫とは以前の職場で知り合い、人当たりの良さと優しさに
惹かれて結婚しました。
派手なことは苦手ですし、ギャンブルもしません。
お酒も殆ど飲みませんし、タバコも吸いません。
嗜好や価値観も私と似ていて、今まで生活の中で衝突したことは
一度もありません。

そんな夫婦生活で、私が唯一不満に思う事。それは
夜の営み・・・なんです。

決しておざなりにされている訳でも無いですし、精力が弱い
訳でもありません。では、何故不満なのか・・・それは
お互いの体型の違いなのです。
夫は元々ラクビーの選手で、身長も体型も大きく、その身体に
比例したイチモツの持ち主です。
方や私は、身長も低く体型も大きくありません。
したがって夜のSEXの時、けっこうツライというか、
私に対して夫のモノが大きすぎるのです。

最初の内は(しばらくすれば慣れるはず・・・)と思って
いたのですが、やはり私にはオーバーサイズみたいで、
求められると正直(うわぁ~・・・)って思ってしまうことも
多いのです。

世間的には「贅沢言ってる」「幸せな事でしょ」と非難させる
かもしれませんが、受け入れる側としては、正直ツライんです。
(出血する時もありますし、股関節が痛む事も・・・)

それでも不倫だとか浮気だとかは、考えたことは無く、
その安定した生活にドップリ浸かっていて、その生活を変える
気持ちはありませんでした。
そう、去年の夏までは・・・。

去年の春、桜も満開になり暖かな日差しと爽やかな風に
誘われて、私は徒歩で買い物に出かける事にしました。
数日続いた雨と寒の戻りで、降ろすにおろせなかった
新しく買ったリーボックのスニーカーを、やっと降ろすことが出来た
からなのです。

それまで履いていた¥1980の無名スニーカーとは大違い!
軽くて衝撃も少なくて、足が勝手に前に前に進む感じがとても
素晴らしいんです。
我家の経済的には、痛い出費でしたが、その価値はあるとな~と
納得する履き心地でした。

スーパーまでの道のりで公園を横切るのですが、そこのデコボコ
した石畳も難なく歩けるし、春の陽気も手伝って私はウキウキ
気分でした。

買い物を終えての帰り道、行きと同じように公園を横切って歩いているとき
それまで軽やかに進んでいた筈の足が急に進まなくなり、
「え?」と思った次の瞬間、身体への衝撃といきなりドアップに
なった石畳が見えていました。
そう、私は子供のように転んでしまったのです。
前を見ると、石畳の上に散らばる買い物品・・・。
恥ずかしさのあまり、急いで立ち上がろうとした瞬間、
右膝に力が入らず、立ち上がることが出来ませんでした。

「イタタッ~・・・」
思わず右膝を手で押さえた時、手の平にヌルリっとした感じを
おぼえ、(まさか・・・)と思いながら恐る恐る手をどけて
見ると、黒いストッキングは無残に裂け、細かい擦り傷から血が
滲んでいました。それも結構勢い良く・・・。

たぶん、まだ新しいスニーカーに足が馴染んで無く、グリップ性能の
良いソールが石畳に引っかかってしまったのでしょう。
完全に私の不注意でした。

最初の内はヒザの痛みも痺れた感じでしたが、次第に痛みが
増してきて、血も止まる気配がありません。
私はその場に座り込んで途方に暮れていました。そのとき
「大丈夫でしか?」と男性の声が聞え、半べそをかきながら
声のする方へ視線を向けると、カジュアルな服装をした
30~40代ほどの男性が自転車に乗って駐まっていました。

私は震える声で「あの・・転んじゃって・・・」とだけしか
いえませんでした。
その男性は素早く自転車を降りると、
「大丈夫ですよ。取り合えず落ち着いて下さい。」
そう言うと私に肩をかしてくれて、近くのベンチまで連れて行って
くれました。

私を座らせると、散らばった買い物品を拾い集め袋に入れると
私の横に置いてくれました。
「怪我をなさっていますね。チョット待ってて下さい。」
そう言うとその男性は、自分の自転車まで戻り、自転車のカゴから
自分のバックを持ってきました。

男性はバックを開けると、半透明のプラスチックケースと
ペットボトルのミネラルウォーターを取り出して、
「応急処置だけしか出来ませんが、取り合えず血は止まるはずです。」
そう言うと、傷口をペットボトルの水で洗い、消毒液で消毒し、
脱脂綿とガーゼで傷口を覆い、持っていた恐竜柄のバンダナ
(手ぬぐい?)で縛ってくれました。

処置を受けている間、この人が格好いい人だったら、まるで
ドラマみたいで素敵だろうな~・・などと不謹慎極まりない
妄想をしてしまいましたが、残念ながら特に格好いい訳でも無く、
かといって不細工と言う訳でも無い、極々普通の人でした。
(私も人様の容姿を言えるほど綺麗な訳でもないのに・・・)

処置を終え、その男性は私の前にしゃがんだまま、立とうとは
しませんでした。ただ顔を伏せたまま
「立てますか?」とだけ聞いてきて、私は恐る恐る立ち上がると
痛みは残っていましたが、出血も収まりなんとか歩けそうでした。
「ありがとうございます。これで何とか帰れそうです。」
「そうですか・・・あまり痛むようでしたら病院に行って下さい。」
「あの、それで・・お礼なんですが」
と私が言いかけた途端、その男性はベンチに横たわって
しまいました。

(え?・・・なに?・・)私は状況が把握出来ませんでした。
「あのぉ~・・・だいじょうぶですかぁ?」
そう言ってその人の顔を覗き込むと、男性の顔色は真っ青で、
虚ろな目つきになっていて、
「だいじょうぶ・・です。・・しばらく休めば・・・」
そう言ったきり、その人はそのまま動かなくなってしまいました。

そのまま立ち去る訳にもいかず、私はベンチの空いているスペースに
座って待つしかありませんでした。
15~20分ほど経った頃、その人はベンチから起き上がり、
「ふぅ~・・・ふぅ~・・・」と何度も深呼吸して、
「いやぁ、お恥ずかしい姿をお見せしました~」と
バツの悪そうな顔をしながら、ポリポリと頭を搔いて
「実は怪我とか血とか見ると貧血を起こしてしまうんです。」

白馬の王子様、とはいかないまでも、あまりの三枚目ぶりに
私は思わず吹き出してしまい、その人も
「いや~面目ないです。ここで颯爽と立ち去ったら格好いいのに
 小説や映画のようにはいきませんね。ハハハッ。」

「お宅は近くですか?ひとりで帰れそうですか?」
「あ、はい。もう大丈夫です。」
「そうですか。それでは私はこれで。」
そう言うと自分の自転車に乗って去ろうとしていたので
「あの、治療費というか・・・お礼がしたいのですが。」
「それでしたら、同じように困っている人が居ましたら
 手助けしてあげて下さい。自分もそうやって助けて
 もらった一人なので。」
そう言うと、その人は自転車を走られ去っていってしまいました。

しばらくヒザは痛みましたが、病院に行くほどでも無かった
ですし、傷口も化膿しませんでした。
数日後、私は薬局で携帯用のファーストエイドを購入し
縛ってもらった緑色の恐竜柄の手ぬぐいを、いつ会っても
返せるように綺麗に洗濯しお礼文と一緒に持ち歩いていました。

ですが、たまたま通りかかった人と出会える確率は低く、
出来る限り、同じ曜日の同じ時間帯に買い物に出かけ、
公園を通るようにしましたし、時にはしばらくベンチに座って
待ったりもしましたが、その時の男性は現れませんでした。

もちろんそればかり気にしているわけにもいきませんし、
その人に特別な感情は、その時はまだありませんでした。
ただ、私の中でこのままでは収まりが悪く、せめて手ぬぐい
だけでも返して、改めてお礼を言いたい。ただそれだけでした。

全然官能的な所もないまま、前説だけで長文になって
しまいました。(o_ _)o

続きはまた・・・。

 
2013/03/14 21:46:46(v/NX1Snn)
57
投稿者: (無名)
今回も凄く楽しく読ませてもらいました。
他の方(よこっちんさん)もおっしゃっていますが、
本当に類を見ない独特の雰囲気があって、更新されるのを
いつも楽しみに待っています。

トーシローの僕が言うのもなんですが、情景描写や
心理描写、その表現がとても雰囲気があって
いつも一気に読み切ってしまうほど「昌子さんの世界」に
ハマッテしまいます。

人柄なんでしょうが、気取りの無い等身大の文章(表現)
も凄く好きで、いつも僕をほっこりとした和みと興奮に
連れて行ってくれます。

長々とヘタな感想を書いてすみませんでした。
これからも無理せずマイペースで書いて下さい。
ずっと応援してます。

13/07/30 13:26 (EUTxaf/t)
58
投稿者: 昌子

 お外での行為での興奮冷めやらぬ身体を、露天風呂の
お湯と、そよぐ春風が私を優しく包みます。
そんな私を、彼は相変わらず撮影し続けています。(^_^;)
どうやらタトゥーで飾られた、私の身体を撮るのが
気に入ってしまったようです。
でも、特にポーズを要求する事は無くて、彼自身が私の
周りをグルグル回ったり、しゃがんだりしながら撮っている
だけでした。
私もすでに抵抗感が薄れてしまい、
(もう、好きなだけ撮って良いわ)的な気持ちになって
いました。

お風呂から上がり、ホッと一息ついていると、彼はお部屋
にある液晶テレビの裏をしきりに覗いています。
「何しているの?」
「ん~・・・チョットね。 おっ、有ったあった!」
彼はそう言うと、デジカメとテレビをケーブルで繋ぎ始め、
「カメラの画面じゃ小さすぎて綺麗に撮れてるか分か
 らないからね。テレビの画面に出して見るんだよ。」
そう言ってデジカメとテレビを操作しています。しばらく
すると、テレビに再生の画面が表示され、次に現れたのは
昨日撮った、私のお風呂での画像でした。

テレビの画面に次々と映し出される私の裸・・・彼は
「う~ん・・・湯気でボケちゃったな。」 「画像が暗い」
「ピントがイマイチ」 「逆光だ」 「これは良い感じ」
こんな調子で、一枚ずつ品評していきます。
けれど、私は本来映し出される筈も無い、私の全裸が
テレビの画面に映っている事に驚き、その驚きと
恥ずかしさで、なにも言葉が出て来ませんでした。

そして裸で横たわる私が映し出されました・・・・。
画像が入れ替わる事に、身体に増えていくタトゥー・・・。
彼は昨晩、張りながら撮影していたのです。画像を換え
ながら、彼は私に何かを言っていましたが、何を言った
のか分かりませんでした。それくらい私はテレビに映し
出される画像に釘付けになってしまっていたのです。

ふと画像が消え、(えっ?・・・・)と呆けてる私に
「続きはまた後で、ゴハンの時間みたいだよ。」
彼のその言葉に、はたと我に帰ると、扉の向こう側から
「お食事の用意、よろしいでしょうか?」
との女将さんの声が聞えました。
(女将さんが運んでくる事もあるんだ・・・)
私はチョット意外に感じていました。
女将さんが夕食の用意をしている間、私は平静を装う
自信が無く、縁側の窓から外を眺めているしかありません
でした・・・・。


夕食の食器が片付けられ、お布団が敷かれると、私達は
また、上映会を再開しました。
再びテレビ画面に映し出される私の裸体・・・。
そして、乳房・おへそ・恥骨に貼られたタトゥーのアップ!
本物と見紛うばかり・・・とはいきませんし、いかにも
(貼り付けました)感は否めませんが、その精巧さと
卑猥さ・・・そして自分の知らない内に撮られてしまった
恥ずかしさ・・・でも、その羞恥心は徐々に性的興奮へと
私を誘っていきます・・・。
彼もこの頃には品評はせず、ただ黙って画像を切り替え
ていました。

そして出掛ける前に撮った画像に移り変わります。
室内で・・・縁側で・・・そして内玄関で・・・。
タトゥーで飾られた裸体を晒しながら、様々なポーズを取る
女性・・・頬は上気し、目は虚ろ・・・濡れた唇は開き気味に
なり、もはやその表情は、恥ずかしさよりも卑猥な興奮に
包まれているのが、画面からも伝わってきます。
徐々に足を開き気味のポーズが増え始め、その女性の
秘部までもが映り込むようになってきます・・・・。
画像が進につれ、秘部の花弁は開き始め・・・その奥
からは艶やかな蜜が溢れ始めてきていました・・・。

もちろんそれは全て私自身なのですが、画面に映し出さ
れる映像は、私が私自身だと認識できない程、卑猥で
淫靡な姿を映し出していたのです。

ふと画像は雰囲気を変え、健全なスナップ写真に
切り替わりました。
にこやかに写る男女・・・そしてそれぞれの写真。
でも、それも最初の内だけで・・・その女性は徐々に
肌を露わにし始め、表情にも陶酔感が滲みはじめて
います・・・。
そして、その女性は全裸を春の日差しの中に晒け出して
しまいました・・・。
白い肌にタトゥーが鮮やかに写ります・・・しかし、その
鮮やかさとは裏腹に、その女性は目を覆いたくなる程の
卑猥なポーズを次々に変えていきます・・・。
退廃した場所・・・春の明るい日差し・・・そしてタトゥーで
飾られた裸の女性・・・・卑猥なポーズ・・・。
全てがミスマッチで非現実的。
その非現実感が、見ている私をより一層興奮させて
しまうのでした・・。

その女性は、男性の逸物を舌でねぶり始めます・・・そして
ヌルリッと濡れた唇で、その逸物を頬張ってしまいました。
陶酔しきった表情・・・強く吸い出しているのが分かる程
へこんだ頬・・・・。
大きく開いた女性の口へ、逸物の先から飛び出し始めた
白濁汁・・・頬をその汁で汚しながら、恍惚感で満たされた
女性の表情・・・・・。

私の目に映る、異様なまでの光景・・・そしてその女性は
紛れもなく自分なんだという事実・・・その事実に恐れ、
恐怖心すら感じながらも、今まで経験したことの無い
興奮に毛細血管が破裂しそうです。
撮った時は夢中だったので、良く分かりませんでした。
でも、こうして画像で客観視する事で、自分がいかに
卑猥で尋常ならざる行為をしていたのかが、
否定することも出来ない事実として、私を襲い・・・
そして興奮させてしまうのでした・・・・。

彼は黙ったままデジカメとテレビの電源を落とすと、カバン
からポーチ出してきました。その
ポーチから取り出されたのは、銀色の機械・・・携帯電話を
厚くして、すこし大きくしたようなそれを私に見せて、
「昌子・・・これは録音が出来て動画も撮れるんだ・・・・。」
とだけ言いました。
この時点で、私には選択肢など無く、ただ黙って小さく
肯くだけでした。
彼は小さな三脚の上にその機械をセットし、機械から
コンセントにケーブルを繋ぎました。

その夜、私達はその機械の前で愛し合い・・・その全てを
記録したのです・・・。
ときに彼は機械を手に持ち・・・ときに置いてある機械に
見せつけるように、熱く長い夜は続いていきました・・・。
その夜の興奮は、今までで一番・・・と言うよりも、
全く異質のモノで・・・上手く表現するのが難しい
のですが、理性や感情、愛情すら希薄になり・・・
野性的というか・・・本能的と言うか・・・
自我は置き去りにされ、徐々に衰退していきます。
異様な・・・そして特異な興奮の中で
お互いの渇望を、無防備のまま受け合いぶつけ合う・・・

ごめんなさい・・やはり上手く表現する事が出来ません。
とにかく、私達は精も根も尽きるまで、激しい行為を
繰り返し、そしていつしかドロのように眠ってしまう
のでした・・・・。


 翌朝、私は激しいノドの渇きで目を覚ましました。
水を飲むため、身体を起こそうとした瞬間、
「痛っ・・・」
身体中のありとあらゆる筋肉や間接に痛みが走ります。
(昨日は激しかったから・・・て言うか、途中から殆ど
 記憶が曖昧だけど・・・・)
この日の朝は、まるで嵐の後のような静けさで、野鳥の
囀りすら殆ど聞えてきません。
私は身体の痛みに耐えながら、水を飲むため洗面台へと
向かいました。
水を飲み、ホッとして洗面台の鏡を見て、私は再び驚いて
しまいました。
タトゥーはシワがより、幾つもの切れ目が走り、いたる所
剥がれて柄が欠損しています。
でも、私の驚きはそれではありませんでした。
身体の至る所が引っ掻いた様なミミズ腫れになって
いたのです。

私は慌ててお部屋に戻り、彼を起こそうとしました。が・・・
背中を向けて寝ている彼の身体にも私と同じ・・・いえ、
それ以上の傷痕が残っていたのです。
私は怖くなり、彼を揺すり起こしました。
「あなた!起きて! ねぇ、起きてよ~!」
疲労のせいか、彼は(うう~ん・・・)と唸るばかりで、
なかなか起きてくれません。
それでも必要に起こす私に、少々面倒くさそうに身体を
起こしました。
「うう~ん・・もう、何? うっ・・痛てて!・・・・」
彼もまた、筋肉痛と関節痛のようです。
眠そうな目を擦りながら私を見た彼は、
「え?・・うわぁ~!なんだ!どうしたんだその傷は?」
「私だけじゃ無い・・・貴方もよ・・・・」

私達は二人で洗面台の鏡でお互いの身体を確認しました。
私以上に彼の身体に刻まれた傷は多く、肩や腕には
噛まれたような痕までありました。
それはモチロン私が噛んだ傷・・・(だと思います・・・)
彼は洗面台の小さな椅子に崩れるように座ると、頭を
抱えてうなだれてしまいました。
「ねぇ・・・貴方。大丈夫?・・・・」
私のその問いに、彼は何も答えてくれません・・・。
「これって、どういう事なの?」
彼はしばらく黙したまま動きませんでした。そして小さな
震える声で
「過程は問題じゃ無い・・・問題は私が昌子の身体を
 傷つけたという事実だ・・・調子に乗ったばかりに、私は
 ああっ・・・何て事を・・・・・・」

ミミズ腫れだらけの身体で、自分を責め続ける彼が余りに
痛々しく、私は彼の背中をそっと抱いて、
「私も殆ど覚えてないの。それを考えても仕方が無いわ。
 そうでしょ?自分を責める前に、今は落ち着きましょ?
 とにかくこのままお風呂に入って身体を癒やさなきゃ。」
私の言葉に少しだけ気持ちが楽になったのか、彼は
うなだれながらも力なく立ち上がりました。

彼に寄り添いながら浴室に入り、まず私の身体にお湯を
掛けてみました。ミミズ腫れは少しだけヒリッとしましたが、
入れない感じはしませんでした。
次に彼にもお湯を掛けてみました。私以上に腫れが多い
為か、一瞬ピクッと身体を震わせました。
「大丈夫?痛くない?」
「・・・・・・大丈夫」
私は寄り添ったまま、
「足下に気を付けてね。ゆっくり入りましょ。」
そう言うと私達の身体をお湯に浸しました。

彼は苦悶の表情を浮かべたままうなだれています。
私はお湯を手ですくい、彼のうなじや肩、背中に掛け続け、
まさに(腫れ物を触るように)手で優しく摩ってあげました。
入ってから5~6分経った頃でしょうか・・・、
手に伝わる傷の感触が変わって来ているのに気が付き
ました。
(あれ?もしかして・・・・)そう思って自分の身体を見て
みると、さっきまで痛々しく残っていたミミズ腫れは完全に
腫れが引き、微かに赤みが残るだけになっていました。
私は一人、湯船から出ると石鹸で身体を洗ってみました。
すると剥がれ掛けていたシールも綺麗に取れ、赤みも
殆ど気にならなくなっているではありませんか。
「貴方、ねぇ貴方!見て!ほら、こんなに綺麗になってる」
私を見た彼の顔は、苦悶から驚きに変り・・そして安堵の
表情に変わっていきました。

 朝食が終り、帰り支度の前にもう一度お風呂に入る事に
なりました。私の身体は殆ど元通りに回復していましたが、
彼の身体はミミズ腫れこそ引きましたが、まだ少し赤い
傷が残り、肩や腕の噛みつかれた痕も・・・・・。
「ここの温泉ってサラサラしてて、効能が薄そうだけど
 実は凄いんじゃない?」
「そうだね。傷もさることながら、身体の疲労も随分楽に
 なったしね。正直驚いているよ。」
私は身体の回復よりも、彼の気持ちの回復の方が何倍も
嬉しかった。

帰り支度が終り、チェックアウトの為お部屋から出て、
お庭の中を縫って走る石畳を歩いて行くと、女将さんが
立っていました。その姿はまるで一枚のポスターか、
絵画のよう。春の花々をバックに和服を着て凛として
佇むその姿、そして柔らかな表情。
強さと優しさが、オーラとなって包む込んでいるような
雰囲気で、女性の私でも一瞬息を飲む美しさです。
女将さんは優しい笑顔で軽く会釈すると、私達を先導する
ように先に立って歩き始めました。

母家に着き、精算のさいに彼は番頭さんと何かを話して
いました。出してもらったお酒が何処へ行ったら買えるの
かを聞いているようでした。ですが、
「あれは蔵元に当方から別注で作らせている物なので
 他所では買えません。またお譲りする事も出来ない
 物なのです。申し訳ありません。」
「そうですか・・・・」
彼は落胆していましたが、そうやんわりと断られては
諦めるしかありませんでした。
すると女将さんが
「あれがお気に召したのですか?」
と聞いて来て、彼は
「はい。とても美味しいお酒でした。今まで飲んだ事の
 無い独特の風味と味でしたので、このお宿を紹介
 して下さった方へのお礼に・・・と思ったのですが・・・」

女将さんは柔らかい表情は変えませんでしたが、鋭い
視線で彼と私を見つめ・・・ふと目を伏せると奥に下がって
しまいました。そして直ぐに戻って来ると、その手には
小さめの瓶が二つ。
女将さんは、その瓶を番頭さんに渡して、
「これをお包みして差し上げて。」
「これは!女将、これは先代へのお供えものでは・・・」
「そうですよ。充分にお供えしました。」
「しかし・・・」
「後は風味が落ちるばかりです。それなら美味しく飲んで
 頂ける方の元へ出してあげるのが、この子達の為でも
 あるのです。さぁ。」
「・・・・・・」
「聞えましたか?」
「・・・はい。ただいまご用意いたします。」

私達は呆気に取られ、何も言えずに立ち尽くすばかり
でしたが、
「あ・・あの、そんな大事な物をお譲りして頂く訳には・・・」
そう遠慮する私に、女将さんは静かに歩み寄ってきて、
私の手を取ると、
「色々な事情がお有りな様ね。人生楽しいことばかりじゃ
 ない。むしろ辛いことの連続。でも、どんな結果に
 なっても、自分の信じたモノは最後まで信じてね。
 それがどんなにツライ選択だったとしても。
 それが貴女の人生なのだから。」
女将さんの言葉の意味・・・その意味するところを全て
理解できた訳ではありませんでした。でも、
手の柔らかさ、ぬくもり、瞳の奥に宿る優しくて強くて
暖かい光・・・それらが私を優しく包み込んでいきます。

私の幼少期・・・様々な出来事があっての今の私・・・
女将さんは、それまでの事柄を見抜いてしまっているかの
よう・・・・・。
「女将さん・・・貴女は・・・・・」
そう言った瞬間、何故か私の瞳から涙が溢れてしまい
ました・・・。
(あれ?・・どうして私・・・泣いているの・・あれ・・・・)
自分でも理由が分かりません。それでも涙がポロポロと
零れてしまうのでした。
女将さんは綺麗な着物が汚れてしまうのも気にせず、
私を優しく抱き寄せ、私の頭を撫で・・・
「うん、大丈夫。貴女なら大丈夫よ。」
そう言ってくれました。

番頭さんが戻って来ると彼は精算を済ませ、初老の男性が
荷物をもって車まで送ってくれました。
番頭さんは綺麗に包まれた小さな酒瓶を二本彼に渡すと
「先ほどはお見苦しいところをお見せして、申し訳ありませ
 でした。こちらはご贈答用に、こちらはご自宅用にお包み
 いたしました。」
そう言って女将さんを伺っています。女将さんは
(それで良いのよ)と言っているかように、優しい笑顔で
小さく肯いています。
私達はお礼を言い、車に乗り込もうとした時、女将さんが
歩み寄って来て、胸元からハンカチを取り出しました。
そして、そのハンカチを黙したまま彼に渡していました。
「女将さん・・・あの・・これは?・・・」
困惑する彼の問いに、女将さんはただ一言、
「お持ち下さい。」
とだけ言うと、彼から一歩引いてしまいました。

私達は3人に見送られ、お宿を後にしました。
しばらく県道を走り続けた後、彼は先ほど渡された
ハンカチを私に差し出してきて、
「?・・・なに?」
「私に手渡して来たが、これは昌子に渡したかったんじゃ
 ないかなって思って・・・・。」
私は彼の言う意味が分かりませんでしたが、黙って
差し出されたハンカチを受け取りました。
木綿の白いハンカチ・・・白い絹の糸で上品な刺繍が
施されています。
持ってみると、何かが間に挟まっているようです。
私はそっとハンカチを開いてみました。
その瞬間・・・ほんの一瞬でしたが、女将さんの香りが
フッ・・・として、それは高級な香水の香りでは無く、
何かの香木のような・・・とても優しくて儚い香り・・・。
まるでその一瞬だけ、女将さんが私の耳元で何かを
ささやいた様に感じられました。

余談ですが、香道(香の道)では、香りを「嗅ぐ」とは言わず
「聞く」と表現すると何かの本で読んだことがあります。
読んだ時は(変わった表現をするのね・・・)としか思って
いませんでしたが、女将さんの香りが漂った時、
(香りを聞く とはこういう事なのかな?)と一人で納得
してしまいました。
素人の浅知恵で、分かったような事を書くと、怒られて
しまいそうですね。あくまで私個人の主観として留めて
おいてくださいね。

ハンカチを開くと、そこには和紙で出来た名刺(?)が
挟まっていていました。
その名刺には、屋号も代表者の名前も無く、あるのは
三桁の番号、電話番号、それにメールアドレスだけが
毛筆で綺麗な文字で書かれていました。
私は彼にその事を伝えると、
「う~ん・・・顧客番号かな~・・・でも始めて来た客に
 顧客番号を与えるとも思えないし・・・何だろう?」
「でも、電話番号もアドレスも書いてあるけど・・・」
「そうなんだよね・・・とりあえず明日常務にお土産を
 渡すときに、聞いてみるよ。」

チョットした疑問符を残しつつも、私達の2泊3日の旅行は
終わろうとしています。車窓から見える景色も私達が
暮らす町並みに変わりつつあります。でも・・・その景色は
今までと少し違って私の目に映ります。
それは普段見慣れない車窓から見てるから?なのか・・
それとも、私自身が、なにか少し変化してしまったから?
なのか・・・・明確な答えなど出ませんでした。
それでも私達が乗る車は、少しだけ違和感を感じる町へと
吸い込まれて行くのでした・・・・・。

13/08/03 19:58 (8vK0ALmn)
59
投稿者: よこっちん
こんばんは。

今回もまた楽しく一気に読んでしまいました。

ビデオ撮影した夜の行為は、彼の家のテレビで鑑賞会するんでしょうか?

しないと、今後の妖しい(?)卑猥な(?)展開に繋がらないのかな?

どっちにしても、これからの展開が楽しみです。
謎めいた名刺(?)
うーーん、楽しみ、楽しみ。
13/08/05 00:52 (PK418PAs)
60
投稿者: 昌子
私は一人でお部屋にいました。
彼は私をマンションの前で降ろすと、車を返却しに行って
しまったのです。
ホントはさっさと荷物を片付けて、お風呂や夕飯の用意を
しなくてはイケナイのに、お部屋に着いた途端、どっと
疲れが出来てしまい、床にぺしゃりと座り込んで動けなく
なってしまいました。

シーンとしたお部屋の中で、しばらくはただ座ってボーッと
していましたが、そうそう呆けてばかりもいられません。
一気に息を目一杯吸い込むと、パチン!と両膝を手で
叩き、
「さぁ、そろそろやらないと!」
そう自分を鼓舞して私は立ち上がりました。

カバンから洗濯物を出し、洗濯カゴに入れ、お風呂の
スイッチを入れました。
「とりあえずお洗濯は明日ユックリするとして、今は
 夕飯の用意・・・と。」
鼓舞して立ち上がっても、疲れていることに変りが
ありません。こんな風に独り言を言いながらでないと
気持ちが折れてしまいそうだったのです。
でも、夕飯の支度のために開けた冷蔵庫の中を見て、
(しまった~・・・)と愕然としてしまいました。
それは旅行前に、生鮮品やら牛乳やらを全て片付けて
しまっていたから・・・なのです。

途方に暮れながら、冷凍室を開けてみても、ラップに
包まれたゴハンと幾つかの冷凍野菜のみ・・・・。
分かっていた事ですが、(もしかしたら)の一抹の希望も
これで消えてしまいました。
鼓舞した気持ちも一気に消え、私はその場にへたり込んで
しまう寸前でした。でも、それを救ってくれたのは彼からの
電話でした。
「もしかして何も無いのを忘れて、夕飯の支度をしようと
 してない?」
「え?・・・」
「まぁいいよ。それよりもう直ぐ帰るから、お湯だけ沸かして
 おいてくれる?」
「・・・・それは良いけど・・・ごはんは?」
「大丈夫、もう買ったから。それじゃ。」
地獄に仏 とはまさにこの事です。
私はホッと胸を撫で下ろすと、彼が言ったようにお湯を
湧かして待っていました。

程なくして彼が帰宅し、夕飯となりました。
彼が買ってきたのはお寿司とインスタントのお吸い物、
それに白菜の漬け物でした。
私達はお寿司を食べながら、今回の旅行について話し
始めました。
「色々あったけど、楽しかったわ。」
「本当に色々あったよね。すこし羽目を外しすぎた気も
 するが・・・・。」
「確かにチョット度を超しちゃったかもね。」
「それは言えてる。」
「我ながら、危ないことをしたな~・・・なんて・・・」
「展望台での事かい?あれは自分でもやり過ぎたと
 反省しているよ。(^_^;)」
「明らかに人が来そうも無い所だったから、私も調子に
 乗り過ぎちゃった・・・(;^^)」
「シールとは言え、タトゥーがあんなに刺激になるとは
 私自身思ってもいなかったんだ。」
「お宿も素敵だったわ。女将さんはとっても感じが良い
 人だったし、綺麗だったし。」
「うん、ホントだね。」

私達は会話をしながら、何故か最後の夜の事を話題に
しませんでした。何となく触れてはイケナイような・・・
凄く気になっているのに、その事は玉手箱と言うか、
パンドラの箱のように、開けてはイケナイ物のように感じ
られていました。
そして、その夜を記録した筈の機械の事も、彼は触れよう
とはしませんでした。

私達は、食事を済ませると直ぐにお風呂。
彼の身体は、所々僅かな赤い傷が残っていましたが、
ほとんど気にならない程に完治していましたし、私の
身体は全く傷跡がありませんでした。
その夜は、まだ早い時間でしたが疲れていたので、直ぐに
ベッドに入り、あっという間に深い眠りに落ちて
しまうのでした・・・・。


翌日からは、今まで通りの生活が始まり、
私は家事をしてからパートに出掛け、パートが終わって
から一度自宅へと帰りました。
さすがに何日も家を空けると、郵便受けも溜まりますし、
数日に一度は戻って来る事にしていたのです。
私は窓を開けて空気の入れ替えをし、郵便物をチェック
しました。
そして必要な洋服や下着などをカバンに詰め、家を後に
したのです。

彼が帰宅すると直ぐに夕食です。
食事をしながら彼は、常務さんの話を始めました。
「今日、常務にお礼を言いに行ったんだよ。お土産を
 持ってね。最初は”随分小さなお土産だな?”と
 からかわれたよ。でも、それが宿で分けてもらった物だ
 と言うと、ひどく驚いてね。あり得ない事だ!と言って
 なかなか信じてもらえなかったんだ。最後には
 試飲して、もし違ったら君の信用問題だぞ!とまで
 言われてしまったんだ。」
「え~・・ひどい!私達はチャンとあそこで買ったのに・・・」
「まぁ昌子が怒る事じゃないよ。それに私もウソを言って
 いる訳じゃ無いから平然と、どうぞお飲み下さい。と
 言ったんだ。」

彼の話を要約すると、常務さんは何度も例のお酒を分けて
欲しいと頼んでも、女将さんは一度も首を縦には振って
くれなかったそうです。それに女将さんが食事を運んで
来る事など一度として無かった。
最後には”君はいったい何をしたんだ?教えてくれ”とまで
言われたそうです。
でも、特に何をした訳でもないので、答えようが無く、
かと言って、そのままでは収まらないような雰囲気だった
ので、
「常務のお口利きがあったからこその待遇だったと思い
 ます。でなければ一見の私にそこまでして頂けるとは
 到底思えません。全て常務のお力添えの賜です。
 ありがとうございました。」
と、常務さんの顔を立てる形で収めてきたそうです。

「大変だったわね。それであの名刺の事は?」
「おいおい!勘弁してくれ。とてもそこまで聞ける
 雰囲気じゃ無かったんだよ。」
「あ!・・・ごめんなさい。そうよね。」
「・・・まぁ、昌子が気になるのも判るよ。私だって気に
 なっているんだし・・・どうだろう?昌子が女将さん宛に
 メールを出して聞いてみるっていうのは?」
「え?貴方じゃなくて、わたし?」
「うん、女将さんとの距離感は昌子の方がずっと近いと
 思うし。」
「う~ん・・・・・」
「それにあのアドレス、お店用じゃなくて個人用な気が
 するんだよね。」
「そうかな~・・・どの辺りが?」
「何となく全体的に・・・。お店のアドレスって雰囲気が
 無いんだよね。」
「う~ん・・・・・」
この事はひとまず保留になりました。
考えてみれば、もう利用する事が無い(出来ない)かも
しれませんし、その可能性の方が高いので・・・・。

そして様々なワダカマリを含んだまま、4月が過ぎようと
しています。
彼との蜜月の生活もカウントダウンに入ってしまい、私の
心にも黄昏が迫って来ました・・・。
でも、仕方の無いことです。元々期間限定の生活でしたし
そう思って割り切らないと、とてもツライのです・・・。

4月中は何度か夫からメールが届きました。内容の殆どが
蒸し暑い、食べ物が合わない、現地の人との
コミニュケーションが上手くいかない等々・・・・。
私の事など1行も、いえ、一節も書いてありませんでした。
一度だけ夫の会社に書類を届けに行った事があり、
元の職場なので、お局化しつつあるかつての同僚と話す
機会があって、
「ご主人も微妙な立ち位置よね~」
「え?どういう事?」
「え~!あなた何も聞いてないの?」
「・・・なにも話さない人だから。仕事のことは・・・。」
「向こうで結果を出さないと、帰っては来れるけど評価は
 がた落ち。逆に結果を出すと評価されて、とんぼ返りで
 また行かされて、今度はしばらく帰って来れなく
 なっちゃうのよ。」
「そうだったの・・・知らなかった。結構大変なのね。」
「でもどうかしら?男性社員は結構行きたがってる人も
 多のよ。男共にはパラダイスみたいだしね。」
「そうなの?」
「そうよ!だって・・・・・ううん、何でも無いの。」
「だって、なに?・・・」
「あ・・・一応、守秘義務ってのがあってね。元の社員でも
 何でも話して言い訳じゃないんだ。ごめん、またね。」

こんな事があってから、私は夫との距離がまた開いていく
のを感じていました。世間に疎い私でも男性のパラダイス
と言われ、その言葉が「歓楽街」になるのは察しが
尽きます。
そして嬉々として歓楽街を歩く夫の姿が目に浮かびます。
でも、正樹さんとの関係を続けている私には、その夫の
行為を咎め、責めることは出来ません。
赤の他人の勝手な行動・・・とまでは言いませんが、
凄く遠い存在の人の行為を、傍観者的に見ている・・・
そんな感じになっていたのです。

5月に入ると私は徐々に彼の部屋から自分の荷物を
引き上げ、2週目からは自宅での生活に戻りました。
夫の帰国は13日の月曜日でしたが、少し早めに戻り
元の生活に慣れておく必要があったのです。
この時は、私にとって凄くツライ日々でした。
パートが終わっても、彼の元に帰れない・・・食事も一人、
他愛の無い会話をする相手もいない・・・。
唯一の楽しみと言えば、彼との思い出を回想しながら
ここに投稿をするくらい・・・。
私の心は黄昏が過ぎ・・・暗い夜が訪れていたのです。

もちろん夫がインドネシアで成果を上げ、長期赴任の
可能性も無い訳ではありませんでしたが、元々器用な方
ではありませんし、語学にも堪能ではありません。
出世欲も少ない人なので、成果を上げて来るとはとても
思えませんでした。せめてミスだけしなければ良し・・・
程度なので、長期赴任の可能性は皆無と言っても
過言ではありませんでした。

そして5月13日・・・夫が帰国。そのまま社に出勤し、
報告書類の提出などで、帰宅したのは普段と変わらない
時間になっていました。
薄っすらと日焼けし、少しだけ痩せた感じもしましたが、
思っていたより・・・と言うか、行く前よりも元気そうでした。
私は今までと変わらない態度で接し、家事をこなして
いましたが、夫からは特に仕事の話は出ませんでしたし、
留守中の私の事も聞かれませんでした。
それが不満という訳ではなくて、呆気ないほどそれまでの
生活にそのまま戻ってしまっている事に、少なからず
驚いていたのです。

この時の私は、彼との連絡を全く取っておらず、
1ヶ月の蜜月の生活から、まだ割り切れてなく・・・
連絡を取ったりすると、ボロを出してしまいそうで
怖かったのです。彼には申し訳なかったのですが、
それ程、私の気持ちには余裕がありませんでした。
彼への思い・・夫との関係・・・今の生活・・・・・
私の心はその中で徐々に衰退していきました・・・・。

そんな生活の中、洗濯物を引き出しにしまっていた時の
事です。
白い木綿のハンカチが私の目に留まりました。
そう、それは女将さんが渡してくれたハンカチでした。
私はそのハンカチを手に取り、そっと香りを嗅いでみました。
まだ微かに女将さんの香りが残っています・・・。
何を伝えたい訳でも無い・・・理解して欲しい訳でも無い・・
この時の私は、ただ誰かにすがりたかった・・・
孤立した心を誰と繋げたいだけだったんだと思います。
そして私は女将さんにメールを送ったのです。

内容は、他愛も無い事でした。
お世話になったお礼。お宿での快適さ。そして
私達の現状では、そうそう頻繁に利用することが
出来無い・・・もしかするともう利用する事すら出来ない
事へのお詫び。
そして3桁の番号の意味・・・・それだけでした。

お返事は夜になって届きました。
直ぐに返事が出来なかった事へのお詫びから始まり、
私からのお礼に対する返礼。
料金は幾らでも譲歩できるので、あまり気にしないで
気軽に利用して欲しいとのこと。
番号は顧客様の番号だということ・・・・。
そして、このアドレスは女将さんの個人用なので、いつでも
気軽にメールして構わない。
以上の事柄が記されていました。
私はその一字一句を詠みながら、それはまるで女将さん
の柔らかい声で話されているように感じられ、
女将さんに抱かれた時と同じ暖かさを感じていました。

それからの私は、ツラクなると女将さんにメールを出すよう
になっていきました。
もちろん、細かな事情を打ち明ける事はしません。
全て他愛も無い世間話でした。それでもお返事が届く度、
私の心は温められ、救われていくのでした・・・・。

女将さんに助けてもらいながら、何とか5月も無事に越せ
そうな気になっていた時の事、ちょっとした事件(?)が
起きたのです。それは夫の長期赴任話し。
夫からは、まだ何も聞かされていませんが、元の同僚が
電話で知らせてきたのです。
その同僚からの話によると、すでに別の社員が赴任して
いたのですが、その人が病気になり、そのまま赴任を
続けるのが困難と会社側が判断。そこで最近行った夫に
白羽の矢が立った・・・そういう経緯だったそうです。
期間までは、まだ判らないが最低でも1年。長い場合だと
3年は帰って来れない人も居るようです。

私にとっては願ったり叶ったりの話でしたが、人づての話を
むやみに信用するとロクなことが無いのは今までの
人生で、イヤと言う程経験しています。なので、
正式な辞令でも出ない内は鵜呑みにせず、話半分(1/3)
程度にしか信じていませんでした。
案の定、帰宅した夫からもそんな話は全く出ず、
(またいい加減な噂話を電話してきたんだな~)と
相変わらず治っていない、彼女の悪い癖に呆れてしまって
いました。

その時の私は、いい加減な噂話で浮かれられる程、気持ち
の余裕がありませんでした。
充実感の無い生活、満たされない身体、
届けられない彼への思い・・・鬱っていく気持ちをどうする
事も出来なくなっていたのです。
益々荒んでいく気持ちのまま6月になったある日、
女将さんからメールが届きました。
それは、仕事で近くに行くので逢えないか?というお誘い。
私は藁にでも縋る思いで、(逢いたいです)とお返事を
返しました。すると
「この日だけしか時間が取れないけど・・」
と、日時を送ってきました。私は無理矢理パートの休みを
取り、逢う約束を取り付けました。

午前10時過ぎ、私は都市部にあるホテルのカフェに
入りました。まばらですがすでに何人もの人が席に着き、
お茶や軽食などを取っています。ですが直ぐに女将さん
は判りました。窓辺の一番奥の席に座って居るにも
かかわらず、そこだけ色・光・温度が違っていて
一種のオーラのような物に包まれているよう・・・。
私が気が付くと同時に、女将さんも私に気が付き、
直ぐに立ち上がって私を向かえてくれます。
「その節は色々とお世話になりました。」
と挨拶をすると、女将さんは
「今日はそういうのをやめましょ。私はただの田舎者の
 おばさんで、今だけは女将でもないの。 ね?」
そう言って、私を席に座らせました。
今日は和服ではなく、藍色の落ち着いたスーツを着て
います。
洋服を着ていると、この人はいったい何歳なの?と
思ってしまうほど若く見えます。髪も下ろしているので
同一人物とは思えない感じ・・・・まるでそっくりな妹さん?
とすら・・・。

女将さんは私の顔を見ると、それまでの柔らかな表情に
一瞬陰りを落としました。
ウエイトレスがオーダーを取りに来ましたが、もう出ますと
言って、それを断り
「ここでは落ち着いてお話も出来ませんね。私のお部屋に
場所を変えましょ。」
そう言って、女将さんは席を立ってしまいました。


※今回は全然エッチなところが無くて、期待していた方は
 ごめんなさい。
13/08/14 09:31 (gcsToj6M)
61
投稿者: よこっちん
こんばんは。

毎回、楽しく一気に読んでおります。

今回は内容はエッチではありませんでしたが、その時々の女性の気持ちなどが盛り込まれていて楽しめましたよ。

旦那さんの更なる出張(?)、女将さんと再会、まだまだ続きそうで楽しみです。

毎日、暑い日々が続いています。
体調には気を付けてお過ごし下さいね。
13/08/16 23:44 (RCdXCH2I)
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