よし行こう。そう言って酒田が車の鍵を握ると、立ち上がって部屋から出た。ぼくも後について、玄関の方へ行き、酒田のマンションを後にした。

車の中で、酒田がショックだったか聞いてきた。僕は、ぜんぜんショックではなかった。けど、目に涙を溜めショックのふりを演じていた。しおらしく泣いてるふりをした。なんぜか？それは酒田の期待に応える為。上手く言えないけど、その方がお互いに興奮するんじゃないかな、と思ったんだ。
酒田は、母を抱く時、無意識のうちに息子のことを意識して抱いてるんじゃないのか？ 心のどこかで、息子の前で母親を犯したいと言う気持ちがあり、僕の中にも、母を犯されたい気持ちがあるみたい。ひょっとして、そのような感情が母にだってあったのではないだろうか‥。

駅まで送ってもらい、車から降りた。
別れ際に、酒田が2万くれた。
お母さんには言うなよ、とのことだった。
酒田のフィリピンパブで働いているビッキーにばったり会った。
デニーズで食事をご馳走してあげた。彼女はかたことの日本語しか話せなかった。会話は全部英語だった。
酒田には、フィリピンに妻と子供がいるようなことを話していた。
酒田のことをいい人。と言って笑っていた。
日本に、なんで来たのか聞くと、ダンサーだと言っていた。

高校を卒業して、毎日ぷらぷらしていた時期。そんなんなら、バイトしろと酒田に言われ、酒田のポーカーゲームの店でバイトをすることになった。お金のことなんかは、身内の方が(身内じゃないけどね)信用できると酒田が言って、母を説得した。母は反対していたから。ポーカーゲームの店は、いいとこ1日10人くらいしか客は来ない。毎日3～4万の売り上げしかなかったけど、仕入れや、人件費はかからないので、電気代がかかるくらい。僕の仕事は、客が勝った時な、換金すればいいだけ。飲みものなんかは、すべて自動販売機。楽な仕事だった。

ある時、ポーカーゲームをしに来た客が、Sある？と聞いてきた。
は？Sってなんですか？僕がそう聞くと、スピードのことだと言って、すぐに、「あ、じゃあいい」と言って、ゲームに戻って行った。
後日、酒田にそのことを話すと、覚せい剤を売っているのだと話してきた。
そんなばかな？子供に話すわけないと思われるかも、知れないが
、酒田はファミリービジネスをしようと考えていた。僕を誘い込むことによって、母とより深い絆で結ばれる。そう考えていたのではないだろうか？だが、あくまで母には内緒。
酒田の人生が終わる時は、母の人生も終わらなければならない。一人では生きて行けない情け男なのだ。それが酒田である。
僕と言えば、悪いことに興味を惹かれていたただのバカ。酒田からしたら、ただの駒でしかない。どこかで、母の1番大事な僕をおとしめることにより、母をいじめて楽しんでいたのではないのでしょうか。