そんなことを考えていたら終わった。
雑誌に完成した刺青を載せれば、料金はいらないということで、ただになった。
店を出て、センター街を歩くと、みんなから見られた。
スキンヘッドが、職質なんてされたら終わりだからと、自分のマフラーを僕に貸してくれた。
酒田のマンションに戻って来て、酒田に見せると、少しは、母に負い目を感じたのか、わずかに微笑んで顔をしかめていた。
僕は、内心、早くソープに連れて行けよと思って見ていた。

すでにソファーに座っている酒田。僕は、ただ黙りこくっていた。
スキンヘッドは携帯を見ながら歪んだ笑みを浮かべている。
「お前のお母さんのことレイプした時、俺、興奮したぜ。50歳の女のマンコもいいものだと思うよ。あんな感じの母親なら、俺だってマザコンになってるな」
僕は、自分より4、5歳上のコイツが母をレイプした奴でも、腹が立たなかった。むしろ、どうせお前の母親なのかブスなんだろう、と逆に哀れに思った。

程なくすると、「よし、じゃあ、ソープに行くか」と酒田が立ち上がった。スキンヘッドも一緒に来るらしく、三人でベンツに乗り、出発した。が、着いたところはら酒田が経営する部屋が全部で二つしかない、外から見る限りでは鉄筋のアパートにも見える佇まいの店で、僕は落胆した。
ドアを開けて中に入ると、受付の従業員が待っていたという感じで、僕達は階段で二階に上がっていった。後ろを振り返るとスキンヘッドが笑っていた。部屋のドアを開け中に入った。
三人で待っていると、ドアを開けて紺のワンピースを着たセミロングの髪の女が塞ぎ気味に入ってきた。

母だった。僕に向かって言った。
「サトル、その顔何？」
「何って」と、僕は自嘲的に言った。「ソープで働いてるの？」
母は肩で息をしながら酒田に罵声を浴びせた。
スキンヘッドが僕の肘を掴んで、母の方に連れて行った。
「アンタの息子は、アンタが好き過ぎて、顔に刺青を入れたんだよ」
母は、自分をレイプした男を見て、声を失っていた。
スキンヘッドは、自分の股間を掴んで、また楽しいことしようとか、お母さんのマンコは、ミルキーの味がしたぜ、とか言って意に介さず。「感激して、声も出せないか？」と母の耳元で囁く。
お母さん、ごめんなさい。僕は心の中でそう言ったのを覚えている。

僕は酒田に言った。「なんでお母さんのことをソープで働かせたの？」
酒田は薄笑いを浮かべた。
スキンヘッドが手を叩いて笑った。
酒田が僕に言った。「強姦された上に、息子にはめられたら、そうなるだろ‥。後は、ちょいと、背中を押してやれば落ちるさ」さらに母の方に身体を向けて言った。「美紗子、スナックに来てた客たちが、お前を抱きにきてて、引く手あまたらしいじゃないか？もっとも、今は熟女ブームだから、息子みたいな若いのともできて、サトルにはめられた時のことが蘇ってくるだろ？ ん？それとも、これに強姦された時のことかな？」
母の目に怒りが浮かんでいる。
僕は、日活ロマンポルノを見ているような、そんな感じがした。が、これは、ポルノでもなんでもなく、現実だった。
実の母親が、ソープランドで働いていた。