待ち合わせは美緒の家の近くの公園にしました。
喧嘩になったらどうしようかと考えたりして不安でしたが美緒のためにも逃げるわけにはいきませんでした。

待ち合わせ場所にいたのはジャニーズの佐藤勝利に似ているような顔立ちの整ったような男でした。黒髪でしたがヤンキーそうな雰囲気をしていました。

篠島は、美緒の隣りにいる僕のことを思いっきり睨んできました。
僕はどちらかというと陰キャで気弱な性格なので、思わず目をそらしてしまいました。

「どんな男と付き合ってるのかと思えばこんな男かよw」

いきなり煽りの言葉を投げつけられ、腹が立ちました。

「僕の彼女に手を出さないでよ」
「は、それならどっちが美緒にふさわしいか勝負するか？」

篠島は相変わらず僕に対して喧嘩腰で、ガンをつけてきます。
雰囲気的には気が強そうですが、篠島も細身な体つきをしており、身長差もなく体格的には同じ感じなので、喧嘩になっても負けないかもしれないという気持ちが湧いてきました。

美緒は僕達の様子を見て、少し怯えている様子でした。

本来なら闘わないというのが正解なのでしょうが、彼女の目の前でここまで煽られては僕のプライドが許しませんでした。

「わかった。その代わり負けたら二度と美緒には近づかいないでよ」
「お前もなw」

僕達は公園の近くの人がいないような河原に移動しました。

不思議と恐怖心よりも、こいつをボコボコにして美緒の前でカッコつけたいという感情が湧き出てきました。

僕と篠島は二人で睨み合いました。僕は喧嘩をしたことがないですが、卓球部で筋トレを頑張っていて筋肉には少し自信があり、同じ体格の相手なら勝てるかもという自信がありました。

篠島はおもむろにTシャツを脱ぎ捨てました。露わになった腹筋は鍛えられていてバキバキに割れていました。

美緒もその腹筋に見惚れているようでした。

先程までは勝てるかもと思っていましたが、篠島の腹筋を前に、恐怖心を感じてしまいました。

「お前も脱げよ」

篠島に促され、あとに引けなくなった僕もTシャツを脱ぎ捨てました。

部活で鍛えていて腹筋に筋が入っているものの、篠島のバキバキに割れた腹筋に比べると完全に見劣りしてしまうものでした。

篠島は僕のお腹を見ると勝ち誇ったような表情をしていました。

篠島は強気に一歩踏み出してきて、僕と額が当たるくらいの距離で睨みつけてきました。僕も負けじと睨み返し、至近距離で睨み合いました。

お互いに身長差や体格差はありません。差があるとすれば腹筋です。

呼吸をする度にキュッと引き締まる腹筋には劣等感を感じてしまいます。
ですが美緒のためにも絶対に勝たなくてはと自分を奮い立たせ、僕も思いっきり腹筋に力を入れて対抗しました。