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1:縺れ合う赤い糸
投稿者:
流れ星
◆AvxTPLI0aE
俺は中川健二25歳。高校卒業後、山陰の田舎町から瀬戸内海側の都市に就職して7年が経った。 ある日会社の後輩が交通事故で入院し、その病院に見舞いに行った事で、縺れ合っていた運命の赤い糸が再び絡み合い始めた。 病院は勤務先の近くの入院設備がある外科病院で、仕事終わりに一人で見舞いに行った。 「健二…。健二でしょ?」 「美穂…。久しぶりだな。ここで働いてるの?」 「ひ…久しぶりね。う…うん。」 そこで出会ったのは親友の元カノの美穂。7年ぶりの再開だった。 「篤もお前を置いて先に逝くとは…。辛かっただろうな!」 「そ…そうね…。でも、今はこうして頑張ってるから。」 俺達は高校で知り合い、いつも三人で遊びまくり、俺も篤も美穂が大好きだった。 俺は空手部、篤はサッカー部、美穂はバレーボール部で、部活終わりには三人つるんで帰るのが日課だった。 ある日部活終わりに篤が土下座して俺に頭を下げたてきた。 「健二!頼む、美穂の事が好きで好きで堪らんのや!美穂と付き合いたいんや!頼む健二、この通りや!」 美穂に熱い思いを寄せる篤は、必死にそう言った。 「頼むって言われてもな。俺は美穂の彼氏じゃないから。まあ当たって砕けろや!お前が砕けたら俺も一緒に砕けてやるよ!」 親友の必死の頼みに、冗談混じりに返事をしたが、いろいろな思いが交錯した。 それから篤は美穂に告白し、まさかのOKで二人は付き合う様になり、聞きたくもない初Hの話しまで聞かされ、篤を羨ましくも思った。 それから卒業まで二人とは距離を置き、部活に専念しながら遠目から二人を見守っていた。 高校卒業後、俺は瀬戸内海側の都会に就職し一人暮らしを始めた。ただ、時々友達から二人の事を聞かされ、いらつく時も多々あった。 美穂は卒業後、病院に勤めながら看護学校に通い、篤は地元企業に就職したが長続きせず、それからは職を転々し美穂のアパートに転がり込み、ギャンブルにはまりヒモみたいな生活を送っていたと。 更に篤はサラ金に手を出し、返済を迫られた美穂は親に相談も出来ず、アルバイトで水商売の世界にに入り、そこから転落の人生が始まったと。 美穂が堕ちた先は風俗で、看護学校は退学し稼ぎのいい風俗で懸命に働き借金を返し続けたが、篤は更に借金を膨らませたと。 篤は風俗以外でも知り合いに身体を売らせ、美穂は身も心もボロボロになり中絶を繰り返し何度も手首に傷を入れたと。 噂話を真に受ける俺ではなかったが二人の事はいつも気にかけていた。 そんな中、突然の訃報が届いた。篤はヤバイ連中とトラブルを起こし美穂と二人拉致され、篤は美穂を見捨てて一人車で逃げる途中にガードレールに衝突し逝った。即死だったそうだ。 葬儀に駆け付けた時、美穂の姿はなく、親父さんお袋さんとで篤を見送った。 それから美穂の消息は途絶え、噂ではヤバイ連中にボロボロにされ、生きているのかすらわからない状況だったと。 『生きていてくれてよかった。』 そんな気持ちが溢れ出し美穂を見つめると、美穂は目に涙を浮かべ何かを吐き出したそうに俺を見つめ、その場で泣き崩れた。 「どうしたんや!美穂の頑張ってる姿見て安心したのに。美穂らしくないぞ!」 俺は美穂のどす黒い過去を知らぬふりをして美穂を優しく抱き寄せた。 「だって…。こんなところで逢えるなんて…。嬉しくて…。」 「そうやな!もう泣くな!化粧取れて顔グチャグチャやで!」 「健二、相変わらず口悪いわー! 俺が笑うと美穂は昔と変わらず可愛い笑顔を見せた。 俺達の再会に、複雑に縺れ合った運命の赤い糸がゆっくりと解け始めた。
2017/12/16 12:17:53(ngZoxs0B)
投稿者:
流れ星
◆AvxTPLI0aE
信州人さん、コメント有難うございます。
続きです。 久しぶりに見る仲間達の歓迎ぶりに俺も美穂も楽しい話しの輪の中心に居た。 「健二!久しぶりやな!元気そうで安心したわ!」 「良太!やってくれたな!有難う!みんな美穂を暖かく迎えてくれて…!」 「俺達仲間やないか!それにしても…美穂綺麗や…!昔の輝いていた美穂や!お前も頑張ったな!夢叶えられてよかったな!」 幹事の良太は高校三年と時から仲良くなり、ケガで春には部活を引退した良太と失恋で二人と距離を置いた俺。互いに目的を失った者同士、何故か気が合った。 卒業後も篤と美穂の事を教えてくれたのは良太だった。 「この同窓会も年々参加者が少なくなってな。みんな篤の事引きずってんね。美穂の人生台なしにした事も許せんしな。篤のせいで健二も町から離れて行ったとかな。毎年そんな同窓会やったんや。」 「そうやったんや!で、何で美穂の事わかったんや!」 「普通同窓会に嫁さん連れて来るなんてありえんやろ!しかも名前が美穂って!まあ、念のため確認取ったけどな!」 「確認って…!誰に?」 「お前の親父さんや!」 「親父!あの野郎そんな事何も言わんかったぞ!」 「俺が聞いた事は内緒にしてくれって頼んだからな!美穂の事聞いたら嬉しそうに教えてくれたわ。今日の事は親父さんは知っとるんや!ええ親父さんやな!」 良太に親父との事を聞かされ、意外な親父の姿を嬉しく思った。 「それから大変やったわ!メンバー全員に電話で健二と美穂の事伝えてな。結果全員参加や!居酒屋に入りきれんから会場もここに変更してな!演出もみんなで考えてな、大変やったんだぞ!」 「良太…!有難う…!篤も…この仲間の輪に入れてやりたかったな…。」 「健二…お前…!篤の事…!」 「後で話すわ!みんなにもな!良太、有難う!」 「アホ!礼を言うのはこっちや!結婚式にはみんな行く気満々やからな!全員呼べよな!」 「わかってるわ!来ん奴おったら許さんで!」 良太に同窓会の裏話を聞かされ、俺と美穂がみんなから仲間として迎えられた事を本当に嬉しく思った。 まるで高校時代に戻った様に楽しい時間だった。みんな何から解放された様に笑顔がこぼれ、美穂の姿も輝いていた。 「みんなそのままでええから聞いてくれ!健二からみんなに話しがあるそうや!」 宴も終わりに近づいた時、良太の声にみんなから拍手と歓声が上がり、俺はマイクの前に立った。 「健二…!私も…側に居たい…!」 美穂は何かを察したのか、俺の側に駆け寄り強く手を握った。 「みんな今日はサプライズ有難う!俺達を暖かく迎えてくれて本当に有難う。もう一人暖かく迎えて欲しい奴がおるんや!篤や!馬鹿な奴で…先に逝った奴やけど…。あいつの事許してやって欲しいんや…!」 俺の言葉にみんな顔を臥せ、会場は静まりかえった。 「俺が交通事故にあった時…。篤が…。俺と美穂は篤に命を…。」 俺は美穂の手をしっかりと握り、事故の時の事すべてをみんなに話した。 「みんな引きづってるのはわかってる!でもみんな篤の事、心の片隅にこの仲間にって思ってるはずや!頼む!この通りや!」 俺がみんなに頭を下げ、美穂も泣きながら頭を下げると、みんなの啜り泣く声が聞こえた。 「みんなこの日が来る事を願ってたんやー!これで…仲間全員…!揃ったんやー!」 良太の一言が会場に響い後、篤の事を許し合えた仲間達の拍手と歓声が上がった。 「健二…!よかったね…!篤も…!」 「美穂…有難う…!美穂…!」 美穂は泣きじゃくりながら俺に抱き着き、俺も美穂を強く抱きしめた。 二次会はカラオケ店を貸し切り、深夜にお開きとなったが、仲間達はすべてに解放された晴々とした笑顔を見せていた。 「健二、今日は有難う。みんな本当に喜んでたわ。年末はずっとこっちにおるやろ?」 「年末年始は毎年帰省するわ。美穂にはまだ言ってないけ今日は篤の墓参りに行くつもりや。」 「そうか。帰る前にまた一杯やろうな!また連絡するわ。」 良太とそんな約束をして別れ、二人で美穂の実家に帰り、互いに温もりを感じ合いながら眠りに落ちた。 翌朝、ちょっと二日酔いだったが美穂に起こされた。 「健二、お風呂沸いてるから。それから朝ご飯よ。」 美穂の言葉に促され風呂に入り、朝ご飯のテーブルにつくと美穂は黒いワンピースに着替えて部屋に入ってきた。 「美穂…お前…。」 「朝ご飯食べたら行こうね。篤のお墓参り。」 美穂の笑顔に俺は堪えきれず、朝ご飯はちょっとしょっぱかった。
18/01/08 12:54
(e5XMJpxy)
投稿者:
信州人
目頭が熱く成りました。
仲間っていいですね。
18/01/08 13:04
(sAtAZFQp)
投稿者:
流れ星
◆AvxTPLI0aE
信州人さん、いつもコメント有難うございます。
続きです。 朝ご飯を食べ終えると、親父さんとお袋さん手に大きな袋を下げ部屋に入って来た。 「健二君。美穂をお願いします。」 二人は頭を下げ、袋から買ってきた供え物と花をテーブルの上に置いた。 「親父さん、お袋さん、有難うございます…。本当に…有難うございます。」 「お父さん、お母さん…。有難う。健二と一緒に…行って来ます。」 娘の人生を台なしにした男。殺しても殺し足りない恨み。そんな思いの親父さんとお袋さんが篤の事を許してくれた事に俺は涙が溢れた。 「ここや!篤は…ここに…!」 親父さんとお袋さんに笑顔で送られ、篤の眠る墓のある寺に着くと、何故か涙が溢れ止まらなかった。 「健二…!ええよ…泣いてええよ!」 美穂も泣きながら俺の手を握りしめた。 「けどね…帰りは笑顔で帰ろうね…。」 「せやな、いろいろ報告して、篤の笑顔思い出して帰ろうな!」 美穂の言葉に二人で笑顔で帰る事を約束し、篤の墓の前に立った。 「篤!久しぶりやな!俺達結婚したで!お前との約束、ちゃんと守ったで!美穂も一緒や!俺達の命の恩人!篤、有難うな!」 「篤、有難う!私、幸せになったからね!今まで一人ぼっちにしてごめんね!でも、これからはみんな仲間だからね…。篤!」 美穂はしっかりとした口調で篤に語りかけ、二人で手を合わせた。 「おーい!仲間も来たでー!篤ー!」 静けさを打ち消す様に声が聞こえ、そこを見ると良太と昨日の仲間達が花を手に立っていた。 「良太…!みんな…!」 「仲間の墓参りや!みんな集まったで!」 良太は俺が帰り際に話した事をみんなに伝え、俺達を待っていたと後で聞いた。 「篤!みんな来てくれたで!よかったな!」 篤の墓はみんなが供えた花で埋まり、そこに篤の笑顔が浮かんで見えた。 「み…皆さん…!こ…これは…!」 みんなが手を合わせているとそこに懐かしい二人の姿が見えた。 「おじさん、おばさん、お久しぶりです。」 「け…健二君…。こ…これは…。」 二人は篤の親父さんとお袋さんで、俺達を見て驚き、みんなの姿を呆然と見ていた。 「おじ様、おば様、お久しぶりです。美穂です。」 「えっ…!み…美穂ちゃん…!本当に…美穂ちゃんなの…!生きてて…生きててくれたのね…!美穂ちゃん…!」 「篤が…篤が…!申し訳ありませんでした…!本当に…本当に申し訳ありませんでした!生きててくれて…!よかった…!」 美穂の姿に二人はその場に泣き崩れ、頭を地面につけ美穂に謝罪を繰り返した。 「おじ様、おば様、頭をあげて下さい。いろいろありましたが、篤のおかげで今は幸せです。みんな篤を仲間だと思ってます。どうか頭をあげて下さい。」 美穂もその場に座り、二人に優しい言葉をかけたが、二人は美穂に縋り付き何度も何度も謝罪を繰り返した。 美穂はそんな二人を抱き寄せ、優しく肩を叩くと、その姿にみんな涙を流し三人を優しく見守っていた。 二人が落ち着きを取り戻し、あらためてみんなで墓前に手を合わせ、花に埋め尽くされた篤の墓を後にした。 「健二君、美穂さん、お時間があれば家に来ていただけませんか?」 「はい。おじさん達に合わなければこっちから押しかけて行くつもりでしたから。」 「そうだったのか…!健二君、美穂さん…有難うございます。」 二人は目を潤ませ安堵の顔を見せ、俺達は篤の家に向かった。 「懐かしいです。良くお邪魔しましたよね!飯も食わせて貰って!有難うございました。」 「三人ともカレーが好物だったからね。健二君のリクエストでいつもたくさん作ってね…。それでお父さんもカレー好きになってね!」 「三人の食欲には敵わなかったよ!でも、そんな姿見るのは楽しみだったよ!今は…カレーも食べる事もないな…!」 「おばさん、久しぶりにカレー食べたくなったよ。作ってくれる?」 「もちろんよ!健二君のリクエストなら張り切って作るわよ!」 「私もお手伝いします。」 おばさんは溢れた涙をハンカチで拭いながら美穂と二人で台所に立った。 カレーを煮込む間、俺と美穂は今までの事をすべて二人に話し、篤はもう一人ぼっちじゃないと伝えた。 「お父さん、よかったね…。」 お袋さんが泣きながら親父さんに声をかけると、親父さんは声をあげて男泣きし、二人の辛かった思いが俺達に痛いほど伝わってきた。
18/01/08 16:27
(e5XMJpxy)
投稿者:
ショウ
◆CbFsxQCc1s
ほんと素晴らしい!これからの展開はどうなるのかなぁ~~とたのしです。
18/01/09 07:33
(svzmwaaJ)
投稿者:
信州人
本当の友達は、一生ものです。沢山でなく良い一人でも
18/01/10 14:28
(V.Q0U.Yr)
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