ようこそゲストさん。
ナンネットIDにログインしていません。
ID: PASS:
IDを保存 
ナンネットIDは完全無料のサービスです。ナンネットIDを取得するとナンネットの様々なサービスをご利用いただけます。
新規登録はこちら
ID・パスワードの再発行はこちら
新しい場所へ
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
投稿の削除 パスワード:
1:新しい場所へ
投稿者: ◆NqRlWkOMMM
寒い寒い冬。
僕は来年13歳。
榊春って名前。
さかきしゅんって読む。
なかなか読みにくい名前だ・・・。
漢字二文字だけど気に入っている。

冬休み前に学校に行かなきゃいけない。
朝起きたら歯を磨いて朝ごはんを作る。
僕は料理が大好き。
トントンと料理を作る。
「あら、春ちゃんおはよ」
「お母さん、おはよ」
お母さんは27歳。
榊悠美、15歳で僕を産んだ。
そしてお姉ちゃんもいる。僕の一つ上。

お母さんがコーヒーを一口飲んでため息をついた。
「悪いね、春ちゃん・・」
「ううん、いいよ。お母さん疲れてるもんね」
お母さんは夜のお仕事をしている。
お酒のお酌をしたり楽しく話をしたり。
綺麗だから一番人気らしい「春ちゃん来年中学生だね」「あ、うん・・」
「彼女作りなよっ!」
「えっ・・・ん・・うん」
お母さんが頭を撫でてくれた。
料理が得意だから女の子には人気だけど。
彼女なんて・・・。
お母さんはまた寝室に戻った。
コーヒー飲んでまた寝るなんて凄いなって思う。
足音がして振り返る。
お姉ちゃんが起きてきた。ムスッとしている。
「おはよ、凛姉ちゃん」
「はぁ・・ったく・・」
お姉ちゃんは榊凛。
僕と同じで漢字二文字。
黒くて長い髪をブラシでといでいる。
「春、はやくご飯」
「あ、うん・・・」
僕はお姉ちゃんが怖い。
叩かれたり殴られたりするし酷い事も言われる。
お母さんには言えない。
凛姉ちゃんもお母さんの前では仲良くしているように見せる。
怒らせないようにオムレツとトーストをテーブルにのせる。
「まずそ」
「ごめんなさい・・」
そう言いながらパンにかぶりついている。
僕は自分の部屋に行こうとした。
「どこ行くの?座ってなよ」「学校の準備しなきゃ・・」「あんたが遅刻しようがしらない・・座ってろ」
「うん・・・」
怖い・・・。
お姉ちゃんは学校ではとっても人気だ。
可愛くて頭も良くて。
でも・・家では違う。
僕をいじめる・・。

学校の用意をしてランドセルに必要な物を入れる。
鏡を見て髪型を整える。
睫毛が長い・・・。
また切らなきゃな。
学校まで走って行く。
「遅刻しちゃう・・・」
僕は男の子の友達がいない・・。
あんまりゲームとかの話題についていけない。
いつも休み時間は料理の本を見ている。
学校についてから下駄箱に靴を入れる。
一番上だからなかなか届かない。
僕はまだまだ小さい。
牛乳が苦手だからかな・・身長が低い。
しかも女の子みたいな外見だから・・・。
男なのに女の子に間違われる。
クラスについて自分の机に座る。
ギリギリセーフ。
ランドセルから料理の本を取り出す。
今日は終業式。
教科書もいらない。
美味しそうな料理がたくさん。
将来の夢は料理職人。
どこかで弟子入りしたいなと思ってる。
話かけてくれるのは女の子ばかり。
だいたい料理の事。
僕に彼女なんてできるのかな。
朝礼が終わった後体育館に向かう。
校長先生が冬休みの注意を言ってからすぐに終わった
寒い廊下を歩く。
もうこの学校ともお別れか・・・。
教室に戻って宿題を貰う。僕はまぁまぁ頭がいい方だ・・・。
ランドセルに宿題をしまう「冬休みは寒くなりますし風邪に注意しましょう」
先生が体調管理の事を言っている。
卵酒かエッグノッグが好きだ。
・・・未成年だからアルコールはかなり弱めの物を使うけど。
砂糖とお酒とホットミルクを混ぜて生姜の絞り汁をいれる。         火を止めて卵の黄身をいれてゆっくりかき混ぜる。
甘くて美味しいし体も暖まる。
僕の作り方はそんな感じ。
帰宅時間になる。
まだ午前中。
家に帰る前に寄り道をする
山道を登っていけばお墓がある。
お父さんのお墓。
お父さんは30歳の時亡くなった。
お母さんとは歳の差の結婚で大分苦労したみたい。
僕は顔を良く覚えている。優しくてかっこよかった。お父さんのお墓は豪華だ。お金持ちだったからかな。今も生活に不自由はない。「お父さん・・来年は中学生になるよ」
途中で買ったお花を供えるコーヒーも一緒に。
「僕・・友達たくさん作るよ・・見ててね!」
手を合わせて目をつむる。きっと見ててくれる。
ゆっくりと立ち上がって階段を降りる。
マフラーと手袋をしてるけど寒い。
お墓のから家に向かう。
もうお昼だ。
お姉ちゃんが待ってる・・
「ただいま」
「遅い・・はやくご飯作ってよ」
「うん・・分かった」
今日はうどんにしよう。
生椎茸で出汁を取る。
料理酒を少々入れる。
少し味を見て塩と味醂を少々。
油揚げと牛蒡を入れる。
油揚げはそのまま入れる。味がコッテリ目になる。
牛蒡はささがきにする。
しばらく染みるまで待ってからうどんを入れる。
グツグツ煮込んでからどんぶりに盛り付ける。
テーブルに持っていく。
「お姉ちゃん、お待たせ」
「うどんか・・まずそ」
お姉ちゃんは一口食べてからどんぶりを流し台の所に捨てた。
「糞まずい・・」
「あ・・ごめん」
「もういい・・」
お姉ちゃんは部屋に戻っていった。
僕はいつかお姉ちゃんを笑わせるくらい美味しい料理を作りたい。
流し台に捨てられたうどんを片付ける。
目が霞む。
涙が流れる。
美味しいって言ってほしいのに・・・。
余ったうどんはお母さんにあげよう・・。
お母さんはまだ寝てる。
宿題をして時間を潰す。
もう終わっちゃいそう。
「春ちゃん、おかえり」
「もう仕事?」
「うん、いい子にしててね」「あ、お母さん・・うどん作ったんだ」
「おおっ、どれどれ」
うどんを暖めてどんぶりに盛り付ける。
お母さんは一口食べて微笑んだ。
「春ちゃんは料理上手いね!本当に美味しいよ」
「うん、良かった」
お母さんは全部食べてくれた。
「さて、行ってくるわ。戸締まりちゃんとしてね」
「うん、いってらっしゃい」お母さんは元気良く仕事に向かった。
僕はお母さんもお姉ちゃんも好きだ。
だから・・笑ってて欲しい


 
2011/02/12 00:12:11(BhPlqiGf)
27
投稿者: 春 ◆KEJbDUVQ9A
春も終わりだんだんと気温が上がってきた。
晴れて暖かい日が続く。
授業中にフラフラっと眠たくなる。
「しゅーんっ・・」
「あぅ・・・」
美空ちゃんにつつかれた。大分休んだから結実と山田さんのノートを借りてやっと授業に追い付いた。
結構疲れた・・・。
「眠たいの?」
「・・・うん・・ねむぃ」
「・・・いいよ、後で教えてあげるから、寝なよ」
「・・うんっ、おやふみ」
「くすっ・・春・・」
頬杖をついてうつむく。
暖かい・・・眠い。
グラウンドで上級生が体育の授業をしている。
はしゃぐ声・・・。
ボールがカンッと当たる音・・野球かな?     今日のお昼はなんだっけ・・・・。
おにぎりの具はなにかなぁ・・・。
蝉が鳴くようになった。
制服も夏服・・・。
窓から涼しい風が・・。
僕の頬に当たる。

キーコーン。

「はい、今日の授業はここまで」
もう授業が終わったのか。目を擦る。
「春の寝顔可愛かったよ」
美空ちゃんがクスクス笑ってる。
「う・・ん・・ねむい」
「もう少し寝てなよ」
「ううん・・大丈夫」
うーんと伸びてあくびをする。
美月くんは女の子に大人気だ。
「美月くんは・・モテてるね・・」
「あのバカ・・」
女の子と喋りながらも横目でこちらを見ている。
やっぱり気にしてるのかな・・・。
「春も・・・可愛いのにな・・・なんで人気出ないんだろ?」
「えっ?僕?」
「本当にお世辞抜きで美月と同じレベルの顔だよ・・そんな男の子には私、初めて会ったし・・・性格も優しいのに・・」
「ほぇ・・そっかな?」
「うん・・間違いないよ」
自分の顔・・そんなにいいのかな?
美空ちゃんが手鏡を取り出した。
「しっかり自分の顔見なさい!」
「う、うん・・」
手鏡に映る僕は・・・。
頬っぺたが赤い。
「あぅ・・赤いよ」
「頬杖ついて寝てたしね」
じっと見る。
こんなのは初めて。
「美月と私は銀髪で青い瞳だかんね・・春は黒髪だし地味に見えるのかも」
「うん、二人とも天使みたいだよ」
「天使・・か・・」
美空ちゃんは少し苦笑した、なんでかな・・?

休み時間が終わって次の授業。
国語の時間のはず・・。
先生が来ない・・・。
放送がかかった。
「えー・・一年一組は自習となります、大人しく教室で自習しましょう」
みんなが大喜びしてる。
「ほぇ・・自習か」
「春、さっきの授業の教えてあげる」
「うん、お願い・・」
美空ちゃんと机をくっつけてノートを見る。
完璧にうつしてある。
歴史の授業だった。
「えっと・・戦国時代の有名な武将の事ね」
美空ちゃんが鉛筆でトントンと教科書の説明欄を叩いた。
「ふむん・・・」
「この武将が裏切って戦の決着がついたんだ」
「ふむふむ、なるほど」
「それでね・・」
僕はふと思った事を言ってみた。
「裏切られた・・この人はどんな気持ちだったのかな・・悔しかったのかな?」美空ちゃんは僕を見て少し黙った。
信頼した人に裏切られて・・・どんな気持ちで死んでいったのかな?
「悔しいに決まってる・・でもそれが戦いだから覚悟はしてたはず」
「戦・・戦争って良く分からない・・何で起こるのかな?戦争はいけないんだよね?」
美空ちゃんは鉛筆をクルクルっと回した。
僕を見ながら綺麗に回してる。
「戦争は人間の欲が作り出した物だよ・・・戦争で死ぬのは若者で・・戦争を始めるのは年寄り・・最初は机の上で始まる」
「机の上・・・?」
「会議での口論・・それよりあの土地の領土が欲しいとか新しい兵器を使いたいからとか・・なにかしら欲が絡んで起こるの・・それは必ず机の上」
「そうなんだ・・・」
美空ちゃんは詳しいんだな・・・。
「でも戦争と共に私たちの生活も便利になって技術も洗練されていくの・・春の携帯電話だってそうだよ」僕の携帯も・・・?
なんだか怖いな・・。
「たくさんの犠牲の上で私たちは生活しているの・・・・」
「でも・・僕は人が死ぬのは嫌だ・・」
「そう・・それは絶対に忘れてはいけないよ」
美空ちゃんは僕の手を握ってきた。
いきなりすぎてドキッとした。
「春は・・いつまでも純粋でいてね」
「う、うん・・」
美空ちゃんが何か願うような・・そんな感じで・・。「美空、脱線してる」
「う、うっさいな・・」
美月くんは僕の隣の席だ。美空ちゃんはもう一度僕の手をぎゅっと握った。
「・・忘れないでね」
「うんっ・・」
美空ちゃんの手が暖かくて・・気持ちが安らぐ。


お昼休みは外で食べる事にした。
いつものメンバーでグラウンドのベンチに座る。
お弁当箱を開ける。
「わぁ、明太子・・?」
「私が作ったよ」
「へぇ、美空ちゃんが作ったんだ・・美味しそう」
「えへっ・・」
美空ちゃんが微笑んだ。
笑ってくれるだけで心に涼しい風が吹く感じ。

蝉が鳴いている。
もうすぐ夏だな・・。
「さて、私はちょっと帰るよ・・」
山田さんが弁当箱を片付けた。
早いなぁ・・。
「山田さん、どうしたの?」「大会があるんだ・・勝たなきゃ」
「そうなんだ、応援に・・」山田さんは少し暗い顔になった。
「ありがと・・でも・・来ない方がいい・・」
手を振ってスタスタと歩いて行った。
何か訳ありみたいだな。
「なぁ・・春さん」
「何?結実・・」
「恋・・かな?」
「へっ!?」
「俺、鈴美ちゃんが・・好きかも・・」
唐突すぎでびっくりした。全く気付かなかった・・。「結実、応援する!」
美月くんが目をキラキラさせている。
「あー・・美月はこういうの好きだしね」
「そうなの?」
「うん・・あいつ少女マンガ大好きだから・・」
「へぇ・・」
美月くんは恋愛得意そうだしなぁ。
美空ちゃんはあきれた顔をした。
「結実はいつから好きなの?」
「美月は応援してくれるんだなっ・・えっとね・・料理研究部ができたての頃からかな」
大分最初らへんだな。
山田さんはたしかに美人だし・・・なんというかカッコいい女の子なのだ。
キリッとしてサバサバしてるというか・・・。
結実が好きになるのも無理はない。
男子からも人気がある。
美月くんはメモ帳をとりだしてサラサラ書き出した。「告白は・・もっと仲良くなってからにした方がいいと思うよ」
「そっか・・さすが美月は手練れだな」
「ははっ、そんな事ないよ・・」
美月くんは横目で美空ちゃんを見た。
美空ちゃんはそっぽを向いた。
こうやって友達が増えて幸せだなって思う。
けど僕がどうやって産まれたのかを思い出すと恐ろしくなる。
いらない人間・・。
いらない人間・・。
僕はいらない・・。
「ねぇ、春?」
「う・・うん?」
「大丈夫?」
「うん・・」

放課後に家庭科室で自由に料理を作る事にした。
今月は部費が少し余った。美空ちゃんはオムライス。美月くんはナポリタン。
結実は牛丼。
別に和食限定な訳ではない
「ねぇ、春さん・・どうかな?」
結実の牛丼を一口貰った。もぐもぐ噛み締める。
「うん・・もう少し煮詰めたらもっと美味しいよ」
「そっか・・味が薄いと思った」
「結実も料理できるようになったね!」
「うん、春さんのおかげ」
結実は笑ってどんぶりの牛丼を見つめた。
目がキラキラしている。

美空ちゃんと美月くんのはとっても美味しかった。
二人であーだこーだ議論している。
道具棚にある包丁に触れる
しばらく触って無かった。軽く持ってみる。
握り方も結構勉強したっけな。

優しく握って引いて・・。
血が・・・。

流れる・・。

「え・・・?」
手首が切れてる・・。
「なん・・で・・」
僕の包丁には血がついている。
「春っ!」
美空ちゃんがすぐに駆け寄ってきた。
ハンカチで傷口を抑えてくれた。
「何してんの!?」
「僕・・なんで?」
「春・・・?」
「なんで・・切ったの?」
幸い傷は浅かった。
保健室で傷を手当てした。「なんで・・こんな事」
「春・・・」
「包丁は人を傷つける物じゃない・・僕が一番分かってるはずだったのに・・」包丁は大切な道具。
凶器じゃない・・。
美月くんが僕の背中を撫でながら訪ねてきた。   「春くん・・車に連れ込まれたって言ったよね?」
「うん・・お姉ちゃん・・だった人に」
「何されたか覚えてる?」
「分からない・・分からないよ・・思い出すと・・痛い・・」
「ごめん、無理に思い出さなくていいよ・・」
美月くんはため息をついて少し黙った。
「これは僕の予想・・・君にとって一番大事な物を奪おうとしたのかも」
「えっと・・たしかに包丁は大事な物・・」
「うん・・普通料理をするなら包丁が必要だし・・何か暗示みたいな物をかけられたかもしれない」
「暗示・・・?」
「包丁を持ったら手首を切れと・・・」
「そんな・・・」
包丁を握れなくなったの?僕は・・・。
「春くん、大丈夫・・僕と美空がなんとかする」
「美月くん・・」
「心配しないで・・ライバルである前に友達でしょ・・? 」
「うんっ・・・うん?」
ライバル・・・?
なんで?




11/02/21 23:52 (MHzh55YX)
28
投稿者: 春 ◆KEJbDUVQ9A
しばらくは包丁を触らないようにした。
このまま治らなかったらどうしよう・・・。
もう料理はできないのかな・・・。
暇を見つけてぶらっと街を散歩する。
一人になりたい。
そんな気持ち。
美空ちゃんには内緒で出掛けた。
「はぁ・・」
宛もなくさまよう。
どうしよう・・どうしよう・・・僕は・・どうしよう・・夢が壊れてく・・。
美月くんは治療には時間がかかるって言ってたな。
苦しい・・耐えられるかな・・?
商店街についた。
何かいい物はないかな。
おこづかいはないから何もないけど・・。
お母さんからの仕送りや生活費や学費などの振り込みは無い。
つまり僕は負担になってる・・・。        美空ちゃんと美月くんは自分で稼いだお金を利奈さんに渡している。
利奈さんと将さんがたまにおこづかいをくれるけど受け取らずに断っている。 お金はあると言ってごまかして・・。
なんだよ・・僕はただのお荷物じゃないか・・。
生きてても負担になるだけじゃないか・・。
いらない人間・・。
いらない人間・・。
このまま負担しかかけられない。

「よぉ、春」
「あ、遊さん・・」
遊さんは買い物袋を持っていた。
中には野菜がいくつも。
「買い出しですか?」
「まぁね・・春はどした?」「僕は・・何もないですよ」「ふーん・・・腹へったら後で店に来なよ」
「はぃ・・」
とぼとぼと歩き出す。

どこに行こうかな・・。
たくさん歩いた。
公園・・・・。
ベンチに座る。
日差しが熱い。
喉が乾く・・。
このまま・・。
しんでしまえたら・・。
楽・・・かな・・?


「春のばかっ!!!」
「・・・・?」
美空ちゃんだった。
綺麗な白いワンピースを着て日傘をさしている。
「なんで・・勝手に出かけるの・・」
「一人に・・・なりたくて」「春・・・」
僕の隣に座った。
日傘で少し涼しい。
「春を一人にはできない・・・」
「美空ちゃん・・・」
「今・・しにたいって思ってるでしょ?」
「・・・うん・・」

バシッ!

平手打ちされた。

美空ちゃんに。

「ばかっ!春のばか!!」
「え・・・?」
美空ちゃんが泣いてる。
また泣かせちゃった・・。「春・・・だめっ」
美空ちゃんの目を見て。
今一人で生きている訳じゃないと・・。
自分一人の命じゃないんだと・・そう思った。
「春、何か食べなよ・・・きっとお腹が空いたからそんな気持ちになったんだよ・・・そう考えよう」
「美空ちゃん・・ごめんね」僕の手を握って微笑んでくれる。
僕は・・・しねない。
美空ちゃんにまだ何も伝えてない。
まだダメだ・・。
生きる・・ぜったいに。
「さ、お腹が空いたら何か食べなきゃ!」
「うんっ・・」
二人で歩いて商店街の方に戻る。
何かできる事はないかな?包丁を使わずに・・できる事・・・。
「ちょうどいい所に・・」
「うん?」
「いこっ!」
遊さんのお店だ。
美空ちゃんに続いて僕も入った。
「いらっしゃい、なんだ美空か・・春も来たか」
「なんだ、は余計よ」
「はは、ごめん」
椅子に座った。     お水を出された。    美空ちゃんがお水を少し飲んだ。
「遊さ・・バイトさせてくれない?」
「バイト・・?」
「私も土日暇でさ・・」
「うーん、いいけど・・うちの店結構繁盛してっからさ」
そうは見えない・・・。
遊さんがそんな僕を見てニヤリと笑った。
「春は信じてないな?」
「う・・うーん・・はい」
「ははっ、素直だな!」
頭を撫でられた。
怒らないの?
「失礼な事言ってごめんなさい・・」
「いいよ、今の時期はホントに客少ないから・・けどな・・」
遊さんがニヤリと笑った。「インターネットにうちのラーメンをインスタントにして出したんだ!そしたらかなり売れだしてさ!」
「へぇー・・・」
「今度取材も受けるし休日は結構客も増えてきたんだぜ」
インターネットで売り込むなんてな・・。
さすに便利な世の中。
でも・・・。
「遊、もしかして美月のアイディアでしょ?そして製品化を考えたのも美月じゃない?」
美空ちゃんがメニューを見ながら言った。
「あれ?聞いてなかったんだ・・・そうそう、みーがうちのラーメン好きでインスタント化したいって言い出して・・・だいたいの事はみーがやったよ」
「ふーん・・・美月・・」
美空ちゃんは微笑んだ。
美月くんも凄いなぁ・・。「だからバイトを雇う余裕もあるし・・つっても厨房は俺がやらなきゃいけないから・・・出前は?」
「うん、それでいいよ・・春もやるよね?」
「えっ?」
美空ちゃんはクスッと笑った。
僕のため?
まさか・・・ね。
「中学生にバイトさせていいんだっけ・・?」
「遊、堅苦しい事言わないの・・私の付き添いって事でいい。もらった給料はこっちで分けるから」
「そっか・・別にいいかな・・まぁ時給1000円くらいでいいか?」
ビックリした。
時給・・・1000円?
「そんなに貰っていいんですか!?」
「いや・・・少なくない?」遊さんは特に困った顔もせずに・・・。
そんなに儲かってるのか・・・・。
「通販での収入が8割で店が2割かな・・割と余裕あるし大丈夫だよ」
「ほぇ・・・」
「じゃあ土日にバイトって事でいい?」
美空ちゃんは親指を立てた、僕は・・・。
「よ、よろしくお願いしますっ!」
これで稼いだお金を利奈さんに渡せばいい。
負担にならなくて済む。
「じゃあ何か食ってけ、俺のおごりでいいよ!」
美空ちゃんがメニューを見て・・・。
「焼豚定食・・特盛り!」
「美空はホントに良く食うなぁ・・しかも女の子が焼豚定食頼むなんて・・」 美空ちゃんがムスッとした「昔っからでしょ?」
遊さんは苦笑して頷いた。「まぁな・・春は?」
「えと・・野菜うどんがいいです・・少なめで」
「春はすっげー少食だしな・・いいコンビかもな」
遊さんはニヤッと笑って料理を作り始めた。
美空ちゃんは僕を見てクスクス笑ってる。
「いいコンビ・・か・・」
「美空ちゃん?」
「はは、なんでもないよっ」美空ちゃんのおかげで凄く前向きになれた。
やっぱり一人は良くない。助け合って・・生きていかなきゃ。
「ほいっ、野菜うどんおまち!」
「ありがとうございます・・・わぁ!」
ごぼう、椎茸、葱の山盛り、うすあげ。
少し鶏肉も入っている。
「肉も食いなよ、サービスだから」
「あ、はいっ!」
美味しい・・。
少し甘めだな・・。
味醂が入ってる。
するすると口の中に入っていく。
ごぼうの千切りはかなり薄く切ってある。
出汁が良く染みている。
美空ちゃんの焼豚定食は・・・。
「なに・・それ?」
「ん?私の大好物!」
ご飯・・凄い量・・。
遊さんはニヤニヤしている「学生用に考えたメニューなんだけど・・・美空はペロリと食べちゃうんだよなぁ・・さすがだ」
美空ちゃんは上品に・・でも結構ガッツリ食べている・・・。
とっても幸せそうな顔で。

「じゃあバイトよろしくな、二人とも可愛いからきっとお客も喜ぶよ」
「まかしといて!」
美空ちゃんは自信満々だ。僕も頑張ろう。

帰り道に美空ちゃんはまたケーキを買った。
頭がいいからたくさん食べるんだと思う・・たぶん。
神社についた。
将さんがいたので報告しないとな。
「あの、将さん・・」
「うん?なんだ?」
優しい笑顔だ。
稽古の時は怖かったけど。「僕、負担にならないように美空ちゃんと出前を手伝ってそのお給料で学費とかを・・」
「バカ者っ!!!」
ビックリした・・。
なんで・・・怒るの?
「なにが負担だ!前にも言っただろ?君を息子みたいに思ってると」
「あの・・」
「だから・・いいんだよ・・もう家族だぞ?その出前のバイトはおこづかいにしなさい!いいね?」
「あ・・はぃ・・」
涙がこぼれそうになる。
必死で抑えるけどどうにもならない。
将さんに抱きついてしまった。
「おいおい、泣くのはいいがそんなにべったり・・・まぁ、いいか」
「将さん・・ありがとうございます・・僕・・」
「言わなくていいよ・・」
「はいっ・・」
優しく頭を撫でてくれる。良かった・・・良かった・・・僕は・・。
「美空ちゃん、春を頼む・・・涙で汚れてしまい」
ゆっくりと美空ちゃんに離された。
将さんは微笑んでから背を向けて神社の中に入って行った。
「春はいい子だから大丈夫なんだよ」
「うん・・」
「バイト頑張ろうねっ!」
「うんっ!」
美空ちゃんのおかげで凄く救われた日になった。
美空ちゃんがピンチの時は僕も救いたいなぁ。
「・・・くすっ」
「なんか面白い事あった?」「うーん・・春が面白い」
「えっ・・僕が?」
美空ちゃんは僕を見ながらクスクス笑ってる。
「もう元気だね!」
「あ・・うん!」
いつの間に死にたい気持ちは無くなっていた。
「美月に内緒でケーキ食べよ!」
「いいの?」
「あいつはこの前私のケーキ勝手に食ったから・・仕返しっ!」
美空ちゃんが小悪魔っぽく笑った。
美空ちゃんがいなかったら僕は・・・。
考えない・・・。
今は幸せ・・。
お腹も心もいっぱい。
11/02/23 09:10 (iePqRJqD)
29
投稿者: 春 ◆KEJbDUVQ9A
だんだんと夏が近づいてきて・・・。
いよいよ、水泳の授業。
僕の一番苦手な・・。
水泳・・・・。

男女に別れて水着に着替える。
スクール水着は半ズボンくらいの長さだ。
膝が少し隠れるくらい。
長いタオルを腰に巻いて隠しながらパンツを脱ぐ。
この瞬間が一番恥ずかしいような・・。
「春さんはチンコ大きいかな?」
「や、やめてよっ!」
結実がタオルを脱がそうとしてくる。
これが一番嫌だ・・・。
「美月、手伝えよっ」
「うん?・・・やだ」
「つまんないなぁ・・」
今のうちに水着を・・。
ガシッと後ろで掴まれた。誰?
クラスの子だ・・。
「男だろ?脱げよ」
「や、やだっ・・・」
タオルを掴まれた。
もうだめだ・・・。
「・・やめなよ」
「あん?」
美月くんがクラスの子の手を掴んでる。
「君は春くんの体を見たいの?」
「ち、ちげーよっ!」
「男が裸になるのは好きな人の前だけでいい・・触るんじゃない」
「・・・悪かったよ」
手を離した。
助かった・・・。
「美月くん、ありがとう」
「うん・・でも嫌ならもっと抵抗しなきゃ」
「そうだよね・・」
「君は男の子でしょ?もっと強くならなきゃ」
「うん・・・」
「そんなんじゃ・・好きな人を守れないよ」
「・・・・うん」
僕はもっと強くならなきゃ・・・。
そうだよね・・・。
「何様よ、バカじゃない?」「な、なに?み、み、美空っ?」
美空ちゃんがドアの所にいた。
僕以外は全員着替えている・・・。
僕はささっと水着を着た。「えらそーに・・美月だって弱い所たくさんあるじゃない」
「なんだよ、美空っ!入ってくんなよ!」
「どMの美月に・・もっと強くならなきゃ・・とか言われても説得力ないから」
「ち、ちがっ!違う」
美空ちゃんはニヤニヤ笑ってる。
後ろには女子の集団。
僕はパーカーを着てやっと一息。
美空ちゃんはなんか哀れむような勝ち誇ったような何とも言えない表情でとどめを刺した。
「美月の弱点言ってやろうかなぁ・・・首筋とか」
「や、やめて・・ううっ・・・」
美月くん・・泣いちゃった・・・。
結実が背中を擦っている。「春、行こ!」
「あ、うん・・」
美空ちゃんと教室を出た。美月くん大丈夫かな・・。「春、あいつの言う事は気にしない方がいいよ」
「・・・うん、でも強くならなきゃって・・思う」
「そう思うだけでも十分だよ」
「そっかな・・・」

準備体操が終わったので日陰に座る。
水泳は昔からできない。
プールに入ると翌日ぐらいから高熱が出てしまう。
水泳は苦手だし・・・何より着替える時間が一番苦手だ。
見学でも水着は着なきゃいけないし。
「ふぅ・・」
パーカーを着てるけど少し寒い気もする。
「春も見学か・・」
美空ちゃんが隣に座った。「えと・・美空ちゃんは泳がないの?」
「うん、髪乾かすの時間かかるし・・」
美空ちゃんは髪を撫でながら言った。
光に当たるとキラッと光る銀の髪。
凄く綺麗。
「春はプールに入れないんだっけ?」
「うん、熱が出ちゃうから・・・」
「そっか・・」
みんなが楽しそうに泳いでいる。
ずっと昔から体育は見学するしかできなかった。
「体が弱い男なんて・・格好悪いよね・・」
つい口に出してしまう。
美月くんがはしゃぎながら遊んでる。
いいな・・って思う。

頬っぺたがくすぐったい。なんだろ・・。
美空ちゃんが長い髪の毛先で僕の頬っぺたをくすぐっていた。
「春はそういう子なの、格好いいとか悪いとかそういう問題じゃないの!落ち込まない!」
「あ、うん・・」
美空ちゃんが少しムッとした。
どうも色々ありすぎて落ち込みやすくなってるな。
明るく行こう・・。
「さっき言ってたけど、美月くんの弱点って首筋なの?」
「うん、そう・・舐めるとね・・体がビクビクッて・・・あ・・」
美空ちゃんが顔を赤くしてそっぽを向いた。
僕まで恥ずかしくなる・・・・。
話は聞いてたけど・・やっぱりエッチもしてるのか。「美月くんは・・上手いの?・・その・・」
「しゅ、春っ!そんな話は・・・」
美空ちゃんがあたふたしてる・・・。
可愛いなぁ・・。
美空ちゃん咳払いをして少し落ち着いた。
「春も・・エッチな話には興味あるんだね・・」
「う、うん・・・」
嫌われちゃうな・・。
もうこんな話はよそう。
「ごめんね、別の話・・」
「いいよ、聞きたいなら・・・うん・・聞いていい」美空ちゃんが顔を真っ赤にして体育座りしてる。
男子用のスクール水着を着て上にシャツを着ているのあんまり露出は高くない。けどスッゴいドキドキする・・・。
「えっとね・・・美月は上手いよ・・けど・・最近は・・私のが攻めるかなって思う・・うん・・その・・・・えっと・・」
「あ、あは・・そっか・・」美空ちゃんは頬っぺたを赤くしながら僕を見た。
ムッとしてる。
「春も・・・言ってよ」
「ぼ、僕?」
「したんでしょ?」
「う・・・ん・・」
お互い顔が真っ赤だ。
どうしよう・・・。
こういう会話になるなんて思ってなかった・・。
いい所・・・言えばいいのかな?
「僕は・・その・・・唇が・・柔らかいって・・言われたよっ!」
「ははっ、それだけ?」
「ごめん、限界・・・」
「うん、いいよ・・私もここが限界だよ・・」
なんともぎこちない会話が終わった。
美月くんはバシャバシャと泳いでいる。
水泳得意なんだな・・。
「調子にのってる・・」
美空ちゃんがあきれた顔をしている。
「美月くんといると幸せ?」美空ちゃんは少しキョトンとした。
それも可愛くて見とれてしまうけど。
ちゃんと顔を見れない。
ドキドキしてどうしようもなくなる。
「うんっ・・幸せ・・大好きだし美月のためなら何でもする・・美月のためなら・・何だって・・やるよ」その目は綺麗で。
こうやって僕と話している間も美月くんを見ている。本当に本当に大好きなんだなって・・。
分かってしまう。
「でもね・・・」
美空ちゃんが僕を見て。
「春と一緒にいるのも幸せなんだよ・・」
そう言って微笑んだ。
友達として仲良くても。
それ以上にはなれない。
どこかで・・一歩踏みでないと・・。
でもその言葉は素直に嬉しかった。

ガンッ。

美空ちゃんの頭にゴムボールが当たった。
「美空っ!パスして」
美空ちゃんが笑いながら。頬を引きつらせた。
怒ってる・・・。
「美空ーっ、早くー」
美月くんが手を振っている・・。

美空ちゃんがボールを掴んでおもいっきり美月くんにぶん投げた。
「はは・・やっぱあいつ空気読めないな・・」
「美空ちゃん、ナイスパス・・・」
スッゴい早かった・・。

授業が終わって教室に戻る
美月くんの弱点か・・。
首筋・・・。

着替えて制服を着る。
何もされなくてホッとした
女子も教室に入ってきた。美空ちゃんが隣に座った。「次の授業は・・国語か」
「春、手の調子はどう?」
「うん、まぁまぁかな・・」「そっか、良かった」
美空ちゃんが髪をブラシで撫でている。
「美空っ!」
美月くんが後ろから美空ちゃんに抱きついた。
「うっざい!」
美空ちゃんはムッとしている。
「ねぇねぇ、今日のお昼何食べる?」
「美月と一緒なやつでいいよ」
「えーっ、それじゃあつまんないよーっ」
「むぅ・・・」
僕はそんな二人眺めて羨ましいなって思う・・。
お邪魔かな・・。
席を立って教室を出ようとドアの方に向かおうとした・・・。
二人の様子を睨み付けている女の子がいた。
胸ポケットに手を入れた。
鉄砲?

女の子の目線の先には二人・・。
まずい!
僕はとっさに二人に覆い被さった。
バシッバシッバシッ!
「イタッ!」
背中に激痛。
本物じゃないみたい・・。
振り返って女の子を睨む。女の子はうろたえている。僕は女の子に近づく。
「ひっ!」
女の子は僕に鉄砲を向けた目をつむる。
バシッバシッ。
「・・っ・・!」
顔に当たった。
なんとか近づいて女の子の鉄砲を取り上げた。
「わ、私は悪くない!」
女の子がそう叫んだ。
「そんな事しちゃダメ・・傷つけたって何にもならないよ」
ぶん殴りたい。
けど抑える。
そんな事しても解決にはならない。
「あ、あの・・」
「君は・・美月くんが好きなんでしょ?」
女の子が黙った。
「こんな方法良くないよ・・・」
女の子が泣き出した。
周りが騒然としている。
女の子は泣き崩れてしゃがんでしまった。
「ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
そう言って泣いている。
僕は背中をさすってあげる「美月くんと美空ちゃんに謝ろうね・・大丈夫だよ」きっと想いが募ってしてしまったんだろう。

「春・・・大丈夫?」
美空ちゃんが寄ってきた。「美空ちゃん・・先生呼んできて・・お願い」
「・・うん」
美空ちゃんは職員室に向かった。
「春くん、血が・・」
「美月くんはジュース買ってきてくれない?後でお金払うから・・」
「・・わ、分かった・・」
僕の事なんてどうでもいい・・・。
今一番辛いのはこの女の子なんだから・・。
ハンカチで涙を拭いてあげた。
可愛らしいか子だ。   「可愛い顔してるんだから謝って仲良くなればきっと美月くんも振り向いてくれるよ・・大丈夫・・」
「うん・・」
美月くんと美空ちゃんがちょうど同じタイミングで走ってきた。
草野先生もやって来た。
美月くんからジュースを受けとる。
「ありがと・・」
ゆっくりと女の子を立ち上がらせる。
「ジュース飲めば落ち着くよ・・ゆっくり歩こう」
女の子は泣きながらゆっくり歩いた。
野次馬がガヤガヤ言ってる「美月くんのストーカー?」「退学になるんじゃね?」
「うっわ・・マジ頭おかしいんじゃね?」
そんな言葉に・・イライラした。
スッゴく・・。
「黙れ!」
叫んでしまった・・・。
今までに出した事ないくらい大声で。
野次馬が静かになった。
女の子を職員室に連れていく。
職員室についてやっと一息つけたと思ったけど・・。緊張が緩んだのか苦しくなってきた。
「はぁ・・・しんどい」
「春・・・」
「大丈夫・・大丈夫だから」女の子のそばにいてあげよう。
今はそうしてあげよう。
女の子は椅子に座った。
「なんでこんな事したんだ!?」
草野先生が怒鳴った。
女の子がビクッと震えた。「先生、まずはジュースを飲ませてあげて下さい」
「あ、ああ・・」
女の子はジュースを飲んで少し落ち着いたようだ。
僕が付き添ってゆっくり話しかけてあげた。
やっぱり理由は僕の思ったとうりだった。
厳重注意でなんとかなった・・・。
良かった・・。
緊張がとけてもう体に力が入らない・・。
その場にへたりこむ。
「榊くん、君は立派だな・・・」
草野先生が起こしてくれたとりあえず椅子に座った。「いいえ・・そんな事・・」「歩けるか?」
「はい・・」
職員室を出ると美空ちゃんと美月くんが待っていた。「春・・・ごめん」
「いいよ・・」
美月くんが凄く申し訳なさそうな顔をしている。
「美月くん、周りの女の子に優しくしずぎるのも良くないよ。」
「あ、うんっ・・ごめん」
うつ向いてしまった。  「僕は・・保健室行ってくるよ・・痛いや」
フラフラしながら歩く。
緊張しすぎて筋肉が強ばったせいか節々がズキズキする。
「春、私も・・」
「大丈夫・・すぐ戻る」
美空ちゃんを止めた。
二人は先に教室に帰った。
僕は一人で保健室に向かう顔の傷・・少し血が出てるな・・。
腫れちゃうかな・・。
僕のやった事・・。
正しかったかな・・。




11/02/23 14:57 (iePqRJqD)
30
投稿者: 春 ◆KEJbDUVQ9A
いつものように朝起きて洗面所で顔を洗う。
ヒリッとしてしまう。
「いったーぃ・・・」
涙目で鏡を見る。
やっぱり少し腫れてるなぁ・・。
一発だけ当たった。
ニキビみたいだ・・・。
嫌だなぁ・・・。
後ろに誰かいる?    振り向くと美空ちゃんがいた。          「春、おはよ」
「美空ちゃん・・おはよ」
「痛い・・よね」
「うん・・・少しね」
美空ちゃんはうつ向いてしまった。
「ごめん、油断してた」
「いいよ、あんなの普通気付けないから」
「うん・・・」
もう一度鏡をみる。
赤く腫れてる。
けどもすぐに治る。
大丈夫・・・・。
「ねぇ、春はどうしてあんなに優しくしてあげたの?どうして?」
「分かんないよ・・・けどあの子は辛くてやってしまったんだよ・・だから怒っても仕方ないよ・・」
「・・・ちゃんと言わないとまた・・狙われちゃうよ・・仕返しも必要じゃない?」
僕は美空ちゃんの方に向きなおす。
美空ちゃんは僕を見ていない。
うつ向いている。
「僕はそういうの嫌い・・美空ちゃんがそんな事言うなんて思わなかった」
少しがっかりした。
タオルを持って美空ちゃんの横を通り過ぎた。
「あの子が本当に辛いのはこれからだよ・・美空ちゃんは分かってない・・・」
居間に向かう。
少し・・・言い過ぎたかな・・。
けど僕はそう思ったから。居間に入る。
美月くんと利奈さんがいた「おはようございます」
「あ、春くんおはよ!」
利奈さんはいつもニコニコしてる。
「おはよ・・」
美月くんは少し元気ないな・・・。
座って朝御飯を食べる。
麦ごはんだ。
たまに食べると美味しい。「近所のおじさんに貰ったんだ」
「へぇ、お姉ちゃんは人気者だから色々貰えちゃうよね」
「あは、春くんがお姉ちゃんって言ってくれたーっ!」抱きつかれた。
最近やっとお姉ちゃんと呼べるようになった。
「ねぇ、春くん今日は暇?」「あ、はい・・バイトは休みですし」
出前のバイトもたまにしかない。
けど結構おこずかいもたまった。
財布の中は結構ホクホク。「じゃあお姉ちゃんと出掛けよっ!」
「どこに行くんですか?」
「内緒っ!」
ウインクした。
利奈さんも可愛いなぁ。
朝御飯を片付けて自分の部屋に向かう。
美空ちゃんが壁に寄りかかっている。
さっきの事・・いい過ぎたよな・・。
謝ったほうがいいよな。
謝ろうとして。
美空ちゃんが抱きついてきた。
「え、えっと・・美空ちゃん?」
いきなり過ぎてドキドキしてしまう。
こんなに強く抱きつかれると・・・。
「春が傷ついたから・・イライラしちゃったの・・ごめん・・あんな事言って」美空ちゃんを引き離す。
そんなの無い・・・。
「美空ちゃんはおかしいよ・・・おかしい・・」
「春・・・」
部屋に入った。
ドアを閉めてため息。
僕が傷ついて・・どうしてイライラするの?
傷なんてすぐ治るのに。

出かける用意をして部屋を出た。
美空ちゃんはいなかった。
利奈さんの部屋に向かう。「お姉ちゃん、入っていい?」
「いいよぉー」
ドアを開けた。
巫女服を着ている。
「えと・・出かけるんじゃ」「出かけるよ、行こっ」

車に乗った。
「免許取ったんだ」
「へぇ、じゃあ運転はお姉ちゃん?」
「大丈夫、事故にはならないよ」
「あは・・はは・・」
なんか心配・・・。

車に乗って着物の店についた。
なんだろ・・・。
「お姉ちゃん・・何するの?」
「ずっと前にサイズ計ったでしょ?」
「はい・・・」
利奈さんがニヤリと笑った「さ、お店入ろう」
「はい・・・」
なんか嫌な予感。
お店に入ると着物を着た店員さんが出迎えてくれた。「できてます?」
「はい、お待ちください」
店員さんはお店の奥に行ってしまった。
「お姉ちゃん着物買うの?」「うん、買うよ。着るのは春くんだけどね」
「へっ?」
「えへっ、どうなるかなぁ」今・・何て言った?

一時間後・・・。

「愛らしいっ!可愛いっ!春くん最高!」
「・・・・」
着物・・・。
女の子用・・・。
なんで僕が着てるの?
店員さんもニコニコしてるし・・・。
「よし、そのまま帰ろ」
「えっと・・」
「着付けは分かったでしょ?」
「はい・・」
利奈さんが何を考えてるか分かんない。
車に乗って神社に戻る。
「ねぇお姉ちゃん、なんで着物?」
「ん?お父さんのリクエストだよ」
「えと・・これ・・女の子用・・」
「凄く似合ってるから大丈夫だよ!」
「はぅ・・・」
神社について車を降りた。将さんがいた。
待ち構えるように。
「おおっ、さすがだ!」
「何がさすがなのか分かりません・・」
将さんにべた褒めされた。利奈さんは後ろで笑ってる「お姉ちゃん・・・」
「可愛いからいいじゃん」
「はぃ・・」
今日はこれを着て過ごす事になった。
将さんにカツラを渡された・・・。
黒髪の長いやつ。
「あぅ・・・」
「小野小町じゃないか!最高だ」
鏡で見てみないとな・・。将さんにべた褒めされてもいまいち信じられない。
家に入った。
下駄を脱いで歩く。
「春くん、愛らしいよぉ」
「お姉ちゃん・・変態なの?」
「うん、変態だよ・・」
目がトロンとしている。
そんなに可愛いのか?

居間から美月くんが出てきた。
「えっ?・・春くん?」
「あ、あは・・なんか着せられちゃったよ」
「へ、へぇ・・・」

鏡で見てみた。
「おぉ・・可愛い」
和風美人が目の前に・・。
じゃない・・・。

じゃないっ!!

「もぉー・・まぁいいかな・・」
女装は楽しいし。

・・・・・ん?


居間で座ってテレビを見る女の子座りじゃないときつい。
正座じゃ足がしびれる。
「春くん可愛いよぉー」
「お姉ちゃん・・もぉ」
利奈さんが抱きついてくる・・・。
たまには甘えてもいいかな・・・。
コトンと頭をあずける。
「しゅんくん・・」
「お姉ちゃん・・甘えさせて」
「いいよっ」
女装もいいな。

・・・・・・いや、ダメだろ。

いつの間にか慣れちゃってるし。
美月くんは僕をじっと見ている。
僕が見つめ返すと顔を赤くしてそっぽを向いた。

美空ちゃんが居間に入ってきた。
僕を見て首をかしげた。
「えと・・春!?」
「あは・・」

お茶を飲んで一息。
一時のシンデレラじゃなく小野小町か・・。
しかも僕は男だし。

「ふはぁ・・」
美空ちゃんは僕の隣でモジモジしてる。
「ねぇ、春・・勘違いしないでね・・その・・さっき言ったのは」
「大丈夫・・」
美空ちゃんが僕を見てホッとした顔になった。
「良かった・・春が傷つくだけでも私は心配なんだからね・・」
「うん・・・」
たぶん友達として心配してくれてる。
さっきはよく意味が分からなかったけど・・。

「春は和服似合うね」
「そかな?」
袖を振ってみる。
「はは、可愛い」
「このカツラ本物っぽいよ、触ってみて」
「あ・・本当だ」
美空ちゃんが髪を触って感心している。
「いや、女装も悪くないよね・・・うん?」
「春・・くすっ」
「ち、違っ!今のは違うんだよ・・」

ピーンポーン。

チャイムが鳴った。
「あ、僕が出てくるから!」
何とか逃げた。
もしかして僕も変態の血を引いている?
利奈さんが変態ならお母さんも変態だった?

玄関で下駄をはいて出迎える。

ガラッとドアを開けた。
「はい・・・」
結実だった・・・。
僕を見て固まってる。
「あ、あ、ああ、あの春くんはいらっしゃいますか!?」
うっわー・・・。
ヤバい・・・。
誤魔化すか・・・。
「え、えと・・春のお友達かしら?」
「はい、あなたはお姉様ですか?」
無理だ・・・誤魔化せない「ごめん、結実・・僕」
「えっ?ええっ!?」

居間で事情を話した。
結実は笑ってる。
「春さんすげぇよ・・」
「結実・・もう見るな」
「無理・・見ちゃう」
「はぅ・・・」
結実は宿題を一緒にやりたいみたいだ。
僕も宿題はまだしてない。一緒に宿題をするかな。
「ねぇ、春さん・・この問題教えて」
「うんとね・・・」
結実は僕を見つめている。じっと・・。
「春さん、キスさせて」
「ちょっ!」
結実が顔を近づけてきた。「女装はいいけど僕はちゃんと女の子が好きなんだっ!だめっ」
「かまわんっ!キスミー!」
「いやだーっ!」
何とか逃げ出した。
「結実っ!帰れっ!」
「春さん、ごめん・・」
「今のは内緒にするから」
「悪かった・・・」
結実は恥ずかしそうに帰って行った。

しばらく居間でぼけーっとする。
「はぁ・・・」
女装に慣れてしまった自分・・・。
まぁ若いうちだけだな。

美月くんが居間に入ってきた。
「あ、美月くん・・・」
僕の隣に座った。
「春くん・・ごめん・・君は強いよ」
「えっ?」
「君は凄く強い・・僕と美空を守ったしあの女の子も守った・・・」
「う、うん・・」
「君は凄いよ・・」
美月くんが僕を見てまた顔を赤くした。
「ねぇ・・関係ないけど美月くんはどMなの?」
「ち、違うよっ!」
美月くんはそっぽを向いたどうなのかな?

首筋・・・。

美月くんの肩に触れる。
美月くんは僕を見て固まって動かなくなった。
「しゅ・・ちょっ!」
美月くんの首筋をペロッと舐めた。
ビクッと美月くんの体が震えた。
「んっ、はぁ・・」
ペロペロ舐める。
何か可愛い・・・。
美月くんを押し倒した。
舐め続ける。
「んんっ、あっ!・・しゅん・・だめぇ・・」
美空ちゃんと重なって見えてしまって・・・。
止められなくなった・・。「んあっ!はぁ・・」
美月くん・・・可愛いな。男の子だけど凄くキュンとする。
もっと舐めてみる。
「あっ、はぁ・・」
僕の袖を掴んできた。
気持ちいいのかな?

居間の襖が開いた。
美空ちゃん・・・。
「な・・に・・してんの?」
修羅場・・・・。

事情を説明した。
「美月はなんで抵抗しなかった訳?」
「抵抗したよ・・・」
美月くんは涙目だ。
美空ちゃんはあきれた顔になった。
「春もちょっとやりすぎだよ」
「・・・うん」
「けど美月が一番悪い」
美月くんはムッとした顔になった。
「なんで!?こんな可愛い女の子に攻められたら・・・」
「春は男の子・・」
「あぅ・・・」


夜になって着物を脱いだ。なんだか自分じゃないみたいだった。
ちょっと小悪魔になれる物・・・手にいれた。



11/02/23 21:36 (iePqRJqD)
31
投稿者: 春 ◆KEJbDUVQ9A
夏休み。
特にやる事もなくバイトに精を出す。
お金もどんどんたまりつつある。
美空ちゃんが日傘を持って僕が出前を持つ。
「この街って夏なのにそんなに暑くないね」
「うん、そういう地形だからね」
「へぇ・・・」
蝉がミンミンと鳴いている公園を通り過ぎた。
この近くだったな。
古びた一軒家。
チャイムを鳴らす。
インターホンから声がする「はーい」
「出前でーす」
「はい、今行くね」
扉が開いた。
「冷やし中華お持ちしました」
「はーい、ありがと」
お代を受けとる。
お釣りは用意してある。
「いつもありがとね、春くんと美空ちゃん」
僕と美空ちゃんは笑顔で返事をする。
僕たちがバイトを始めてからお客さんが増えたらしい・・・。
役にたったかな。
お皿は後日回収しにくる。
最後の出前を終えてお店に帰る。
今日の営業は終わった。
厨房で遊さんが後片付けをしていた。
「お疲れさま、メシ用意してあるよ」
「はーい、ありがとうございます」
お釣り入れをレジの近くに置いた。
さすがにお腹が空いた。
「へぇ・・つけめん」
「新メニュー・・食ってみ」テーブルには山盛りの麺とだしつゆ。
美空ちゃんと椅子に座る。「いただきます!」
さっそく・・。

太めの麺をつゆに絡める・・・。
ツルッと口の中に。
「昆布出汁ですか?」
「うん、シンプルにしてみた」
つけめんのだしつゆは味が濃いめだ。
けどこれはなかなかいい。あんまりしつこくない。

いつもより沢山食べれた。
夕方になった。
帰る前に寄る所があった。7時から町内会がある。
「まだ1時間あるね・・どっか寄る?」
美空ちゃんが時計を見ながら言った。
女の子らしくないごつめのデザイン。
「ははっ、気になる?」
「うーん、カッコいいね」
「特別な時計だよ、私と美月しか持ってないんだ」
「へぇ・・・」
美空ちゃんは指輪をしている。
美月くんも同じ物をつけている。
つまりペアリング。
「世界のどこにいても居場所が分かるんだよ」
「ふーん・・便利だね」
二人の絆はきっと切れない
それだけ想いが強いから。僕が入る隙間なんてない。けども・・僕はいつか伝えたい。
好きだって。
けど今は隣で歩くのが精一杯。
それしかできない。

商店街で買い物をする事にした。
「何かいい物あるかなっ?」「春、楽しそうだね」
「うんっ、買い物って楽しいでしょ?」
「はは、そだね」
この街って田舎なようで田舎じゃない。
この商店街はかなり大きいしアーケードもある。
大体の物はこことスーパーで揃う。

何を買おうかな・・・。

ぶらぶらと二人で歩く。
「春、お茶切れてたよね」
「うん、じゃあお茶買おう」「よしっ、行こ」
日本茶の店は街に一件。
そのぶん品揃えも凄い。
お店に入ると香ばしい香りこのお店のおじさんは無愛想だけどいい人だ。

緑茶も色々ある。
いつも飲んでるお茶は雪割草ってやつ。
価格もお手頃。
たまには自分用なお茶でも買うかな。
「うーん、濃いめがいいなぁ」
「夜に飲んだら寝れなくなっちゃうよ」
「うーん・・」
濃いめのお茶は朝に飲むとシャキッとする。    夜は紅茶とかの方がいい。あれは眠くなる。

玉露入りのかりがねにした。
飲んだ事ないやつ。
お会計を済ませる。
レジのわきに小さな蛙の人形が置いてあった。
「ほぇ、かわいい」
「蛙・・春、欲しいの?」
おじさんが黙って頷いた。「・・・もってけ」
やっぱりいい人だ。
「ありがとうございます!」お店を出て蛙を眺める。
葉っぱに乗ってこちらをみている。
雨蛙だな・・。
「かわいいね・・」
「春もね・・」
美空ちゃんがクスッと笑った。

そろそろ7時。
会館に人が集まっている。座布団をもらって隅の方に座る。
今日はお祭りの事で話し合い。
神社で行われる年に一回の夏祭りだ。
予算はそれなりにあるらしい。
「開催される日は年によってバラバラなんだ」
「へぇ・・・ねぇ、美空ちゃんは浴衣着る?」
「うん、着るよ」
「僕も浴衣買わなきゃなぁ・・・」
美空ちゃんの浴衣姿・・想像するだけでドキッとする・・。
「春は着物着ればいいじゃん、かつらもつければ完璧っ」
「あ、あれは・・うーん」
「春、可愛いんだから着たほうがいいよ」
美空ちゃんがニヤニヤしてる。
そういう問題じゃないような。
あれは完全に女装だし・・・・でもまたやりたい気持ちもあったり・・。

「おーい、お茶ないぞ」
お茶っ葉が無いらしい。
「僕の使って貰おうかな」
「春、だめ・・」
「えっ?」
美空ちゃんがムッとしている。
「それは春の物でしょ?」
「う、うん・・でもね・・困ってるなら使ってもらいたい・・僕はそうしたい」美空ちゃんは僕をじっと見て・・・。
微笑んだ。
「春らしいな・・分かったよ・・」
お茶っ葉を使って貰った。お礼を言われた。
お茶は無くなったけど人助けになったから良かった。
今年は花火大会もやる事になった。
豪華だな・・夏祭りが2つあるなんて。
「利奈が毎年神楽を踊るんだ」
「へぇ、お姉ちゃんが・・」見たことないから楽しみにしとこう。
「美月はそれを見て利奈を好きになったんだ・・」
「えっ?」
美空ちゃんが苦笑してる。「ま、色々あったんだ」
「ふーん・・」
そういえば昔お姉ちゃんは美月くんと付き合ってたって言ってたな。
「お姉ちゃんはまだ美月くんの事・・・」
「好きだよ・・」
美空ちゃんは少しうつむいた。          「そうなんだ・・」
「でも、美月は渡さない・・・絶対に・・」
「う、うん・・」
こんなに強く想ってるんだ・・・。
振り向いてもらえないかな・・・。
少し思ってしまう。

話し合いはまた次回に持ち越しになった。
まだ決まってない事もある
二人で帰ろうとした。
「あ、君!」
オバサンに引き留められた「はい?」
「お茶っ葉ありがとね、こんな物しかないけどお礼として受け取って」
お菓子の詰め合わせだ。
たくさん入ってる。
「ありがとうございます」
            両手がいっぱい。
もう日は沈んで真っ暗。
神社に向かう。
「春、良かったね」
「うん、食べきれないからみんなで食べよう」
「春は優しいね・・」
「まぁ・・ね・・」
照れちゃうな。
夏休みだから少し夜更かししてもかまわない。
神社に帰るともう9時になっていた。
「夜中にお菓子食べたら太るかな」
「春はもう少し太ったほうがいいよ」
「うーん・・たしかに」
居間で利奈さんと美月くんが楽しそうにお喋りしてた
あの一件から美月くんとは凄く仲良くなった。
首筋・・可愛かったなぁ。けど男の子だし・・。
みんなでお菓子を食べながら夜がふけていく。

ふと・・・。

泣いている自分がいた。

「春、どしたの・・?」
「なんか・・夢みたいでさ・・こんな事・・」
「春・・・」
「友達とお菓子を食べながら喋れるなんて・・・ぐすっ・・変な事で泣いちゃった・・ごめん」
ずっと・・・寂しかったから。
幸せすぎて涙が流れる。
僕にとっては何気無い日々が幸せ。
とっても・・。
利奈さんにグミを押し付けられた。        「こら、泣かないのっ」
「お姉ちゃん・・」
「私まで泣いちゃいそうだよ・・」
グミをパクっと食べた。
なんとか微笑んだ。

歯を研いてから寝よう。
洗面所で歯ブラシに歯みがき粉をつける。
「春くんっ」
「おねえひゃん・・」
「ははっ、何言ったかわかんなーい」
利奈さんも歯を研いた。
口の中がさっぱりした。
「ふぅ、さっぱり・・」
「春くん・・」
「なぁに?」
「一緒に寝よう・・」
「あ、はい・・久しぶりに」利奈さんの部屋に向かう。利奈さんのパジャマ姿可愛いな。
美月くんもお姉ちゃんを好きになったんだなぁ。
部屋に入って布団をしく。利奈さんが布団の中に潜った。
顔を出して僕を見た。  「クーラーつけて・・」
「えっ?涼しいよ?」
「きっと暑くなるよ・・」
「ふーん・・」
クーラーをつける。
除湿くらいでいいかな。
僕も布団に入る。
利奈さんが抱きついてきた・・・。
さすがにドキッとする。
「春くん・・悲しかったの?ここに来る前は」
「あ、うん・・寂しくて悲しかった・・」
「もう・・そんな想いさせないからね・・」
利奈さんが動いた。
「お姉ちゃ・・んっ!」
キス・・・された。
「春くん、安心して・・」
「あ、あのっ・・」
どうなるの・・・。
僕は・・また・・しちゃうの?



11/02/24 01:07 (BFmgL8qv)
≪ 前 14 5 6 7 8 9 次 ≫
コメントを投稿
投稿前に利用規定をお読みください。
名前
メール
本文
スレッドを上げない
画像認証

上に表示されている文字を半角英数字で入力してください。
 
官能小説 掲示板
官能小説 月間人気
官能小説 最近の人気
作品検索
動画掲示板
画像で見せたい女
その他の新着投稿
人気の話題・ネタ
ナンネット人気カテゴリ
information

ご支援ありがとうございます。ナンネットはプレミアム会員様のご支援に支えられております。

Copyright © ナンネット All Rights Reserved.