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春
◆NqRlWkOMMM
寒い寒い冬。
僕は来年13歳。 榊春って名前。 さかきしゅんって読む。 なかなか読みにくい名前だ・・・。 漢字二文字だけど気に入っている。 冬休み前に学校に行かなきゃいけない。 朝起きたら歯を磨いて朝ごはんを作る。 僕は料理が大好き。 トントンと料理を作る。 「あら、春ちゃんおはよ」 「お母さん、おはよ」 お母さんは27歳。 榊悠美、15歳で僕を産んだ。 そしてお姉ちゃんもいる。僕の一つ上。 お母さんがコーヒーを一口飲んでため息をついた。 「悪いね、春ちゃん・・」 「ううん、いいよ。お母さん疲れてるもんね」 お母さんは夜のお仕事をしている。 お酒のお酌をしたり楽しく話をしたり。 綺麗だから一番人気らしい「春ちゃん来年中学生だね」「あ、うん・・」 「彼女作りなよっ!」 「えっ・・・ん・・うん」 お母さんが頭を撫でてくれた。 料理が得意だから女の子には人気だけど。 彼女なんて・・・。 お母さんはまた寝室に戻った。 コーヒー飲んでまた寝るなんて凄いなって思う。 足音がして振り返る。 お姉ちゃんが起きてきた。ムスッとしている。 「おはよ、凛姉ちゃん」 「はぁ・・ったく・・」 お姉ちゃんは榊凛。 僕と同じで漢字二文字。 黒くて長い髪をブラシでといでいる。 「春、はやくご飯」 「あ、うん・・・」 僕はお姉ちゃんが怖い。 叩かれたり殴られたりするし酷い事も言われる。 お母さんには言えない。 凛姉ちゃんもお母さんの前では仲良くしているように見せる。 怒らせないようにオムレツとトーストをテーブルにのせる。 「まずそ」 「ごめんなさい・・」 そう言いながらパンにかぶりついている。 僕は自分の部屋に行こうとした。 「どこ行くの?座ってなよ」「学校の準備しなきゃ・・」「あんたが遅刻しようがしらない・・座ってろ」 「うん・・・」 怖い・・・。 お姉ちゃんは学校ではとっても人気だ。 可愛くて頭も良くて。 でも・・家では違う。 僕をいじめる・・。 学校の用意をしてランドセルに必要な物を入れる。 鏡を見て髪型を整える。 睫毛が長い・・・。 また切らなきゃな。 学校まで走って行く。 「遅刻しちゃう・・・」 僕は男の子の友達がいない・・。 あんまりゲームとかの話題についていけない。 いつも休み時間は料理の本を見ている。 学校についてから下駄箱に靴を入れる。 一番上だからなかなか届かない。 僕はまだまだ小さい。 牛乳が苦手だからかな・・身長が低い。 しかも女の子みたいな外見だから・・・。 男なのに女の子に間違われる。 クラスについて自分の机に座る。 ギリギリセーフ。 ランドセルから料理の本を取り出す。 今日は終業式。 教科書もいらない。 美味しそうな料理がたくさん。 将来の夢は料理職人。 どこかで弟子入りしたいなと思ってる。 話かけてくれるのは女の子ばかり。 だいたい料理の事。 僕に彼女なんてできるのかな。 朝礼が終わった後体育館に向かう。 校長先生が冬休みの注意を言ってからすぐに終わった 寒い廊下を歩く。 もうこの学校ともお別れか・・・。 教室に戻って宿題を貰う。僕はまぁまぁ頭がいい方だ・・・。 ランドセルに宿題をしまう「冬休みは寒くなりますし風邪に注意しましょう」 先生が体調管理の事を言っている。 卵酒かエッグノッグが好きだ。 ・・・未成年だからアルコールはかなり弱めの物を使うけど。 砂糖とお酒とホットミルクを混ぜて生姜の絞り汁をいれる。 火を止めて卵の黄身をいれてゆっくりかき混ぜる。 甘くて美味しいし体も暖まる。 僕の作り方はそんな感じ。 帰宅時間になる。 まだ午前中。 家に帰る前に寄り道をする 山道を登っていけばお墓がある。 お父さんのお墓。 お父さんは30歳の時亡くなった。 お母さんとは歳の差の結婚で大分苦労したみたい。 僕は顔を良く覚えている。優しくてかっこよかった。お父さんのお墓は豪華だ。お金持ちだったからかな。今も生活に不自由はない。「お父さん・・来年は中学生になるよ」 途中で買ったお花を供えるコーヒーも一緒に。 「僕・・友達たくさん作るよ・・見ててね!」 手を合わせて目をつむる。きっと見ててくれる。 ゆっくりと立ち上がって階段を降りる。 マフラーと手袋をしてるけど寒い。 お墓のから家に向かう。 もうお昼だ。 お姉ちゃんが待ってる・・ 「ただいま」 「遅い・・はやくご飯作ってよ」 「うん・・分かった」 今日はうどんにしよう。 生椎茸で出汁を取る。 料理酒を少々入れる。 少し味を見て塩と味醂を少々。 油揚げと牛蒡を入れる。 油揚げはそのまま入れる。味がコッテリ目になる。 牛蒡はささがきにする。 しばらく染みるまで待ってからうどんを入れる。 グツグツ煮込んでからどんぶりに盛り付ける。 テーブルに持っていく。 「お姉ちゃん、お待たせ」 「うどんか・・まずそ」 お姉ちゃんは一口食べてからどんぶりを流し台の所に捨てた。 「糞まずい・・」 「あ・・ごめん」 「もういい・・」 お姉ちゃんは部屋に戻っていった。 僕はいつかお姉ちゃんを笑わせるくらい美味しい料理を作りたい。 流し台に捨てられたうどんを片付ける。 目が霞む。 涙が流れる。 美味しいって言ってほしいのに・・・。 余ったうどんはお母さんにあげよう・・。 お母さんはまだ寝てる。 宿題をして時間を潰す。 もう終わっちゃいそう。 「春ちゃん、おかえり」 「もう仕事?」 「うん、いい子にしててね」「あ、お母さん・・うどん作ったんだ」 「おおっ、どれどれ」 うどんを暖めてどんぶりに盛り付ける。 お母さんは一口食べて微笑んだ。 「春ちゃんは料理上手いね!本当に美味しいよ」 「うん、良かった」 お母さんは全部食べてくれた。 「さて、行ってくるわ。戸締まりちゃんとしてね」 「うん、いってらっしゃい」お母さんは元気良く仕事に向かった。 僕はお母さんもお姉ちゃんも好きだ。 だから・・笑ってて欲しい
2011/02/12 00:12:11(BhPlqiGf)
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春
◆KEJbDUVQ9A
体が熱くなってきた。
緊張のせいもある。 「春くんのためなら・・」 ダメだ・・。 あの快感が味わいたくなる・・。 とっても気持ちいい事。 でもこの人はお姉ちゃん。父親が違うだけ・・。 そんなのダメだから。 「だめっ、お姉ちゃん・・」「春くんとなら・・してもいい・・私の初めてをあげてもいい」 利奈さんは僕に覆い被さってきた。 こんなに可愛いのにまだした事がないのか・・。 キスされて・・・。 心がぐらぐら揺れる。 また快楽に溺れちゃうの?それもいいかな? エッチは気持ちいいし。 ・・・・。 ダメ・・。 僕は・・好きな人がいる。 でも・・・したい。 その思考がループする。 もう固くなってしまっている。 どうしよう・・・。 「春くん、固いね・・」 「やっ・・」 利奈さんの手触れた。 触られるのは久しぶり。 感じてしまう。 抵抗しなきゃ・・。 でも利奈さんは僕のためにしてくれるって言ってるのに・・断るの? それで利奈さんが傷ついたらどうするの? 泣いちゃうよ? どうするの? ゴシゴシと擦られる。 気持ち良くて・・。 分かんない・・・。 「はぁ、はぁ、はぁ・・きもちぃ・・」 「春くんっ・・」 またキスされて分からなくなる。 このまま気持ち良くなりたい。 一度経験してしまっているから・・・。 快感を知っているから。 美空ちゃんの顔が浮かんだ こんな所で僕の想いを消したくない。 消したくない・・・。 「だめっ!」 お姉ちゃんを突き飛ばした「春くん、そんなに嫌がらなくても・・」 「お姉ちゃん・・」 利奈さんに抱きついて胸に顔を埋める。 いやらしい事をしたい訳じゃない。 「お姉ちゃんと一緒にいるだけで気持ちいいから・・僕はそれ以上は望まないから・・」 「春くん・・」 「初めては好きな人にあげて・・ごめんね」 利奈さんの胸の鼓動が聞こえる。 だんだんと静まっていく。「分かったよ・・襲ったりして・・ごめんね」 「うん・・」 「巫女さんなのにいやらしい事しちゃった・・」 「大丈夫・・」 「春くんは逃げないの?」 「お姉ちゃんを一人にできない・・」 「優しいね・・」 そのまま二人で寝た。 いやらしい事はせずに。 姉弟として・・・。 翌朝は寒くて起きた。 冷房がつけっぱなし。 「さ、寒い・・」 リモコンで切ってまた布団に戻る。 利奈さんの寝顔・・。 可愛い・・。 エッチしてたら戻れなくなってた。 まだ6時。 もう少し寝坊しよう。 お姉ちゃんをギュッと抱き締めて・・・。 ん・・・固い・・ダメだ。 布団から出てため息。 「もぉ・・なんでこんな時に・・」 おさまるまで待つか。 カチカチに固くなってる。こっそり部屋に戻ろう。 自分の部屋に向かう。 美空ちゃんの部屋の前を通りかかった。 「はっ、はぁ、美月っ」 「美空、すごい・・」 声・・漏れてる。 気持ち良さそうな声。 壁によりかかって聞いていたい。 美空ちゃんな声。 「美月・・んっ・・はぁ」 「はげしぃ・・」 気持ち良さそう。 二人が愛し合ってる。 僕は割り込めない。 友達のまま・・・。 「美空っ、いくっ・・んっ!!」 しばらく二人の喘ぎ声しか聞こえなかった。 胸が苦しくなった。 部屋に戻って寝転がる。 固いのもおさまった。 「朝早いのに・・エッチしてた・・」 ごろんと横になる。 美空ちゃんは優しいし。 天使か妖精みたいな外見。僕には無理なのかな? やっぱり・・。 朝御飯を食べてから外に出た。 神社には大きな木たくさんある。 蝉が鳴いてそよ風が吹く。涼しい夏。 大きな木に近づいて。 寄りかかる。 癒されるような感じ。 すーっと息を吸って。 吐いてみる。 心が綺麗になっていくような。 迷いが消えてくような感じ・・。 「いよっ、春ちゃん」 「あ、八百屋のおじさん」 スイカを持っている。 デカイな。 「これ、余ったんで食ってくんないかな?お代はいらないや」 「わぁ、いいんですか?」 「いいとも、春ちゃんの顔が見れただけでもお代は取れるよ」 「あは・・あ、ちょっと待ってください」 ポケットの中にたしか・・お金が・・。 あったはず・・。 あった・・100円・・。 「あの・・少ないですけど」「おおっ、ついてるねぇ。お代は貰ったよ」 スイカを渡された。 きっと甘くて美味しい。 「井戸があるだろ?しばらく冷やしとくと美味しいぞ、じゃあな」 「ありがとうございます!」 八百屋さん気前いいなぁ。こんな大きなスイカ・・。井戸・・。 どこだっけ・・。 「春くん、どしたの?」 巫女服を着た利奈さんが箒を持ってやってきた。 その姿はやっぱり可愛い。「スイカ貰ったんだけど・・・井戸ってあるの?」 「あ、うん・・普段用のはこっちだよ」 利奈さんについていく。 石造りの井戸があった。 下ほうに下ろしていく。 しばらくしたら冷えるかな・・。 ぎゅっ・・。 抱きつかれた・・。 「お姉ちゃん・・」 「昨日はごめんね・・」 「いいよ、その変わりにたくさん甘えさせて・・」 「もちろんっ・・」 こうやって抱き締めてくれるだけでも嬉しい。 利奈さんの袖をぎゅっと掴んで。 幸せを噛み締めた。 「スイカに塩かけたいな」 「へぇ、お姉ちゃんはそうするの?」 「昔からそうしてたよ」 「僕もやってみるよ・・」 ずっとこうやって抱き締めてもらいたい。 けどやる事がある。 ずっと浸れる訳じゃない。「掃除しよっ」 「うん、春くん」 箒を持ってさっさと掃く。掃除が好きなのはお母さん似なのかな。 このまま仲のいい姉弟でいられたらいいな。 そう思いながら利奈さんと掃除をした。
11/02/24 08:31
(BFmgL8qv)
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春
◆KEJbDUVQ9A
今日はいよいよお祭り。
利奈さんが神楽を踊るみたい。 どんなのかなぁ。 楽しみ。 「さ、春くん着物着て」 利奈さんがニコニコしながら迫る。 「着物・・好きでしょ?」 「うーん・・」 今女装が好きになりつつある・・。 どーしよー・・・。 で、着てみた。 かつらは前の長い黒髪。 「おっ、着付けも慣れたね」「まぁ・・何回か着たから」そう・・何回か。 自分で。 着てしまったのだ。 着物は落ち着いた感じの柄だ。 気持ちも落ち着く。 「はい、これでいいね」 「あぅ・・」 「私の親戚って事にしとくから」 「うん・・・」 人前に出るのか・・。 やっぱ恥ずかしいな。 でもムクムクと心が変わっていく。 小悪魔に・・。 ニョキッと角が生えた気がする。 「うんうん、春くん可愛いよっ」 「あは、ちょっと誘惑しちゃお!」 「ははっ、がんばれ!」 鏡を見た。 もう少し武器を持つかな。団扇。 巾着袋。 花のかんざし。 などなど・・・。 これは自分で買った。 僕の行く末が心配だ・・。 少し出掛けよう。 廊下を歩く。 袖をフリフリ。 心はノリノリ。 下駄を履いて限界の戸を開けた。 「わっ、春・・出かけるの?」 「うんっ、いってきます」 美空ちゃんがキョトンとしてる。 「春、私も・・」 「お願い・・一人になりたいから」 「・・・うん」 美空ちゃんはしゅんとした 僕は美空ちゃんを避けている。 あのエッチをしてるのを聞いたら心が・・折れてしまった。 もう・・叶わない。 諦めようって。 友達のままでいいって。 神社を出た。 ドッキドキする。 女装面白いっ! みんな見てるし・・。 僕は声も高いからぜったいにバレない。 上品に歩いてみる。 巾着袋を持ってふらふら。浴衣姿の人がたくさん。 やっぱりお祭りにはたくさん人が来るな。 男の人の視線が・・。 なんかいいなぁ・・。 もう女装好きになっちゃった・・。 歩き方もいい感じ。 ルンルン・・・。 遊さんだ。 誘惑してみよっかな。 どうせバレないし。 僕を見た。 近寄ってみる。 「あれ?春、何してんの?」 グサッ。 体が強ばって何も言えなくなった。 「だ、だあれ?」 「春はそういう趣味だったのか・・」 遊さんに抱きつく。 周りの目線が怖い。 こっそり話す。 「あ、あのっ、内緒に」 「別にいいけど・・・」 「何で分かったんですか?」「勘かな・・・」 「ふぇ・・・」 遊さんから離れた。 周りがざわざわしてる。 遊さんは僕の頭をガシガシ撫でた。 かつらがずれるかと思ったけど全然大丈夫だった。 「じゃあな!」 「あ、はい・・」 浴衣着てるからお祭りに来るのかな。 はぁ・・心臓に悪い。 商店街を歩く。 みんなに見られる・・。 楽しいなぁ・・。 駅まで歩いた。 もう日も落ちそうだ。 少しのどが乾いた。 マックがある・・。 抹茶シェイク飲みたいな・・・・。 お店に入った。 あんまりお客はいない。 「すみません、抹茶シェイク一つ」 「はい、少々お待ちください」 ここでも見られてるーっ!こんなに楽しいのは初めてだ。 料理なんかより・・・。 楽しい・・・。 そんな訳ない・・。 抹茶シェイクを受け取って外に出た。 ベンチに座る。 「ねぇ、美空ちゃんは・・」 いないんだった・・。 隣には・・。 僕は一人きり。 抹茶シェイクを飲んで少しポケーッとする。 「ねぇ、今美空っていった?」 「はい?」 振り返った。 すっーごい美人・・。 黒髪の女の人。 「あ、はい・・友達です」 「そっか、その子に会わせてくんない?」 「えと・・怪しい人?」 女の人は苦笑した。 「ごめんごめん、ちょっと訳ありでね・・隣いい?」 女の人が隣に座った。 凄い美人・・・。 18歳くらい? 「おいしい?」 「・・はい・・」 「はは、怖い?」 ニコッと笑った。 なんか優しそうな人。 「君、可愛いね・・ヨダレたれそう」 けど変態っぽい。 「和服美少女か・・たまらんっ!」 「今日はお祭りですから・・美空ちゃんは神社にいます・・」 「へぇ・・じゃあちよっと付き合ってよ」 「・・・はい?」 なんか付き合わされた。 女の人の後ろを歩く。 「なつかしい・・」 「前に住んでたんですか?」「まぁね・・」 結構歩いた。 前に来た・・あの家だ。 美空ちゃんが前に住んでたって家。 「はぁ・・おばちゃん・・ごめんね」 「・・・・?」 また歩き出した。 少しつかれてきた。 息が切れる。 「疲れた?」 「はひ・・」 「おんぶしたげる!」 「いいです・・」 「遠慮すんなっ!」 おんぶしてもらった。 髪・・いいにおい。 さらさら・・・。 もうお祭りは始まっていた太鼓が鳴っている。 みんな見てる。 「も、もう歩けます」 「そっか・・」 着物を整える。 たくさんの人・・。 ちらちら見られる。 なんかいい気持ち。 夜店が来ている。 焼きそばのいいにおい。 美空ちゃんと美月くんが手を繋いで歩いていた。 やっぱり・・無理だな。 壊すことできない。 僕は付き合えない。 あきらめるしかない。 「美空ーっ、美月ーっ!」 女の人が叫んだ。 二人が振り返った。 凄く嬉しそうな表情になった。 二人が駆け出した。 僕には目もくれずに。 女の人に抱きついた。 「ママッ!」 「あやーっ」 顔を擦り付けている。 お母さんか・・・。 いいな・・・。 「遅すぎるから迎えに来たよ・・帰ろう」 「うんっ・・」 帰るのか・・・。 お別れ・・か。 僕はお邪魔だな。 スタスタと歩く。 利奈さんが神楽を踊っていた。 綺麗・・・凄く綺麗。 練習見せてくれなかったから余計に・・凄く感じる。じっと見てしまった。 これは惚れちゃうな・・。 夜店で焼きそばを買った。石段に座って食べる。 僕は・・一人? 美空ちゃんがいないと・・一人きり・・。 友達ができたのは美空ちゃんのおかげじゃないか・・僕は何も変わってない。 胸が苦しくなる。 寂しい・・・。 「春くん・・?」 「お姉ちゃん・・」 「暗い顔してどうしたの?」「僕・・分かんなくなった」利奈さんが隣に座った。 「春くん、お祭りだよ・・暗い顔しちゃダメ」 僕の手を握ってくれた。 「うん・・」 「さ、お祭り楽しもう」 「うんっ」 手を引いてくれた。 利奈さんとお店をまわる。巫女服から浴衣に着替えたみたいだ。 「利奈ちゃーん」 「あ、綾さんっ」 知り合い? 綾さんは僕を見た。 「利奈ちゃんに妹いたっけ?」 「あは、この子は私の親戚なんです」 祭りが終わってから大体の事を聞いた。 そして僕が男の子だって事も話した。 「ま、まじ?・・・君は男の子?」 「はい・・」 「信じらんない・・美月ぐらいきゃわいい子がこの世にいたとわ・・」 「あ、あは・・・」 綾さんは迎えに来たらしい・・。 美空ちゃんはその方がきっと幸せなんだ・・。 きっと・・・。 お祭りが終わって後片付けをしてる。 美空ちゃんと美月くんが荷物を持っている。 「じゃあお世話になりました」 美空ちゃんはうつむいている。 帰れるのに悲しいの? 「さ、帰ろう・・」 三人が歩いて行く。 僕は・・我慢しなきゃ。 美空ちゃんは美月くんが好きだから。 僕は好きになっちゃだめ。 ダメ・・なんだ。 手を振って見送った。 「帰っちゃったね・・」 「はい・・」 利奈さんも寂しそうだ。 僕は・・なんかよく分からない気持ち。 悲しいし・・。 別れたくない。 けど我慢してる。 押し殺してる。 追いかけて引き留めたい。けどダメだから・・・。 「春くん、お家入ろう」 「うん・・」 もう後片付けが終わってガランとしてる。 トボトボ歩く。 あっけない恋だった。 けど・・素敵な時間。 夢を見たんだ・・。 きっと・・あんな綺麗な女の子に恋するなんて。 背中に何か当たった。 ぎゅっと抱き締められた。 利奈さんは隣にいる。 誰・・・? 「春っ!」 「美空ちゃん・・」 「帰れないよ・・帰れない・・春を一人にできない」 泣いてる・・。 僕の事がそんなに心配? 「春・・帰らないよ・・私・・帰らない」 「美空ちゃん・・いいの?」「うんっ・・」 美空ちゃんを抱き締めた。僕から・・抱き締めた。 震えてる・・。 そんなに泣いたら目が腫れちゃうよ・・そう言いたかった。 けど僕も泣いてしまった。 「美空のわがまま・・聞いてやるかなぁ」 綾さんと美月くんもいた。 「綾さん、部屋はたくさん空いてますからどうぞ」 「うん、よろしくね」 美空ちゃんをきつく抱き締めた。 「美空ちゃん・・」 「春・・追いかけるくらいしなさいよ・・」 「うん・・ごめん」 着物・・汚れちゃうな。 けどいいや・・。 大切な人を抱き締めた。 友達でもいい。 そばにいて・・・。
11/02/24 13:40
(BFmgL8qv)
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春
◆KEJbDUVQ9A
夏休みがあっという間に終わった。
新学期になりみんな日焼けしてたりしてなかったり。美空ちゃんは帰らずに僕の隣にいてくれる。 美月くんもいてくれる。 良かった・・・。 大切な友達・・。 別れるのは辛い。 授業が始まる。 宿題は頑張ったけど少し出来なかった所がある。 まだ傷が痛むし鉛筆で字も書けない。 けど昨日やっと包丁を握れた。 包丁を握って大根を切れた・・・。 とっても嬉しくて・・、 涙が出た。 また料理ができそうな。 そんな気がした。 休み時間。 夏休みの話で盛り上がる。結実は海に行ったらしい。僕は行った事ないなぁ。 学校が終わって家に帰る。綾さんはまた外国に帰った 外国で学校をしているらしい。 凄い美人だった。 美空ちゃんと美月くんのお母さんだしな。 三人で喋りながら帰る。 二人が帰ってしまったら寂しかっただろうな・・。 本当に良かった。 神社の前に誰かたっている・・・。 なつかしい顔。 「お母さん・・」 お母さんだった人。 育ての親。 「春ちゃん、久しぶり」 「なんなの?」 「調子はどう?」 凄くイラッとした。 僕を捨てたのに・・。 「うるさい・・帰れっ!」 「春ちゃん・・」 「僕を信じなかったくせに・・何も・・信じてくれなかったくせに!」 「春ちゃん、帰ってきて欲しいの」 この言葉で頭が怒りでいっぱいになった。 お母さんに殴りかかる。 けど美空ちゃんと美月くんに止められた。 「春、落ち着いて!」 「はぁ・・はぁ・・ふざけんな・・今更・・」 お母さんは凄くビックリして悲しそうな顔になった。 「こんにちわ、話は中でしましょう」 利奈さん・・・。 その場はなんとか抑えた。 家に入って欲しくなかった・・。 居間で話を聞いた。 二人・・・きり。 話せない・・・。 昔好きだった。 今は憎い・・・。 ガラッ。 美空ちゃんが入ってきた。「美空ちゃんには関係ないよ」 「・・ある、友達だもん」 「・・・・」 「もしかしたら、春を止めなきゃいけないし・・」 今殴りたくて苛々する。 今更帰れだなんて。 「春ちゃん、ごめんね」 「・・・・」 「凛がね・・危ないの」 「危ないって?」 やっとお母さんの顔を見れた。 悲しそうな顔。 やつれてる。 「末期の肝臓ガン・・もう助からないって」 「ガン・・・」 天罰だろって思った。 けど・・心配になる。 「凛は調子がおかしい事・・・気付いてたんだって・・・でも我慢してた」 「それで・・帰って来いって事?」 「酷いお姉ちゃんかもしれないけど・・だめかな?」 帰りたくない。 けど・・・。 お姉ちゃんは苦しんでる。僕は女の子には優しくするって決めたんだ。 だから・・・。 「分かった・・・」 「春ちゃん・・・」 「けど・・今日は帰って・・・お願い・・」 「うん、ごめんね」 お母さんは立ち上がって出ていった。 気持ちを整理する。 一人で大丈夫かな・・。 「春、大丈夫?」 「分かんない・・けど・・凛姉ちゃんの事・・心配になっちゃった」 大嫌いだけど一番笑って欲しかった人。 僕のお姉ちゃん・・。 「春、私もついてくよ」 「えっ・・?」 「春は凄く不安だから・・私もついていくよ」 「美空ちゃん・・・」 「嫌なら・・いいよ」 「ありがとう・・嬉しい」 美空ちゃんが来てくれるなら少し落ち着くかも。 お姉ちゃんと会うのは怖いし・・。 「私がいれば怖くないでしょ?」 「うん・・」 「私は春の味方だから・・」「うんっ・・ありがとう」 事情は利奈さんと将さんにも話した。 「私がついて行く方がいいんじゃないかな・・」 利奈さんは心配そうな顔をしている。 「大丈夫・・私が春を支えるから・・」 美空ちゃんが手を握ってくれた。 「僕も・・美空ちゃんがいれば安心するから」 利奈さんは微笑んだ。 一番安心する人がいれば大丈夫。 その日の夜は案の定、寝れなかった。 明日、帰る。 凛姉ちゃんに会わなきゃいけない。 怖い・・・。 「春、入るよ」 「美空ちゃん?」 美空ちゃんが枕を持って入ってきた。 「私も寝れないから・・」 「あ、うん・・」 「隣、いいよね?」 「うん・・・」 美空ちゃんが隣で寝ている・・・。 大切な友達だから・・。 いやらしい事はできない。「春・・」 「なぁに・・」 「私、春が好き・・」 「えっ・・?」 火が再び灯る。 消したはずの熱い・・火が・・・。 「友達として?」 「ううん・・人として・・異性として」 ドキッ・・ドキッ・・。 「だから一緒に行きたいって思った」 ドキドキドキドキ。 胸の鼓動が早くなる。 「私・・今分かんなくなってる・・美月が好きなのに・・」 「美空ちゃん・・」 「春が好き・・どんどん好きになってる・・そばにいてあげたくなる」 そんな・・・。 僕は・・・。 「美空ちゃん・・」 「うん?」 「抱き締めてもいい?」 「・・・うんっ」 美空ちゃんをしっかり・・抱き締めた。 僕の想いも言わなきゃ。 でも・・まだ美空ちゃんは悩んでる。 まだ・・告白できない。 まだ勇気が出ない。 ぎゅっと抱き締めた。 心臓がおかしくなってる。 きっと眠れない。 翌朝。 駅前・・。 少しも眠れずに朝がきた。「春、行こう・・」 「うん・・」 美空ちゃんが手を差し出してくれた。 ゆっくり握った。 僕一人じゃないから・・。 好きな人と一緒・・。 この壁を越えたら。 僕の想いを伝えたい。
11/02/24 16:59
(BFmgL8qv)
投稿者:
春
◆KEJbDUVQ9A
電車に揺られてやっと駅についた。
美空ちゃんが隣にいてくれて助かった。 凄く辛い・・・。 駅でタクシーを拾う。 「県立病院までお願いします」 お母さんはお金をたくさん持っている。 それなりの設備の整った病院に入ったらしい。 会話ができない。 話が思い浮かばない。 押し潰されそう。 「春、私がいるから・・」 ギュッと手を握ってくれた・・・。 「ありがとう・・」 「もっと頼っていいよ・・」「うん・・」 美空ちゃんの微笑みが唯一の救いだ・・。 病院についた。 病室の番号は知ってる。 エレベーターに乗る。 重苦しい空気・・。 耐えられない。 3階についた。 一歩進む。 もう一歩。 病室の前に来た。 立ち止まる・・。 「美空ちゃんは待ってて」 「うん・・」 扉を開けた。 お母さんがいてお姉ちゃんがベットで寝ていた。 僕は・・。 一歩進んだ。 「春・・・」 お姉ちゃんが僕を睨んだ。怖い・・凄く怖い。 酷い事された・・。 「お姉ちゃん・・」 「なによ・・ざまあみろとか思ってる?」 吐き捨てるように言った。元気はない。 凄く痩せている。 「思ってない・・」 「ふんっ・・・」 そっぽを向いた。 本当に僕の事が嫌いなんだな・・。 「凛、仲直りしよ・・」 「嫌よ・・」 お母さんは困っている。 気まずい空気・・・。 会話もない。 「お姉ちゃん・・ごはんは?」 「食えるわけない・・」 どうしたらいいんだろう。僕は・・・。 「お母さん、二人にして」 「春ちゃん・・」 「お願い・・・」 「・・・分かった」 お母さんが出ていった。 椅子に座る。 「何よ・・私の事恨んでるんでしょ?」 「恨んでる・・」 「・・・ふんっ」 「でもお姉ちゃんのおかげであの場所に行けた。たくさん友達もできた」 「・・・・」 「僕、お姉ちゃんに笑ってもらう」 「黙れ・・笑える訳ない」 お姉ちゃんは凄く怒ってる・・・。 何とか・・笑わせたい。 「明日も来るから」 「来んな・・・」 「絶対に来る・・」 「・・・」 病室を出た。 お母さんと美空ちゃんが話していた。 「春ちゃん・・いい友達だね」 「うん・・」 美空ちゃんは壁によりかかっている。 「お母さんはどうするの?」「泊まり込みしたいんだけどね・・・帰らなきゃ」 僕はホテルに泊まる予定だった。 けど気が変わった。 「僕も帰るよ」 「春ちゃん・・」 「美空ちゃんはどうする」 美空ちゃんは目で答えた。僕のそばにいてくれる。 先に家に帰った。 久しぶりに見るマンション・・・。 「春はここで育ったんだね・・」 「うん・・」 エレベーターに乗って部屋に向かう。 家はどうなってるかな。 部屋の鍵を開けた。 変わらない・・・。 何も変わらない・・。 「あがっていいよ・・」 「お邪魔します・・」 キッチンを見る。 ちゃんと片付いている。 使った後はない。 「美空ちゃん、あっちで待ってて」 「うん・・」 とりあえずお茶を入れよう お湯を沸かす。 「春っ・・」 抱きつかれた。 優しくて・・柔らかい。 「大丈夫?」 「うん・・美空ちゃんがいてくれたから」 お湯が沸いた。 手が震える・・・。 ヤカンを持てない。 美空ちゃんが僕の手の上にそっと手を重ねてきた。 二人でヤカンを持った。 二人で急須にお湯を注いだ テーブルでお茶を飲む。 美空ちゃんがいなかったらどうなってたんだろ。 特に会話もなく時間が過ぎる。 ただ美空ちゃんが手を握ってくれていた。 夜になりお母さんが帰ってきた。 疲れはてている。 「ただいま・・」 「お母さん、夕飯作ったよ」「・・・うん?うどん・・」「お母さん好きだったよね」「・・うんっ」 笑ってくれた。 僕も食べた。 やっと落ち着いてきた。 「春ちゃん・・お母さんは何もできなくて・・ごめん・・」 「いいよ、何もできなくても・・僕はお母さんの子供じゃない・・」 「・・・・・」 お母さんがうつ向いた。 「でもね・・お母さんなんだよ・・育ててくれたお母さん・・」 「春ちゃん・・」 「お母さん、ありがとう」 それを聞いてお母さんは泣いてしまった。 僕は嘘をついた。 凄く嫌い・・だけど今そんな事言えない。 とてもじゃないけど。 言えない・・・。 久しぶりに入る自分の部屋・・。 ベットと布団が敷いてある「美空ちゃんベット使っていいよ」 「春・・・」 「僕は布団でいい・・」 美空ちゃんが僕のパジャマの袖を掴んだ。 「一緒に寝よう・・」 「美空ちゃん・・」 「春を抱き締めて寝る・・そうしたい」 「ありがとう・・」 一緒にベットで寝た。 ドキドキするけど。 疲れてしまった。 「春・・おやすみ」 「うん・・おやすみ」 目を閉じた。 いつの間に寝てしまっていた。 翌日も病院に行った。 お姉ちゃんは僕を見ようとしない。 「お姉ちゃん・・これ」 僕はカバンからタッパを取り出した。 「おにぎり作ったから・・食べて」 家にある炊飯器で炊いて。家にある塩で握ったおにぎり。 僕がお姉ちゃんのために一番よく作った食べ物。 タッパをわきの机に置いた・・・。 お姉ちゃんはそれを掴んで僕に投げつけた。 「そんな物・・いらない」 僕は拾ってまた机に置いた「食べたくなったら・・食べてね」 僕は病室を出た。 お姉ちゃんは僕がいるとイライラするだろうから。 美空ちゃんが待っていた。「春、もういいの?」 「うん、明日また来る」 その日は帰った。 次の日また病院に行った。病室に入るとお姉ちゃんは背中を向けて寝ている。 タッパのおにぎりは無くなっていた。 「お姉ちゃん・・」 「まずかった・・」 「うん・・また持ってきたから食べてね」 「・・気が向いたらね」 その日も帰った。 次の日もその次の日もおにぎりを持ってお見舞いをした。 お姉ちゃんの雰囲気がだんだんと変わってきた。 僕を見ても睨まなくなってきた。 だんだんとそれが嬉しくなってきた。 少し話もしてくれる。 「春、友達はどんな子?」 「来てるけど・・会う?」 「うん・・・」 廊下に待っていた美空ちゃんを呼んだ。 お姉ちゃんは美空ちゃんを見てため息をついた。 「春・・こんな可愛い子、友達にできたんだ・・」 「うん・・」 しばらく話した。 今までで一番喋った。 もう消灯時間になった。 「お姉ちゃん、そろそろ帰るね」 「うん・・・」 「じゃあね、明日もおにぎり持ってくるから」 病室を出ようとした。 「春・・・」 「なに?」 「おにぎり・・美味しかったから・・一個多めに作って・・」 うつ向いている。 けど・・嬉しかった。 「うんっ、分かったよ!」 もしかしたらお姉ちゃんは治るんじゃないかな。 食用も出てるし。 そう思った。 次の日。 お姉ちゃんは・・。 もう動かなくなった。 ベットで胸におにぎりのタッパを抱えたまま。 笑っていた。 凄く幸せそうに・・。 僕のおにぎりを楽しみにしてくれてたんだな・・。 最後の最後に見せてくれた笑顔だった・・。 お葬式にはたくさんの人が集まった・・。 美空ちゃんには先に帰っていいと言ったけど。 そばにいてくれた。 おにぎりを作った。 家で作って持ってきた。 お皿に乗せて備えた。 「お姉ちゃん・・・」 最後に笑ってくれた。 嬉しかったよ・・・。 「春ちゃん・・」 お母さんが後ろにいた。 「お母さんはこれからどうするの?」 「おじさんにね・・結婚しようって言われたの」 「そっか・・よかったね」 「春ちゃんは?」 「僕は・・」 お母さんには悪いけど。 帰らなきゃいけない。 「あの場所に帰るよ」 「そっか・・」 お母さんが頭を撫でてくれた。 ゆっくり微笑んだ。 僕は帰らなきゃいけない。やらなきゃいけない事がある。 美空ちゃんに・・想いを伝えないと。 頑張って一歩踏み出すよ。 見ててね・・お姉ちゃん。 転ばないように気をつけるからさ。 転んだらまた笑ってね。 頑張るから・・。
11/02/25 00:33
(ZszXE8F3)
投稿者:
六
毎回楽しみにしてます。是非完結までお願いします。個人的にはハッピーエンドが良いですけど、頑張ってください。
11/02/25 00:38
(a6WoQ0GY)
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