汚物マニア
1:優美夫人
投稿者:
圭一
◆QhdLAF3pu.
2010/11/08 12:06:56(Dh6sS4aD)
なぜか続きが読みたくなります。お願いします!
10/11/16 00:59
(BrAC8Dmn)
「え?取れたのですか?」
「9時の便で乗り継ぎになるからな。さ,支度をしよう。午前中のうちに出て今夜は千歳に泊まろう。」
「え?」
「私も一緒に行ってみる事にしたよ。道後温泉には一度行ってみたいと思ってたからね。」
夫人も嬉しそうに横で笑っていました。
氏の行動力に驚きながら支度をしたものでした。
雪の溶けた峠の道を。
一面にラベンダーの咲き誇る草原を。
近くの農家で貸してもらった馬に乗り夫人と三人で走った事を。
網走の海を見に行った事を。
誕生日に札幌へ行きお祝いをしてくれた事を。
少しずつ変わる季節を感じながら駅までの送り迎えする車で話した事を。
ゆっくりと時間の流れる日々の中で牧方氏は本当の子供に接する様に愛情を与えてくれました。
それは牧方氏のところに居着いて二度目の冬が終わる頃,突然の事でした。
「圭一。」
「はい。」
「頼みがある。」
「何ですか。」
「俺はもう永くなさそうだ。こんな事を頼めるのは圭一以外にいないと思っている。」
突然の話しに言葉も出ないでいました。
「家内を任されてくれないか。」
「そんな‥永くないって‥どう言う事ですか?」
週に一度ないし二度の札幌へ通っていたのは氏の言葉通り,顧問としての勤めだと信じて疑わなかったのですが。
定期的に札幌の病院へ一人通っていたのでした。
入院をする様に医師からも言われていたのを気力で断っていた様でした。
「最期はあの家で死にたいと思っていたが,考えてみたら年寄りのわがままだと気付いたよ。看護婦や医者を通わせるにはあまりにも酷過ぎるしな。」
「夫人には?」
「言ってないが感づいているだろう。」
「そうですか。」
「あれは本当に芯のしっかりした良い女だ。しっかりし過ぎて疲れる時もあるがな。」
寂しそうに笑う氏を見ていました。
「圭一はまだまだこれからの人間だから一生あれの面倒をみてやれない事は十分わかっているつもりだ。ただ‥私がいなくなった後も良い男ができるまで気にかけてやってくれれば良い。」
「いつ?」
「医者からはすぐにでもと言われてるが。今日行った時に決めてくるよ。」
夫人は気高な人だった。
入院が決まり,病気の事を知らされても人前で悲しむ素振りも見せずに氏を励ました。
10/11/16 08:11
(JNnw4Dj/)
氏が札幌の病院に入院する事になり
「退屈だろうけど,圭一はこの家に残って家を守ってくれ。」
氏の言葉に従って週に3回ほど見舞いに札幌へと往復する生活になった。
夫人は札幌に泊まり込み週に一度,私と一緒に家に戻ってくる生活へとなった。
「もう,あまり保たないかも知れないわね。」
「そうなんですか‥」
「先生に言われたわ。」
「奥さん‥」
駅から帰る車の中で初めて夫人の涙を見た。
「元気出してください。」
「うん。わかってる‥」
こんなに重苦しい雰囲気となったのは初めてだった。
家に着き,暖炉に火を起こすと夫人が隣に座った。
「奥さん‥」
「うん。ごめんね。泣いたりして。」
「良いんですよ。僕の前では泣いてくれても。」
胸に顔を埋めて子供の様に声を上げて泣いているのを抱きしめてあげた。
ひとしきり泣いた後,
「ありがとう。すっきりしたわ。」
そう言い身体をもたれていた。
「どこで知り合ったんですか?ご主人とは。良かったら聞かせてください。」
「おかしいのよ。こんだけ年が離れてるでしょ。周りから見たら資産目当ての女にしか映らないわよね。」
「いえ‥」
三人で暮らした日々の中でそう思った事は一度もありませんでした。
そして,昨日お見舞いに来た息子達から,万一の時の葬儀は会社の方でやるからと言われたと聞かされたのでした。
「圭一‥」
「奥さん‥」
氏が病院に入り,ずっと耐えていたのでしょう。
思い出しては泣く夫人の肩を抱いていたのでした。
「ありがとう‥もう大丈夫‥お腹減っちゃったわね。」
「奥さん。がんばってください。ここの人達はみんな奥さんの味方ですよ。」
「昔ね。籍を入れて間もない頃,あの人が私に言った事があるの。いつかは君を残して逝く日が来るはずだから‥いつでも心の準備をしておいて欲しいって。年だけじゃなく私よりも一回りも二回りも大人だったわ。愛してるって言葉よりも尊敬していたんだと思うわ。」
「僕も同じです。」
「ありがとう。明日,一緒にお見舞いに行ってくれる?」
「はい。行きましょう。」
「初めてね。圭一とこんなに二人で話しをするの。」
「そうですね。」
「あの人ったらね。もしもの時は圭一の事を頼む。なんて言うのよ。」
「僕も同じ事を言われました。」
「おかしいわよね。」
10/11/16 14:59
(JNnw4Dj/)
次の日に身支度をして,また札幌へと向かった。
見舞いに病院を訪れると一昨日,顔を見たばかりなのに奥さんの事を僕の事を喜んでくれた。
最後の列車に間に合う時間に合わせて氏が帰る様に言った。
「たまには僕も札幌に‥」
「圭一,家を守ってくれ。」
なぜか病の床に伏せていても家の事を心配するのだった。
「また来ますから。」
「気をつけて帰るんだよ。」
その時交わした言葉が氏との最期でした。
家に着き,暖炉に火を灯そうとした時に電話が鳴りました。
「圭一‥」
夫人の泣く声で全てを察したのでした。
「明日,行きますから。しっかりしてくださいね。」
それからの一週間は瞬く間に過ぎたのでした。
集落の人達と葬儀に出た時は一番見近にいたはずなのに多くの人達の慰問客の中の一人となってしまい,複雑な想いとなったのでした。
自分でさえそう感じたのだから夫人は尚更だった事でしょう。
「圭一‥」
「はい。」
「これからどうするの?」
札幌のホテルで葬儀の後,夫人と二人でいました。
「何か探そうと思います。」
「何かって?」
「仕事を。」
「出て行くの?」
「はい。それしか‥」
「いて。一人にしないで。」
「でも。」
何の収入もない私達が自給自足に近い生活と言ってもいつか尽きてしまうのは解りきっている事でした。
「私が圭一の事を‥」
「でも‥」
「そうして。」
あの家を出ても住む所と仕事から探さなくてはいけない自分には‥
すぐに出て行く事はできないのも事実でした。
「少し‥あてができるまでまで置いてください。」
「だから‥一緒に‥お願い。」
そして,あの広い,氏の思い出に包まれた家に夫人一人を残して出て行く事もできない気もしました。
「奥さん‥」
「圭一はあの人と約束してくれたんでしょう。私の事を守ってくれるって‥」
「奥さん‥」
大切な人を亡くして悲しみの中にいる夫人を追い討ちをかける様に一人にする事もできませんでした。
「帰ろう‥」
「奥さん‥」
「私達で‥分骨してもらって‥庭にあの人の小さなお墓を立ててあげようと思うの。帰りたがっていたわ。ずっと‥」
「奥さん‥」
声を殺して泣く夫人の肩を抱いてあげたのでした。
10/11/16 21:26
(JNnw4Dj/)
いよいよ本題に近づいて来そうな感じですね?続き待ってます
10/11/16 22:43
(BrAC8Dmn)
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