義父61歳、義母57歳、嫁34歳、子供は8歳と4歳の男の子で
私は37歳。義妹がいるが関西の大学に進みそのまま就職。
関西で知り合った男性と結婚し2歳になる子供がいる。
嫁実家は新幹線で90分ほどのところにある。
10数年近く義父母は二人暮らしている。
義父は定年後、嘱託として週4勤務している関係でそれなり
の収入があるのだろう。第一線を退いてから
『うちに来るときは金曜に来い』といいだした。
翌土曜日に子供たちをつれ電車で出かけるのが目的
だった。最初にうちは私も義母も付き合っていたが、
男の子の動きがつかめない義母はほとほと疲れて
参加しなくなる。義母と前後するように私も参加し
なくなった。理由は寝ていたい。ようは義父が満足
すればいいだけだし、嫁は義父がいればうまい物が
食べられるし、下の子が嫁から離れないこともり、
実家に帰った土曜日は4人の鉄道旅が定着していた。
「ケイちゃん、明日起きたら買い物に津れってって」
こうして土曜日は義父グループと別行動になっていた。
ショッピングセンターまではクルマで30分、とりとめ
のない話で時間がすぎていた。往復1時間、義母と
二人だけの空間は緊張から心地いものに変わっていく。
地理的にも実家に行きやすいため、2ヶ月に一度は
ご機嫌伺いに行っている。一番喜んでいるのが子供
たちで、次に嫁だ。わたしはどっちでも良かったが
春頃から喜ぶ順序が変わってくる。
2ヶ月に1度、1時間とはいえ狭い空間に義母と私。
それを1年も続けていると義母と私の距離が縮まって
いく。縮まれば縮まったで義母の不平不満を聞くよう
になってくる。
3月だった。買い物に出る前、義妹から電話があった
ようだった。
「電話の向こうで『ママはバァバと話してるからパパ
とあそぼ』って聞こえたのよ。婿にまでバァバって
言われてるのよ!」
「家族だからそんなもんでしょ」
「それそうよ、今までもバァバって言われてたし、でも
改めて婿に言われると女を否定された気持ちになっちゃ
って…子供が生まれてから女じゃなくなっちゃたのよ」
「お義母さんは可愛い女性ですよ」
嫁と婚約しているときから義母の誕生日にはプレゼンを
送っていた。それは今も続けている。
「家族かぁ~…あの子が言ってたけど、ケイちゃんは
今でも食事に誘うんだってね。子供がいるから休暇
もらってランチに行ってるって」
「子供がいても二人の時間を持ちたいんですよ」
「ほら、ちゃんと娘を女性扱いしてるじゃない!」
義母の横顔を見ると、わずかに頬を膨らませていた。
その表情が可愛く思えた瞬間だった。
「僕はお義母さんのことを可愛い女性だと思って
いるよ」
ちょうど信号待ちでクルマを止めたときだった。
腿に置かれた義母の手を包むようにして軽く握る。
義母のカラダがピクッとしたのがわかった。
「ケイちゃんの手温かいね。私の手冷たいでしょ」
あいた手を私の手に乗せてくる。
「ほんとだお義母さんの手冷たいね」
信号が青に変わりクルマを走らせる。義母の手が離れ
私も手を離す。
ショッピングセンターに着き買い物を先に向かおうと
すると「ケイちゃん、お茶していこうか?」
「いいね!お義母さんと差し向かいで…」
「いい響きね」
店に入る手前で義母の手を握る。ハッとして私を見る
義母。強めに握ると義母も握り帰してくる。
「誰かに見られちゃうよ」
と小さな声が聞こえた。距離にして20mぐらいの
初デート。
席に着きしばらくするとコーヒーが置かれる。
「短い距離だったけど、お義母さんと初デートだったね」
義母はあたりを見回し落ち着きがない。
「知り合いがいたらどうしようか、と思っちゃたわよ」
「ごめんごめん、お義母さんが可愛かったから…」
「ドキドキしちゃったし今もドキドキしてるわよ」
「僕も同じ…」
コーヒーカップを持つ手がわずかに震えていた。
「ケイちゃん、手が震えてる(笑)」
「ねぇ、けいちゃん他のショッピングセンターに
行かない?」
「僕はかまわないけど…」
「ここじゃ落ち着かないし、どうせあの子たち
帰り夕方だしね」
「手をつないで歩ける?」
「そういう意味じゃない!落ち着かないだけよ!!」
キッとした目で私を睨むが、どこか優しさが残っていた。