結婚して13年、42才の修治と言います。
妻晴子は私より二つ上、44才です。
私は小学校中学校といじめに合い、高校でも根暗人間と言われ、社会に出ても人と接するのが大の苦手でした。
自動車修理工場で働き、当然のことながら彼女無しの童貞のまま迎えたい25才でした。
一つの転機が訪れました。
事務員として働いていた、社長の奥さんの親族の人が、出産育児のため退職、代わりに入ってきたのが晴子でした。
前にいた事務員の人、社長の奥さんの親族とあって、どこかツンとしたところがあり、根暗な私など、仕事の用事で話かけても面倒くさそうみたいな態度でした。
油汚れまみれの私達を毛嫌いしてる、そうも取れる態度で、工場の職員からちょっと嫌われてました。
代わりに入ってきた晴子は全くの逆、積極的にいろんな人に話かけてくるし、休憩とかになると、自ら率先してお茶、コーヒーをみんなに出してました。
特に根暗で人と接するのが大の苦手な私には、事あるごとに話かけてきた晴子でした。
はっきり言います。
晴子は太めだし、顔もブスと言えるレベルです。
本人もそれを自覚してました。
でも明るくて、私みたいにジメジメしたところがない、密かに恋心を持つようになってました。
小中高時代の影響か、人を好きになると言うことを封印していたような私に、多少変化が起き始めたのがわかりました。
昼休みも、工場内の休憩所で、一応みんなと食べるんですが、あまり会話に加わることもなかった私でした。
私より二つ上ということもあり、姉みたいに接するようになってきた晴子にある日言われました。
『もっと積極的にみんなの輪に入ったら?』
私はもじもじと冴えない態度をしてると、こう続けました。
『仕事ぶりは真面目だし、もう一人前と思っている、それが場長さんの言葉だよ』
周りの私の評価は低いと思ってました。
一人前なんてそんな自信もありませんでした。
でもよく考えたら、場長や先輩から、出来るだろ?任せたからな、そう言われることが増えていた、それに気づいたんです。
晴子から言われなきゃ気づかなかったと思います。
少しだけ積極的さを出せるようになってきた、すると周りの私を見る目も変わってきたような気がしました。
26才のときの忘年会、多少酔っていた社長は私を隣に呼びました。
そしてみんなに向かってこう言いました。
『修治が積極的に仕事に取りかかる姿勢が、今年我が社の一番の収穫だと思う』