過ぎ去り人
あれは、小雨降る夕暮れ時だった。
改札口を降りる私の視界に、懐かしい人影が写り込んだ。
何年ぶりだろうか?
化粧気のない端正な横顔、白髪まじりの髪に過ぎ去った時を感じた。
小走りに走り去る彼女は、どこに向かうのだろうか?
帰る家庭があるのだろうか?
あの日、あの時、数年間、お互いが愛し合った月日を思い出す。
気がつくと涙が溢れだしていた。
私には、不本意な別れであったと思っている。
私の優柔不断な気持ちが、彼女を傷つけることとなった。
彼女にとっては、残酷な仕打ちだったのかもしれない。
仕事先で知り合った彼女は、人妻だった。
人妻だった彼女を誘ったのは、私だった。
始まりは、レイプ同然に結ばれた関係だった。
主人しか知らない彼女にとっては、新鮮な驚きだったようだ。
避妊だけは、決して怠ることはなかった。
関係を重ねるうちに、彼女の反応は変わっていった。
貪欲に求めるセックスの快感は、やがて禁断の世界に入っていった。
その日は3回目のセックスだった。
スキンがなくなっていた。
スキンをつけない挿入は、お互いにとって初めての感触だった。
あまりの快感に、私の動きに呼応するかのように卑猥な言葉を放った。
下から突き上げる彼女の腰の動きに、体の奥から湧きあがる精液を解放した。
快感に泣き叫ぶ彼女の体の震えは、どれだけ続いただろうか?
それから数ヵ月後、彼女から妊娠したことを告げられた。