男性はスーツに身を包み紳士的な所作と言葉使いで渋めのイケメンで妻の好きそうな感じでした。私の第一印象は「この男はまずい」と思い妻に話し掛けないでと祈りました。
その男性は店の常連さんのようで何も言わずに私と妻との間の席に座りマスターと話をし出しました。男性はマスターと話しながら妻をチラチラ見ているようでした。妻も目が合うと軽く会釈をしていました。何度目か目が合ったとき男性が、「お一人ですか？ココ初めてですよね？」と話し掛けました。妻は「ハイ」と無防備な笑顔と声で答えました。
この男だけはと言う祈りも空しく最悪（最高）の展開になっていきました。
男性はマスターに妻へ飲み物をと告げ妻の隣の席へと移りました。
妻も最初は私の方をチラチラ見ていたのですが酒も進んで酔いもかなり回ってきたのか私の方を見ることもなくなって来ました。

二人の会話も少しずつトーンダウンしていき、顔の間も近くなって来ていました。私はその場面を期待していたにも関わらず楽しむどころか胸が苦しくなってきました。ハラハラと落ち着きが無くなってきて、かなりのペースで水割りを飲み干していました。むかし、高校生のときに片思いしていた女性に恋人ができ落ち込んだ感情を思い出しました。
カウンターにいた客も一人また一人と帰って行き、とうとう私と妻と男性の三人になっていました。
その客に気を取られているうちに何時の間にか男性は妻の肩を抱いていました。二人はまるで恋人同士のように顔を近づけて話していました。会話が気になりましたが店のＢＧＭでほとんど聞こえませんでした。
私は一人カウンターで何もしゃべらずに飲んでいるので、何かそこにいるのがバツが悪いような雰囲気に。私はトイレへと席を立ち、妻の携帯にそろそろ店を出るけどいいかな？とメールを送りました。
トイレで用を足してしばらく待ちましたが妻から返事はきませんでした。そのしばらくトイレで待ったことがわざわいしてとんでもない光景を見ることに。トイレから出た瞬間、妻と男性は唇を合わせていたのです。男性の手は妻の腰にまわされていました。
妻は私に気付きさっと男性から離れました。私は怒りを覚えて妻に聞こえるようにマスターにチェックしてくれと伝えました。妻はそんな私の言葉を無視して男性から目を離さず顔を近づけて話し込んでいました。
１５分経っても妻は店から出て来ません。３０分経っても妻が出て来ないので妻の携帯に電話をしてみました。何度コールしても妻が出ないので、腹が煮えくり返った私は先に家へ帰ると短く事務的にメールを送りました。私は妻をおいて一人でタクシーに乗りました。

タクシーで家へと向かっているときに携帯が鳴りました。妻からでした。
「ねえ～私をおいて帰るの～？」といきなりかなり呂律の回らない妻の声です。
「トイレを出たときあいつとキスしてたよなぁ」と少し声を荒げて妻に言うと
「あれは突然だったから」
「目を瞑ってあいつに身体をあずけていたよなぁ」
「けどあなたは私が口説かれるの見たかったんでしょ？」
「で？今まだ店にいるのか？」
「うん。今トイレから電話してる～」
「かなり酔ってるだろ？」
「酔ってるよ～だ。口説かれて欲しいって言うから演技していたのに。おいて帰るなんて冷たくない？あなたがいなくなるからもっと凄いことを・・・・」
「えっ？もっとすごいこと？」
「ひ・み・つ・。結構感じいい人なんだ～。このままホテルまで行っちゃおうかな～」
「勝手にすれば」売り言葉に買い言葉。腹が立っていたのでつい出てしまいました。ここが引き返す最後の機会だったことを後になって思い知らされました。
「勝手にするわ。もし何かあっても怒らないでよね」妻がキレたようなマジ声で携帯をきりました。

午前０時ごろ家に着きシャワーを浴びている間に徐々に酔いが覚め、少しずつ後悔をし自問自答し始めました。こんなはずじゃなかった。私の知らない男性に妻が口説かれているところを見たかっただけなのに。妻を一人残して俺は何をやってるんだろう？タクシーで引き返せば。それより強引に妻を連れ出せばよかったのでは。そんな事が私の頭の中を駆け巡ります。長い夜はまだ始まったばかりです。
一人でテレビを見ていても一向にその内容は頭には入って来ませんでした。時計を見るとすでに午前２時を過ぎていました。初めて男性を見たときからこうなる予感はしていましたが、まさか本当に。やはり一緒に連れて帰ってくればよかったと後悔の念がさらに強くなっていきました。
いてもたってもいられなくなり私は妻の携帯に「今何処にいるんだ？」とメールを送りました。１０分経っても妻からの返事は来ません。３０分経っても。らちがあかないので直接ＴＥＬしてみましたが、空しくコールされるだけでした。妻が怒って返事をしないのか、携帯を触れない状態にあることなのか。きっと今ごろ妻は・・・。つい悪い方に考えてしまう自分がいました。
妻がホテルでと考えていると右手が息子に。保存してある寝取られＡＶの女優を妻に見立てて射精してしまいました。虚しさが残る後味の悪い最悪のオナニーでした。

時計を見ると３時半を過ぎていました。また現実に引き戻され、心の痛みを感じました。
何度も何度も携帯を見てはメール問い合わせをし、外を車が通れば確認していました。
妻と男が裸で抱き合う妄想する姿が頭から離れず、ムズムズと股間が反応してきました。
最悪のオナニーをしたばかりなのに、心と体が分離したように息子が射精を求めてくるので、パソコンでおかずを探していると、グアムでの新婚旅行のフォルダが出てきました。
妻のビキニ姿の眩しい妓体が昨日までは私一人の物だった。でも、今はあの男が貪っているかと思うと悔しさで一杯でした。それとは裏腹に、射精を求める息子を右手が補助し、２度目というのに大量に吐き出しキーボードを汚してしまいました。
疲れた私は眠気に襲われそのまま寝てしまいました。
窓からの太陽の明るさにハッと我に返って時計をみると午前９時でした。
寝室を覗いても妻の姿はありませんでした。妄想の長い夜は終わりましたが、現実では妻を探さなければなりません。と思っていると、玄関ドアが開く音が・・・。