中年親父の思い出話として聞いて下さい。
私は学生時代を北海道で過ごしました。
アルバイト先に、ゆりかさんという女性社員さんがいました。
丸顔の可愛い感じ、ぽっちゃりした人で、やたら胸の大きい、いつも笑顔で元気いっぱいのゆりかさんで、私の憧れ的存在でした。
でも、人妻さんでご主人と保育園に通う子供有り、叶わぬ思いとわかっていました。
就職も決まり、北海道の生活もアルバイトも残すところあと僅かとなった時、私はその思いをゆりかさんに伝えました。
正直、学生生活にあまりいい思い出がなく、彼女はおろか、友達もあまり作れなかった。
そのことをゆりかさんに伝えながら、そして最後の思い出として、ゆりかさんに男にして欲しいとお願いしたんです。
「こんなおばさん捕まえて、何言ってんの~。地元に戻ったらいい人出来るよ」
大笑いの元、笑い飛ばされて終わり、そのはずでした。
おばさんといってもゆりかさん、確か三十を少し過ぎた程度だと思います。
アルバイト先を辞め、すでに引っ越しに向けての準備に入ったあたりのことでした。
アパートの電話がなり、出るとゆりかさんでした。
引っ越し準備作業の進み具合の確認でした。
「今度の休み、一日だけ浩一君の奥さんになってあげる。引っ越し準備手伝ってあげる」
そう言われました。
引っ越し作業を手伝いに来てくれる、それだけしか頭にありませんでした。
その日が来ました。
子供を保育園に送ったその足で来たと言うゆりかさん、確か九時前にもう来たんです。
手伝いに来てくれたことに、お礼を言いました。
「手伝いだけに来たんじゃないよ?一日だけ奥さんになってあげる、とも言ったはずよ?」
私の頭はピンと来ませんでした。
とぼけた様子の私を見たゆりかさんは、ちょっと含み笑いでした。
「浩一君、私に何お願いしたの?思い出して?」
男にして欲しいとお願いした、一日奥さんになる、あ!え?うそっ!まさか!
「いい思い出があまりないそうだから、こんなおばさんで良いなら、一肌脱いで差し上げようか、そう思い直したの」
予期せぬ事態に驚くも、天にも登る気持ちとは、まさにその時でした。
「まずはさ、お風呂沸かしてくれないかな?身体清めてからじゃないと」
昔の安アパート、風呂はありましたが狭いし、シャワーなんて洒落た物もありません。
カチン、ボッと着くガス風呂です。
お湯が沸くまでにゆりかさんの気が変わらないか、とにかく心配でした。