ホテル一室の空気は、重く淀んでいた。
私はソファの端に腰を浮かせたような姿勢で、目の前に置かれた契約書を見つめていた。
薄手のネイビーワンピースの下で、太ももが微かに震えている。
夫・浩司は隣に座り、息を殺してこちらの様子を窺っている。
「これを、私が自分で書くんですか?」
声が掠れた。喉が乾燥している。
契約書の項目をもう一度、目を泳がせながら追う。
■預かり対象の詳細なプロフィール(妻)
身長、体重、スリーサイズ、性格、性癖、セックス頻度及び自慰頻度、性感帯等……
最後の「自慰頻度」という文字が、妙に大きく見えた。
初対面の男の前で、自分のオナニーの頻度や、どこが感じるのかを白紙に書く。
それだけで、私の頰は一瞬で熱を帯びた。
「ねぇ、これを?」
夫に向けて小さな声で言うと、夫、浩司の肩がびくりと震えた。
調教師の低い声が、再び静かに落ちてくる。
「この契約書が全て、となります。ここに書かれている事が前提にお預かり……もとい、調教が進みます。
望まない事は絶対に起こりませんが、同時に望んだ行為以上のモノも行いません。
慎重になって頂く必要はありますが、それ以上に記載に漏れがないようにご注意くださいね。」
その言葉は丁寧なのに、どこか命令めいた響きがあった。
瑠璃子は唇を噛みしめ、契約書に視線を落とす。
(本当に……こんなこと、書くの?)
心臓が激しく鳴っている。
2ヶ月間、夫に説得され続けたあの時間。拒否し続けても、結局ここに座っている自分がいる。
それは「諦め」なのか、「覚悟」なのか、自分でもまだはっきりしない。
でも——。
夫の熱い視線と、目の前の逞しい体躯の男の存在感が、瑠璃子の体をどこか熱くさせ始めていた。
「……浩司。本当に、これでいいの?」
夫に最後の確認を求めるように、小さく囁いた。
浩司は力強く頷く。その目には、期待と興奮と、わずかな罪悪感が混じっていた。
瑠璃子はゆっくりと息を吐き、契約書を引き寄せた。
手に持ったペンが、わずかに震えている。
(書くしかないのね)
私はまず「預かり対象の詳細なプロフィール」の欄に、ペン先を置いた。
身長:162cm
体重:52kg
スリーサイズ:89F-62-88
そこで一旦、ペンが止まる。
次に書くのは「性格、性癖、セックス頻度及び自慰頻度、性感帯等」——
指が、わずかにペンを握りしめた。
頰はますます赤く染まり、耳まで熱くなっているのが自分でもわかった。
調教師の視線が、彼女の書く手元に注がれている。
夫の荒い息遣いも、すぐ隣で聞こえている。
瑠璃子は一度、深く息を吸い込んだ。
「書きます」
小さな声でそう言って、彼女はゆっくりとペンを動かし始めた。
性格
普段は真面目で控えめのつもりです。
他人とのセックス経験を重ねる中で、徐々に快楽に弱い体質になっている自覚あります。
性癖・経験
・夫の寝とられ(NTR)願望に付き合い、スワップ・乱交・貸し出しを経験。
・最初は強い抵抗があったが、回数を重ねるごとに他人とのセックスに快感を覚えるようになってきた。
・特に「見られている状況」や「夫に報告させられること」に興奮を覚える。
・夫から「もっと淫乱になってほしい」と言われ、調教を望まれている。
セックス頻度及び自慰頻度
夫とのセックス:月1回程度
他人とのセックス:過去1年で20回以上(スワップ・乱交含む)
自慰頻度:週2〜4回
性感帯
・首筋と耳元(キスや息を吹きかけられるとすぐに弱くなる)
・乳首(特に左側が敏感。吸われると声が出てしまう)
・クリトリスと膣壁の奥(Gスポット付近)。
・最近、言葉責めや「淫乱」と囁かれるだけで濡れてしまう。
ここまで書いて、ペンを止めた。
指先が震え、紙面に小さな汗の跡が落ちそうになる。
特に「自慰頻度」や「性感帯」の欄を書くとき、恥ずかしさをを必死に堪えた。
初対面の男の前で、自分の最も恥ずかしい部分を曝け出す行為。
下腹部が熱くなり、ワンピースの下でショーツがわずかに湿り始めたのが自分でもわかった。
ちらりと調教師の顔を窺った。
還暦間近とは思えない逞しい体躯と、静かな視線。
その視線が自分の書いた文字を丁寧に追っていると思うと、背筋にぞくりとしたものが走る。
夫・浩司は隣で息を荒げ、目を輝かせながら契約書を覗き込んでいる。
彼の興奮が、手に取るように伝わってきた。
瑠璃子は深く息を吸い、夫に書類を渡しました。
■希望預かり期間(夫)
一年
■費用(夫)
104万
■NG環境、行為(夫)
妊娠はNG。避妊方法は調教師に任せるが確実な方法をお願いします。
■預かりに期待すること(夫)
妻を本物の淫乱牝に調教してほしい。羞恥心を徹底的に崩し、性欲にのみ従順な牝に変えてほしい。
心理的な堕ち方、言葉責め、性感開発、身体改造など、詳細は調教師の裁量に任せる。
夫は最後の欄を書き終え、契約書を再び私に返しました。
私はその内容を読み直しました。顔は真っ赤で、目は潤み、唇を強く噛んでいる。
調教師に私から手渡しました。
「……これで、いいでしょうか?」
声は震えていた。
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