隣に座る祐一がコワイと騒ぐ。
格好悪い、情けない、なんて思わず可愛らしいと感じた。嫌だと言いながらも結局は天音の「一緒に乗りたい」を優先してくれる優しい彼氏だ。
ブザーとともにジェットコースターが動き出す。高いところから、一気に降りるその瞬間、ローターが動き出すのがわかった。体を揺さぶられる振動に紛れて認識さえしていなければ、何も思わなかったのに。
「はあッ、んん」
気付いてしまったらもうダメで、猛烈なスピードや圧力、振動が体を襲っているのに、中から与えられる刺激が気になって体が拾ってしまう。
隣の祐一はもちろん気付かず、ギャー!と叫び声を上げていた。
音や振動では絶対バレない、けど、そういう問題じゃない。耐えるように俯く。ジェットコースターが怖くて前を向けない、そんな風にしか見えないのが幸いだった。
止まるまでせいぜい1分あるかないかだろう、すぐに出発地点に戻ってきた。バーがあがり、足元に気をつけて降りるようにアナウンスが流れる。
「あれ?天音もこわかったの?」
すぐに立ち上がれない天音に嬉しそうに声をかける。
「う、うん、おもったより、こわくて」
ジェットコースターを味わえる余裕はないから嘘だった。未だ震え続けるローターに動きを制限され、ゆっくりとぎこちない動きで車両を跨ぎ降車する。
「じゃあ次さ、こっち乗ろう」
本当はトイレに駆け込んで捨てたかったのに、知る由もない祐一は近くにあるアトラクションへと天音の手を引いた。振り解いてトイレに逃げるわけにもいかず、また長蛇の列に並ぶことになってしまった。
賑やかにBGMが流れているからか、誰もローターの音に気づいた様子は見せない。
(はやくとまって)
無意識にお腹を押さえるが、祐一が心配そうに声をかけるから手を離す。何とか表情を取り繕い、会話をするので必死だった。風が吹いて心地よい天候なのに、天音は焦りと刺激でしっとりと汗ばんでいる。
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