比奈はパーキングエリアに着くや否や、やっと解放されたかと言わんばかりに車を飛び出して行く。続いて真緒も車を降りる。
降車の際、運転席から先に降りて何気なく家族の様子を見守る龍太郎と目が合った。運転のお礼のつもりかペコリと会釈をして、早くトイレに行きたい比奈に急かされるままついていった。
用を足し、そのまま流れるように併設されたコンビニに入る。飲み物でも買おうかとそう比奈と話していると、ふと、先程の龍太郎の姿を思い出した。
父が休日に車を出し、妻や娘、その友人を見守る日常の何気ないシーン・・・のはずだが、真緒と母の真奈美には一生をかけても得られないものだ。
真緒の父はお酒にダラシなく、休日に父主導で何処かに連れて行ってもらった記憶はなく、酔うと荒れる父とそれを咎める母はいつも喧嘩ばかりだったのだ。
龍太郎から向けられた優しげな表情や視線に、特別な感情はない・・わかっているが、胸の奥がキュッと締め付けられた気がした。
「比奈、おじさんって甘いの好きだっけ?」
えー?知らなーい、と興味なさげに答える友人に苦笑いしながら、飲み物と一緒に小さな袋に入ったチョコレートを購入した。
先に車に戻ってるねと比奈に声をかけ、車の番をしている龍太郎の下に戻った。こんな小さな贈り物だけど、おじさんは喜んでくれるだろうかと、やや胸を高鳴らせた。
「・・おじさん、私見てますから、おトイレとか大丈夫ですか?」
妻たちと娘が戻らぬ中、真緒が先に戻り声をかけた。
【おはようございます。返信しておきます。朝から拗らせてみました。】
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