(いきなりこのような強制逮捕だなんて、一体何が起きているの…?)
通された別室のソファに座り、考えを巡らすリズベット。
時計の針の音がやけにゆっくりに聞こえ、連れて行かれた獣人たちの行方が不安で仕方なかった。
ダーウェルが姿を見せると、机に手を叩きつけて語気を強めた。
当然、貴族である自分に無礼を働いたからではなく、獣人たちを巻き込んだからだ。
しかし、アルの獣人解放戦線の疑いを知っていて匿ったのでは、という問いに対しては、一瞬眉が動いた。
「…知らないわ、そんなこと。彼は敷地内で怪我をしていたから屋敷に招いただけ。」
リズベットは当然、知らないと口を閉ざす。
アルに直接聞いていないのだから、何となく疑っていたとはいえ、知らないのは嘘ではない。
しかし、弱みを持っているのもまた事実だった。
「シ、シオンが…?……ナイフは知っていたけれど、その…獣人語…?というのは知らないわ。私も、シオンも獣人のみんなも、獣人解放戦線とは関係がないし、アルの行方も分からないわ。」
シオンがナイフを持ち込んだ、ということは初耳であり、そこからはややしどろもどろになりながら言葉を紡いだ。
獣人語はもはや獣人解放戦線でしか使われておらず、古くに消えた言語。リズベットが知らなくてもおかしくはないが、それは明確な嘘になってしまった。
しかし、アルのことを認めてしまえば、他の獣人たちも疑われかねないため、リズベットは否認するしかなかった。
そして、呼ばれた団員によって、リズベットは両脇を抱えられ、強制的に連れ出される。
「ッ、話をっ、もっと話を聞いて…っ、他のみんなは関係ないのっ!すぐに解放して…っ、…」
ジタバタ暴れても、体格が2倍ほどある屈強な男2人の力には到底敵わず、そのまま連れ出された。
最後の最後まで、他の獣人のことを案じたものの、ダーウェルの心に響くことはなかった。
そのまま尋問室…とは到底思えない、錆びた鉄のようなにおいがする、ひどく恐ろしい部屋に手枷で吊るされた。
シルク布のドレスとは似つかわない、この手のことに疎いリズベットでさえ知っているような拷問器具が並ぶ部屋。
滑車によって手枷が吊るし上がり、爪先立ちのまま1人残された。
爪先立ちを強制されるだけで体力を消耗し、じっとりとした汗が額ににじむ。
(…ダーウェル様は何を考えて…。尋問とは一体…。ああ、他のみんなは無事だと良いのだけど…)
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