「あっ…そ、そうなんだ…」何を話していいか分からず、とりあえず無難な質問だと思った吉田だったが、メイの答に驚き短く返すことしかできなかった。(ロウソク…って…指の骨を折る?えっ…どういうこと?)何でもアリとは聞いてはいたが、吉田の想像を遥かに上回る場所なのだ。吉田の背中に冷たいものが走った。(でも…何でこの子…こんな話を普通に…何でこんなに普通に話せるんだ…)吉田には故郷に高校生の妹がいる…メイとほとんど変わらない年齢だ。化粧をしていてハッキリとした歳はわからなかったが、化粧を落とせば…(この子は…一体いくつの時からここに居るんだろう…)吉田の中で様々な疑問が湧き上がる…だがそれを聞くのは躊躇われた。吉田はメイの顔をジッと見つめた…故郷の妹とメイが重なり、なんともいえない悲しい気持ちになる。こんなところにいなければ妹みたいに友達と喋って笑い転げたり…好きな子ができたとか…そんなごく普通の女の子だったに違いない…「えっ…?あっ…お、俺の歳?に、28だよ…俺も先月28になった…」メイからの問いにハッと我に帰り答えた。「どうしてって…う~ん…酔った勢いっていうか…飲み屋でたまたま知り合った人に教えられて…気晴らしっていうか…ただの好奇心っていうか…実は…会社てイヤなことがあったんだよね…ほら…よくいるでしょ?手柄は自分のもの…ミスは部下に押しつける…みたいなヤツ…俺の上司がまさにソレ…ここがどんなおのろなんて…あんまり深く考えてなかったから…」「そんなヤツ…ぶん殴っちゃえばいいのにっ!」メイはほっぺたを膨らませまるで自分のことにように怒ったように言う…「アハハ…確かにそうだよね…あんなヤツ…ぶん殴っちゃえばいいんだよね…」ふとメイの手首についた縄で縛られたような跡が目に入った…上司に嫌味を言われたくらいどうってことはない…この子はもっとひどいことをされてきたのたろう…なんか自分の愚痴があまりにもくだらないような気がした。メイの明るさに救われたような気がした。他愛のない会話だったが、60分はあっという間にすぎタイマーの音が鳴る…「本当に何もしなくてよかったんてすか?」そんなメイに「うん…楽しかって…ありがとう…」と答え店をあとにした。不思議な体験だった…この世にあんな世界があるなんて…つい今しがたのことだが、現実のこととは思えなかった。「ソナ」に行ってからひと月ほどが経った…仕事に追われ忙しい日が繰り返された。しばらくの間、メイのことを時々は思い出していたが、いつの間にか考えることもなくなっていた。(あぁ~もうだめだ…あんな会社…行ってられるか…)吉田は文房具の開発製造販売を手掛ける会社に務めていた。子供のころ、親に買ってもらった文房具…怪獣の消しゴムやボタンを押すと蓋が開く筆箱…こんなものがあったらいいのに…こうしたらみんな喜ぶのに…そんな想いから将来は自分で…子供の頃からの夢が叶うはずの会社だった。この日も一生懸命考えた文房具を上司に糞味噌にコケにされた…ヒットした商品は自分の手柄にする上司に…やけ酒にと寄った飲み屋でふとメイのことを思い出した…黒い綺麗な髪に目尻が少しつり上がった猫の目の少女…(あの子…どうしてるんだろう…)気づけば吉田は「ソナ」でメイを指名していた…明るいほうのバージョンにしました。このほうが進めやすいてす。ありがとうございます。
...省略されました。